公開日 2021年3月30日 最終更新日 2022年4月20日
FP1級試験の勉強を始めても、出題範囲が広すぎて何から手をつけていいのかわからなかったり、せっかく覚えても忘れてしまい心が折れることってありませんか?
このサイトでは、私が実践し得点が倍増した勉強方法についてご紹介します。
今回はC. 分野金融資産運用から財務データの問題です。
財務データの計算問題は、FP1級試験応用編の金融資産運用では過去8回のうち毎回出題されているFP試験では定番問題の一つです。その中でもインタレスト・カバレッジ・レシオとROEに関する問題は、ほとんど毎回出題されておりこの計算問題は確実に解けるようにしておきましょう。
財務データ問題のポイントは、難しい計算式はありませんが、小数点の端数処理や記入漏れなど計算することが多いので、答えが解けた安心感からうっかりミスをしないように、しっかり確認しましょう。
応用編は、模範解答だけでなく総合的な観点を考慮して採点されます。配点は公表されていませんので独自の配点方法で計算します。
【例】[第1問]《問51》穴埋め問題8問(8点) 《問52》穴埋め問題6問(6点) 《問53》計算問題2問(20点−8点−6点=6点)
《問54》 | 《問55》 | 《問56》 | ||||
2022年1月 | 理論株価の説明と計算 | 6 |
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6 | 上場株式の配当の説明 | 8 |
2021年9月 |
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10点 |
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6点 |
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4点 |
2021年5月 |
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7点 |
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5点 |
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8点 |
2021年1月 |
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6点 |
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7点 |
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7点 |
2020年9月 |
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5点 |
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7点 |
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8点 |
2020年1月 |
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8点 |
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6点 |
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6点 |
2019年9月 |
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8点 |
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6点 |
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6点 |
2019年5月 |
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6点 |
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6点 |
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8点 |
■ROE ■インタレストカバレッジレシオ ■ポートフォリオの標準偏差 ■その他の計算問題
FP1級学科試験 応用編《C分野の計算問題》 (2022年9月開催〜2019年9月まで 7回分を集計)
2019年9月と2020年9月は、ROEに関する問題が出題されていませんが、インタレストカバレッジレシオは毎回出題されています。
最近の傾向は、計算過程を記載する問題よりも、穴埋め問題として出題し説明文中で計算させるような出題が多くなってきたような印象です。
それでは、過去問を解きながら解説していきます。
《設 例》
Aさん(50歳)は、上場株式への投資を行いたいと考えている。Aさんは、同業種の国内企業であり、東京証券取引所市場第一部に上場しているX社およびY社に興味を持ち、連結財務諸表などから作成した財務データ等を参考にして投資判断を行いたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。〈X社とY社の財務データ〉 (単位:百万円)
X社 Y社 資産の部合計 3,600,000 830,000 負債の部合計 1,700,000 480,000 純資産の部合計 1,900,000 350,000 内訳 株主資本合計 1,800,000 300,000 その他の包括利益累計額合計 30,000 23,000 新株予約権 4,000 – 非支配株主持分 66,000 27,000 売上高 3,500,000 780,000 売上総利益 1,015,000 320,000 営業利益 380,000 95,000 営業外収益 25,000 4,000 内訳 受取利息 6,000 1,200 受取配当金 4,000 1,000 その他 15,000 1,800 営業外費用 35,000 6,000 内訳 支払利息 9,000 2,000 その他 26,000 4,000 経常利益 370,000 93,000 親会社株主に帰属する当期純利益 188,000 42,500 配当金総額 76,000 8,500 〈X社とY社の株式に関するデータ〉
