2024年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2024年6月15日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、大きめの書店でもテキストを見かけることは滅多にありません。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。

それでは、設例をお読みください。

2024年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2024年6月15日)

●設 例●
 Aさん(65歳)は、個人で25年前に開業した動物病院を経営している獣医師である。飼い主とその大切な家族であるペットに寄り添う診療を常に心がけることで、地域の顧客と良好な信頼関係を築いており、昨今のペットブームも相まって、業績は順調に推移している。妻Bさん(62歳)は、青色事業専従者として動物病院の経理業務を担当している。

 先日、Aさんは、同業の知人から「法人を設立すれば所得税や将来の相続税の負担を軽減することができるらしい」との話を聞いた。ここ数年、Aさんの年間所得は3,000万円を超えており、効果があるのであれば前向きに検討したいと思っている。

 また、Aさんは、地元の不動産業者から、所有しているアスファルト敷きの月極駐車場用地にテナントビルを建築する提案を受け、検討を進めているが、テナントビルを建築する場合、その名義は個人と法人のどちらがより望ましいのか判断がつかないでいる。

 

 Aさんには、長男Cさん(35歳)と長女Dさん(33歳)の2人の子がいる。長男Cさんも獣医師であり、別の動物病院に約10年間勤務した後、今年からAさんの動物病院で働いている。Aさんは、そろそろ長男Cさんに事業を引き継ぐ準備を始めたいと考えており、土地建物を含めた事業用資産をどのような方法で引き継げばよいのか、今のうちに整理しておきたいと思っている。

 また、Aさんは、出版社に勤務し賃貸マンションで夫と子の3人で暮らしている長女Dさんから、分譲マンションを購入して住み替えることを考えているとの話を聞き、その援助をしてやりたいと思っている。

 

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

現預金 2億3,800万円  
自宅      
  ①土地(200m²) 3,000万円  
  ②建物(築30年) 1,000万円  
動物病院      
  ①土地(300㎡) 7,000万円  
  ②建物(築25年) 2,000万円  
事業用資産 1,000万円 (建物以外の減価償却資産)
月極駐車場(400㎡) 1億2,000万円  
X社株式 200万円  
  合計 5億円  


 ※X社株式は、Aさんの知人であるEさんが経営する非上場会社の株式で、その設立時に出資したもの(Eさん80%、Aさん20%)である。先日、EさんからX社株式を買い取りたいとの申し出があった。
※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億3,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている

 

【Aさんの家族構成】

妻Bさん (62歳):青色事業専従者。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(35歳):獣医師。賃貸マンションに住んでいる。
長女Dさん(33歳):会社員。夫と子の3人で賃貸マンションに住んでいる。

 

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2024年6月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

 

相談内容として

  • 所得税や相続税の負担を軽減するために法人の設立を検討している。
  • テナントビルを建築する場合の名義は、個人と法人のどちらが望ましいか。
  • 土地建物を含めた事業資産の引き継ぎ方法。
  • 分譲マンション購入の援助。

問題点は、

  • 相続税が高額になるので相続税の軽減。
  • 納税資金の確保。
  • 円滑な遺産分割を行うための対策が必要です。
 

それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

法人を設立することで税負担を軽減できる仕組みについて教えてください。

個人と法人の税率の違いから、所得が多いと法人を設立する方が税率が低くなるからです。

個人と法人の、税率の違いについて教えてください。

個人の所得税は、所得が高いほど税率が高くなる超過累進税率で課税され、最高税率が課せられると、住民税等を含めて50%を超える税率になります。

法人を設立した場合、法人税と住民税等を含めた実効税率は高い場合でも33%前後なので、所得が多い場合は法人を設立する方が税率が低くなります。

法人を設立した場合のメリットを教えてください。

法人の事業活動において支出されているものであれば、全て経費に認められること。
相続時に分割がしやすくなること、
家族を役員などにして所得を役員報酬という形で家族に分散することができるので相続税額の軽減効果があります。

法人を設立した場合のデメリットを教えてください。

デメリットは、事業が赤字の場合でも税金がかかること。
事務手続きが煩雑になるので専門家に依頼すると費用がかかることです。

テナントビルを建築する場合の名義は、個人と法人のどちらがより望ましいと思いますか?

テナントビルを建築する目的や収益にもよりますが、
Aさんの目的が税負担の軽減であれば、建物の名義は法人の方が望ましいと思います。

法人が建築する場合には、家族を役員に就任させるとテナントビルの収入は会社を通じて家族に分散され、結果として、Aさんの所得税等の軽減に役立ち、毎年の税負担の軽減効果も期待できます。

テナントビルの名義を法人にする場合の注意点を教えてください。

個人の所有している土地の上に法人が建物を建てた場合には、一定の場合を除き、法人が個人から借地権部分の贈与を受けたものとして、借地権の認定課税が行われます。

借地権の認定課税を回避するためにAさんと管理会社の連名で「土地の無償返還に関する届出書」を提出することとします。


土地建物を含めた事業資産の引き継ぎは、どのような方法で引き継げばよいと思いますか?

個人版事業承継税制の活用を検討します。

個人版事業承継税制について教えてください。

個人事業者の後継者が、事業用資産を贈与または相続などで取得した場合に、一定の要件のもとで贈与税や相続税が猶予される制度です。

事業用資産とは、贈与や相続開始の前年分の事業所得にかかる青色申告書の貸借対照表に計上された資産のうち、400㎡以下の宅地や800㎡以下の建物のほか、減価償却資産で固定資産税の課税対象になるものです。

留意点を教えてください。

留意点は、
事前に「個人事業承継計画」を都道府県庁へ提出すること。
「継続届出書」を3年ごとに提出すること。
事業を廃止した場合や取得した財産を売却した場合は猶予された税額を納税する必要があります。
特定事業用宅地等の特例と併用することができないので、個人版事業承継税制とどちらが有利になるか専門家を交えてシミュレーションする必要があります。

さらに、個人版事業承継税制は、後継者である長男Cさんのみにメリットがあり、他の相続人にはメリットがありません。
そのため、メリット・デメリットを長女Dさんも含めて話し合い意思決定するように提案します。


長女Dさんへの分譲マンション購入の援助は、どのような提案をしますか?

相続時精算課税制度と住宅取得資金贈与の非課税制度を併用し、Dさんへ分譲マンション購入資金を贈与することをアドバイスします。

住宅取得資金贈与の非課税制度について説明してください。

Aさんから住宅取得資金として贈与を受けた場合、取得する住宅が省エネ等住宅の場合で1,000万円、それ以外の住宅の場合は、500万円まで非課税になります。

住宅取得資金贈与の非課税制度は、令和5年12月31日までの期限から、令和8年12月31日まで、3年延長されました。


最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

顧客利益の優先、守秘義務の遵守、顧客に対する説明義務、インフォームドコンセント、コンプライアンスの徹底、FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

法人を設立する場合、状況によって税負担など様々なパターンが考えられるので、一つ一つ制度の内容や適用効果を説明することだけでなく、ご家族と一緒に理解状況を確認しながら、寄り添ったわかりやすく丁寧な説明を行い、必ず同意を得て提案することを重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、法人の設立、収益不動産の名義、個人版事業承継税制、住宅取得等資金贈与の特例に関する設例でした。

個人版事業承継税制の適用を受けるための、事前手続きである個人事業承継計画の提出期限が令和8年3月31日までに延長されました。

住宅取得等資金の贈与の特例も、適用期限が令和8年12月31日まで3年延長されました。

延長や改正は頻出ですね。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Xにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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