2023年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part1 (2023年6月11日) 過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

公開日 2023年7月8日 最終更新日 2024年1月25日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2023年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2023年6月11日)

●設 例●
 Aさん(68歳)は、夫の死亡後、地方都市にある二世帯住宅で長男Bさん(35歳)家族と同居していたが、一昨年、話が合う長女Cさん(32歳)が暮らす住宅の近隣にあるマンションの1室をデュアルライフ(二拠点居住)として使用するために購入した。昨年、長女Cさんに子が誕生したこともあり、現在は、年間の大半を当該マンションで暮らしている。ただ、住民票は移していない。

 Aさんは、夫の相続時、夫が所有していた賃貸物件を含む相続財産のすべてを相続した。その際、それなりの相続税を納めた経験から、将来、自分に万一のことがあった場合に子どもたちが困らないように、そろそろ相続の準備を始め、必要に応じて何らかの対策を講じておきたいと考えている。

 相続した賃貸物件には、賃貸アパート、賃貸マンション、月極駐車場がある。そのうち、賃貸マンションについては、夫が存命中、金融機関の勧めで不動産管理会社X社を設立し、所有する土地上に借入金で建築したX社名義の建物であり、現在、X社の役員はAさんのみである。Aさんは、X社を将来の相続税の軽減のために利用できないかと考えている。

 

【Aさんの家族構成(推定相続人)】

長男Bさん(35歳):公務員。妻と子の3人でAさん所有の二世帯住宅に住んでいる。
長女Cさん(32歳):中学教師。会社員の夫と子の3人で夫所有の持家に住んでいる。

 

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

  1 現預金 1億5,000万円  
  2 二世帯住宅      
   ①土地(280㎡) 4,000万円  
   ②建物(築10年) 2,000万円  
  3 自用マンション      
   ①土地(持分換算50㎡) 1,000万円  
   ②建物(築3年) 3,500万円  
  4 賃貸アパート      
   ①土地(250㎡) 1,500万円  
   ②建物(築20年) 500万円 (年間家賃収入800万円)
  5 X社株式   0円 (評価額なし)
  6 X社賃貸土地(600㎡) 3,000万円 (年間地代収入120万円)
  7 月極駐車場(600㎡) 8,000万円 (年間賃料収入300万円)
  合計 3億3,000万円  

 

※Aさんの相続に係る相続税額は、約8,200万円(小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

※X社は土地の無償返還に関する届出書をAさんと連名で税務署に提出し、Aさんに通常の地代を支払っている。

 

【X社の概要】
賃貸マンション建物(築10年):1億2,000万円(未償却残高)
年間家賃収入:1,500万円 銀行借入金残高:1億5,000万円
役員報酬:360万円(Aさんのみ、従業員なし)

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

 

相談内容として

  • 相続の準備、対策を考えている。
  • X社を将来の相続税の軽減のために利用できないか。

問題点は、

  • 相続税が高額になるので相続税の軽減。
  • 円滑な遺産分割を行うための対策が必要です。
 

それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

Aさんは、相続の準備、対策を考えていますが、どのようなアドバイスをしますか?

遺言書を作成することをアドバイスします。

遺言書の種類や留意点について教えてください。

遺言の種類には普通方式として「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、一般的には公正証書遺言、自筆証書遺言で作成されます。

遺言書を作成する場合、相続人が争うことのないように遺留分に考慮して作成することが望ましいです。

自筆証書遺言保管制度について教えてください。

自筆証書遺言を法務局に保管できる制度で、保管されている遺言書は家庭裁判所の検認が不要になり相続人等の中で誰か一人でも遺言書情報証明書の交付を受けたり、遺言書の閲覧をした場合には、その他の全ての相続人等に対して遺言書が保管されている旨の通知が届きます。

注意する点はありますか?

証人がいないので自筆証書遺言の内容の有効性が争われたり、代理人では保管の申請はできず必ず本人が法務局に出向く必要があるので注意が必要です。

遺言書がある場合とない場合で、財産の名義変更手続きはどのような違いがありますか?

遺言書があると原則として遺言書の通りに行われますが、遺言書がない場合は、法定相続分通りに手続きするか、遺産分割協議によって相続分を決めていくことになります。

Aさんは、二世帯住宅とマンションを所有しています。
複数の居住用不動産を所有している場合には、特定居住用宅地の特例は適用できますか?

特定居住用宅地等の特例の要件として、居住している必要があり、複数の家を保有していて、双方の家を行き来していたとしても、同時に複数の家に居住していたとはみなされません。
したがって、居住していないとみなされた家屋について特例は適用できません。

全てのケースで複数の居住用不動産を所有している場合は、適用できませんか?

特定居住用宅地の特例は、同一生計の親族が居住していた場合も適用できるので、一方の宅地に被相続人、他方の宅地に同一生計親族が居住していた場合は、両方適用が可能です。
この場合の限度面積は、併せて330㎡となります。

今回のケースでは適用できますか?

今回のケースでは適用できません。

二世帯住宅に適用できないのはどうしてですか?

Aさんが実際に住んでいたのはマンションのため、Aさんの生活の拠点はマンションにあったと考えられます。
AさんはBさんの住民票上の住所が同じだとしても同居していた親族とは見なされず、Bさんが相続した土地に対して特定居住用宅地の特例を適用することはできません。

全ての二世帯住宅で、特定居住用宅地の特例は適用できませんか?

二世帯住宅の場合でも、同じ棟の建物に親と子が住んでいることや、建物の敷地の名義がAさんであること、長男BさんはAさんに家賃を払っていないこと、区分所有登記されていないことなどの要件を満たすことで、特定居住用宅地の特例は適用できます。

Aさんが所有するマンションに適用できないのはどうしてですか?

