ファイナンシャル・プランナーMさんと学ぶFP1級試験勉強 〜継続雇用と老齢年金編〜

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のKindle版セット版を制作しました。

公開日 2021年7月31日 最終更新日 2021年11月10日

X社に勤めるAさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに何かと相談します。

FP試験に登場する場面を、こんなやりとりなのかなぁと勝手に想像し、相談者Aさんへのアドバイスをもとに、FP1級試験合格を目指すNさんへ試験問題をわかりやすく解説します。

FP1級試験の主な登場人物紹介

    Profile  

ファイナンシャル・プランナー Mさん

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
AさんやX社からの相談が多く、後輩のNさんにFP1級試験のアドバイスをしています。

    Profile  

教わる人 Nさん

   

FP2級技能士。
FP1級試験を受験するも、72点で惨敗。次の試験で合格するため勉強中!

    Profile  

A分野のAさん

   

X株式会社勤務。60歳前後が多い。
大学生の間は国民年金を納めていなかったり、再雇用や独立したりする。妻はだいたい年下。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(55歳)は、妻Bさん(53歳)との2人暮らしである。X社は、65歳の定年制を採用しているが、再雇用制度が設けられており、その制度を利用して同社に再雇用された場合、最長で70歳まで勤務することができる。Aさんは、定年退職後の働き方を検討する前提として、公的年金制度からの老齢給付や雇用保険からの給付について知りたいと思っている。
また、Aさんは、現在入院中の母Cさん(78歳)が退院後に介護が必要となることから、介護休業を取得した場合の雇用保険からの給付についても知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

私も55歳になり定年後の人生を考えているんですけど、私が勤めるX社の定年は65歳なんですが、再雇用制度で70歳まで働けるんですよ。
定年で退職するか、再雇用で70歳まで働くか迷っているんで、定年退職して再就職しない場合、年金はいくらもらえるか教えてもらえますか?

できれば65歳で退職して働きたくないんですね。
わかりました。2021年度価額に基づいて、老齢基礎年金額と老齢厚生年金額を説明します。


まず、老齢基礎年金額ですが、次の計算式で求めます。

老齢基礎年金額=780,900円× 保険料納付済期間 480月

質問! Mさん、保険料納付済期間ってどうやって調べるんですか?

FP1級試験の場合、設例の〈Aさんの家族に関する資料〉欄を見ると、Aさんの公的年金の加入歴って書いてあるので、そこで調べることができます。

※大学生の期間、国民年金に任意加入していない設例が多いので、その月数を480月から引いて計算する問題がよく出ます。

満額の年金額、780,900円は年度ごとに変わるけど、FP試験の場合5月試験までは昨年度の金額で、9月試験からが新年度の年金額に変更になるので気をつけましょう。

※テキストや問題集も5月試験の後に、新刊が発売されます。


じゃあ、老齢厚生年金はいくらもらえますか?

老齢厚生年金額ですが、次の3ステップで計算します。

STEP
報酬比例部分の計算(①と②の合計)

①平均標準報酬月額× 7.125 1,000×総報酬制導入前の被保険者期間の月数(2003年3月まで)

②平均標準報酬額× 5.481 1,000×総報酬制導入後の被保険者期間の月数(2003年4月以降)

STEP
経過的加算額の計算
 経過的加算額=定額部分の額ー老齢基礎年金相当額
STEP
加給年金の要件をチェック
 支給要件、支給停止要件をそれぞれチェック

詳しく解説します。

1

報酬比例部分の計算
 

2003年4月に総報酬制が導入されたので、2003年3月までとそれ以降に分けて計算しましょう。

FP試験では、問題文の〈条件〉欄に「被保険者期間」「平均標準報酬月額および平均標準報酬額」が記載されているので式に当てはめるだけで計算できます。

 

次に、経過的加算額を計算し、報酬比例部分に加えます。

2

経過的加算額の計算
 

経過的加算額とは、定額部分と老齢基礎年金の差額です。

定額部分=1,628円×厚生年金の被保険者期間の月数(※20歳未満や60歳以上の被保険者期間も含みますが上限は480月です)

 

