2022年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part1 (2023年2月5日) 過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

開催年度別に3回分を一冊にまとめたPDF版はこちら

公開日 2023年6月4日 最終更新日 2024年1月9日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2022年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2023年2月5日)

●設 例●
 Aさん(70歳)は、大都市圏近郊のS市内において、ターミナル駅を中心とした商業地域内に甲土地と乙土地を所有し、個人で不動産賃貸業を営んでいる。甲土地上には賃貸マンションを建設して賃貸しており、立地が良好なことから空室はなく、年間5,000万円の家賃収入(不動産所得3,000万円)を得ている。乙土地は、アスファルト敷きの月極駐車場として利用しており、一定の収入を得ているが、乙土地の固定資産税・都市計画税の負担を考えると収益性は高くない。


 Aさんは、毎年の所得税の負担が大きいと感じており、何か軽減する方法がないかと考えていたところ、金融機関の担当者から「法人を設立して所得の分散を図ってはいかがですか。 その際には、ご融資を前向きに検討させていただきます」との話があり、興味を持っている。


 また、乙土地については、地元の不動産業者から「乙土地にテナントビルを建築しませんか。弊社は、30年間の一括借上げシステムを採用しており、安定した不動産所得を得られ、 相続対策上も有利になります」との提案を受けている。Aさんは、テナントビルを建築する場合、その名義は個人、法人のどちらがより望ましいのか判断がつかないでいる。

 

【資産承継について】

 Aさんは、S市内の戸建て住宅で妻Bさん(68歳)と二女Dさん(40歳)の3人で暮らしているが、築40年が経過して老朽化が進んでおり、今後リフォーム費用もかかることから、 戸建て住宅(土地建物、時価1億円)を売却して、駅近の分譲マンション(販売価格8,000万円)への住み替えを検討している。住み替えた分譲マンションは、ゆくゆくは二女Dさんに承継したいと思っている。


 また、賃貸不動産からの収入は、将来的には長女Cさん(44歳)、二女Dさんの2人が均等に得られるようにしておきたいと考えている。

 

【Aさんの家族構成(推定相続人)】

 妻Bさん (68歳):青色事業専従者。Aさんと自宅で同居している。
 長女Cさん(44歳):専業主婦。会社員の夫と子の3人で夫所有の持家に住んでいる。
 二女Dさん(40歳):会社員。Aさんと自宅で同居している。

 

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

  1 現預金 1億5,000万円  
  2 有価証券 1億円  
  3 自宅      
   ①土地(280㎡) 8,000万円  
   ②建物 500万円  
  4 賃貸マンション    
   ①甲土地(600㎡) 1億5,000万円  
   ②建物 8,000万円  
  5 月極駐車場(乙土地、700㎡)   1億6,500万円  
  合計 7億3,000万円  

 

※Aさんの相続に係る相続税額は、約2億3,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

 

相談内容として

  • 毎年の所得税の負担が大きいと感じており、何か軽減する方法がないか。
  • テナントビルを建築する場合、その名義は個人、法人のどちらがより望ましいのか。
  • 分譲マンションへの住み替えを検討している。
  • 住み替えた分譲マンションは、ゆくゆくは二女Dさんに承継したいと思っている。
  • 賃貸不動産からの収入は、将来的には長女Cさん、二女Dさんの2人が均等に得られるようにしておきたいと考えている

問題点は、

  • 納税資金不足が予想されるので、納税資金の準備。
  • 相続税が高額になるので相続税の軽減。
  • 円滑な遺産分割を行うための対策が必要です。
 

それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

Aさんは、毎年の所得税の負担が大きいと感じています。
何か軽減する方法がありますか?

資産管理会社を設立する方法があります。

資産管理会社を設立すると、所得税の負担が軽減されるのはどうしてですか?

