2022年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験 Part2 (2023年2月12日) 過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

公開日 2023年6月17日 最終更新日 2023年12月20日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2022年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2023年2月12日)

●設 例●
 Aさん(65歳)は、三大都市圏近郊のM市内において、ターミナル駅から徒歩圏内にある甲土地(地積500m²)と乙土地(地積120m²)を所有し、乙土地上にある自宅で妻Bさん(60歳)と2人で暮らしている。1人息子である長男Cさん(35歳)は、隣のK市内にある自宅で妻子と暮らし、2年前に起業したIT関連の事業を営んでいる。

 甲土地は、5年前の父親の相続により取得したもので、父親の代からアスファルト敷きの月極駐車場として利用している。年間450万円程度の収入を得ているが、甲土地の固定資産税・都市計画税を毎年300万円程度支払っており、収益性は高くない。Aさんは、甲土地の収益性を高めたいと考えているが、自身が借入れをして建物賃貸事業を始める気はなく、これまでどおり土地の賃貸によって安定的な収益が得られる方法を望んでいる。

 なお、Aさんは、不動産のほかに金融資産を3,000万円程度有しており、親しい税理士によれば、現状の資産で約1,800万円の相続税が見込まれている。

 Aさんが甲土地について友人である地元不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地が所在するエリアは商業性が高く、良好な住宅地としても人気があることから、引合いは多いだろう」とのことであり、その言葉どおり、後日、社長を通じて、X社とY社の2社から定期借地契約による活用方法の提案を受けた。

 

【X社の提案内容】

  • 事業用定期借地権方式
  • X社(家電量販店)が甲土地上に店舗ビルを建築RC造4階建て、延べ面積1,500m²、建設費4億5,000万円
  • 借地期間40年、保証金4,000万円、年間地代800万円(X社は、甲土地に係る固定資産税・都市計画税を年間300万円程度と推定)
  • Aさんの希望に応じて建物譲渡特約付借地権を併用する対応も可能

 

【Y社の提案内容】

  • 一般定期借地権方式
  • Y社(不動産会社)が甲土地上に分譲マンションを建築し、平均販売単価80万円/専有面積(m²)で分譲する計画
    RC造7階建て、延べ面積1,500m²、専有(販売)面積1,300m²
  • 借地期間70年、権利金2,000万円、年間地代600万円(Y社は、甲土地に係る固定資産税・都市計画税を年間100万円程度と推定)
  • 年間地代の50%の70年分(総額2億1,000万円)を前払地代として支払可能

 

 Aさんは、甲土地の収益性を高めるとともに、安定的な運用により長男Cさんに相続したいと思っており、X社とY社の提案が所得税や将来の相続税にどのような影響を及ぼすか、FPであるあなたに相談することとした。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
    ①Aさんから直接聞いて確認する情報
    ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. 事業用定期借地権と一般定期借地権にはどのような違いがありますか。
  3. 保証金、権利金、前払地代として受け取った金銭は、所得税および相続税について、どのように扱われますか。
  4. X社の提案とY社の提案について、それぞれのメリットや留意点を教えてください。
  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
月極駐車場の契約内容。
安定的な運用とあるが、目的や具体的な利回りの希望などはあるか。
甲土地の活用について長男Cさんの意向も確認します。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 X社とY社の取引事例や財務状況を確認すること。
 周辺の取引事例を、地元の不動産業者等で確認し、X社とY社の提案は妥当かを確認します。


事業用定期借地権と一般定期借地権の違いを教えてください。

事業用定期借地権と一般定期借地権の違いは、借地上の建物用途や契約期間に違いがあります。

それでは、建物用途の違いについて説明してください。

事業用定期借地権の場合は、建物用途が事業用に限定されますが、一般定期借地権の場合、建物の用途制限はありません。

契約期間の違いについて説明してください。

事業用定期借地権の借地期間は10年以上50年未満ですが、一般定期借地権は最低期間が50年以上となっています。

他に違いはありませんか?

借地契約について事業用定期借地権の場合は、必ず公正証書で締結しなければいけないこととなっていますが、一般定期借地権は公正証書以外の契約書でも有効です。


保証金、権利金、前払地代として受け取った金銭は、所得税および相続税について、どのように扱われますか。

保証金として受け取った金銭は所得税について、どのように扱われますか。

保証金そのものには所得税はかかりませんが、預かった保証金の運用方法によっては課税関係が発生します。

課税関係が発生する場合は、どのような場合ですか?

