公開日 2021年11月23日 最終更新日 2021年12月5日
2022年1月実施のFP1級学科試験の合格を目指すNさんに、絶対合格ミッションを課せられた、先輩FP1級技能士のMさんが、試験対策・勉強方法、傾向と対策などをアドバイスします。
今回は、FP試験サポート中のNさんから質問があった、数ある計算問題の中でもテキストではややこしく解説してある「外貨建て債権の利回り計算」を紹介します。
ファイナンシャル・プランナー Mさん
FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
AさんやX社からの相談が多く、後輩のNさんにFP1級試験のアドバイスをしています。
教わる人 Nさん
FP2級技能士。AFP。
50歳。FP1級試験を受験するも、72点で惨敗。次の試験で合格するため勉強中!
試験勉強を始める前に、出題傾向をみてみましょう。
FP1級学科試験で外貨建て債権の利回り計算の問題は、2021年9月の基礎編と2020年9月の応用編で出題されています。
応用編だけでなく基礎編でも出題されますが、出題パターンは同じなので「絶対に落とせない問題」ですね。
計算問題は覚える式が多いので、覚えてたつもりの計算式がうろ覚えで試験本番では迷ってしまい、結果、間違えてしまいました(泣)
FP1級試験では、基礎編、応用編共に計算問題が出題されます。
計算問題は計算式さえ間違わなければ、ほとんど過去問のリライトなので、知識レベルを問う問題や旬な時事問題、専門家でないとわからない問題よりも点数が稼ぎやすいので、計算問題は、応用編も基礎編も分野別に目指す得点を把握して「絶対に落とせない問題」を確実に正答することが重要です。
「絶対に落とせない問題」って、どの問題も絶対に落とせない問題じゃないんですか?
どの問題も落とせない問題として勉強する心構えは、FP1級技能士として重要な資質だけど、試験に合格するためには全ての問題を正答する必要はありません。
FP1級技能士は試験合格後も能力の啓発が求められるので、わからない問題は合格後に取り組んでも遅くありません。
「絶対に落とせない問題」とは、FP1級技能士として最低限理解しておくべき内容だと思うので、学習のスタートにはピッタリです。
応用編の出題傾向は、こちらの記事も参考にしてください。
特訓テキストや、試験問題の模範解答などには、次の計算式が記載されています。
円換算利回り={ Y×(1+R×T) X -1}÷T×100
購入時適用レート | X円 |
売却時適用レート | Y円 |
外貨運用利回り | R% |
運 用 期 間 | T年 |
どういう計算をしたらいいかわかりません(泣)
それでは、例題を解いてみましょう。
《例題》
年 利 率 | 0.1% |
期 間 | 6ヶ月 |
預入時TTS | 120円 |
満期時TTB | 122円 |
《例題》を式に当てはめると、次のようになります。
円換算利回り={ 122×(1+0.5×0.1%) 120 -1}÷0.5×100=3.435
=3.4%
む、難しすぎます(汗)
詳しい人は、一発計算式で解ける問題ですが、
苦手な方は一発計算式を分解して6ステップで計算する方法もありますよ。
利回りとは、投資金額に対する年単位の収益の割合のことなので
1年当たりの収益を投資金額で割ると利回りがわかります。
値上り益だけでなく、利子も含めた収益の割合ですよね。
外貨建て商品の場合は、売却益と利子に為替差益も加えた収益の割合なので注意しましょう。
それでは、6ステップで《例題》を解いてみます。
《例題》
年 利 率 | 0.1% |
期 間 | 6ヶ月 |
預入時TTS | 120円 |
満期時TTB | 122円 |
外貨建て債権の利回り計算
①購入価格=単価×購入時TTS
①購入価格=1×120=120
②満期時価格=単価×満期時TTB
②満期時価格=1×122=122
③年利息=額面×年利率×期間×満期時TTB
③年利息=1×0.1%×0.5×122=0.061
④年間利益=②満期時価格+③年利息-①購入価格
④年間利益=②122+③0.061-①120=2.061
⑤所有期間利益=④年間利益÷期間
⑤所有期間利益=④2.061÷0.5=4.122
⑥利回り=⑤所有期間利益÷①購入価格×100
⑥利回り=⑤4.122÷①120×100=3.435
=3.4%
ステップ方式は、手間がかかるけど間違いや計算ミスは少なそうですね。
それでは、2021年9月実施と2020年9月実施の過去問を解いてみましょう。
2021年9月《問21》
