公開日 2021年4月4日 最終更新日 2022年4月18日
FP1級試験の勉強を始めても、出題範囲が広すぎて何から手をつけていいのかわからなかったり、せっかく覚えても忘れてしまい心が折れることってありませんか?
このサイトでは、私が実践し得点が倍増した勉強方法についてご紹介します。
今回はA.分野 ライフプランと資金計画から遺族年金の計算問題です。
遺族年金の計算問題は、FP1級試験の応用編で22年1月試験から過去8回のうち2回の出題と老齢年金と、最近は老齢年金の出題が増えているので、そろそろ遺族年金が出題されるかもしれません。
応用編は、模範解答だけでなく総合的な観点を考慮して採点されます。配点は公表されていませんので独自の配点方法で計算します。
【例】[第1問]《問51》穴埋め問題8問(8点) 《問52》穴埋め問題6問(6点) 《問53》計算問題2問(20点−8点−6点=6点)
《問51》 | 《問52》 | 《問53》 | ||||
2022年1月 |
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5点 |
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9点 |
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6点 |
2021年9月 |
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6点 |
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8点 |
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6点 |
2021年5月 |
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6点 |
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8点 |
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6点 |
2021年1月 |
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4点 |
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8点 |
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8点 |
2020年9月 |
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7点 |
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7点 |
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6点 |
2020年1月 |
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8点 |
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6点 |
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6点 |
2019年9月 |
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6点 |
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8点 |
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6点 |
2019年5月 |
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8点 |
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6点 |
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6点 |
■老齢年金の出題と配点 ■遺族年金の出題と配点
FP1級学科試験 応用編《A分野の計算問題》 (2022年1月開催〜2019年9月まで 7回分を集計)
FP業務としてお客様対応する場合、年金相談だけでなく、生命保険や相続等さまざまな場面で必要な知識になるので、基本となる計算式以外でも細かいところまで覚えておく必要があります。
年金に関する問題は、実際の現場でもお客様の関心は高く、相談されることが多い項目の一つです。
基礎編では重箱の隅をつつくような問題も出題されますが、応用編では出題パターンはある程度決まっているので繰り返し問題を解いてパターンをおぼえましょう。
遺族年金のポイントは、短期要件と長期要件の判定、中高齢寡婦加算の支給対象か対象外か、
65歳以上の場合は遺族厚生年金の額と遺族厚生年金の3分の2の額と自身の老齢厚生年金の2分の1の額の合計額のいずれか高い方になることなどがあげられます。
それでは、過去問を解きながら解説していきます。
問題を見る必要がない方は問題を飛ばして解説からお読みください。
仮に、Aさんが現時点(2021年1月24日)で死亡し、妻Bさんが遺族基礎年金、遺族厚生年金および遺族年金生活者支援給付金の受給権を取得した場合、Aさんの死亡時における妻Bさんに係る遺族給付について、下記の〈条件〉に基づき、次の①~③に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数 処理は、円未満を四捨五入すること。 なお、年金額および給付金の額は年額とし、2020年度価額に基づいて計算するものとする。
① 遺族基礎年金の年金額はいくらか。
② 遺族厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
③ 遺族年金生活者支援給付金の額(年額)はいくらか。
〈条件〉
(1) 厚生年金保険の被保険者期間 ・総報酬制導入前の被保険者期間 : 24月
・総報酬制導入後の被保険者期間 : 213月 (注)
要件を満たしている場合、300月のみなし計算を適用すること。
(2) 平均標準報酬月額・平均標準報酬額(2020年度再評価率による額)
・総報酬制導入前の平均標準報酬月額 : 21万円
・総報酬制導入後の平均標準報酬額 : 32万3,000円
(3) 報酬比例部分の給付乗率
・総報酬制導入前の乗率 : 1,000分の7.125
・総報酬制導入後の乗率 : 1,000分の5.481
(4) 中高齢寡婦加算額 58万6,300円(要件を満たしている場合のみ加算すること)
〈Aさんの家族に関する資料〉
(1) Aさん(本人)
・1978年7月20日生まれ
・公的年金の加入歴 1998年7月から2001年3月までの大学生であった期間(33月)は、国民年金の 第1号被保険者として保険料を納付している。
・2001年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(過去に厚生年 金基金の加入期間はない)。
・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
・2001年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
(2) Bさん(妻)
・1982年10月15日生まれ
