2020年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2021年2月13日)過去問解説

Part1

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

開催年度別に3回分を一冊にまとめたPDF版はこちら

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

2021年2月13日開催のFP1級実技試験は、私が実際に受験した試験です。
なるべく当日のやりとりを思い出して記載したいと思います。
ちなみに、試験結果は130点でした。

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2020年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2021年2月13日)

●設 例●
 大都市圏F市に所在する株式会社X社(非上場会社・プラスチック製品製造業)は、代表取締役社長のAさん(72歳)が40年前に設立した会社である。プラスチック食品容器の普及 とともに、X社の業績は堅調に推移してきた。現在、X社では専務取締役である長男Cさん(42歳)を中心に、環境対応・リサイクル性に優れた製品を販売し、差別化を図っている。

【X社の事業承継】
  Aさんは、持病の悪化を理由に長男Cさんに事業を承継する予定としており、X社株式をどのように移転すべきか、対策を講じたいと思っている。 現在、X社株式の30%をAさんの知人(6名)がそれぞれ5%ずつ保有しているが、これらは設立時にAさんが出資金を負担したものである。これらの知人に配当金を支払った実績はなく、彼らも名義のみを貸与したことを認識している。Aさんは、X社株式の移転に先立ち、知人名義の株式(名義株)を整理しておきたいと考えている。

【Aさん自身の資産承継】
 Aさんの自宅の敷地は先祖代々の土地であり、父親の相続により取得したもので、弟Eさんと共有である。同じ敷地内に弟Eさんも自宅を建築し、家族とともに暮らしている。妻Bさん(70歳)と弟Eさんの妻は本当の姉妹のように仲がよく、関係はうまくいっているが、 将来のことを考えると、共有のままでよいのか不安を抱いている。

 先日、勤務医である二男Dさん(37歳)からクリニック開業の用地としてAさんが所有する甲土地を使わせてもらえないかとの相談があり、甲土地をクリニックの用地として無償で貸すことにした。将来的には、甲土地を二男Dさんに承継させてもよいと思っている。

 長男Cさんと二男Dさんの関係は良好であり、2人の子が遺産分割で揉めることはないと思っているが、念のために遺言書を作成しておきたいと考えている。

【Aさんの家族構成(推定相続人)】
妻Bさん  : 専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん : X社専務取締役。妻と子の3人でF市内の持家に居住している。
二男Dさん : 勤務医。妻と子の3人でF市内の賃貸マンションに居住している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

現預金 1億2,000万円 (役員退職金は考慮していない)
X社株式(Aさん名義) 1億4,000万円  
X社株式(知人名義) 6,000万円  
自宅土地(全体800m²) 6,000万円 (持分50%の評価額)
自宅建物 1,000万円  
甲土地(400m²) 8,000万円 (コインパーキングとして賃貸中)
合計 4億7,000万円  

※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億2,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【X社の概要】
資本金:5,000万円  会社規模:大会社  従業員数:73人  配当:実施なし
売上高:16億円  経常利益:4,000万円  余剰資金:3億円
株主構成(発行済株式総数10万株):Aさん70%、Aさんの知人6名名義30%(各人5%)
株式の相続税評価額:類似業種比準価額2,000円/株、純資産価額7,000円/株

※X社株式は譲渡制限株式である。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について


○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。⒈設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

納税資金不足が予想されるので①納税資金の準備と、相続税が高額になるので相続税の軽減、妻Bさんと子供二人との②円滑な遺産分割、X社の名義株の整理と長男Cさんへの③事業承継対策などが考えられます。


⒉それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

①納税資金の準備と相続税の軽減対策ですが、⑴生命保険の活用、⑵小規模宅地の特例、⑶配偶者居住権の設定などがあげられます。


⒊それらの方策のなかで、何をAさんに提案しますか?

⑴生命保険の死亡保険金は、相続人が保険金を受け取る場合に限り「500万円 × 法定相続人の人数」が非課税金額となります。
今回のケースでは相続人は、妻Bさんと長男Cさん、二男Dさんの3人ですので500万円 × 3人=1,500万円が非課税となり受け取る死亡保険金から引くことができます。

⑵小規模宅地の特例の活用はどのように提案しますか?