特定居住用宅地の特例が適用できる相続人は、配偶者、同居の親族、3年以上借家に住んでいる親族です。
今回のケースでは、BさんもCさんも同居でも借家住まいでもないため適用できません。

全てのマンションで、特定居住用宅地の特例は適用できませんか?

マンションの場合でも要件に当てはまれば特例を受けることができます。

適用できる要件を教えてください。

亡くなられた方の配偶者または同居の親族であること。
配偶者以外の同居の親族が相続した場合は相続税の申告期限までマンションを所有し、実際に居住し続けていることです。


資産管理会社を使う相続対策のメリットを教えてください。

資産管理会社を使う相続対策のメリットは、相続税の財産評価で有利になること、所得を分散させることができること、財産の蓄積を抑えることができること、広い範囲で経費が認められること、相続がスムーズにできることです。

X社を将来の相続税の軽減のために利用する方法を教えてください。

X社が賃貸アパートと、月極駐車場を経営することが考えられます。

どうしてですか?

賃貸アパートと月極駐車場の家賃収入は合わせて年間1,100万円になります。
法人として経営することで、個人で不動産を保有する場合に比べて財産の蓄積を抑えて、家族に所得を分散させることができます。
相続税の財産評価も有利になるなど税制上のメリットも大きいので、賃貸アパートと月極駐車場もX社で経営することを検討するようにアドバイスします。

注意する点はありますか?

月極駐車場に関しては、経費も少なくそこまで所得税の軽減効果や、相続対策の期待ができません。マンションを建設するなど他の有効活用を専門家も交えて検討してみてもいいのではないかと思います。

他にありませんか?

家族を会社の役員にする場合は、役員としての実態が伴っている必要がありますが、Bさんは公務員、Cさんは中学教師です。
X社から報酬を受け取ってしまうと、副業禁止規定に抵触してしまいます。そのため、兼業の許可を得るか退職するまでは役員報酬を受け取らないようにするなど、他の会社で勤めている人を役員にする場合は注意が必要です。


⒋ 最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

⑴顧客利益の優先、⑵守秘義務の遵守、⑶顧客に対する説明義務、⑷インフォームドコンセント、⑸コンプライアンスの徹底、⑹FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

資産管理会社の経営や相続対策は複雑で、専門家の関与が必要になります。状況によって様々なパターンが考えられるので、一つ一つ制度の内容や適用効果を説明することだけでなく、ご家族と一緒に理解状況を確認しながら、寄り添ったわかりやすく丁寧な説明を行い、必ず同意を得て提案することを重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、資産管理会社を使う相続対策、特定居住用宅地の特例、遺言書の作成に関する設例でした。

資産管理会社を使う相続対策のメリット

相続税の財産評価で有利になるオーナーが死亡したときは、不動産ではなく資産管理会社の株式を相続することになります。 不動産は相続税の計算上、実態より低い価格(路線価または固定資産税評価額)で評価できますが、資産管理会社の株式はさらに低い価額で評価することができます。
所得を分散させることができる資産管理会社を設立して不動産を移すと、賃料収入は会社のものになります。あるいは、オーナーが不動産を保有して資産管理会社に管理費を支払う方法もあります。このようにして、オーナーが得るはずだった所得を管理会社に分散させることで、税金を低く抑えることができます。 家族を管理会社の役員にする場合は、役員としての実態が伴っている必要があります。未成年者や他の会社で勤めている人などを役員にした場合は実態がないとみなされ、役員報酬が会社の経費として認められないことがあります。
財産の蓄積を抑えることができる所得を管理会社や家族に分散させることで、オーナーの財産の蓄積を抑えて将来の相続税を低く抑えることができます。このほか、家族に管理会社の株式を少しずつ生前贈与することで、財産の蓄積を抑えることもできます。
広い範囲で経費が認められる個人で不動産を保有する場合は、不動産の管理に直接関係のあるものだけが所得計算上の必要経費として認められます。 一方、資産管理会社では、不動産管理に関する経費のほか、社宅(オーナーの自宅)や社用車(オーナーの自家用車)などの間接経費も経費として計上することができます。
相続・贈与がスムーズにできる個人で保有していた不動産を相続する場合は登記が必要で、登記費用(登録免許税)がかかります。生前に贈与する場合は、登記費用のほか不動産取得税も必要になります。 資産管理会社が不動産を保有している場合は、不動産ではなく資産管理会社の株式を相続・贈与すればよく、登記の手間と費用はかかりません。
個人と法人の税率のしくみの違い個人の所得税は、所得が高いほど税率が高くなる超過累進税率で課税されます。不動産を個人で保有する場合は、所得が多く最高税率が課されると、住民税等を含めて50%を超える税率になります。 資産管理会社では、法人税と住民税等を含めた実効税率は高い場合でも33%前後にとどまります。

資産管理会社を使う相続対策のデメリット

会社の運営コストがかかる資産管理会社を設立すると、会社を運営するために厳密な収支の管理・帳簿への記帳、役員報酬支払時の源泉徴収や年末調整、社会保険の加入手続きや保険料の支払、株主総会や取締役会の開催および議事録の作成・保存などの業務が必要になります。 これらの業務を自分や家族だけで行うことは難しく、税理士や社労士など専門家に依頼すれば費用がかかってしまいます。
仕組みが複雑で専門家の関与が必要
不動産管理の仕組みの構築、資産管理会社の設立手続きなどをオーナーが個人ですべて実行することは極めて困難です。相続や税制、富裕層の資産管理に詳しい専門家のアドバイスが欠かせません。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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