2020年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2020年9月26日)過去問解説

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合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2020年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2020年9月26日)

●設 例●
 Aさん(80歳)は、三大都市圏に所在するS市内の自宅で妻Bさん(75歳)と大手メーカーに勤務する長男Cさん(52歳)家族と暮らしている。同居している長男Cさんの一人息子の孫Dさん(27歳)は近々結婚の予定があり、現在、S市内の新居を探している。

 

【甲土地の概要および売却の検討】
 A家は、代々の農家であり、Aさんは先代の相続により取得したS市内の甲土地(地積:6,000m²、現況:山林)を所有している。甲土地はクヌギ・コナラなどが茂る林地であり、S市の緑地保全条例による緑地保護地区に指定(申請により解除可)され、固定資産税等は免除されている。周辺住民の苦情が多い落ち葉の清掃や、下刈り、枝払いなどの管理をAさんが行ってきたが、最近は体力的に厳しくなってきた。

 Aさんは、長男Cさんと相談のうえ、甲土地の売却を検討しているものの、以前、地元の不動産会社の社長から「甲土地は最寄りのS駅に比較的近く、戸建て住宅の用地としては適地であるが、甲土地を宅地造成するには大きな欠点がある」と言われたことがある。

 

【甲土地の形状およびその周辺の概要】
 甲土地は、高低差が約7mあり、北側から南側にかけて緩やかに傾斜している。甲土地の最有効使用は140m²程度の区画に細分化し、戸建て住宅にすることである。造成後は、南ひな壇の良好な住宅地になると思われる。

 甲土地の北側一帯は古くからの旧家が建ち並ぶ地域である。南側は、20年以上前に旧日本住宅公団が土地区画整理事業により開発した大型の住宅団地である。また、東側および西側の住宅地は、甲土地と同様の山林であったが、3年前と5年前に地元の不動産会社が開発・分譲したものである。現在では、甲土地だけが取り残されている。

 南側市道内には、市営水道管・公共下水管・雨水排水管・都市ガス管が埋設されている。他方、旧家が建ち並ぶ北側市道内には、市営水道管・雨水排水管のみが埋設されている。

 

【甲土地の南側に隣接するEさん宅】
Aさんは、先日、S駅前にあるX住宅販売店(大手不動産会社のチェーン店)の営業担当者からEさん宅が売りに出されていることを聞かされた。Eさん宅(地積:165m²、間口12.5m・奥行13.2m、築20年、延床面積130m²)の販売価格は3,500万円、建物はリフォームしたばかりで綺麗とのことである。最寄りのS駅は、Eさん宅から西側の方向に徒歩7分の位置にある。Aさんは、Eさん宅が孫Dさんの新居によいのではないかと思っている。

 

<甲土地の概要> 地積6,000m²(間口60m×奥行100m)、地目:山林
平均斜度3.2度(高低差7m、北側から南側にかけて緩やかに傾斜)
第一種低層住居専用地域、宅地造成工事規制区域
緑地保護地区(解除申請により、無条件で解除することができる)
指定建蔽率50%、指定容積率100%

<S市の開発指導要綱による規制> 公園(開発面積の3%以上)、道路幅員6m以上、最低区画120m²
20区画以上の場合、集中浄化槽の設置が必要

 

(FPへの質問事項)

  1. 甲土地を宅地造成する際の大きな欠点とは何だと思いますか。それは、Eさん宅を購入することで解決することはできますか。

  2. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報(確認)が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから何点か具体的に確認したいことがありますが、どのようなことですか。
     ②FPであるあなたが確認しておくべきことは、どのようなことですか。

  3. 現時点において、Aさんの相続が開始した場合、甲土地の相続税評価額はどのように計算しますか。

  4. Aさんにどのようなアドバイスをしますか。甲土地の売却、Eさん宅の購入の可否など、あなたの考えを教えてください。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

  1. 甲土地を宅地造成する際の大きな欠点とは何だと思いますか。それは、Eさん宅を購入することで解決することはできますか?
 