経過的加算額=1,628円×被保険者期間の月数

−780,900円× 20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数 加入可能年数×12

最後に、要件を満たしている場合は加給年金額を加えます。

3

加給年金の支給要件
厚生年金の被保険者期間 厚生年金の加入期間が20年以上ある
生計維持されている配偶者、子供の要件 配偶者の要件 年齢:65歳未満 年収:850万円未満
子の要件 18歳到達年度の末日(障害等級1・2級の場合20歳未満)
支給停止になる主な要件 配偶者が被保険者期間20年以上の厚生年金や共済年金、障害年金を受給するとき
配偶者が65歳になったとき

ん〜。暗記するところが多くて、なんだか難しそうです。

一見難しそうだけど、FP1級学科試験の年金額の計算問題は、設例や条件に数値や計算式が記載されているので、要点を抑えて覚えるのがポイントです。


計算式はいいんですけど、結局いくらもらえますか?

それでは、2021年度価額に基づいて、Aさんの年金額を計算してみましょう。

    Aさんの家族に関する資料 2021年度5月 FP1級試験《問51》より抜粋 ※2021年度価額で計算。  

Aさん(本人)

1965年11月5日生まれ


公的年金の加入歴

  • 1985年11月から1988年3月までの大学生であった期間(29月)は国民年金に任意加入していない。
  • 1988年4月から現在に至るまで厚生年金の被保険者である(過去に厚生年金基金の加入期間はない。

  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    ・総報酬制導入前の被保険者期間 : 180月
    ・総報酬制導入後の被保険者期間 : 331月(65歳到達時点)
  2. 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(65歳到達時点、2020年度再評価率による額)
    ・総報酬制導入前の平均標準報酬月額 : 36万円
    ・総報酬制導入後の平均標準報酬額 : 55万円
  3. 報酬比例部分の給付乗率
    ・総報酬制導入前の乗率 : 1,000分の7.125
    ・総報酬制導入後の乗率 : 1,000分の5.481
  4. 経過的加算額

    1,628円×被保険者期間の月数

    −□□□円× 20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数 加入可能年数×12


    ※「□□□」は、問題の性質上、伏せてある。
  5. 加給年金額
    39万500円(要件を満たしている場合のみ加算すること)


Bさん(妻)

1967年6月21日生まれ


公的年金の加入歴

  • 1986年4月から1991年4月までの厚生年金保険の被保険者である。
  • 1991年5月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。



出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
[qsm quiz=5]

なるほど! よくわかりました!

空欄を埋めるように、計算過程を書いていくとわかりやすいですね。

年金額の計算問題は、計算過程を書く問題がほとんどです。
計算過程をきれいに書くことで、計算間違いで答えがあっていなくても部分点がもらえる可能性があるので、普段の勉強から計算過程をわかりやすく書くようにしましょう。

STEP
老齢基礎年金額の計算

780,900円× 保険料納付済期間 480月=老齢基礎年金額

STEP
報酬比例部分の計算(①と②の合計)

①平均標準報酬月額× 7.125 1,000×総報酬制導入前の被保険者期間の月数(2003年3月まで)

②平均標準報酬額× 5.481 1,000×総報酬制導入後の被保険者期間の月数(2003年4月以降)

STEP
経過的加算額の計算
 

経過的加算額=1,628円×被保険者期間の月数

−780,900円× 20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数 加入可能年数×12

STEP
加給年金の要件をチェック
 支給要件、支給停止要件をそれぞれチェック
老齢基礎年金の保険料免除期間があれば保険料納付済期間に加えます

保険料免除期間 4 4 3 4 2 4 1 4
2009年3月31日以前 2 6 3 6 4 6 5 6
2009年4月1日以降 4 8 5 8 6 8 7 8

覚え方は、2009年3月31日以前の全額免除期間から2、3、4、5と時計回りで分子に数字を記入し、5の分母を6にしたら2009年4月1日以降の分子を7、6、5、4と記入し分母に8を記入すると、順番通り記入できます。


老齢基礎年金額と老齢厚生年金額の計算問題の解説でした。

FP1級試験応用編の老齢年金の計算問題は、過去6回開催された試験のうち2019年5月、2020年1月、2020年9月、2021年5月の4回出題されていて、配点は6点〜8点と予想されます。

計算過程の部分点も期待できますので、確実に得点を取りましょう。

電卓のM+M−MRを活用すると計算がしやすくなります。

難関試験のFP1級学科試験ですが、知っておくと役に立つくことばかりですので、楽しみながら頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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