ファイナンシャル・プランナーMさんの架空相談日記 〜在職老齢年金の説明編〜

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公開日 2021年8月1日 最終更新日 2021年8月1日

X社に勤めるAさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに何かと相談します。

FP試験に登場する場面を、こんなやりとりなのかなぁと勝手に想像し、相談者Aさんへのアドバイスをもとに、FP1級試験合格を目指すNさんへ試験問題をわかりやすく解説します。

FP1級試験の主な登場人物紹介

    Profile  

ファイナンシャル・プランナー Mさん

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
AさんやX社からの相談が多く、後輩のNさんにFP1級試験のアドバイスをしています。

    Profile  

教わる人 Nさん

   

FP2級技能士。
FP1級試験を受験するも、72点で惨敗。次の試験で合格するため勉強中!

    Profile  

A分野のAさん

   

X株式会社勤務。60歳前後が多い。
大学生の間は国民年金を納めていなかったり、再雇用や独立したりする。妻はだいたい年下。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(55歳)は、妻Bさん(53歳)との2人暮らしである。X社は、65歳の定年制を採用しているが、再雇用制度が設けられており、その制度を利用して同社に再雇用された場合、最長で70歳まで勤務することができる。Aさんは、定年退職後の働き方を検討する前提として、公的年金制度からの老齢給付や雇用保険からの給付について知りたいと思っている。
また、Aさんは、現在入院中の母Cさん(78歳)が退院後に介護が必要となることから、介護休業を取得した場合の雇用保険からの給付についても知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

私も55歳になり定年後の人生を考えているんですけど、私が勤めるX社の定年は65歳なんですが、再雇用制度で70歳まで働けるんですよ。
定年で退職するか、再雇用で70歳まで働くか迷っているんで、再雇用制度を利用して70歳まで勤務した場合、年金はいくらもらえるか教えてもらえますか?

これからもX社で働き続けたいんですね。
働きながら年金を受けると、在職老齢年金の仕組みにより、年金額が支給停止(全部または一部)になることがあります。
2021年度5月実施のFP1級学科試験〈応用編〉の《問52》を参考に在職老齢年金を説明しますね。


Aさんが65歳以降もX社に勤務し老齢厚生年金を受けると、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が ①470,000 円(支給停止調整額、2020年度価額)を超える場合、報酬比例部分の額の一部または全部が支給停止となります。

総報酬月額相当額ってなんですか?

総報酬月額相当額とは、毎月の標準報酬月額(賃金)とその月以前1年間の ②標準賞与額 (賞与)を12で割った額です。

基本月額ってなんですか?

年金額(年額)を12で割った額です。

Aさんが65歳以降もX社に勤務し、Aさんの老齢厚生年金の報酬比例部分の額に基づいて計算した基本月額が12万5,000円、総報酬月額相当額が37万円であるとすると、支給される老齢厚生年金の報酬比例部分の額(月額)は ③112,500 円となります。

質問! Mさん、支給停止額ってどうやって計算するんですか?

在職老齢年金は60歳以上65歳未満の場合と、65歳以上の場合で計算方法が違うので分けて説明しますね。

65歳以上の在職老齢年金 

CASE
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下のとき

支給停止額=0円(全額支給)

CASE
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超えるとき
 

支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額−47万円)× 1 2×12

60歳以上65歳未満の在職老齢年金 

CASE
基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以下のとき

支給停止額=0円(全額支給)

CASE
基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円以下のとき
 

支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額−28万円)× 1 2 ×12

CASE
基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円を超えるとき
 

支給停止額={(47万円+基本月額−28万円)× 1 2 +(総報酬月額相当額−47万円)}×12

CASE
基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が47万円以下のとき
 

支給停止額=総報酬月額相当額× 1 2 ×12

CASE
基本月額が28万円を超え、総報酬月額相当額が47万円を超えるとき
 

支給停止額={47万円× 1 2 +(総報酬月額相当額−47万円)}×12


ん〜。暗記するところが多くて、なんだか難しそうです。

一見難しそうだけど、FP1級学科試験の在職老齢年金額の問題は、計算途中で年額と月額を混同しないこと、年金支給額を求められているのか、支給停止額を求められているのか、問題文をよく読むことがポイントです。