一定の条件を満たすことで土地の相続税評価額を、特定居住用は330㎡、事業用は400㎡まで80%軽減され、貸付事業用は200㎡まで50%軽減されます。
今回のケースでは、Aさんの自宅土地は弟Eさんと共有になっているので妻Bさんが相続した場合、Aさんの持分は自宅土地全体の50%の400㎡なので、そのうちの330㎡に適用できます。
ただ、共有のままだと売却の際には共有者全員の合意が必要になるので、今のうちに分筆し共有名義を解消したほうがいいと思います。

⑶配偶者居住権とはどういった制度ですか。

配偶者が相続開始前から住んでいた被相続人所有の建物は、配偶者がその建物の権利を相続しなくても終身、または一定期間、配偶者に建物の使用を認める制度です。
配偶者居住権の設定をしていないと配偶者が自宅を相続した場合に預貯金の割合が少なくなりますが、配偶者居住権を設定すると、自宅に住み続ける権利と配偶者居住権付きの所有権とを分けて相続することができ、配偶者も預貯金を得ることが可能になります。
留意する点は、配偶者居住権には登記が必要で譲渡・売却ができません。配偶者が施設に移るなどし自宅に住まなくなった場合も、賃貸として賃料を得ることは可能ですが、自宅を売却して費用を捻出することができません。
子供が複数人いる場合も、例えば所有権を長男にしてしまうと配偶者の相続時に長男が自宅の権利を取得するので兄弟間での遺産分割が不平等になります。


②円滑な遺産分割を行うためにはどのような提案・方策が考えられますか?

②円滑な遺産分割についてですが、⑴遺言書の作成、⑵生前贈与の活用があります。

遺言書の種類と留意点、代償分割について教えてください。

遺言書を作成する場合、相続人が争うことのないように遺留分に考慮して作成することが望ましいです。遺言の種類には普通方式として「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、一般的には公正証書遺言、自筆証書遺言で作成されます。
代償分割は、所有財産に占める不動産の比率が高い場合などは不動産を相続した人の取得割合が多くなることが考えられます。
今回のケースでは、X社株式を取得し長男Cさんが事業承継すると遺産の多くを長男が取得するため二男Dさんの遺留分を侵害したり、不満が出る可能性があるので、生命保険の活用や生前贈与により代償分割の準備をすることが必要です。

自筆証書遺言保管制度ついて教えてください。

自筆証書遺言を法務局に保管できる制度で、保管されている遺言書は家庭裁判所の検認が不要になり相続人等の中で誰か一人でも遺言書情報証明書の交付を受けたり、遺言書の閲覧をした場合には、その他の全ての相続人等に対して遺言書が保管されている旨の通知が届きます。
しかし、証人がいないので自筆証書遺言の内容の有効性が争われたり、代理人では保管の申請はできず必ず本人が法務局に出向く必要があるので注意が必要です。

⑵生前贈与の活用はどのように提案しますか?

生前贈与の活用には、歴年贈与、教育資金、結婚・子育て資金贈与、住宅取得資金贈与などがあげられます。
今回のケースでは、X社株式を取得し長男Cさんが事業承継すると遺産の多くを長男が取得するため二男Dさんの遺留分を侵害したり、不満が出る可能性があるので、生命保険の活用や自宅の土地建物や甲土地の相続、開業資金の援助などを積極的に行うことを提案します。


X社の名義株の整理と長男Cさんへの③事業承継対策はどのような留意点が考えられますか?

事業承継税制を活用して、長男Cさんに株式を移転するためにも名義株の整理を早急に行う必要があります。
今回のケースでは、これらの知人に配当金を支払った実績はなく、彼らも名義のみを貸与したことを認識しているので株主名簿を実質株主へ変更し、贈与税回避のために確認書を作成しておくことを提案します。


最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

⑴顧客利益の優先、⑵守秘義務の遵守、⑶顧客に対する説明義務、⑷インフォームドコンセント、⑸コンプライアンスの徹底、⑹FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視したいと思います。
Aさんは72歳とご高齢なのこと、名義株の整理や自宅土地の共有名義解消など関係者も多く複雑な内容も多いと思いますので、ご家族と一緒に理解状況を確認しながら、寄り添ったわかりやすく丁寧な説明を行い、必ず同意を得て提案することを重視したいと思います。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。

私が実際に受験した時に印象に残っている質問は名義株と遺言書の質問です。

  • 名義株をどうするのか、突っ込んで質問されうまく答えることができなかったこと。
  • 遺言書を作成するなら公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらを提案するか。
  • 自筆証書遺言の保管制度を説明すること。

といった質問が印象に残っています。


FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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