・公的年金の加入歴 2001年4月から2006年3月まで厚生年金保険の被保険者である。 2006年4月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。
・Aさんが加入する健康保険の被扶養者である。
(3) Cさん(長男)
・2007年9月5日生まれ
(4) Dさん(二男)
・2010年3月17日生まれ
※妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、Aさんと同居し、Aさんと生計維持 関係にあるものとする。
※家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当す る障害の状態にないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
781,700円+224,900+224,900=1,231,500円
〈解説〉
遺族基礎年金の支給対象者は子供や子供のいる配偶者です。
Aさんには、配偶者Bさんと子供がCさんDさんの二人いるので上記の計算式になります。
(210,000円× 7.125 1,000 ×24月+323,000円× 5.481 1,000 ×213月)× 300月 237月 × 3 4 =392,086円 (円未満四捨五入)
〈解説〉
300月のみなし計算
Aさんは、死亡時点で厚生年金保険の被保険者であるので短期要件となり300月のみなし計算を適用します。
Aさんの被保険者期間は、24月+213月=237月で300月のみなし計算を適用すると 300月 237月 を計算式にかけます。
中高齢寡婦加算
Aさんが死亡時に妻Bさんは42歳ですが、長男Cさんは13歳、二男Dさんは10歳なので中高齢寡婦加算は支給されません。
5,030円×12月=60,360円
〈解説〉
遺族基礎年金を受給している前年の所得が4,621,000円以下の方には「遺族年金生活者支援給付金(給付額は月額5,030円」が支給されます。
・対象者
死亡した者によって生計を維持されていた、子のある配偶者 、子
子とは次の者に限ります
・到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
・年金額
781,700円+子の加算
子の加算 第1子・第2子 各 224,900円
第3子以降 各 75,000円
注)令和3年4月分からは下記の金額になります。
780,900円+子の加算
子の加算 第1子・第2子 各 224,700円
第3子以降 各 74,900円
①短期要件か長期要件かを区別する
短期要件
・在職中に死亡した場合
・在職中に初診日のある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した場合
・障害等級1級または2級に該当する障害厚生年金の受給者が死亡した場合
短期要件で被保険者期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算します。
長期要件
・受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合
(老齢年金とは異なり、10年の資格期間ではないことにご注意ください。)
②計算式に当てはめる
(平均標準報酬月額× 7.125 1,000 ×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額× 5.481 1,000 ×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)× 3 4
短期要件を満たす場合は 300月 被保険者期間の合計 を上記の式にかけます
③中高齢寡婦加算の要件
中高齢寡婦加算とは、夫死亡時に40歳以上で18歳未満の子供(1級・2級障害がある場合は20歳未満)がいない妻に対して65歳まで遺族厚生年金に加算されます。長期要件の場合は夫の被保険者期間が20年以上必要です。妻が65歳を過ぎて中高齢寡婦加算が支給停止になっても自身の老齢基礎年金が中高齢寡婦加算より少ない場合経過的寡婦加算が支給されます。
年金生活者支援給付金は、消費税率引き上げ分を活用し、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の方に、生活の支援を図ることを目的として、年金に上乗せして支給するものです。
①老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
支給要件
給付額
月額5,030円を基準に、保険料納付済期間等に応じて算出され、次の⑴と⑵の合計額となります。
②障害年金生活者支援給付金
支給要件
給付額
③遺族年金生活者支援給付金
支給要件
給付額
遺族年金の計算問題は、計算式自体は難しくありませんが、要件に該当するかどうかを正確におぼえておく必要があります。
短期要件なのか、長期要件なのか、紛らわしい要件も多いので整理しておきましょう。
毎年、金額も変更になるので受験月によってどの金額が適用されるのか確認しておきましょう。
今回の問題とは別のパターンで、65歳以降に受け取る遺族厚生年金額、遺族厚生年金の3分の2と自身の老齢厚生年金の2分の1の合計と、遺族厚生年金の支給停止分が控除される前と後の額を計算する問題が2018年1月の問題で出題されています。
65歳以降の遺族厚生年金の問題も学習しておきましょう。
年金問題も他の分野と同じく奥が深い内容ですが、応用編の問題はパターンが決まっているので計算問題だけでなく記述式の問題も過去問を解くことで対応できると思います。記述式の勉強では要件の年数や金額などの数字を正確におぼえましょう。
基礎編は様々な角度から出題されるので、テキストだけでなく日頃から新聞やニュース、ネットなどでいろいろな情報を収集しておくと時事的な問題にも対応できます。
お客さまから年金の相談をされることは本当によくあります。
資料を準備しておかないと答えられないことも多いですが、試験問題は資料なしでも解くことはできます。
いまこのサイトを見てくださっているほとんどの方が目標としているのはFP1級学科試験に合格することで、わからない項目や自信がない項目は合格後も勉強し続けることや実務経験を積むことで身につけることができます。(実技試験の勉強で不動産と相続・事業承継分野の理解は深まります)まずは合格を勝ち取るため問題を解きましょう。
応用編の問題を解く場合は、計算過程の記載が不要な問題でも必ずノートに体裁を揃えて書くようにしています。
何回も同じような問題を同じような体裁に揃えて記載することで、視覚や体で覚えることもでき、手が勝手に動くようになり計算ミスを防ぐこともできます。それに丁寧に計算過程を書くことで少しでも部分点のアピールになればとも思います。
私が実際に使っていた用紙です。
画像をクリックすると拡大します。 注)間違っている箇所もあります(赤字)
遺族年金の計算問題は計算式自体は難しくないが、様々な要件(300月のみなし計算、中高齢寡婦加算など)が適用できるのかできないのかを整理してまとめておく。
年金額などが毎年変わるので、受験日に対応している年金額などを把握しておく(5月試験までの法令基準日は前年の10月1日)
試験問題を完璧に理解して解くことができても勉強し続けないと情報が古くなり、お客様対応時には使えない知識になっている可能性もあります。
ただ、試験に合格しないとFP1級技能士の称号はもらえません。試験は試験と割り切って、理解できてないところは合格後に理解できるように継続的な勉強をしたほうがいいと思います。
最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!
ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のお役に立てれば幸いです。