2022年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験 Part2 (2023年2月11日) 過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

開催年度別に3回分を一冊にまとめたPDF版はこちら

公開日 2023年6月17日 最終更新日 2024年2月6日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2022年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2023年2月11日)

●設 例●
 Aさん(65歳)は、22年前、大学卒業後に勤務していた会社から、友人が経営するベンチャー 企業に役員として転職した。その会社が7年後に上場し、付与されていたストックオプションを行使し、在職中に1億円以上の金融資産を得た。65歳を区切りに先月退職し、現在は妻Bさん(65歳)と都内の分譲マンションで暮らしている。1人息子の長男Cさん(38歳)は、大学院卒業後、外資系IT企業に勤務して高い収入を得ている。

 Aさんの実家は、自宅から車で約90分の距離にある地方都市N市内にある。9年前に父親が、8年前に母親が相次いで亡くなり、父親の相続時には実家の近所にある旧街道沿いの甲土地を、母親の相続時には実家(土地建物)を、それぞれ姉と各2分の1の共有持分で相続した。また、3年前、その姉が病気で亡くなり、姉の唯一の相続人であった姪Dさん(42歳) が甲土地および実家の持分を相続した。
甲土地は、地元の不動産会社X社の社長の勧めで7年前にAさんが自己資金で甲建物(店舗)を建て、X社の仲介で飲食チェーン店Y社に賃貸している。実家については、空家になってから時折Aさんが行って管理していたが、退職したのを機にこれからは自宅と実家を交互に行き来し、畑仕事をしながら二拠点生活を楽しむつもりでいる。

 

【甲土地・甲建物の概要】

  • 土地:地積300m²、Aさんと姪Dさんが共有(持分各2分の1)、時価評価額2,000万円
  • 建物:鉄骨造平屋建て、築7年、延べ面積100m²、Aさんが単独所有
    固定資産税評価額700万円、税務申告上の償却後簿価1,000万円(推定時価評価額) 月額賃料16万5,000円(消費税込)、敷金90万円

 

【実家の概要】

  • 土地:地積400m²、非線引都市計画区域、時価評価額1,200万円
  • 建物:木造平屋建て、築30年、延べ面積80m²、固定資産税評価額240万円
  • 土地建物のいずれもAさんと姪Dさんが共有(持分各2分の1)

 

 姪Dさんは、2年前に離婚し、1人息子(12歳)と2人で暮らしているが、生活は苦しい状況である。Aさん家族は姪Dさんが小さい頃からよく一緒に旅行に行き、今でも長男Cさんは姪Dさんを姉のように慕っている。Aさんは、姪Dさんを支援してあげたいと思い、妻Bさん、長男Cさんに相談したところ、2人とも賛同してくれた。

 Aさんのプランは、姪Dさんが安定した収入を得られるように甲建物を姪Dさんに贈与することである。店舗の賃貸借に係る敷金返還債務については、姪Dさんに引き継いでもらえればと考えている。また、将来の自身の相続時にもめ事が起きないように、甲土地も姪Dさんの単独所有とし、その代わりに実家の土地建物をAさんの単独所有にしたほうが良いと思っている。ただ、どのようにすればよいのか考えがまとまっていない。

 Aさんは、姪Dさんへの贈与や共有状態の解消方法について、FPであるあなたにアドバイスを求めている。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
    ①Aさんから直接聞いて確認する情報
    ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. 姪DさんがAさんから甲建物の贈与を受けた場合、贈与税はどの程度と考えられますか。贈与税の計算の仕組みを教えてください。
  3. 甲土地を姪Dさんの単独所有とし、実家の土地建物をAさんの単独所有にするためには、どのような方法が考えられますか。
  4. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
飲食チェーン店Y社との契約内容。
相続対策はしているか。
妻Bさんや、長男Cさんの意向を確認します。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況などを、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを確認します。


贈与税の計算の仕組みを教えてください。

贈与税の計算の仕組みは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。

姪DさんがAさんから甲建物の贈与を受けた場合、贈与税はどのように計算しますか?

Aさんは店舗の賃貸借に係る敷金返還債務については、姪Dさんに引き継いでもらえればと考えています。
この場合、敷金返還義務も姪Dさんに移転することになり、税務上は負担付贈与となります。

負担付贈与の場合は、貸家の評価額が相続税評価額ではなく、時価になるので、
1,000万円-90万円(預かり敷金)=910万円が贈与税の課税価格になります。

負担付贈与を回避するためにはどのような方法が考えられますか?

預かっている敷金分の金額も贈与しておけば、敷金返還債務を引き継いでも負担付贈与には該当しなくなります。

この場合、贈与税はどのように計算しますか?

700万円(固定資産税評価額)×1×(1-30%(借家権割合))=490万円が贈与税の課税価格になります。

今回のケースで贈与税の税率は、一般贈与財産と特例贈与財産のどちらで計算しますか?

一般贈与財産で計算します。

特例贈与財産で計算するのはどのような場合ですか?

特例贈与財産で計算する場合は、財産の贈与を受けた年の1月1日現在において18歳以上の子や孫が、父母または祖父母から贈与を受けた場合です。


甲土地を姪Dさんの単独所有とし、実家の土地建物をAさんの単独所有にするためには、どのような方法が考えられますか?

甲土地のAさん所有部分と、姪Dさん所有の実家の土地建物部分とを交換する方法が考えられます。

固定資産の交換の特例は使えますか?

甲土地と、実家の土地建物との差額が、高いほうの価額の20%を超えるため使えません。

課税関係はどのように計算しますか?

交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が交換差金となり、交換差金に対して所得税が課税されます。

固定資産の交換特例が適用できる要件を教えてください。

交換する資産は、いずれも固定資産で、同種類の資産であること。
交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
取得する資産を、交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
交換により譲渡する資産の時価と交換により取得する資産の時価との差額が、いずれか高い方の時価の20%以内であることです。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、貸家を贈与した場合、一般贈与財産と特例贈与財産、固定資産の交換特例に関する設例でした。

土地建物の交換をしたときの特例の適用を受けるための要件

  1. 交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも固定資産であること。
    不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、特例の対象になりません。
  2. 交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
    この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備および構築物は建物の種類に含まれます。
  3. 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
  4. 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
  5. 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
    この用途については、次のように区分されます。
交換譲渡資産の種類区分
土地宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場または原野、その他
建物居住用、店舗または事務所用、工場用、倉庫用、その他用
  1. 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20パーセント以内であること。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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