甲土地を宅地造成する際の大きな欠点とは、下水処理等のインフラ整備が難しい点です。
甲土地は、北側から南側にかけて高低差が7mある傾斜地です。傾斜地での排水は下流に排水されますが、甲土地の場合南側市道の排水設備に接続するには既存住宅があり接続することは難しく、北側市道へ排水するにはポンプアップする必要があります。

Eさん宅を購入することで、南側市道に埋設されている排水管・公共下水管に接続することが可能になります。
さらに、都市ガス管にも接続できるのでEさん宅を購入すると、南側市道に埋設されている設備を活用することができ、インフラ問題が解決できます。

 
  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報(確認)が必要ですか?
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?
 

①Aさんから直接聞いて確認する確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。トラブルの理由、関係者の意向として
 代々、農家を営んできたA家にとって先代から相続した甲土地への特別な想いはあるか。
 長男Cさん以外に子供がいるか、他の親族との関係は良好か。
 周辺住民から落ち葉等の苦情があがっているが、関係は良好か。
 
⑵お客様に寄り添うこと、本当のニーズを引き出すこととして
 孫Dさんは、Eさん宅に住む意向があるのか。孫Dさんの住居への希望は。
 資産状況、収入、相続対策が必要か。

 
  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報(確認)が必要ですか?
     ②FPであるあなたが確認しておくべきことは、どのようなことですか?
 

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し今後の開発予定や周辺環境の変化を把握すること。

⑷市場調査として
 他の不動産業者などから取引事例等を確認し、市場価格の確認、近隣の地価公示価格、基準地価格、路線価を確認すること。
 3年前と5年前に東側、西側の山林を開発・分譲した不動産会社に、当時の状況を確認すること。


 
  1. 現時点において、Aさんの相続が開始した場合、甲土地の相続税評価額はどのように計算しますか。
 
 

甲土地は三大都市圏に所在する地積が6,000㎡の土地なので、「地積の大きな宅地の評価」が適用できます。
「地積の大きな宅地の評価」とは、三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいいます。
 広い土地をそのままでは使いにくく、土地評価方法の原則である。「路線価」や「評価倍率方式」を修正して価格補正され、土地の評価額を減額することができます。

地積の大きな宅地の評価額は

路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率×地積(㎡)

で計算します。

 
 
  1. この場合、取得日や取得費はどのように計算しますか?
 

親から相続した土地や建物の取得時期は、親が土地や建物を取得した時期をそのまま引き継ぐことができます。
所有期間が5年以内なら短期譲渡、5年超なら長期譲渡になり税率が異なりますが、売却した年の1月1日までの所有期間で、長期か短期かを判定します。

相続開始の日の翌日から3年10ヶ月以内に売却すると、相続した時の相続税のうち一定額を取得費に加算できます。


 
  1. Aさんにどのようなアドバイスをしますか。甲土地の売却、Eさん宅の購入の可否など、あなたの考えを教えてください。
 

甲土地の売却についてですが、甲土地は三大都市圏に所在する地積が6,000㎡の土地で、「地積の大きな宅地の評価」が適用できます。
甲土地を売却すると譲渡所得が発生し、現預金が増加することになり、Aさんの相続発生時に現状よりも相続税負担が大きくなる可能性があります。

甲土地の売却理由が、落ち葉の清掃など維持管理することが負担になっているということなので、家族で清掃を協力することや、業者へ依頼することで維持管理の負担が軽減でき、長男Cさん以外の相続人がいないなら相続発生後に売却する方が相続税負担が軽減できることをアドバイスします。

次に、Eさん宅の購入ですが、Eさん宅を孫Dさんの新居としてではなく、将来的に甲土地を売却し宅地造成することを考えると、Eさん宅を取り壊し道路とすることで、甲土地は北側市道だけでなく南側市道へも直結でき、埋設されている排水設備との接続やS駅へのアクセスもよくなります。
Eさん宅を購入することが甲土地を高値で売却することができる要因になることをアドバイスします。


 
  1. FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
    今回のケースで関与する専門職業家はどのような方々がいますか。
 

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談は税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については司法書士に、
地積の更正や変更の登記は土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


Part2は不動産関連の問題ですが、Part1と同じように相続が関係していることも多く、人間関係を想像するのも解答のヒントになります。
振り返ってみると、私が受験した時も設例が「三大都市圏に所在する土地」でしたが、本番の面接ではかなり緊張してしまい、マーカーしていたのに面接では飛んでしまい言葉が出てこないことがありました。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。

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