2024年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2024年6月9日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、大きめの書店でもテキストを見かけることは滅多にありません。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。

動画はこちら

それでは、設例をお読みください。

2024年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2024年6月9日)

●設 例●
 Aさん(70歳)は、首都圏近郊のS市内の閑静な住宅街にある自宅で妻Bさん(66歳)と2人で暮らしている。Aさんは、大学卒業後に入社した大手上場企業で役員まで務めた後、子会社や関連会社の役員や社長などを歴任していたこともあり、経済的に余裕があり、生活は安定している。

 Aさんは、最近足腰が弱くなったと感じることが多くなり、自身の年齢を踏まえ、そろそろ自身の相続に備えておきたいと考えるようになった。数年前に知人が相続税の軽減のために不動産投資を行った話を聞いたことがあり、先日、不動産会社から勧誘を受けたタワーマンションの購入に少し興味を持っている。

 また、昨年、税制改正で話題となった生前贈与について早めに始めるのがよいのではないかと感じている。Aさんは、これまで株式や投資信託などによる資産運用を通じて金融や経済の仕組みについて学ぶことが多かったことから、長男Cさん(35歳)と長女Dさん(33歳)には、今年から始まったNISAを活用して投資を経験してほしいと思っている。

 

【Aさんの家族構成(推定相続人)】
妻Bさん (66歳):専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(35歳):会社員。妻と子の3人で社宅に住んでいる。
長女Dさん(33歳):音楽家。同業の夫と子の3人で夫所有の持家に住んでいる。

 

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

預貯金 1億6,000万円  
有価証券 2億円  
自宅      
  ①土地(400m²) 8,000万円  
  ②建物(築30年) 1,000万円  
  合計 4億5,000万円  


※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億1,000万円(配偶者の税額軽減、小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

 

【Aさんが勧められたタワーマンションの概要】

  • 鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)50階建て、総戸数700戸、最寄駅から徒歩5分
  • 築7年、40階に所在、専有面積70m²、2LDK、市場価格9,000万円
  • 想定賃料月額28万円、諸経費控除後の年間の収入(手取り)は210万円
  • マンション管理組合に支払う管理費は月額2万2,000円、修繕積立金は月額8,000円

 

 なお、Aさんは、役員時代から付き合いのある金融機関の担当者から「一時払終身保険を活用した相続対策はいかがですか」との提案を受けている。

 

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

親族関係図

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2024年6月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

 

相談内容として

  • 相続に備えておきたいと考えていること。
  • 不動産会社から勧誘を受けたタワーマンションの購入に少し興味を持っていること。
  • 生前贈与について早めに始めるのがよいのではないかと感じていること。
  • 長男Cさん(35歳)と長女Dさん(33歳)には、NISAを活用して投資を経験してほしいと思っていること。
  • 一時払終身保険を活用した相続対策はいかがですかとの提案を受けていること。

問題点は、

  • 相続税が高額になるので相続税の軽減対策。
  • 納税資金の確保。
  • 円滑な遺産分割を行うための対策が必要です。
 

それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

相続に備えておきたいとのことですが、不動産投資が相続税の軽減になる理由を説明してください。

不動産投資が相続税対策として活用できる理由は、賃貸不動産はその時価よりも相続税の計算対象となる相続税評価額が低いことや、小規模宅地等の特例が使えるからです。

賃貸不動産の相続税評価額はどのように計算しますか?

賃貸不動産の相続税評価額は、土地は貸家建付地として、自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で計算します。
更地の評価に比べ、借地権割合に借家権割合を掛けた分だけ評価が下がります。

建物は貸家として、 建物の固定資産税評価額 ×(1-借家権割合(30%)× 賃貸割合)で相続税評価を計算します。
元々、建物の相続税評価額は建築代金の6~7割で評価されていますが、貸家の場合はさらに評価減があるため、貸家の相続税評価額は建築代金の約50%になるといわれています。

小規模宅地等の特例について説明してください。

賃貸不動産の場合、貸付事業用宅地等としての要件を満たせば小規模宅地等の特例を利用することで、土地200㎡までにつき50%の評価減を受けることが可能です。

賃貸不動産の場合の要件を説明してください。

貸付業を相続人が引き継ぐこと。
相続税の申告期限まで貸付業を継続し、かつその土地を所有していること。
相続開始前3年以内に新たに貸付業を始めた土地でないことです。

