2026年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年10月3日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のテキストと過去問解説集を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2026年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年10月3日)

●設 例●

 Aさん(70歳、無職)は、大都市圏M市内(既成市街地等の地域内)の戸建て住宅で妻Bさん(68歳)と2人で暮らしている。Aさん夫妻には、長女Cさん(45歳、専業主婦、隣県に居住)と長男Dさん(43歳、開業医、M市内に居住)の2人の子どもがいる。

 Aさんの父親は10年前に急逝し、Aさんは弟と何度も協議した結果、M市内の甲土地と乙土地およびアパート付きの土地(丙土地・建物)を相続により取得した。丙土地・建物は5年前に売却し、Aさんはその資金で同年に甲土地上に賃貸マンション(甲マンション)を建築している。甲マンションは、現在まで常に満室稼働の状態にある。

 一方、乙土地は、父親の代から月極駐車場(アスファルト敷き)として利用されているが、空き区画もあり、その収益性は高くない。甲土地および乙土地は最寄り駅から徒歩5分の位置にあり、都心へのアクセスも良好なことから、Aさんは漠然と乙土地にも賃貸マンションを建築すれば、収益性を高めることができるのではないかと考えている。また、乙土地は間口も広く視認性があることから、ドラッグストア等からの引合いもあり、Aさんは、自身が健在なうちに、乙土地の収益性を高め、子どもたちに相続させたいと思っている。

 甲マンションの管理を委託している地元不動産業者のX社に、乙土地に賃貸マンションを建築することについて相談したところ、甲マンションの事業収支(5年間の平均実績値)と乙土地にマンションを建築した場合の想定事業収支を比較した提案を受けた。

 

【甲マンションの概要】

  • 鉄筋コンクリート造3階建て、延べ面積300㎡、6戸(満室稼働中)
  • 建設資金:1億円(父親から相続した丙土地・建物の売却代金で調達)

 

【X社提案のマンション(乙マンション)計画】

  • 鉄筋コンクリート造3階建て、延べ面積600㎡、12戸
  • 建設資金:2億5,000万円(借入金:2億円、自己資金:5,000万円)

 

 X社からは、賃貸マンションの建設により収益性が高まり、相続対策にもなると言われたが、自身の年齢で2億円という借入れは過大ではないかとの不安もある。Aさんが、X社の担当者にその旨を伝えたところ、代替案として、乙土地を半分売却し、建設するマンションの規模を縮小したうえで、売却代金を建設費に充ててはどうかとの話があった。Aさんはできれば乙土地の面積を減らさずに承継したいと考えており、X社の提案をそのまま受け入れてよいものか、判断がつかないでいる。

 Aさんは父親の相続時に、遺言書が無く遺産分割協議で苦労した経験から、子どもたちには相続で同じ苦労をかけたくなく、遺言書の作成を考えている。Aさんは、長女Cさんには甲土地および甲マンションを、開業医である長男Dさんには、相応の収入があることから、仮に借入れをした場合には、その借入金を含めて乙土地とその有効活用資産を承継してもらいたいと考えており、子どもたちとも相談しようと思っている。

 このような状況のもと、X社が提案するマンションの事業計画や、マンション以外に借入金なしで乙土地を有効活用する方法はないかなど、FPであるあなたに相談があった。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. X社の計画について、事業収支の観点から、どのような問題が考えられますか。

  3. X社の代替案を含め、あなたであればどのような有効活用の方法をAさんに勧めますか。その理由とともに教えてください。

  4. 乙土地の有効活用にあたり、Aさんが単独で金融機関から借入れを行った場合、相続時に長男Dさんに借入金を承継させるにはどのような方法がありますか。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2026年9/10月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

Aさんから直接聞いて確認する情報は、Aさんの保有資産および負債の全体像、ご家族の意向(特に長男Dさん)、遺言に関する具体的な考えを確認します。

FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

まず、現地に赴き、公道との高低差や接道状況、隣地との境界標の有無、越境物(木の枝や屋根など)がないかを目視で確認します。

次に、法務局で登記簿謄本や公図による権利関係・境界の確認のほか、近隣商業地域(建蔽率80%、容積率300%)における建築基準法上の各種制限(日影規制、斜線制限など)を役所で詳細に確認します。

また、X社から提示された乙マンションの計画について、借入金利が3.5%とやや高めである点や、空室リスク、将来の修繕費、固定資産税等の経費が適切に見積もられているか、また甲マンションの単純な2倍の想定値となっている点に無理がないか、客観的・保守的に検証します。

現状のままで相続が発生した場合の相続税額と、有効活用を実行した場合(乙マンション建築、または半分割却等の代替案)の相続税額のシミュレーションを行い、節税効果を定量的に確認します。

最後に、乙土地は最寄り駅から徒歩5分で視認性も高く、ドラッグストア等からの引合いもあるとのことです。本当にマンション(12戸)が最適なのか、テナント貸し(事業用定期借地権等)など他の有効活用のニーズや賃料相場をご自身で(または専門家と連携して)調査します。


X社の計画について、事業収支の観点から、どのような問題が考えられますか。

乙マンションの運営収益(2,400万円)と運営費用(540万円)が、単に甲マンションの過去5年間の平均実績値を2倍にしただけの想定となっています。
築年数の経過に伴う賃料の下落や空室率の上昇リスク、また、規模の拡大に伴う将来の大規模修繕費や固定資産税の増加などが全く考慮されておらず、非常に甘い見通しであると言わざるを得ません。

