2026年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2026年9月27日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のテキストと過去問解説集を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級の勉強を始める時、2級や3級の問題集は本屋に多く置いてあります。 一方、1級の本はほとんど店頭に見当たりません。 そのため、多くの人が注文して購入したのではないでしょうか。
学科試験と比べて、FP1級の実技は情報量が少なく感じられます。 大型書店でもテキストを見つける機会は少ないです。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読むことは理解のトレーニングでもあります。15分間タイマーをセットして、メモを取りながら読んでください。

それでは、設例をお読みください。

2026年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2026年9月27日)

●設 例●

 Aさん(73歳)は、大都市圏N市にある自宅において、妻Bさん(68歳)および地方公務員である長男Cさん(42歳)家族と暮らしている。Aさんは、8年前に大手企業を定年退職し、現在は年金生活を送っている。長女Dさん(38歳)は、夫と2人の子との4人で東京近郊の社宅に暮らしている。

 

【義母の相続手続】

 2カ月前、1人暮らしをしていた義母(妻Bさんの母親)が他界した。唯一の相続人である妻Bさんが義母の相続財産を調べたところ、定期預金等が複数の金融機関に合計で5,000万円程度あることが判明した。また、義母は自宅(建物・敷地)と自宅に隣接する賃貸アパート1棟(建物・敷地)を所有しており、相続財産の合計額は2億円以上になると思われる。 Aさん夫妻は、四十九日の法要が終わったこともあり、そろそろ義母の相続手続等に着手しなければならないと思っているが、何から手をつければよいかわからないでいる。

 なお、義母が住んでいた自宅については、築50年が経過し、今後Aさん家族が住む予定もないため、Aさん夫妻は相続手続が落ち着いてから売却しようと考えている。

 

【Aさんの資産承継】

 Aさん夫妻は、義母の相続に直面し、Aさん自身の相続について話し合う機会が多くなった。妻Bさんは、「長男Cに家を守ってもらいたい。私は母親が相応の財産を残してくれたし、自分の相続が発生したときのことを考えると、あなたの財産を相続しないほうがよいのではないか。あなたの財産はいらないので、このまま、長男家族と穏やかに過ごすことができればいい」と言っている。Aさんは、妻Bさんの意を汲んで、自宅を含む相続財産のすべてを長男Cさんに承継させ、先祖代々の土地を守ってもらいたいと思っている。

 長男Cさんと長女Dさんの関係は良好であり、Aさんは、長男Cさんからある程度の現金を渡してやれば、長女Dさんも納得するだろうと考えている。

 なお、長女Dさんは住宅の購入を検討しており、Aさんは資金面で協力してあげたいと考えている。

 

【Aさんの家族構成(推定相続人)】

妻Bさん(68歳):専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(42歳):地方公務員。妻と2人の子の4人でAさんと同居している。
長女Dさん(38歳):会社員の夫と2人の子の4人で社宅に住んでいる。

 

【Aさんの主な所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

⒈ 現預金 : 1億4,000万円  
⒉ 上場株式 : 7,000万円  
⒊ 自宅      
  ①土地(450㎡) : 9,000万円  
  ②建物(築40年) : 500万円  
  合計 : 3億500万円  

 

※Aさんの相続に係る相続税額は、約6,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2026年9/10月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

Aさんの相談内容は、相続手続きの進め方について、何から手をつければよいか分からないため、具体的な道筋を知りたいこと。
今後住む予定のない築50年の義母の自宅について、相続手続き完了後に売却したいこと。
妻Bさんの「財産はいらないから長男Cに家を守ってほしい」という意向を汲み、自宅を含むすべての財産を同居する長男Cさんに承継させたいこと。
長女Dさんには、長男Cさんから現金を渡すことで納得してもらい、さらにDさんが検討している住宅購入に対してAさんが資金面で協力したいことです。

問題点は、義母の相続税の申告・納付期限が切迫していること。
妻Bさんがアパートを引き継ぐことによる経営負担や所得増への対応。
Aさんの全財産を長男Cさんに承継させた場合、長女Dさんの遺留分を大きく侵害するため、代償分割の金額設定でトラブルになるリスクがあること。
妻BさんがAさんの財産を取得しない場合、配偶者の税額軽減が利用できず、長男Cさんの相続税負担が重くなること。
住宅購入を検討しているDさんに対し、多額の贈与税がかからないよう、最新税制の非課税特例を活用した生前贈与ルートの構築が必要です。


それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

義母の相続手続等において、何から手をつければよいかわからないでいます。
Aさんにどのようなアドバイスをしますか。

すでに四十九日が過ぎて約2ヵ月が経過しているため、特に準確定申告や相続税申告の期限が迫っていることをお伝えし、速やかに税理士等の専門家を交えて実務に着手するようアドバイスいたします。