年金支給額までは3ステップで計算します。

65歳以上の在職老齢年金 

STEP
基本月額を計算する

基本月額=年金額÷12

STEP
支給停止額を計算
 

支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額−47万円)× 1 2×12

STEP
年金支給額を計算
 

年金支給額=年金額−支給停止額


計算式は分かったんですけど、結局いくらもらえますか?

それでは、2021年度価額に基づいて、Aさんの合計収入(月額)を計算してみましょう。

    Aさんに関する資料 2021年度5月 FP1級試験《問52》より抜粋 ※2021年度価額で計算。  

Aさん(本人)

1965年11月5日生まれ


X社の給料(65歳以降)

  • 総報酬月額相当額:37万円

老齢厚生年金の報酬比例部分の額

  • 基本月額:12万5,000円



出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
《問1》空欄①〜②に入る最も適切な数値はどれか?

支給停止額 ① 円=(総報酬月額相当額+基本月額− ② 万円)× 1 2×12

《問2》空欄①〜②に入る最も適切な数値はどれか?

年金支給額 ① 円=年金額−  ② 


なるほど! よくわかりました!

年額だったり、月額だったり紛らわしいですね。

在職老齢年金の計算問題は、穴埋め問題での出題がほとんどです。
計算過程を書く必要はないけど、年額なのか月額なのか計算間違いする可能性があるので、普段の勉強から計算過程をわかりやすく書くようにしましょう。

加給年金が加算されいる場合や、60歳以上65歳未満の方は、高年齢雇用継続給付を受けるときの出題もあるので合わせて覚えましょう。

加給年金と在職老齢年金

CASE
加給年金額が加算されている場合

加給年金額を除いて在職老齢年金を計算します。

CASE
老齢厚生年金が支給(一部支給)されている場合

加給年金額は全額支給されます。

CASE
老齢厚生年金が全額支給停止される場合
 

加給年金額も全額支給停止となります。

高年齢雇用継続給付と在職老齢年金

POINT
高年齢雇用継続給付とは

雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の方の賃金額が60歳到達時点と比べて75%未満になった場合、最高で賃金額の15%相当額が雇用保険から支払われます。

POINT
年金を受けながら高年齢雇用継続給付を受ける場合

在職による年金の支給停止だででなく、さらに年金の一部(最高で標準報酬月額の6%)が支給停止されます。

CASE
基本月額10万円、60歳以降の賃金額が月額35万円から月額20万円に下がった場合
 
  1. 支給停止額=(総報酬月額相当額・20万円+基本月額10万円−28万円)× 1 2×12=12万円[月額1万円]
  2. 高年齢雇用継続給付による支給停止額=標準報酬月額・20万円×6%=12,000円[月額]
  3. 高年齢雇用継続給付額=賃金・20万円×15%=3万円[月額]

基本月額10万円のうち、在職による支給停止額と高年齢雇用継続給付による支給停止額を合わせた22,000円が支給停止になり、賃金20万円に高年齢雇用継続給付の3万円が足され、月額308,000円が合計の収入になります。


在職老齢年金の説明と計算問題の解説でした。

FP1級試験応用編の在職老齢年金の問題は、過去6回開催された試験のうち2019年5月、2021年5月の2回出題されています。
60歳代前半のケースと65歳以降のケースのどちらも出題されますが、計算過程を書く問題ではないので、配点は1つ正答で1点〜2点と予想されます。

計算問題としてではなく、穴埋め問題として出題されることが多いので、計算式だけでなく仕組みも理解し、確実に得点を取りましょう。

難関試験のFP1級学科試験ですが、知っておくと役に立つくことばかりですので、楽しみながら頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。