2020年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2020年9月27日)過去問解説

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合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2020年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2020年9月27日)

●設 例●
 Aさん(55歳)は、三大都市圏S市に所在する株式会社X社(非上場会社・印刷業)の2代目社長である。近年は印刷物の売上額が減少し、今期も赤字決算が見込まれ、反転の兆しは見えていない。過去の内部留保は多いものの、赤字決算が続けば、経営に大きな影響が及ぶことは必至である。X社の事務所は、亡くなった先代社長の父親が甲土地に建築した賃貸マンションの1階にあり、印刷工場は甲土地から約800m離れた準工業地域にある。

 

【甲土地と建物(事務所・賃貸マンション)の概要】

  • 甲土地および建物は父親の相続により取得している。
  • 私鉄沿線の最寄駅(急行停車駅)から徒歩3分程度に位置し、住宅・店舗等が混在する地域である。住宅・店舗等の賃貸需要は高い。
  • 敷地面積500m²、路線価240C、近隣商業地域 ・築17年、RC(鉄筋コンクリート)造7階建て、延床面積1,500m²
    1階  :貸店舗(雑貨店)・X社事務所・賃貸マンションの共用部分
    2〜7階:賃貸マンション/総戸数30戸(2DK)/1戸平均月額9万円/全室賃貸中
  • 建築費の総額4億5,000万円を銀行から借り入れ、現在の借入金残高は2億円である。
  • 入居時に雑貨店の要請でAさんが南側部分に約20m²増築し、雑貨店が倉庫として利用している。増築部分は軽量鉄骨造の簡易な建物で、建築確認申請を行っていない。

 

【Y社の提案内容】
 Aさんは、個人の借入金返済やX社の経営改善を図るため、甲土地および建物を売却することを考え、取引銀行に相談した。後日、S市内で多数の収益物件を保有するY社から5億円にて購入を検討したいとの話があり、価格算定根拠を含め、以下の条件等が提示された。

  • 購入価格は、純収益(満室想定賃料収入から諸経費を控除)に対して6%の利回りとなる金額にて算定し、購入希望価格を5億円とした。
  • 増築した1階の倉庫部分に問題がある。この問題が解消されれば、5億5,000万円での購入を検討することができる。
  • X社が1階事務所に引き続き入居することを前提とし、適正賃料を査定し、収入に含めた。実際の賃料は低く設定しても構わないが、購入価格はその賃料収入を基に算出することになる。

 

【Aさんの意向】
 Aさんは、借入金の返済・会社の資金繰りの改善のために、できるだけ高く売却したいと思っており、事前にできることは実行したいと考えている。なお、Aさんは、増築した倉庫部分をさほど問題とは思っておらず、Y社が購入価格を安くするために、ささいな欠点を大げさに指摘しているのではないかと疑っている。

 

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。

     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. Y社が提案する購入価格の算出方法について説明してください。また、Y社が指摘する増築した1階の倉庫部分は、何が問題となるのですか。

  3. 少しでも高く売却するために、Aさんが事前に実行できること/検討できることを教えてください。また、売却後もX社は1階部分に入居したほうがよいですか。

  4. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?
 

①Aさんから直接聞いて確認する確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。トラブルの理由、関係者の意向として
 甲土地および建物は父親の相続により取得しているので、取得費や取得日がわかるか。
 雑貨店との関係は良好か、雑貨店の要請で倉庫を建てた経緯。
 X社の経営状況や個人の借入金、その他の資産状況などです。

 
  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?
 

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し今後の開発予定や周辺環境の変化を把握すること。

⑷市場調査として
 他の不動産業者などから取引事例等を確認し、市場価格の確認、近隣の地価公示価格、基準地価格、路線価を確認すること。


 
  1. Y社が提案する購入価格の算出方法について説明してください。
 
 

Y社が提案する購入希望価格5億円の算出方法は、純収益に対して6%の利回りで算出しているので収益還元法の直接還元法で算出しています。

収益還元法とは、不動産の収益性に着目した不動産価格の評価方法で、対象の不動産から将来的に生み出される価値を現在価値に割り引いて不動産価格を決定します。

収益還元法には、直接還元法とDCF法の二種類があり、

収益還元法は、対象不動産の一定期間の純収益を還元利回りで除して求めます。

DCF法は、将来的に得られる利益と売却時の予想価格を現在の価格に割り引き、その合計額を不動産価格とする方法です。

 
 
  1. Y社が指摘する増築した1階の倉庫部分は、何が問題となるのですか?
 

倉庫を増築したことによる容積率超過と、建築確認申請を行なっていない点が違法建築で問題となります。

確認申請ですが、倉庫部分は南側へ約20㎡増築されているので建築確認申請が必要になります。
確認申請が必要な場合は、
・10㎡以上の増築工事。
・準防火地域、防火地域の増築工事。
どちらか一つでも当てはまる場合は確認申請を行う必要があります。

甲土地の指定容積率は500㎡×300%で1,500㎡です。
既存建物の延床面積が1,500㎡なので、増築した倉庫部分は指定容積率を超過し違法建築となります。


 
  1. 少しでも高く売却するために、Aさんが事前に実行できること/検討できることを教えてください。また、売却後もX社は1階部分に入居したほうがよいですか。
 

少しでも高く売却するためにAさんが事前に実行できることは、雑貨店との増築した倉庫部分の撤去を交渉することです。
Y社の提案内容にも1階の倉庫部分の問題が解消されれば5億5,000万円での購入を検討するとあるので、雑貨店と倉庫部分の撤去を交渉する必要があります。

検討できることととして、X社の事務所を印刷工場へ移転させることです。
X社が1階事務所へ引き続き入居し賃料を低く設定すると、購入価格は賃料を低く設定した賃料収入を基に算出するので、現状よりも低い金額になります。

X社の事務所を工場へ移転することで、少しでも高い金額で売却でき、事務所スペースの一部を雑貨店倉庫として活用可能になり、倉庫撤去の交渉に提案できます。
事務所の賃料負担もなくなるので、印刷工場に事務所スペースを確保できるのか、取引先の理解は得られるかなど、工場の一部に事務所スペースを確保することが可能か検討するようにアドバイスします。


 
  1. FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
    今回のケースで関与する専門職業家はどのような方々がいますか。
 

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談は税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については司法書士に、
地積の更正や変更の登記は土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士に、
雑貨店との倉庫撤去に関する具体的な法律相談は弁護士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


Part2は不動産関連の問題ですが、学科試験で不動産分野を苦手にしている方も多いのではないでしょうか。
私も、学科試験直前になって本文で質問されている不動産価格の評価方法までたどり着きました。

実技試験では、詳細な計算は必要ありませんが計算式は覚えておいた方がよさそうですね。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

実技試験を受験された方、よかったら質問内容を教えていただけませんか?

FP1級実技試験は情報も少なく、受験された方はご苦労されたと思います。
受験経験者の情報が、これから受験する方にとって大変役に立ちます。
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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。

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