2021年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年9月25日)過去問解説

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公開日 2021年10月17日 最終更新日 2021年10月17日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2021年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年9月25日)

●設 例●
 首都圏にある甲土地(地目:畑、公簿面積1,200m²)で農業を営んでいるAさん(76歳)は、妻Bさん(75歳)および長男Cさん(48歳)家族と甲土地から徒歩数分にある自宅で同居している。長男Cさんは、地元の金融機関に勤務しながら、休日には農作業を手伝ってくれているが、農業を継ぐ意思はない。また、長女Dさん(45歳)も、隣県に購入した自宅で家族とともに暮らしており、実家の農業を継ぐつもりはない。

 

 甲土地は、1992年に生産緑地の指定を受け、税制上の優遇を受けてきた。Aさんは、健康でいるうちは農業を続けたいと思っていたが、最近、体力の衰えを感じることが多くなり、これまでどおり農業を続けていくことは難しいと感じている。来年、生産緑地の指定から30年が経過することを機に、将来の相続も見据えて、今後の甲土地の取扱いについて思いを巡らすようになった。

 

 Aさんは、先日、ハウスメーカーX社の訪問を受け、「甲土地を活用し、賃貸マンションを建築しませんか。弊社は、一括で30年間の借上げシステムを採用しており、安定した不動産所得を得られ、相続対策上も有利になります」との提案を受けた。Aさんは、相続対策上も有利になる点に魅力を感じ、知人である地元不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地は最寄駅から徒歩圏内にあり、建売住宅、共同住宅、店舗などの引合いが非常に多い地域である。X社からの提案も含めて、甲土地の有効活用について検討することはよいのではないか」 とアドバイスされた。

 

 Aさんは、所有財産に占める甲土地の割合が大きく、相続対策を兼ねた甲土地の有効活用について前向きである。しかし、多額の借入金を負うことまではしたくないと思っている。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

現預金 2,000万円  
自宅土地 4,500万円 (300㎡)
自宅建物 1,000万円  
甲土地 1億4,000万円 (1,200㎡、宅地としての相続税評価額)
合計 2億1,500万円  


※Aさんの相続に係る相続税の総額(甲土地を宅地評価で計算)は、約3,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

 

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。

     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. 生産緑地とはどのような制度ですか。また、どのような税制上の優遇がありますか。

  3. X社の提案のような賃貸マンション建築による土地の有効活用のメリット・デメリットや、一括借上方式の留意点について教えてください。

  4. 相続対策を兼ねた甲土地の有効活用について、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?
 

①Aさんから直接聞いて確認する確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。トラブルの理由、関係者の意向として
 不動産管理業務のノウハウや経験はあるか
 X社との契約内容(借上賃料の当初固定期間や修繕費等の負担比率)
 長男Cさんや他の家族の意向を確認します。

 
  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?
 

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 甲土地周辺の取引事例を地元の不動産業者等で確認すること。
 X社が提案している事業計画や、建設費等は妥当かを確認します。


 
  1. 生産緑地とはどのような制度ですか? どのような税制上の優遇がありますか?
 
 

生産緑地とは、自然や環境と調和の取れた都市計画を推進するために、都市計画法によって市街化区域内の農地を保全していこうとする制度です。

生産緑地の指定を受けることで、固定資産税や相続税が優遇される一方、建物の建設や売却などが制限され、一定期間農業経営を続けることが義務付けられます。

 

 

生産緑地の税制上の優遇には、相続税の納税猶予と固定資産税の優遇があります。

相続により生産緑地を取得した場合、取得者は生産緑地分の相続税の納税猶予を受けることができます。ただし、相続人が営農を廃止した場合は、相続時まで遡って相続税が課税されるとともに、猶予期間に応じた利子税も支払うことになります。

固定資産税については、市街化区域内の土地は宅地並み評価され納税額が高くなりますが、生産緑地ないにある土地については、一般農地並の課税がなされます。

 
 
  1. X社の提案のような賃貸マンション建築による土地の有効活用のメリット・デメリットや、一括借上方式の留意点について教えてください。
 
 

賃貸マンション建築による、土地の有効活用のメリットは、家賃収入を得られる点です。収益が出ていれば、家賃収入などをあらかじめ相続人に渡すことで、相続発生時の納税準備金を確保することもできます。

また、土地は貸家建付地として、建物は借地権割合により相続税評価額を軽減できます。

土地の用途や面積に応じて、小規模宅地の特例の適用を受けることもできます。

 
 

デメリットは、建設費用が初期費用としてかかる点や空室リスク、集客のための広告宣伝費や大規模修繕などの費用がかかること、マンション管理対策が必要になる点です。

 

一括借り上げ方式の留意点は、契約に有効期限があることです。
契約更新時に家賃の見直しが行われると、家賃が減額になる可能性があります。家賃保証や賃料改定、解約に関する条項を確認する必要があります。
管理会社が倒産した場合も、トラブルが発生する可能性があります。
管理会社の規模や安定性、倒産などのリスクに対し、どのような対応方法を準備しているのか確認する必要があります。


 
  1. 相続対策を兼ねた甲土地の有効活用について、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか?
 

長男Cさんも、長女Dさんも農業を継ぐ意思はないということなので、相続対策を兼ねた甲土地の有効活用を検討する必要があります。

甲土地に建築物を建設し、貸家とすることで建築物は貸家として、土地は貸家建付地として相続税評価額を下げることができます。

甲土地は最寄駅から徒歩圏内にあり、建売住宅、共同住宅、店舗などの引合いが非常に多い地域ということなので、居住用物件以外にも事業用物件の建築や、居住用と事業用の併用するなど甲土地周辺を調査し需要にあった土地活用をアドバイスします。

また、相続税の節税を考えるとともに、納税資金の準備と円滑な遺産分割についてアドバイスをします。
Aさんの場合、所有財産に占める甲土地の割合が大きく、誰に不動産を相続させるのか、納税資金を支払うための資金づくりなど、遺言書の作成や、甲土地の有効活用で得た収入の管理など、納税資金の準備と遺産分割の準備も考えることが重要です。


 
  1. FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
    今回のケースで関与する専門職業家はどのような方々がいますか。
 

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談や、相続税に関することは税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については司法書士に、
地積の更正や変更の登記は土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


出題傾向が変わってきたのでしょうか。

【Aさんの所有財産の概要】はPart1の設例ではよく示されていますが、今回は、相続対策も兼ねた土地の有効活用だったので、設例が今までとは違う形で示されていました。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。