2022年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年10月1日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

開催年度別に3回分を一冊にまとめたPDF版はこちら

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。

それでは、設例をお読みください。

2022年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年10月1日)

 都内の会社に勤務しているAさん(56歳)は、首都圏近郊のK市内にある甲土地上の戸建て住宅に妻Dさん(55歳)と母親Bさん(84歳)との3人で暮らしている。1人息子である長男Eさん(30歳)は、都内の賃貸マンションに暮らし、都内で居酒屋を経営している。

 Aさんの家は代々農家であったが、父親が亡くなった10年前に農業を廃業し、乙土地以外の農地はすべて処分した。この際、Aさんの家は農業委員会が管理する農地基本台帳(現農地台帳)から削除され、農地を取得できる、いわゆる農家資格を喪失している。

 甲土地(地積1,152m²、地目:宅地)と乙土地(地積960m²、地目:畑)は、現在、Aさん、母親Bさん、姉Cさん(58歳)の3人で所有している(<資料1>参照)。なお、もともと甲-2部分(地積576m²)には実家があったが、父親の死亡後に取り壊し、Aさんが甲-1部分(地積288m²)に、姉Cさんが甲-3部分(地積288m²)にそれぞれ自宅を建てて居住している。また、乙土地では、母親Bさんが野菜を栽培しており、Aさん、姉Cさんも休みを利用して野菜作りを手伝っているが、自家用であり、いずれもいわゆる農業従事者ではない。

 先日、Aさんのもとに、M銀行から、8年前にAさんと締結している債務保証契約に基づき、現在債務不履行となっている長男Eさんの会社の借入金残額および未払利息等の合計4,000万円を早急に支払うようにという債務履行請求が届いた。驚いたAさんが長男Eさんに連絡したところ、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて会社の経営が破綻し、会社・個人ともに返済が不可能となり、会社の破産および長男Eさん自身の自己破産を考えているとのことである。事情を理解したAさんは、保証債務を履行して借入金を肩代わりするつもりだが、手元資金が少ないため、土地の一部を売却して返済資金を捻出することにした。

 母親Bさん、姉Cさんとの相談の結果、共有物の分割によって乙土地の共有関係を解消し、<資料2>のように、Aさんが乙-2部分(地積240m²)を、母親Bさんが乙-1部分(地積720m²)を、姉Cさんが甲-5部分(地積240m²)をそれぞれ単独所有とし、Aさんが乙-2部分を売却することで合意した。乙-2部分について地元の不動産業者に尋ねたところ、「今は建売業者が仕入れを強化しており、4,300万円程度で売却できると思います。ただ、地目が畑になっているので、現状のままでは農地法第3条の許可が必要となる共有物の分割は難しいと思います」とのことである。

 なお、母親Bさんは、3年前に転倒して大腿骨を骨折して以来、野菜作りの作業に負担を感じており、これを機に乙土地での野菜作りをやめようかと考えている。

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. 現時点で乙-2部分をAさんの単独所有とするには、どのような方法がありますか。
  3. 現時点で甲-5部分を姉Cさんの単独所有とするには、どのような方法がありますか。
  4. Aさんが乙-2部分を売却した場合の課税関係はどうなりますか。
  5. Aさんの意向を踏まえ、Aさんにどのようなアドバイスをしますか。
  6. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
相続税対策はしているか。
M銀行との債務保証契約の内容や、長男Eさんの会社の経営・財務状況などを確認します。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況などを、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 周辺の取引事例を地元の不動産業者等で確認し、提案は妥当かを確認します。


現時点で乙-2部分をAさんの単独所有とするには、どのような方法がありますか?

現時点で乙-2部分をAさんの単独所有とするには、共有者それぞれの持分に応じ土地を分筆して単独所有とする方法があります。

どのような手続が必要ですか?

乙土地は市街化区域内の畑となっており、市街化区域内の農地等を転用する場合は、事前に農業委員会に届出をすれば、許可を受けなくてもよいことになっています。

市街化調整区域内の農地等を転用する場合は、どのような手続が必要ですか?

市街化調整区域の農地を転用する場合は、農地法第4条と第5条の規定により農業委員会に申請して、県知事の許可が必要で、4ヘクタールを超える場合は農林水産大臣の許可が必要です。


現時点で甲-5部分を姉Cさんの単独所有とするには、どのような方法がありますか?

姉Cさんは、乙土地の持分4分の1の代わりに、甲-5部分を取得することになるので、一定の条件を満たしていれば、固定資産の交換の特例を適用して甲-5部分を単独所有とする方法があります。

固定資産の交換特例が適用できる要件を教えてください。

交換する資産は、いずれも固定資産で、同種類の資産であること。
交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
取得する資産を、交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
交換により譲渡する資産の時価と交換により取得する資産の時価との差額が、いずれか高い方の時価の20%以内であることです。


Aさんが乙-2部分を売却した場合の課税関係はどうなりますか。

譲渡所得税の対象となり、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対して税率をかけて計算します。

譲渡所得が発生した時に計算に用いる税率は、その不動産を保有し始めてから売却するまでの期間の長さによって変わります。

譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年以下の土地や建物を売却した場合は短期譲渡所得となり、復興特別所得税を含む所得税の税率は30.63%、住民税の税率は9%となります。

また、譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超える土地や建物を売却した場合は長期譲渡所得となり、復興特別所得税を含む所得税の税率は15.315%、住民税の税率は5%となります。

今回のケースでは、保証債務を履行して借入金を肩代わりするつもりでしたが、手元資金が少ないため、土地の一部を売却しています。

保証債務を履行するために乙-2部分を売却した場合には、肩代わりをした債務のうち、回収できなくなった金額、保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額、譲渡した不動産の譲渡益の額のうち、一番低い金額を譲渡所得の計算上、所得がなかったものとする特例があります。

保証債務の履行に係る譲渡所得の特例の要件を教えてください。

不動産を譲渡する時点で、保証債務契約が有効に成立していること。
保証債務の履行義務の発生後、資産の譲渡により保証債務を履行したこと。
保証債務の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこと。
この3つの要件すべてに当てはまることが必要です。


Aさんの意向を踏まえ、Aさんにどのようなアドバイスをしますか?

乙土地に関しては、共有者それぞれの持分に応じて土地を分筆し単独所有とし、農地転用後に売却するようにアドバイスします。

他にはありませんか?

母親Bさんが所有する乙-1部分は、野菜作りの作業に負担を感じており、これを機に乙土地での野菜作りをやめようかと考えているので、相続対策も踏まえた乙-1部分の有効活用を検討するようにアドバイスします。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、地目変更登記については土地家屋調査士に、
農地転用の申請は行政書士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、共有名義の解消、農地転用、固定資産の交換特例に関する設例でした。

農地転用や、市街化区域内の農地を他の農業者に農地として譲渡する場合、市街化調整区域内の農地を取得する場合などは、2021年1月の学科試験(基礎編)でも出題されているので、直前の学科試験問題も要チェックですね。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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