相続税対策として、タワーマンションを購入する際の注意点を教えてください。

マンションの相続税評価方法が改正された点に注意が必要です。

マンションの相続税評価方法の改正内容について教えてください。

マンションの相続税評価方法の改正内容は、相続税評価額に市場価格を反映する指標として区分所有補正率が導入されました。

具体的な計算方法を説明してください。

具体的には、マンションの評価額と市場価格の乖離度を計算するために、築年数、総階数、部屋の所在地、敷地持分狭小度の4要素に基づいた評価乖離率を算出します。
そして、評価乖離率に基づく評価水準に応じて、現行の相続税評価額に区分所有補正率を掛けることで相続税評価額を算定します。

新たな評価方法の対象となるのは、全てのマンションが対象ですか?

新たな評価方法の対象は、タワーマンションに限らず、区分所有不動産で居住用部分があるものが対象です。
ただし、2階建て以下の低層マンションや二世帯住宅。
区分建物の登記がされていないもの。
事業用のテナント物件、1棟を所有している賃貸マンションなどは対象外です。

マンションの相続税評価方法が改正されたことによって、どのような影響がありますか?

マンションの相続税評価方法が改正されたことによって、現行の相続税評価額が市場価格を大きく下回る場合には、相続税評価額が市場価格の6割相当額まで引き上げられることになります。
逆に、現行の相続税評価額が市場価格を上回る場合には、相続税評価額が市場価格まで引き下げられることになります。


税制改正後、生前贈与について早めに始めるのがよいのではないかと感じているのは、どのような改正があったからだと思いますか?

2023年度の税制改正により、生前贈与加算の適用期間が延長されたことや、相続時精算課税制度の見直しがあったためだと思います。

生前贈与加算の適用期間の延長について説明してください。

今までは、亡くなる3年前までの贈与財産に対して全額が相続税の課税対象でした。
2023年度の税制改正により、2024年1月1日以降に生前贈与した場合は、亡くなる4~7年前の贈与財産に対しては100万円を除いた全額、亡くなる3年前までの贈与財産に対しては全額が相続税の課税対象となりました。

相続時精算課税制度の見直しについて教えてください。

今回の改正で相続時精算課税制度に、年110万円の基礎控除の枠が加わりました。
2024年1月1日以降、相続時精算課税制度を選択した人への贈与でも、年110万円までなら贈与税も相続税もかからず、贈与税の申告も不要になりました。


新NISA制度の変更点について教えてください。

NISA口座に関して、つみたてNISA・一般NISAのどちらかの口座のみ開設可能だったものが、つみたて投資枠・成長投資枠のどちらも同時併用できるように変わりました。

新NISA制度の拡充内容について教えてください。

年間投資枠が、つみたてNISAで40万円、一般NISAで120万円ですが、新NISAでは、つみたて投資枠で120万円、成長投資枠で240万円に拡大され、2つの投資枠合わせて最大で1,800万円まで利用することができます。

非課税期間がつみたてNISAは20年間、一般NISAでは5年間でしたが、新NISAでは口座開設期間も含め無期限になりました。


一時払終身保険に加入することが相続対策になるのはどうしてですか?

生命保険の保険金はあらかじめ指定された保険金受取人の固有財産となり、原則として遺産分割協議の対象外となり手続きがスムーズにできるからです。
また、相続人が受け取る死亡保険金のうち、500万円×法定相続人の数までは相続税の対象にならないので、相続税の軽減対策としても有効です。


最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

顧客利益の優先、守秘義務の遵守、顧客に対する説明義務、インフォームドコンセント、コンプライアンスの徹底、FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

相続や贈与に関しては改正内容も多く複雑な点もあるので、一つ一つ制度の内容や適用効果を説明することだけでなく、ご家族と一緒に理解状況を確認しながら、寄り添ったわかりやすく丁寧な説明を行い、必ず同意を得て提案することを重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、相続対策としての不動産投資(タワーマンションの購入)、生前贈与、新NISA制度、一時払い終身保険に関する設例でした。

令和5年度(2023年度)税制改正の内容が多く出題されています。

学科試験でも改正ものは頻出ですが、実技試験の場合はその年に施行された内容も要チェックですね。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Xにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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