2024年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2024年6月8日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のKindle版セット版を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、大きめの書店でもテキストを見かけることは滅多にありません。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2024年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2024年6月8日)

●設 例●
 大手企業で役員を務めているAさん(56歳)は、5年前の父親の相続により、首都圏のK市内にある甲土地(地積2,240m²)と賃貸マンションである甲建物を取得し、保有している。また、甲土地の東側に隣接している乙-1土地(地積900m²)を、Aさんの父親の代から、甲建物の入居者専用の駐車場用地として地主Bさんから賃借しており、甲土地と乙-1土地は、K市役所により課税上、一体利用地として一画地認定を受けている。駐車台数は40台で、入居者に1台当たり月額賃料7,000円(周辺相場と同額)で賃貸している。

 乙土地(地積2,100m²)には、もともとBさんの自宅があったが、Bさん(当時66歳)が体調を崩し、都内で飲食店を経営している子Cさんと同居することに伴い、当該自宅は空き家となった。ちょうどそのころ、Aさんの父親は、甲土地に賃貸マンション(甲建物)の建築を計画しており、地元不動産会社のX社のD社長に仲立ちしてもらい、乙-1部分を駐車場用地として借り受けたのである。また、同時期に、Bさんは、D社長の紹介により、残りの乙-2部分を家電量販店のY電機に店舗専用の駐車場用地として賃貸した。

 

【乙-1土地の賃貸借契約の概要】

  1. 賃貸目的:甲建物の入居者専用の駐車場用地
  2. 賃貸期間:2019年までの10年間(2019年に更新済)
  3. 賃貸料:2019年更新時に見直され、現在の賃料は月額26万1,000円(290円/m²)
  4. 管理:駐車場の整備は賃借人が負担(当初の建物の解体はBさんが負担)

 

 半年前、そのBさんが病気により死亡した。その後、乙土地を相続したCさんから乙-1土地の賃貸借契約についてAさんに連絡があり、きつい口調で次のような申入れがあった。「今まで知らなかったが、今回、乙土地の賃貸借契約書を見て驚いている。乙-1土地と乙-2土地は隣り合っていて、しかも同時期に契約しているのに、乙-1土地の賃料単価は乙-2土地の賃料単価(363円/m²、月額43万5,600円)より20%も安い。これはおかしいんじゃないか。今後は賃料を最低でも乙-2土地と同じ単価でなければ貸すつもりはない。この契約は親父がしたものだが、親父が亡くなった時点で効力が無くなっているはずだ」

 当時仲立ちしてもらったX社のD社長は既に他界しているため、Aさんには地代を設定した経緯を知る術がない。また、乙-2土地を賃借しているY電機が、乙-1土地についても乙-2土地と同じ条件で借りてもよいと言っているとのことである。

 Aさんは、それでは乙-1土地を売ってもらえないかとCさんに尋ねたところ、「今回、相続にあたって税理士が乙-1土地の相続税評価額を出したが、その額の2倍の価格であれば売ってもよい」との返答であった。Aさんは、以前から乙-1土地の購入も考えており、金融機関から妥当な金額の範囲であれば支援するとも言われている。しかし、周辺の土地の相場は坪当たり60万円であり、「2倍」ではとても呑める金額ではないと思っている。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. 乙-1土地の賃料単価と乙-2土地の賃料単価に差があることについて、どのように思いますか。その理由とともに教えてください。
  3. 「乙-1土地を相続税評価額の2倍の価格であれば売ってもよい」とのCさんの発言について、あなたはどのように考えますか。
  4. 「Bさんが亡くなった時点で土地の賃貸借契約書の効力は無くなっている」とのCさんの発言について、あなたはどのように考えますか
  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

甲土地・乙土地の概要

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2024年6月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
甲建物の入居者数や利回り。
Aさんの家族構成や所有資産の状況。
今後のライフプラン。
相続税対策は検討しているか。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 周辺の取引事例を、地元の不動産業者等で確認します。


乙-1土地の賃料単価と乙-2土地の賃料単価に差があることについて、どのように思いますか。

妥当だと思います。

理由を教えてください。

乙-1土地はK市役所により課税上、一体利用地として一画認定を受けています。
隣接する土地が住宅のある土地と一体として利用されていると認められる場合については、土地に対する固定資産税は住宅用地の特例が適用されます。

固定資産税の住宅用地の特例が適用されると、
小規模住宅用地は(住宅やアパート等の敷地で200平方メートル以下の部分)評価額を6分の1に軽減。
一般住宅用地は(住宅やアパート等の敷地で200平方メートルを超える部分)家屋の延床面積の10倍まで評価額を3分の1に軽減できます。

Cさんの税負担が、乙-1部分は乙-2部分に比べ軽減できるので、賃料単価に差があると思います。


「乙-1土地を相続税評価額の2倍の価格であれば売ってもよい」とのCさんの発言について、あなたはどのように考えますか?

相続税評価額の2倍の価格は高いと思います。

乙-1土地の相続税評価額は、甲建物の入居者専用駐車場用地として甲土地と一体利用されていることから、乙−1土地と甲土地を一団の土地として評価し、その価額をそれぞれの土地の地積の割合に応じて按分してそれぞれの土地の評価額を計算します。

それぞれの地積の割合に応じて按分した価額に、乙-1土地については賃借権の価額を控除して評価額を計算します。

乙−1土地の評価額は、賃借権の価額を控除しても、周辺の土地の相場の2分の1以下にはならないため相続税評価額の2倍の価格は高いと思います。


「Bさんが亡くなった時点で土地の賃貸借契約書の効力は無くなっている」とのCさんの発言について、あなたはどのように考えますか?

Bさんがなくなっても、相続は賃貸借契約の終了事由に該当しないため、賃貸借契約書の効力は無くなりません。

特に相手方の同意や特別な手続きなどは必要なく、契約内容等もそのまま移転され、賃料の額や契約期間、未払い賃料を含む債権債務関係を含めて相続人に相続されます。

貸主の相続人が賃貸借契約を終了したいと考えても、正当な事由がなければ解約することはできません。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
乙土地の賃貸借契約の内容に関する相談は、弁護士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、複数の地目の土地を一体利用している宅地の評価、土地の相続税評価額、賃貸借契約の内容に関する設例でした。

乙-1土地を相続税評価額の2倍で売ってもよいとCさんが言っているので、なんとか坪当たり30万円以内になるのではないかと、何度も設例を読み直しました。

15mの県道は特定道路に該当し、乙−1土地は県道から70m以内にあるので特定道路による容積率緩和に該当するけど関係ないし、首都圏のK市内で、普通商業・併用住宅地にある地積900㎡だけど指定容積率が400%だから使えないし、なんとも悩ましい説例でした。

この設例で、容積率緩和や地積規模の大きな宅地に関する質問があったのでしょうか?

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Xにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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