2022年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年6月12日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

公開日 2023年12月30日 最終更新日 2024年1月5日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2022年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年6月12日)

 Aさん(50歳)の父親Bさん(78歳)は、大都市圏郊外のT市内にある実家の戸建て住宅(甲土地・甲建物)に1人で暮らしているが、1年前から体調が思わしくない。母親は4年前に他界している。Aさんの妹Cさん(48歳)はT市から離れた自宅で暮らし、Aさんの自宅も実家まで車で片道2時間の距離にあり、いずれも父親Bさんの面倒を見ることが難しい状況である。

 Aさんは、父親Bさんの意向を確認し、妹Cさんとも相談した結果、X社が運営する介護付有料老人ホームへの父親Bさんの入居について検討し始めた。入居後の費用は最低でも月額20万円かかる。

 父親Bさんの収入と所有財産は下記のとおりである。なお、甲建物は、築後32年が経過しているが、5年前に約1,000万円をかけて大規模な改修工事(耐震補強工事、屋根・外壁塗装、床の貼り替え、バス・キッチン・トイレの交換等)を行っている。

【父親Bさんの収入と所有財産】

  • 年金収入:月額約15万円
  • 金融資産(現預金、株式等):約2,000万円
  • 甲土地:地積150m²、1990年に父親Bさんが売買で取得
  • 甲建物:木造2階建て、延べ面積105m²、1990年築、父親Bさんが甲土地とともに購入

 Aさんは、老人ホームへの入居後の費用と年金収入、金融資産のバランスを考え、実家を売却して現金化したほうが安心ではないかと話したところ、父親Bさんの賛同を得られた。

 ただ、実家の売却にあたって、Aさんは下記の2点について気になっている。

  1. 登記事項証明書によれば、Y銀行の抵当権3,000万円の設定登記が残っていること。父親Bさんに確認したところ、Y銀行から住宅購入資金として借入れをしたが、13年前に完済しているとのことであった。
  2. 甲土地上には、父親Bさんが趣味のそば打ちのために10年前に建てた増築建物(木造平屋建て、延べ面積12m²、未登記)があること。

 なお、実家の売却にあたり、Aさんと父親Bさんは、5年前に高額な改修工事を行っていることから、建物の価値もしっかりと評価してほしいと考えている。Aさんは、実家の売却について、気がかりな2点を含め、FPであるあなたに相談することにした。

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. Y銀行の抵当権3,000万円の設定登記が残っていることで、実家の売却に何か支障はありますか。
  3. 甲土地上に増築建物があることで、実家の売却に何か支障はありますか。
  4. 実家の売却にあたって、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか。
  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
銀行や保証会社から抵当権抹消登記のための書類があるかどうか。
増築時の設計図や資料が残っているか。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握します。


Y銀行の抵当権3,000万円の設定登記が残っていることで、実家の売却に何か支障はありますか?

抵当権が残ったままでは、基本的に第三者への売却等はできません。

住宅ローンを完済した場合、担保として提供した不動産に設定されている抵当権は、自ら申請しない限り、法務局で抹消してくれることはありません。
抵当権が残っていると、新たにローンを組んで不動産を担保に提供することや、不動産を売却することができません。

どのようにアドバイスしますか?

金融機関や保証会社等の抵当権者から交付された抵当権抹消書類が手元にあるときは、そのまま使用することが原則可能です。
ただし、抵当権者が合併等により解散して現存していない場合は、追加書類の交付が必要となることがあります。

抵当権抹消書類が手元にない場合は、抵当権者に対して再交付を依頼します。
抵当権者に連絡を取り、債務を完済していることを確認の上、抵当権抹消登記に必要な書類の再交付を依頼します。

抵当権の抹消に必要な書類を揃え、抵当権抹消手続きを司法書士に依頼するようにアドバイスします。


甲土地上に増築建物があることで、実家の売却に何か支障はありますか?

増築した部分は登記されていないため、買主への所有権移転がスムーズにできないことや、住宅ローンが組めない等、買主側に大きなリスクがあります。そのため、未登記のまま物件を売るのは、登記済みの物件に比べて難しくなります。

未登記の場合、法的には誰のものか不明であり、何の権利も保証されません。
買ったあとで誰かが、所有権を主張してくる可能性があります。

役所が把握していなかった場合、後日、固定資産税の追徴があるかもしれません。
本来払わなければならなかった増築部分について、遡っての請求の可能性もあります。

増築にあたり建物に関する登記内容に変更があった場合、建物表題部変更登記を行うことが義務づけられています。したがって、建物の種類や構造、床面積などが変更した場合は増築登記をしなければなりません。

増築すると床面積が増え、建ぺい率・容積率が変わり固定資産税額の金額が変更されるため、増築登記の手続きをすることが必要です。

他にはありませんか?

増築したことで建ぺい率オーバーとなります。

建ぺい率や容積率を超過してしまう場合には、監督官庁から是正命令が出たり、融資を受けられない等のデメリットが出てきてしまいます。
また、再建築をしようとした際にも、同規模の建物が建てられないといった事態も予想されます。


実家の売却にあたって、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか?

増築建物を解体して売却する方法をアドバイスします。
建物がなくなることで建ぺい率や容積率に関する問題も解消されます。
ただし、建物を撤去する費用が発生します。

甲建物は、5年前に高額な改修工事を行っており、Aさんも建物の価値もしっかりと評価してほしいと考えていることから、適正な不動産価格の算定を不動産鑑定士に依頼するようにアドバイスします。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、不動産登記、不動産の売却、違反建築物に関する設例でした。

実技試験では、詳細な計算をする必要はありませんが、建ぺい率や容積率オーバーになる設例があります。

実技試験の過去問に限らず、学科試験の過去問を解いてみるのもいいのではないでしょうか。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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