X社:株価3,600円、発行済株式総数8億株、1株当たり配当金95円(年間)
Y社:株価1,200円、発行済株式総数2億5,000万株、1株当たり配当金34円(年間)※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
株式投資の代表的な評価指標である( ① )は、売上高当期純利益率、使用総資本回転率、財務レバレッジの3指標に分解して、要因分析を行うことができます。
X社とY社の( ① )の値を比較すると、( ② )社の値のほうが上回っています。( ② )社の値が上回る主な要因は、3指標のうち、( ③ )によるものであると考えられます
○X社のROE(自己資本当期純利益率)
188,000 1,900,000-4,000-66,000 ×100=10.27%(小数点以下第3位四捨五入)
○Y社のROE(自己資本当期純利益率)
42,500 350,000-0-27,000 ×100=13.16%(小数点以下第3位四捨五入)
〈解説〉
ROE(自己資本当期純利益率)= 当期純利益率 自己資本
自己資本=純資産の部合計−新株予約権−非支配株主分
〈答〉 ① ROE ② Y(社) ③財務レバレッジ
X社とY社を財務的な安定性を測る指標であるインタレスト・カバレッジ・レシオで比較すると、X社の値が( ④ )倍、Y社の値が□□□倍です。両社ともに財務的な余裕があるといえます
○X社のインタレスト・カバレッジ・レシオ
(380,000百万円+6,000百万円+4,000百万円) 9,000百万円 =43.33倍(小数点以下第3位四捨五入)
○Y社のインタレスト・カバレッジ・レシオ
(95,000百万円+1,200百万円+1,000百万円) 2,000百万円 =48.60倍(小数点以下第3位四捨五入)
〈解説〉
インタレスト・カバレッジ・レシオ= 事業利益 金融費用
事業利益=営業利益+営業外収益(受取利息、受取配当金、有価証券売却益など)
金融費用=支払利息+割引料+社債利息+社債発行差金償却など
〈答〉 ④ 43.33(倍)
X社とY社を株主への利益還元の度合いを測る指標である配当性向で比較すると、
X社の値が( ⑤ )%、Y社の値が□□□%であり、X社の値がY社の値を上回っています
○X社の配当性向
188,000百万円 8億株 =235円(1株当たり配当額)
95円 235円 ×100=40.43%(小数点以下第3位四捨五)
○Y社の配当性向
42,500百万円 2億5,000万株 =170円(1株当たり配当額)
34円 170円 ×100=20.00%(小数点以下第3位四捨五)
〈解説〉
配当性向= 1株当たり配当額 1株当たり当期純利益
〈答〉 ⑤ 40.43(%)
財務データの問題では多くの計算式を暗記する必要があります。
しかし、テキストなどで記載されている式の文言と問題文の財務データに記載されている文言が一致しないので式を覚えただけでは問題は解けません。
出題傾向が変わり、過去問と全く同じ計算式で解ける問題は少なくなっています。
例えばROEは、「売上高当期純利益率」「総資本回転率」「財務レバレッジ」に3分割でき、それぞれの式は次の通りです。
上の式は財務データの問題で必須の計算式ですが、式だけ覚えても問題は解けません。なぜなら問題分の資料には当期純利益と売上高の記載はあっても使用総資本と自己資本の記載がないからです。
財務データの問題では式だけでなく、式に記載されている文言は問題文のどれを指すのかを理解する必要があります。
例えば総資本回転率を求める式は、 売上高 総資産(使用総資本) ですが財務データには総資産(使用総資本)の記載はありません。総資産(使用総資本)は資産の部合計のことを指します。言葉の意味がわかれば計算式自体は難しくないので簡単に解くことができます。
同様に財務レバレッジも自己資本の記載がありません。自己資本は純資産の部合計−新株予約権−非支配株主持分です。財務レバレッジも計算式は難しくないので言葉の意味さえわかれば簡単に解くことができます。ちなみに自己資本は株主資本合計+その他の包括利益合計でも求めることができるので、余裕がある人は覚えておきましょう。
インタレスト・カバレッジ・レシオを求める計算式は、 事業利益 金融費用 ですが、どちらも財務データには記載がありません。事業利益は営業利益+受取利息+受取配当金。金融費用は支払利息です。
このように財務データの問題は計算式自体は難しくありませんが、財務データのどれが式のどこに当てはまるのかを理解しておく必要があります。
応用編の問題を解く場合は計算過程の記載が不要な問題でも必ずノートに体裁を揃えて書くようにしています。
何回も同じような問題を同じような体裁に揃えて記載することで視覚や体で覚えることもでき、計算ミスを防ぐこともできます。それに丁寧に計算過程を書くことで少しでも部分点のアピールになればとも思います。
私が実際に使っていた用紙です。財務データの問題は以下のような計算過程をノートに書いています。
間違っている箇所もあります(赤字)
財務データの計算問題は、こちらの記事も参考にしてみてください。
財務データの問題では多くの計算式を覚える必要がありますが、一つ一つの計算式はそんなに難しくありません。
計算式に当てはめる文言が似たような名称や記載のない名称が多く、焦ってしまうと自己資本の計算で2年間平均を計算し忘れたり、割り切れた時に小数点以下第2位までを書かなかったりするなどうっかりミスを誘発してしまいます。
落ち着いて計算できるようにノートに体裁を揃えて書くなど、視覚や体に覚えさせる繰り返しのトレーニングが重要になります。
最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!
ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。