満室稼働という理想的な状態(運営純収益1,860万円)を前提としているにもかかわらず、そこから借入金の利子(700万円)と元金返済(690万円)を差し引いた「税引前余剰金(手残り額)」がわずか470万円しかありません。
もし空室が数戸出たり、突発的な修繕費用が発生したりすれば、すぐにキャッシュフローがショート(赤字転落)してしまう脆弱な計画です。

2億円の借入れに対し、金利が3.5%、借入期間が20年と設定されています。
現在の市中金利の水準から見ると3.5%は高すぎる可能性があり、また鉄筋コンクリート造(RC造)の法定耐用年数(47年)に比べて借入期間が20年と短いため、毎年の元本返済額が過大となり、収支を圧迫する大きな要因となっています。

現在は減価償却費(890万円)が元金返済額(690万円)を上回っていますが、今後、返済が進むにつれて元金返済の割合が増加し、逆に設備の減価償却が終わることで償却費が減少します。
将来的に「元金返済額 > 減価償却費」となるデッドクロスが発生した場合、税引前利益が黒字でも税金の支払いによって手元資金が不足するリスクが極めて高い状態です。


X社の代替案を含め、あなたであればどのような有効活用の方法をAさんに勧めますか。
その理由とともに教えてください。

X社の代替案(乙土地の半分割却)は採用せず、私からは「事業用定期借地権を用いた商業施設(ドラッグストア等)への土地賃貸」を勧めます。

X社の「土地を半分売却する」という案は、借入金は減らせるものの、「できれば乙土地の面積を減らさずに承継したい」というAさんのご意向に真っ向から反してしまいます。
また、土地の売却には多額の譲渡所得税がかかるため、資金効率の面でも最適とはいえません。

事業用定期借地権方式であれば、建物の建築費用は借地人(テナント側)が負担するため、Aさんは一切の借入れを行う必要がありません。
これにより、ご高齢のAさんが抱える「2億円の借入れは過大ではないか」という不安を完全に払拭できます。

乙土地は間口が広く視認性があり、すでにドラッグストア等から引き合いが来ているという絶好の条件が揃っています。

乙土地を承継予定の長男Dさんは開業医であり本業がお忙しいため、アパート経営のような空室対策や修繕の手間がかかる事業は不向きです。
事業用定期借地権であれば、法人相手に毎月安定した地代収入のみを長期間にわたり受け取ることができ、契約期間終了後は更地で確実に戻ってくるため、将来の自由度も高くなります。


乙土地の有効活用にあたり、Aさんが単独で金融機関から借入れを行った場合、相続時に長男Dさんに借入金を承継させるにはどのような方法がありますか。

Aさんが金融機関から融資を受ける際、あらかじめ不動産を承継する予定の長男Dさんに連帯保証人になっていただきます。
アパートローンなどの実務では極めて一般的な手法であり、金融機関もDさんの資力(開業医としての収入等)を審査した上で融資を行うため、相続発生後はスムーズにDさんが債務を引き継ぐことができます。

さらに、事前対策として、Aさんが「乙土地および有効活用資産とともに、その借入金債務を長男Dさんに相続させる」旨の遺言書を作成しておきます。
相続発生後、その遺言書(または遺産分割協議書)を金融機関に提示し、金融機関の承諾を得たうえで、長男Dさんが単独で債務を引き受ける「免責的債務引受契約」を締結します。
これにより、妻Bさんや長女Cさんは借入金の返済義務から解放されます。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

税理士
現状の相続税額の精緻なシミュレーション、乙土地にマンションを建築した場合や事業用定期借地権として貸し出した場合の税務・収支シミュレーション、および将来の相続税申告業務を依頼します。

不動産鑑定士
遺産分割の基準となる甲土地および乙土地の適正な時価評価や、事業用定期借地権を設定する際の適正な地代・権利金の算定を依頼します。

弁護士
Aさんが希望されている「子どもたちに苦労をかけないための遺言書」の作成支援や、長男Dさんに借入金を承継させるための免責的債務引受の法務アドバイス、および事業用定期借地権設定契約書のリーガルチェックを依頼します。

司法書士
将来の不動産の相続登記手続きや、有効活用で新たに建物を建築した際の所有権保存登記、金融機関から借入れを行う場合の抵当権設定登記、および事業用定期借地権の設定登記を依頼します。

土地家屋調査士
新たに建物を建築した場合の建物の表題登記や、必要に応じた土地の測量・境界確定を依頼します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、賃貸不動産の建設、貸付用不動産の5年ルール、借入金の承継に関する設例でした。

合格を勝ち取るための最大のポイントは、業者が提示する事業計画書を鵜呑みにせず、自ら「手元に残るキャッシュフローの薄さ」と「将来のデッドクロスによる黒字倒産リスク」を鋭く指摘できるかどうかにあります。

さらに、「借入金の引継ぎには金融機関の同意が必要」という民法上の原則や、令和8年度税制改正の目玉である「貸付用不動産の5年以内ルール」といった最新税制を的確にアドバイスに組み込み、リスクゼロの「事業用定期借地権方式」を逆提案することで、面接官に圧倒的な実務能力をアピールできます。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  
   

楠本 学

   

FP1級技能士、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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