個人と法人の税率の違いから、所得が多いと資産管理会社を設立する方が税率が低くなるからです。

個人と法人の、税率の違いについて教えてください。

個人の所得税は、所得が高いほど税率が高くなる超過累進税率で課税され、最高税率が課せられると、住民税等を含めて50%を超える税率になります。

資産管理会社では、法人税と住民税等を含めた実効税率は高い場合でも33%前後なので、所得が多い場合は資産管理会社を設立する方が税率が低くなります。

資産管理会社には、どのような形態がありますか?

資産管理会社の形態は、不動産所有方式、管理会社方式、サブリース方式があります。

不動産所有方式について教えてください。

不動産所有方式とは、所有する不動産を資産管理会社に売却し、管理会社が不動産を所有する形態です。
管理会社が土地と建物の両方を所有する形態と、建物だけを所有する形態があります。

土地と建物の両方を所有する形態の特徴を説明してください。

土地と建物の両方を所有する形態では、収益がすべて管理会社に入るためオーナーの財産が増えるのを抑える効果が大きくなります。
土地を売却する場合は、売買価格が相場からかけ離れている場合は、時価との差額に課税せれる場合があるので注意が必要です。

建物だけを所有する形態の特徴を説明してください。

建物だけを所有する形態では、土地を無償で管理会社に貸し付けると借地権の認定課税となる場合があります。

借地権の認定課税を回避する方法はありますか?

借地権の認定課税を回避する方法は、管理会社がオーナーに権利金を支払う方法。相当の地代として地価の6%に相当する地代を支払う方法。管理会社とオーナーで、土地の無償返還に関する届出書を税務署に提出する方法があります。

管理会社方式について教えてください。

管理会社方式とは、不動産の所有はオーナーのままで、設備などの管理を管理会社に委託し管理費を支払う形態です。

メリットやデメリットを教えてください。

管理会社方式のメリットは、不動産の売却手続きが不要なので手軽にできる点です。
デメリットは、不動産はオーナー個人が所有することになるので、相続税の節税効果はあまり期待できません。

サブリース方式について教えてください。

サブリース方式とは、不動産の所有はオーナーのままで、管理会社に一括で貸し付ける形態です。

メリットやデメリットを教えてください。

サブリース方式のメリットは、管理会社が空室リスクを負う仕組みになっているので、空室の有無に関わらずオーナーの収益は安定すること。
一括貸付なので、空室があっても賃貸割合は100%で評価額を計算できることです。
デメリットは、他の形態と比べ収益性は低くなります。


賃貸不動産からの収入は、将来的には長女Cさん、二女Dさんの2人が均等に得られるようにしておきたいと考えていますが、どのようにアドバイスしますか?

資産管理会社を設立し、管理会社の役員にすることをアドバイスします。

注意する点はありますか?

家族を会社の役員にする場合は、役員としての実態が伴っている必要があります。他の会社で勤めている人などを役員にした場合は実態がないと見なされる場合があるので注意が必要です。


Aさんは、分譲マンションへの住み替えを検討していますが、課税関係を説明してください。

戸建て住宅(土地建物、時価1億円)を売却した場合の、譲渡所得が3,000万円以下である場合は3,000万円特別控除の適用で税金は発生しません。
3,000万円を超えたときは分譲マンション(販売価格8,000万円)の価格により、3,000万円特別控除と10年超所有軽減税率の特例、又は特定居住用財産の買換え特例の有利不利を比較する必要があります。

特定居住用財産の買換え特例を適用する場合の注意点はありますか?

特定居住用財産の買換え特例は、売却価格が1億円以下でないと適用できないので注意が必要です。


⒋ 最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

⑴顧客利益の優先、⑵守秘義務の遵守、⑶顧客に対する説明義務、⑷インフォームドコンセント、⑸コンプライアンスの徹底、⑹FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

資産管理会社の設立は複雑で専門家の関与が必要になります。状況によって様々なパターンが考えられるので、一つ一つ制度の内容や適用効果を説明することだけでなく、ご家族と一緒に理解状況を確認しながら、寄り添ったわかりやすく丁寧な説明を行い、必ず同意を得て提案することを重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、資産管理会社の設立、3,000万円特別控除と10年超所有軽減税率の特例、特定居住用財産の買換え特例に関する設例でした。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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