2022年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年6月5日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

公開日 2023年12月26日 最終更新日 2024年1月4日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2022年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年6月5日)

 Aさん(70歳)は、東京都内の分譲マンションで妻(68歳)と2人で暮らしている。2021年8月にAさんの母親Bさんが死亡した。父親は7年前に死亡しており、相続人はAさんのみである。Aさんは、母親Bさんの自宅であるX建物および空き家であったY建物と、それぞれの敷地である甲土地を相続により取得し、相続税の申告・納税等の手続を完了した。

 1人息子である長男Cさん(43歳)は、昨年、海外赴任から帰国し、甲土地のあるS市内の賃貸マンションで妻と子2人との4人で暮らしている。先日、Aさんは、長男Cさんから、S市内で住宅の取得を考えていると聞き、その援助をしてやりたいと思っている。

【Aさんが相続により取得した不動産の概況】

①甲土地 地積300m²
  甲土地上にX建物とY建物があり、X建物の敷地部分は165m²(55%)、Y建物の敷地部分は135m²(45%)である。
②X建物 木造2階建ての戸建て住宅、延べ面積160m²
  父親が1975年に新築した自宅で、7年前の父親の死亡後、母親Bさんが1人で暮らしていたが、母親Bさんは2018年1月から老人ホームに入居し、母親Bさんの相続開始直前において空き家となっていた。
③Y建物 木造2階建ての戸建て住宅、延べ面積120m²
  父親が1980年に新築し、当初はAさん家族が居住していたが、Aさんは、仕事都合で、1998年に現在の分譲マンションを取得し、家族で転居した。
  Aさん家族の転居後、第三者に賃貸していたが、2020年3月に入居者が退去して以降、新たな募集はせず、空き家の状態のまま現在に至っている。

 Aさんは、X建物・Y建物とも老朽化が進んでおり、近隣に迷惑をかけることを危惧している。地元の不動産業者に相談したところ、甲土地周辺は良好な住宅地として人気があり、現状有姿で、X建物の敷地部分は5,500万円、Y建物の敷地部分は4,500万円で売却できる見込みとのことである。

 Aさんは、自身の年齢も考えて、甲土地に新たに賃貸物件を建築し、有効活用を図るつもりはない。また、長男Cさんが甲土地での新居を望むならば、X建物・Y建物のいずれかの敷地部分を売却し、その売却資金を元手として、もう一方の敷地に住宅を新築し、その敷地については相続で承継してもよいと思っている。なお、長男Cさんが希望する新築住宅の建築資金は3,500万円程度と見込まれる。

 Aさんは、甲土地の一部の売却、長男Cさんへの住宅取得資金援助や資産承継の留意点について、FPであるあなたにアドバイスを求めている。

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. X建物の敷地部分を売却した場合とY建物の敷地部分を売却した場合の課税関係をそれぞれ教えてください。
  3. Aさんが長男Cさんに住宅取得資金を援助する場合、課税関係はどうなりますか。
  4. Aさんの相続が開始したとき、長男Cさんの住宅を新築したX建物またはY建物の敷地部分の相続税評価額はどのように評価されますか。
  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
相続税対策は検討しているか。
長男Cさんが希望する新築住宅の条件等を確認します。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 周辺の取引事例を、地元の不動産業者等で確認し、売却見込み額は妥当かを確認します。


X建物の敷地部分を売却した場合と、Y建物の敷地部分を売却した場合の、課税関係をそれぞれ教えてください。

X建物は、1975年に新築した自宅で、母親Bさんの相続開始直前において空き家となっていたので、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の適用を受けることが可能です。

空き家の譲渡所得の特例について教えてください。

一人暮らしだった被相続人が死亡した日以後、3年を経過した日の属する年の12月31日までに、相続によって取得した空き家を譲渡したときは、その空き家を譲渡して得た利益から3,000万円を控除できる制度です。

要件を教えてください。

被相続人が亡くなられた時点で一人暮らしであること。
1981年5月31日以前に建築された建物とその敷地であること。
区分所有建築物でないこと。
相続から譲渡まで引き続き空き家でなければならないこと。
売却代金が1億円以下であることです。

Y建物の敷地部分を売却した場合の、課税関係を教えてください。

譲渡所得税の対象となり、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対して税率をかけて計算します。

譲渡所得が発生した時に計算に用いる税率は、その不動産を保有し始めてから売却するまでの期間の長さによって変わります。

譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年以下の土地や建物を売却した場合は短期譲渡所得となり、復興特別所得税を含む所得税の税率は30.63%、住民税の税率は9%となります。

また、譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超える土地や建物を売却した場合は長期譲渡所得となり、復興特別所得税を含む所得税の税率は15.315%、住民税の税率は5%となります。

今回のケースでは、甲土地は、Aさんが相続で引き継いだ土地なので、所有期間の開始時点はAさんが相続をした日ではなく、被相続人がその土地や建物を取得した日となります。

取得費はどのように計算しますか?

甲土地は、Aさんが相続で引き継いだ土地なので、被相続人が取得した時の購入金額をAさんが引き継いで計算します。

また、甲土地を、相続が発生した日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却するなど、要件を満たした場合には、Aさんが相続した際に支払った相続税について、すべての財産の相続税評価額のうち、甲土地の相続税評価額の占める割合で計算した金額を、取得費に加算できる取得費加算の特例があります。


Aさんが長男Cさんに住宅取得資金を援助する場合、課税関係はどうなりますか?

Aさんから住宅取得資金として贈与を受けた場合、取得する住宅が省エネ等住宅の場合で1,000万円、それ以外の住宅の場合は、500万円まで非課税になります

住宅取得資金の非課税特例と相続時精算課税を活用し、建築資金を長男Cさんに贈与することをアドバイスします。


Aさんの相続が開始したとき、長男Cさんの住宅を新築したX建物またはY建物の敷地部分の相続税評価額はどのように評価されますか。

新築したX建物に関して、相続時精算課税制度により贈与された財産は、贈与時の評価額で計算します。

Y建物の敷地部分に関しては、家賃や地代のやりとりなどがない使用貸借とする方法が考えられます。
使用貸借の場合、借地権はゼロとなり、土地の評価上も借地権評価額を差し引くことはできないので、土地の評価は自用地としての100%評価となります。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除、相続税の取得費加算の特例、住宅取得資金を援助する場合に関する設例でした。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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