以下の〈条件〉で、為替予約をつけずに円貨を外貨に交換して外貨預金に預け入れ、満期時に円貨で受け取る場合における利回り(単利による年換算)として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、3ヶ月は0.25年として計算し、税金等は考慮せず、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入すること。〈条件〉
- 外貨預金の通貨、期間、利率
米ドル建て定期預金、期間3ヶ月、利率2.00%(年率)- 為替レート
TTS TTM TTB 預入時為替レート 110.00円 109.50円 109.00円 満期時為替レート 113.00円 112.50円 112.00円 1) 2.33%
2) 3.85%
3) 9.31%
4) 16.75%
〈答〉 3) 9.31%
出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
2021年9月《問21》 解答・解説
①購入価格=単価×購入時TTS
①購入価格=1×110=110
②満期時価格=単価×満期時TTB
②満期時価格=1×112=112
③年利息=額面×年利率×期間×満期時TTB
③年利息=1×2.00%×0.25×112=0.56
④年間利益=②満期時価格+③年利息-①購入価格
④年間利益=②112+③0.56-①110=2.56
⑤所有期間利益=④年間利益÷期間
⑤所有期間利益=④2.56÷0.25=10.24
⑥利回り=⑤所有期間利益÷①購入価格×100
⑥利回り=⑤10.24÷①110×100=9.309090
=9.31%
〈答〉 3) 9.31%
2020年9月《問56》
〈米ドル建債券の概要〉の条件で、為替予約を付けずに円貨を外貨に交換して当該債券を購入し、1年6カ月後に売却して、売却金額と3回分の利子をまとめて円貨に交換した場合における所有期間利回り(単利による年換算)を求めなさい。
〔計算過程〕を示し、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。また、1年6カ月は1.5年として計算し、税金等は考慮しないものとする。〈米ドル建債券の概要〉
- 利率(年率):1.5%(米ドルベース、年2回利払)
- 残存期間:5年
- 単価(額面100米ドル当たり)および適用為替レート(円/米ドル)
単価 TTS TTM TTB 購入時 102.50米ドル 110.00円 109.00円 108.00円 売却時 101.75米ドル 111.75円 110.75円 109.75円 { (101.75+100×+1.5×1.5%)×109.75 102.5×110 -1}÷1.5×100=0.821877
=0.82%(小数点以下第3位四捨五入)
〈答〉 0.82(%)
出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
2020年9月《問56》 解答・解説
①購入価格=単価×購入時TTS
①購入価格=102.5×110=11,275
②満期時価格=単価×満期時TTB
②満期時価格=101.75×109.75=11,167.0625
③年利息=額面×年利率×期間×満期時TTB
③年利息=100×1.5%×1.5×109.75=246.9375
④年間利益=②満期時価格+③年利息-①購入価格
④年間利益=②11,167.0625+③246.9375-①11,275=139
⑤所有期間利益=④年間利益÷期間
⑤所有期間利益=④139÷1.5=92.66666666
⑥利回り=⑤所有期間利益÷①購入価格×100
⑥利回り=⑤92.666666÷①11,275×100=0.821877
=0.82%(小数点以下第3位四捨五入)
〈答〉 0.82(%)
2021年1月試験に向けて、「絶対に落とせない問題」の中から、外貨建て債権の利回り計算の問題でした。
利回り計算の問題は、基礎編でも出題される場合があります。
外貨建て債権以外にも2020年9月や2021年5月の基礎編では、割引き債権や利付債権の最終利回り計算などが出題されていますのでチェックしてみてください。
この計算問題が解けないと、合格するのは難しいかもしれません。
しかし、計算問題が解けるようになると、FP1級の試験勉強も手応えを感じ楽しくなるはずです。
計算問題の種類も多くて、覚えたと思ってもしばらくすると忘れてしまう、なんてことも何度もあります。
私の場合、毎日1問でも継続して問題を解き、視覚と電卓の順番で覚えることができました。
Nさんの合格ミッション達成に向けて全力でサポートします!
最後まで諦めずに頑張りましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。