保証金が、不動産所得や事業所得などの業務にかかる資金として運用されている場合や、預貯金、公社債、指定金銭信託、貸付信託等の金融資産に運用されている場合は課税はありません。

それ以外の場合は、保証金の額に適正な利率をかけた金額を、保証金を返還するまで各年分の不動産所得の収入金額に算入します。

相続税については、どのように扱われますか。

保証金は借地契約終了時には全額返還しなければなりませんので、債務控除の対象にはなりますが、保証金の全部が債務控除の対象となるのではなく、一定の計算方法で割り引いた金額しか控除の対象にはなりません。

権利金として受け取った金銭は所得税について、どのように扱われますか。

建物や構築物を所有するための借地権の設定の対価として受け取った権利金は、一般的には不動産所得になります。

不動産所得にならない場合はどのような場合ですか?

権利金が土地の時価の50%を超える場合には、譲渡所得として課税されます。

ただし、受け取った権利金がその土地の地代の年額の20倍に相当する金額以下であれば不動産所得となり、地代の年額の20倍を超える場合には、譲渡所得となります。

相続税については、どのように扱われますか。

権利金は借地契約終了時には返還義務は生じないので、債務控除の対象にはならず相続税の課税対象になります。

前払地代として受け取った金銭は所得税について、どのように扱われますか。

前払賃料⽅式で処理する要件を満たした場合は⼀時⾦として課税されず、設定した期間に応じ、不動産所得の各年分の収⼊⾦額に算⼊します。

相続税については、どのように扱われますか。

前払地代は返還義務が生じないので、債務控除の対象にはならず相続税の課税対象になります。


X社の提案とY社の提案について、それぞれのメリットや留意点を教えてください。

X社のメリットは、契約期間が40年なので、期間満了時には長男Cさんのライフプランにあった活用が考えられます。

X社の留意点を教えてください。

借地期間が40年になるため、その間に相続が発生すると、保証金の返還義務が長男Cさんに課されてしまうので注意が必要です。

Y社の提案について、メリットや留意点を教えてください。

Y社のメリットは、年間地代の50%の70年分(総額2億1,000万円)を前払地代として受け取ることができるため、甲土地を売却せずにまとまった金額を受領できます。

前払地代そのものには課税されず、前払地代で建物を取得した場合は、建物部分は減価償却しながら70年間運用できるので収益性の向上が期待できます。

Y社の留意点を教えてください。

留意点は、契約期間が70年と長期間になるので、Aさん家族やY社の状況が変化すること、自然災害等の発生などが考えられます。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、保証金、権利金、前払地代の課税関係と定期借地権に関する設例でした。

保証金権利金前払賃料
期間満了時に返還しなければならない金銭。土地所有者にとっては、長期に渡る債務となります。返還を要しない金銭。受け取った時に一括して収入となります。返還を要しない金銭。だたし、定期借地契約が解約になった場合には、未経過分は返還が必要となります。

定期借地権には、「一般的借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3つがあります。

項目一般的借地権事業用定期借地権建物譲渡特約付借地権
存続期間50年以上10年以上30年未満30年以上50年未満30年以上
利用目的限定なし事業用建物 (居住用は不可)限定なし
契約書式公正証書等の書面により契約必ず公正証書で契約する書面化は不要
借地関係の終了期間満了により終了期間満了により終了建物譲渡の時点で終了
契約更新、終了時の建物とその利用関係等以下の特約が可能
①更新しない
②建物再築に伴う相続期間の延長をしない
③建物買取請求権を行使しない
①更新不可
②建物再築に伴う存続期間の延長不可
③建物買取請求は不可
以下の特約が可能
①更新しない
②建物再築に伴う相続期間の延長をしない
③建物買取請求権を行使しない
①建物所有権は、譲渡により土地所有者に移転
②借地権者が使用していれば借家関係に移行

一般定期借地権は、主に分譲マンションなどで使われます。

事業用定期借地権は、コンビニやスーパー、家電量販店、ホームセンター、ドラッグストア、ロードサイド型店舗等で利用されます。

建物譲渡特約付借地権は、借地権終了時に古い建物を土地所有者が購入することは、あまりメリットがないので、建物譲渡特約付借地権は、ほとんど利用されていないのが実態です。

一般定期借地権と事業用定期借地権では契約終了時、建物は借地人によって取り壊され、更地返還されます。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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