2024年9月8日実施 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級学科試験(応用編)過去問解説《問53》

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公開日 2024年12月13日 最終更新日 2024年12月18日

【第1問】 次の設例に基づいて、下記の各問( 《問51》~《問53》 )に答えなさい。

《設 例》

 X株式会社(以下、 「X社」という)に勤務するAさん(65歳)は、妻Bさん(65歳)との2人暮らしである。X社は65歳定年制(定年年齢に達した日の属する月の末日が退職日)を採用しているが、最長で70歳まで勤務することができる再雇用制度が設けられており、Aさんは、その制度を利用して70歳までX社に勤務する予定である。

 Aさんは、先日行われた会社の健康診断において要再検査と判定されたことや65歳という節目の年であることを受け、自分が入院等をした場合に健康保険からどのような給付を受けられるのか詳しく知りたいと思っている。 また、 自分に介護が必要となった場合における公的介護保険に関する手続や、自分が死亡した場合に妻Bさんに支給される公的年金制度の遺族給付についても知りたいと思っている。

 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

 Aさんとその家族に関する資料は、以下のとおりである。

 

〈Aさんとその家族に関する資料〉

(1) Aさん(本人)

  • 1959年9月3日生まれ
  • 公的年金の加入歴
    1979年9月から1982年3月までの大学生であった期間(31月)は国民年金に任意加入していない。
    1982年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない) 。
  • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
  • 1982年4月から現在に至るまで雇用保険の被保険者である。

 

(2) Bさん(妻)

  • 1959年6月21日生まれ
  • 公的年金の加入歴
    1979年6月から1982年3月までの大学生であった期間(34月)は国民年金に任意加入し、保険料を納付している(付加保険料は納付していない) 。
    1982年4月から2019年6月まで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない) 。
  • 全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。

 

※妻Bさんは、 Aさんと同居し、 Aさんによって生計を維持されているものとする。
※Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

技能検定試験問題の使用について 出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級学科試験 2024年9月

《問53》
Aさんが現時点(2024年9月8日)で死亡し、妻Bさんが遺族厚生年金の受給権を取得した場合、Aさんの死亡時における妻Bさんの遺族厚生年金について、遺族厚生年金として実際に支給される額(支給停止分が控除された後の額)を求めなさい。
〔計算過程〕を示し、 〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2024年度価額に基づいて計算するものとする。

 

 〈条件〉

(1) 厚生年金保険の被保険者期間

  • 総報酬制導入前の被保険者期間 : 252月
  • 総報酬制導入後の被保険者期間 : 257月

 

(2) 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(2024年度再評価率による額)

  • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額 : 300,000円
  • 総報酬制導入後の平均標準報酬額 : 580,000円

 

(3) 報酬比例部分の給付乗率

  • 総報酬制導入前の乗率 : 1,000分の7.125
  • 総報酬制導入後の乗率 : 1,000分の5.481

 

(4) 中高齢寡婦加算額

  • 612,000円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

 

(5) 妻Bさんの年金額(65歳到達時点、2024年度価額)

  • 老齢厚生年金
    基本年金額(報酬比例部分の額+経過的加算額) : 900,000円
  • 老齢基礎年金の額 : 816,000円

 

技能検定試験問題の使用について 出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級学科試験 2024年9月

解答解説 問53

遺族厚生年金は、原則として死亡した被保険者が受け取る予定だった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する額が支給されます。ここでは、報酬比例部分を計算し、最終的な遺族厚生年金額を求めます。

65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。

  • 死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
    ( 300,000円 × 7.125 ÷ 1000  × 252月 ) + ( 580,000円 × 5.481 ÷ 1000 × 257月 ) × 3/4=1,016,736円(円未満四捨五入)
  • 死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額
    ( 1,355,648 ÷ 2 ) + ( 900,000 ÷ 2 ) = 1,127,824円
  • 1,016,736 < 1,127,824

65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方は、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が支給停止されます。

  • 1,127,824 – 900,000 = 227,824 

中高齢寡婦加算

  • ①. 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻。
  • ②. 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。

①、②のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金に、40歳から65歳になるまでの間、612,000円(年額)が加算されます。

妻Bさんは、2024年9月8日時点で65歳なので、中高齢寡婦加算の対象外です。


〈答〉  227,824(円)

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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