2022年6月4日 2022年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 過去問解説

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合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2022年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2022年6月4日)

●設 例●
 Aさん(68歳)は、東京郊外で医療法人Xクリニック(歯科、経過措置型医療法人)を営む2代目の歯科医である。父親から引き継いだ歯科医業を2002年4月に法人化し、理事長として勤務している。長男Cさん(36歳)は、歯科医師として大学病院の口腔外科で勤務した後、4年前から理事としてXクリニックに勤務している。

 Aさんは、そろそろ引退して長男Cさんに後を譲るつもりで、出資持分の相続税対策や持分のない医療法人への移行などについて長男Cさんと一緒に考えたいと思っていた。しかし、先日、長男Cさんから、「申し訳ないけど、しばらくの間、大学に戻って高度な治療について研究したい。Xクリニックを継ぐのは先に延ばしてほしい」と相談された。

 Aさんは、いずれは長男Cさんが事業を承継してくれると思っているが、念のために第三者への承継やM&Aによる持分の譲渡なども検討しておきたいと考えて、FPであるあなたにアドバイスを求めている。

 

【Aさんの家族構成】

  • 長男Cさん(36歳):Xクリニックの社員・理事。出資持分はない。妻と2人の子の4人(賃貸マンションに居住)でAさん所有のYビルに住んでいる。家賃は支払っていない。
  • 長女Dさん(32歳):会社員。妻Bさんの他界後、Xクリニックの社員。隣県にある企業に勤めており、賃貸マンションに1人で暮らしている。
  • ※Aさんの妻Bさんは3年前に他界している。

 

【Xクリニックの概要】

  •  貸借対照表
    現預金 4,000万円 資本金 4,000万円
    未収入金 1,000万円 利益剰余金 6,000万円
    固定資産 5,000万円    
  • 資本金(出資金):4,000万円(40,000口)
  • 出資持分:Aさん100%
  • 会社規模:中会社の小
  • 出資持分の相続税評価額:類似業種比準価額1,000円/口、純資産価額2,500円/口

 

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

  1 現預金 1億円  
  2 有価証券 5,000万円  
  3 Xクリニック出資持分 6,400万円  
  4 Yビル(使用状況は下記参照)      
   ①土地(400㎡) 1億円  
   ②建物(築25年) 1億8,000万円 (年間家賃収入1,920万円)
  合計 4億9,400万円  

※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億5,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

 

【Aさんが所有しているYビルの概要】

  • 鉄骨造8階建て、延べ面積1,320m²(各階の床面積は165m²で同一)
  • 1~2階をXクリニックが使用し、3~6階を賃貸マンション、7階をAさんの自宅、8階を長男Cさん家族の自宅として使用している。
  • Aさんは、Yビルの土地および建物を長男Cさんに相続させたいと思っている。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

 

相談内容として

  • 出資持分の相続税対策や持分のない医療法人への移行などを検討している。
  • 長男Cさんへ、医療法人Xクリニックの承継。
  • 医療法人Xクリニックの第三者への承継やM&Aによる持分の譲渡などを検討したい。

問題点は、

  • 納税資金不足が予想されるので、納税資金の準備。
  • 相続税が高額になるので相続税の軽減。
  • 円滑な遺産分割を行うための対策が必要です。
 

それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

出資持分の相続税対策は、どのような提案・方策が考えられますか?

出資持分のある医療法人の相続税対策は、
出資金評価額の引き下げを行い、
税制上の特例を活用した、出資持分のない医療法人へ、移行することを提案します。

出資金評価額を引き下げるためには、どのような方策が考えられますか?

出資持分の定めのある医療法人の出資の評価は、取引相場のない株式の評価方法に準じて計算しますので、出資金評価額を引き下げるためには、
退職金の支給や、生命保険の加入、不動産購入などがあげられます。
ただし、評価額を引き下げることは医療法人の経営に悪い影響を及ぼす場合がありますので、専門家と連携し、相続税対策のために病院経営が立ち行かなくならないように提案します。

出資持分のない医療法人への移行に際しての、税制上の特例を教えてください。

持分なし医療法人への移行を検討する医療法人は、令和5年9月30日までに移行計画を厚生労働省へ申請し、認定を受けることで、

相続人が「持分あり医療法人」の持分を相続または遺贈により取得した場合、移行計画の期間満了まで相続税の納税が猶予され、持分を放棄した場合は、猶予税額が免除されます。

また、出資者が持分を放棄したことにより、他の出資者の持分が増加することで、贈与を受けたものとみなして他の出資者に贈与税が課される場合も納税が猶予され、持分を放棄した場合は、猶予税額が免除されます。