まず、義母様が遺言書(自筆証書遺言や公正証書遺言)を残されていないか確認します。
自筆証書遺言が見つかり、法務局の保管制度を利用していない場合は、速やかに家庭裁判所での検認手続きを行う必要があります。

妻Bさんが「唯一の相続人」であることを公的に証明するため、義母様の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を収集します。
法務局で「法定相続情報一覧図」を作成しておくと、今後の金融機関での手続きがスムーズになります。

すでに判明している5,000万円程度の預金やご自宅、賃貸アパートのほかにも財産がないか調査します。
金融機関での残高証明書の取得や、市区町村での名寄帳の取得を行い、借金などの「マイナスの財産」も含めて漏れなく財産目録を作成します。

義母様は賃貸アパートを所有し不動産収入があったため、相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内に所得税の「準確定申告」と納税を行う必要があります。

義母様の財産は2億円以上と見込まれており、妻Bさんの基礎控除額(3,000万円+600万円×1人=3,600万円)を大幅に超えます。
そのため、10ヵ月以内に相続税の申告と納付を完了させなければなりません。


義母が住んでいた自宅については、築50年が経過し、今後Aさん家族が住む予定もないため、Aさん夫妻は相続手続が落ち着いてか売却しようと考えています。
税負担を抑えるためにどのようなことをアドバイスしますか?

義母様のご自宅を売却して税負担を抑えるため、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(3,000万円特別控除)」の活用をメインにアドバイスし、同時に「相続税の取得費加算の特例」との比較シミュレーションを提案します。

「空き家の3,000万円特別控除」の適用要件として、どのようなことを確認しますか?

建築時期について確認します。
「昭和56年5月31日以前に建築されたこと」が要件です。今回は「築50年」とのことですので、1976年(昭和51年)頃の建築となり、この要件をクリアできる可能性が極めて高いです。

相続開始直前に義母様が一人暮らしをされていたこと、そして相続時から売却時まで誰も住まず、貸し出してもいない「空き家」状態を保つよう念押しします。
売却額が1億円以下であること、そして「相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却を完了させる必要があることをお伝えします。

以前は、売却前に相続人が耐震リフォームや取壊しを行う必要がありましたが、令和5年度税制改正により、「譲渡後に買主が(翌年2月15日までに)耐震改修または取壊しを行う場合」も特例の対象となりました。
そのまま売却して買主に工事してもらう選択肢も提案します。

「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(3,000万円特別控除)」と「相続税の取得費加算の特例」は併用できますか?

「空き家の3,000万円控除」と、「相続税の取得費加算の特例」は、併用することができず、どちらか一方の選択適用となります。
義母様の財産は2億円以上あり、妻Bさんに多額の相続税が課される可能性があります。
したがって、「3,000万円を控除した方が得か」「支払った多額の相続税を経費に上乗せした方が得か」を、売却活動を始める前に税理士と連携してシミュレーションし、最も手残りが多くなるスキームを確定させます。


Aさんは、妻Bさんの意を汲んで、自宅を含む相続財産のすべてを長男Cさんに承継させ、先祖代々の土地を守ってもらいたいと思っていますが、どのようなことに注意するようにアドバイスしますか?

Aさんの全財産をすべて長男Cさんに相続させた場合、長女Dさんの「遺留分(法定相続分の2分の1=全体の4分の1)」を大きく侵害することになります。
Aさんは「CからDへ現金を渡せば納得するだろう」とお考えですが、口約束ではなく、確実な代償交付金の準備が必要です。
例えば、Aさんを被保険者、受取人を長男Cさんとする生命保険に加入し、その死亡保険金をDさんへの代償分割資金に充てる(生命保険金は遺産分割の対象外となるため)などの対策をアドバイスします。

妻Bさんが相続しない場合、「配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)」を一切使わないことになります。
これにより、Aさんの相続税(約6,000万円)を長男Cさんが全額負担することになり、Cさんの負担が非常に重くなります。
義母様からの相続でBさんに十分な財産が入るとしても、税理士と連携し「Bさんが法定相続分まで相続した場合」と「全く相続しなかった場合」の一次相続・二次相続のトータルの税負担シミュレーションを行い、本当にBさんが全く相続しないのが一族にとって最適解なのかを冷静に検証するようアドバイスします。


長男Cさんと長女Dさんの関係は良好であり、Aさんは、長男Cさんからある程度の現金を渡してやれば、長女Dさんも納得するだろうと考えていますが、問題ありませんか?

