2022年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年6月11日)過去問解説

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manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして主にファイナンシャルプランナーの開業や副業のコンサルティングを行っています。

公開日 2023年1月25日 最終更新日 2023年1月29日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2022年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年6月11日)

●設 例●
 Aさん(68歳)は、三大都市圏近郊のS市内で代々農業を営み、自宅で妻と長男家族との6人で暮らしている。Aさんは、自宅と農地のほかに、S市内に相続で引き継いだ甲土地(地積1,156m²、地目:山林)を所有している。

 【甲土地の現況】

甲土地は、S駅から徒歩圏内の住宅街にある平坦な林地(道路と等高)で、雑木がまばらに生えている未利用地である。甲土地の周辺は、敷地130~150m²ほどの住宅が立ち並ぶ良好 な住宅地であり、近年未利用地が開発され、建売住宅の供給が増えている。
 甲土地の北側に位置する乙土地(地積1,343m²、地目:山林)は、昨年同じ町内に住むBさんが相続で取得し、納税資金の調達のため売りに出していたが、最近売れたとの噂を聞いた。 先日、Bさんから直接聞いた話では、買手が数社競合し、最も高い価格を提示した市内の建売業者X社に10万円/m²で売却したとのことで、周辺の住宅地の相場20万円/m²の半値だったとぼやいていた。乙土地はこれまでたびたび切り売りされてきており、土地が虫食い状態であったことが価格に影響したのではないかとのことだった。

 【X社からの申出】

その数日後、AさんのもとにX社の社員が来訪し、「弊社は乙土地を建売用の素地として購入しました。ここで建売事業を計画していますが、可能であれば甲土地も一緒に事業化したいと考えています。ぜひ甲土地を譲ってもらえないでしょうか。価格は路線価と同じ16万円/m²(乙土地の価格の1.6倍)とさせていただきます」との申出があった。Aさんは、家族と相談し、現時点では売却の意思がない旨を伝え、丁重にお断りした。

 しかし、その後、X社の社員が再び来訪し、「それでは甲土地の北側部分344m²(5m×68m+隅切り4m²)だけでも譲ってもらえないでしょうか。価格は先日と同じく16万円/m²とさせていただきます。購入した土地は幅員5mの開発道路として整備し、完了後S市に帰属し、市道になります。甲土地の残る部分は新設道路に全面的に接することになりますので、Aさんにとってもよい話だと思います。いかがでしょうか」との新たな申出があった。

 Aさんは、譲った土地が整備された市道になるのであれば、残った甲土地の利用価値が上がり、将来、有効活用を図りやすくなるし、16万円/m²という条件面も気に入っている。しかし、なぜX社が整備して結局はS市に帰属することになる道路用地をそのような条件でも購入したいのかがよくわからない。

 そこで、Aさんは、今回のX社による開発計画や甲土地の売却について、FPであるあなたにアドバイスを求めることにした。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. X社が、乙土地の購入価格の1.6倍の価格(単価)を提示してまで道路予定地の甲土地の北側部分を購入したい理由として、どのようなことが考えられますか。
  3. X社からの申出について、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか。X社の申出を受ける場合、Aさんにどのようなデメリットがありますか。
  4. 甲土地の北側部分(道路予定地)を売却した場合の課税関係はどうなりますか。
  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
当初、現時点では売却の意思がないといった理由は何か。
家族と相談した内容はどのような内容か。
将来、有効活用を図りやすくなるとあるが、具体的な考えはあるか。
相続税対策は検討しているか。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 X社の取引事例や財務状況を確認すること。
 周辺の住宅地の相場20万円/m²とあるので、周辺の取引事例を、地元の不動産業者等で確認し、X社の提案は妥当かを確認します。


X社が、乙土地の購入価格の1.6倍の価格(単価)を提示してまで道路予定地の甲土地の北側部分を購入したい理由として、どのようなことが考えられますか?