さらに、移行計画に基づき「持分なし医療法人」へ移行した場合、出資者の持分放棄に伴う法人贈与税については、非課税となります。

留意点を教えてください。

移行計画の認定を受けた医療法人は、認定の日から3年以内に「持分なし医療法人」へ移行すること。移行しない場合は認定が取り消されて、遡及して課税されます。

移行完了後6年間は、毎年「持分なし医療法人」の運営状況を厚生労働省へ報告すること。

納税猶予期間に出資持分の一部または全部の払戻を受けた場合は、猶予税額は免除されず、猶予税額と利子税を併せて納付しなければなりません。


Xクリニックの第三者への承継や、M&Aによる持分の譲渡についてどのようにアドバイスしますか?

M&Aによる持分譲渡のメリットは、手続きが簡単なところです。株式会社の株式譲渡のように持分を譲り渡すだけなので、持分譲渡側と持分譲受側が納得していれば、手続きが短期間かつスムーズに完結します。理事などの変更登記で基本的な手続きも完了するため、手続き自体が分かりやすいという点もメリットです。

医療法人の運営においても、譲渡対象の持分はそのまま受け継がれるため、医療法人の運営自体が劇的に変わるわけではありません。
医療法人の病院はそのままのかたちで運営でき、医師の異動といった人事も基本的に発生しませんので、医療法人や病院をそのままのかたちで運営したい場合に適しています。

ただし、持分なし医療法人の場合、出資持分がないため持分の譲渡によるM&Aができません。
出資持分のない医療法人へ移行したあとは、持分のある医療法人へ後戻りできないため、持分なし医療法人への移行を含めアドバイスします。


相続税評価額の軽減について、どのような方策が考えられますか?

小規模宅地等の評価源の適用が考えられます。

長男Cさんは、4年前から理事としてXクリニックに勤務しているので、長男Cさんが相続し、Xクリニックの事業用地として継続利用することにより「特定同族会社事業用宅地等」として小規模宅地等の評価減が適用できます。

ただし、Xクリニックが、「持分なし医療法人」へ移行していた場合には、「特定同族会社事業用宅地等」としての要件を満たさないため注意が必要です。


円滑な遺産分割を行うためには、どのような方策が考えられますか?

遺言書を作成すること。
Yビルの家賃収入を代償金とした代償分割を提案します。

今回のケースで、Aさんは、Yビルの土地および建物を長男Cさんに相続させたいと思っています。
長男Cさんが、相続財産の多くを相続すると、長女Dさんの不満が出る可能性があるので、生命保険の活用や生前贈与、Yビルの家賃収入を代償金とした代償分割を提案します。

遺言書の種類や留意点について教えてください。

遺言書を作成する場合、相続人が争うことのないように遺留分に考慮して作成することが望ましいです。

遺言の種類には普通方式として「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、一般的には公正証書遺言、自筆証書遺言で作成されます。

自筆証書遺言保管制度について教えてください。

自筆証書遺言を法務局に保管できる制度で、保管されている遺言書は家庭裁判所の検認が不要になり相続人等の中で誰か一人でも遺言書情報証明書の交付を受けたり、遺言書の閲覧をした場合には、その他の全ての相続人等に対して遺言書が保管されている旨の通知が届きます。

しかし、証人がいないので自筆証書遺言の内容の有効性が争われたり、代理人では保管の申請はできず必ず本人が法務局に出向く必要があるので注意が必要です。


⒋ 最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

⑴顧客利益の優先、⑵守秘義務の遵守、⑶顧客に対する説明義務、⑷インフォームドコンセント、⑸コンプライアンスの徹底、⑹FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

Aさんは、そろそろ引退して長男Cさんに後を譲るつもりでいるが、長男CさんはXクリニックを継ぐのは先に延ばしてほしいとの考えなので、医療承継に対する考え方がまとまっていません。
一つ一つ制度の内容や適用効果を説明することだけでなく、ご家族と一緒に理解状況を確認しながら、寄り添ったわかりやすく丁寧な説明を行い、必ず同意を得て提案することを重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、医業承継に関する設例でした。

最近のPart1の設例は、M&Aに関する設例が多かったのですが、今回は、医療法人+M&Aという設例なので、実際に受験した方は、戸惑われた方も多かったのではないでしょうか。

学科試験では、あまり勉強することのない分野ですが、「合格ターゲット FP技能士特訓テキスト」にも記載してありますので、一度目を通しておくとよさそうですね。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。