現行の計画のままでは非常に大きな問題(法的・税務的リスク)があります。

全財産を長男Cさんに承継させた場合、長女Dさんの遺留分)を大きく侵害することになります。
いくら兄弟仲が良いと言っても、「渡す金額」がDさんの法的権利である遺留分額と大きく乖離していれば、将来的に争族(遺留分侵害額請求)に発展するリスクが残ります。
口頭での「ある程度の現金」という曖昧な計画ではなく、Dさんの遺留分相当額を念頭においた金額設計が必要です。

Cさんは地方公務員であり、自身の固有の資産から数千万円規模の代償金を払うことは現実的ではありません。
Aさんの遺産である現預金をCさんに一旦相続させる形をとるにしても、Cさんには相続税の納税負担が重くのしかかるため、手元に残る現金だけでDさんを満足させる代償金を支払えるか精査する必要があります。

どのような対策が有効ですか?

Aさんには必ず「公正証書遺言」を作成していただきます。その中で、「長男Cに全財産を相続させる代わりに、CはDに対し〇〇万円の代償金を支払う」旨を明記し、法的・税務的な根拠を確立します。

Aさんの現預金一部を活用し、Aさんを被保険者、受取人を長男Cさんとする生命保険に加入します。
死亡保険金は相続財産ではなく「Cさん固有の財産」となるため、遺産分割協議を経ずにCさんが即座に受け取ることができます。
この保険金を、「長男Cさんの納税資金」および「長女Dさんへの代償金」に直接充てることで、Cさんの自己資金負担をゼロにしつつ、円滑な遺産分割を実現します。


長女Dさんは住宅の購入を検討しており、Aさんは資金面で協力してあげたいと考えています。
どのようなことをアドバイスしますか?

「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」を最優先で検討します。
省エネ等良質な住宅であれば最大1,000万円、一般住宅であれば最大500万円まで非課税で贈与が可能です。
Aさんには、Dさんが購入を検討している住宅の床面積(40㎡以上240㎡以下)や、Dさんの合計所得金額(2,000万円以下)などの適用要件を満たすか、事前に住宅メーカー等と確認するようアドバイスします。

もし非課税枠(1,000万円等)だけでは援助額が足りない場合、「相続時精算課税制度」の併用を検討します。
最大2,500万円の特別控除に加え、年110万円の基礎控除枠も活用できます。
ただし、この制度で贈与した財産(基礎控除超過分)は、Aさんの相続発生時に相続財産として持ち戻されてしまいます。
Aさんは財産をすべて長男Cさんに相続させるご意向ですが、持ち戻しによって遺産総額が膨らむと、結果的にCさんの相続税負担が増加することになります。
そのため、精算課税制度の利用は慎重に判断すべきとお伝えします。

Aさんは、長女Dさんに現金を渡すことで、ご自宅などの不動産を長男Cさんが相続することに納得してもらいたいと考えておられます。
今回の住宅資金援助を、将来のDさんへの「代償分割の前渡し」や「特別受益」として明確に位置づけ、ご家族全員でしっかりと話し合い、合意形成を図ることが重要です。
生前にDさんの希望(マイホーム購入)を叶えることで、将来の遺留分侵害によるトラブルの芽を未然に摘むことができる点をメリットとしてお伝えします。


最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

顧客利益の優先、守秘義務の遵守、顧客に対する説明義務、インフォームドコンセント、コンプライアンスの徹底、FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

Aさんと妻Bさんは「財産をすべて長男Cさんに相続させたい」「長女Dさんには適当な現金を渡せば納得するだろう」とお考えですが、ここには「Dさんの遺留分侵害による争族リスク」や「Bさんが相続しないことによる配偶者の税額軽減の喪失(税負担の大幅増)」という重大なリスクが潜んでいます。
ご本人の意向を尊重しつつも、これらの税務的・法的なリスクと代替案(生命保険の活用や遺言の作成など)を客観的な数値を用いて分かりやすく説明し、Aさんご夫妻が十分に理解・納得したうえで対策を実行していただく必要があるためです。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、義母と夫の「連続相続」、遺留分に配慮した「代償分割」、長女への「住宅資金援助」に関する設例でした。

妻Bさんの意向を鵜呑みにして長男への「全財産承継」を提案する際、表面的な「分割の円滑さ」ばかりに目を奪われると、面接官から「配偶者の税額軽減が使えず長男の税負担が跳ね上がりますよ? 逆に妻Bさんに相続させたら、義母からの財産と合わさって二次相続で破綻しませんか?」とカウンターを喰らいます。

常に「一次相続」と「二次相続」のトータルでの税負担バランスを意識して提案を組み立ててください。

また、義母の賃貸アパート相続に伴う「準確定申告(4ヶ月以内)」や、実務要件が柔軟になった「空き家特例(買主による譲渡後の耐震改修等)」の論点は、これからの時代確実に増える不動産承継の定番です。基本知識として必ず押さえておきましょう。

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Xにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  
   

楠本 学

   

FP1級技能士、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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