X社による乙土地単独の開発計画によると、乙土地の中央部分を道路とすることで、各区画の接道義務等を満たすように計画されています。

一方、Aさんが道路用地を提供した場合の開発計画では、甲土地の北側部分の道路で、各区画の接道義務等を満たすことができます。
そうすることで、南向きの区画が多くなり、各区画の形状も正方形に近くなるので建築物の自由度が増し、多様なニーズに応えられ建売事業の人気が出る可能性があります。

さらに、総区画数も7区画から9区画に増え、各区画の平均面積も141.57㎡から148.33㎡に増えるので、X社が乙土地の購入価格の1.6倍の価格で購入しても採算が取れると判断したため、道路予定地として甲土地の北側部分を購入したいのだと思います。


X社の申出を受ける場合、Aさんにどのようなデメリットがありますか?

甲土地は、三大都市圏近郊のS市内にある、地積1,156m²の土地なので、「地積規模の大きな宅地」の面積要件を満たしていますが、X社の申し出を受けた場合は、要件が満たせず、相続税負担が増加する可能性があります。

「地積規模の大きな宅地」について教えてください。

平成30年1月1日以後に開始した相続から、三大都市圏は500m²以上、三大都市圏以外の地域においては1,000m²以上の地積で一定の要件を満たす宅地については、「地積規模の大きな宅地」として評価することとされました。

「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価地域に所在するものについては、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものとなります。
また、倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。

X社の申出を受ける場合、Aさんのメリットを教えてください。

土地の売却により、まとまった資金が得られること。
乙土地との相乗効果で、甲土地の利用価値も上がる可能性があること。
3つの道路に面した土地になるため、将来の土地の有効活用や売却が有利になることなどです。

X社からの申出について、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか?

X社からの申し出は、Aさんにとってメリットが大きく、申し出を受けることを前向きに検討するようにアドバイスします。
ただし、申し出を受けると、相続税評価額に大きな影響が出る可能性もあるので、家族と相談した内容や、将来の有効活用などの具体的な考え、他の相続財産の状況なども確認し、専門家と連携しアドバイスします。


甲土地の北側部分(道路予定地)を売却した場合の課税関係はどうなりますか?

甲土地を売却して得た譲渡所得に対して譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。

取得費はどのように計算しますか?

甲土地は、Aさんが相続で引き継いだ土地なので、被相続人が取得した時の購入金額をAさんが引き継いで計算します。

したがって、被相続人が購入した際の金額を調べる必要がありますが、
もし、購入金額についての記録などがない場合や、実際の取得費が分からない場合には、売却時の収入金額の5%を取得費として計算する、概算取得費の計算を行うこととなります。

それと、甲土地を、相続が発生した日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却するなど、要件を満たした場合には、Aさんが相続した際に支払った相続税について、すべての財産の相続税評価額のうち、甲土地の相続税評価額の占める割合で計算した金額を、取得費に加算できる取得費加算の特例があります。

税率はどうなりますか?

譲渡所得が発生した時に計算に用いる税率は、その不動産を保有し始めてから売却するまでの期間の長さによって変わります。

譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年以下の土地や建物を売却した場合は短期譲渡所得となり、復興特別所得税を含む所得税の税率は30.63%、住民税の税率は9%となります。

また、譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超える土地や建物を売却した場合は長期譲渡所得となり、復興特別所得税を含む所得税の税率は15.315%、住民税の税率は5%となります。

今回のケースの場合、所有期間はどのように計算しますか?

今回のケースでは、甲土地は、Aさんが相続で引き継いだ土地なので、所有期間の開始時点はAさんが相続をした日ではなく、被相続人がその土地や建物を取得した日となります。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、地積規模の大きな宅地を、相続により取得した場合の有効活用や、譲渡所得の課税関係に関する設例でした。

地積規模の大きな宅地に関しては、2021年2月13日や、2020年9月26日の設例にも掲載されています。

譲渡所得の課税関係は、学科試験の応用編では頻出です。

実技試験対策でも、過去問を繰り返し解いてみるのが効果的だと思います。

実技試験の過去問に限らず、学科試験の過去問を解いてみるのもいいのではないでしょうか。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

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