2021年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part2 (2022年2月5日) 過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

開催年度別に3回分を一冊にまとめたPDF版はこちら

公開日 2022年3月5日 最終更新日 2024年1月19日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

https://youtu.be/LAMgdMHcJsk
動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2021年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年2月5日)

●設 例●
 Aさん(55歳)は、大手家電メーカーに勤務し、S市内の自宅で妻Bさん(52歳)と2人で暮らしている。商社に勤務する1人息子の長男Cさん(25歳)は、海外に赴任している。
 Aさんは、自宅のほかに、5年前に父親から相続した甲土地(地積600㎡)を所有している。甲土地は、S市内の準幹線道路沿いにあり、現在は貸駐車場(収入は月額30万円程度)として利用しているが、周辺は沿道後背地の人口増加に伴い、店舗建設が盛んである。Aさんは、収益性がより高い店舗誘致による有効活用を求めて複数の不動産会社に相談したが、甲土地単体では地積および形状から難しいとのことであった。
 そのような折、Aさんは、乙土地を所有するDさん、丙土地を所有するEさんのそれぞれから、共同して有効活用を行ってみないかと下記の提案を受けた。

 

【Ⅰ案:所有者Dさん・X社からの提案内容】

  • 乙土地(地積2,200㎡)は、甲土地の西側に位置し、貸駐車場として利用されている。
  • X社(東証一部上場企業)は、甲土地と乙土地を、借地期間30年の事業用定期借地権方式により借り受け、その一体地上に、鉄骨造3階建て、延べ面積4,800㎡(1~3階いずれも約I,600㎡)、耐火構造のホームセンター(1・2階:店舗、3階:店舗・事務所・倉庫、屋上:駐車楊)の建設を計画している。
  • X社は、月額336万円(平均1,200円/㎡)の地代を、Aさん・Dさん双方が合意した配分でそれぞれに支払う。Dさんは、地積の比率による地代配分を希望している。
  • 乙土地単体では、主に建築基準法の観点から、X社が計画している店舗を建設することができないとのことである。

【Ⅱ案:所有者Eさん・Y社からの提案内容】

  • 丙土地(地積1,600㎡)は、甲土地の南側に位置し、資材置き場として利用されている。
  • Y社(東証一部上場企業)は、甲土地と丙土地を、借地期間30年の事業用定期借地権方式により借り受け、その一体地上に、鉄骨造平屋建て、延べ面積(建築面積)1,300㎡、耐火構造のドラッグストア(1階:店舗、屋上:駐車場)の建設を計画している。
  • Y社は、月額264万円(平均1,200円/㎡)の地代を、Aさん・Eさん双方が合意した配分でそれぞれに支払う。Eさんは、地積の比率による地代配分を希望している。
  • 丙土地単体では、主に建築基準法と顧客の導線等に係る立地条件の観点から、Y社が計画している店舗を建設することができないとのことである。

 

 Aさんは、甲土地を売却する意向はなく、今回の提案を前向きに検討したいと思っており、Ⅰ案とⅡ案のどちらがより望ましいか、特に地積の比率以上の地代配分を受けるためにどのような交渉をすぺきか、アドバイスを求めている。なお、各土地の相続税路線価による評価額は、甲土地が1億6,000万円、乙土地が4億8,000万円、丙土地が2億2,000万円である。

 

 

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。

     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. Ⅰ案で、乙土地単体ではX社が計画している店舗を建設できない理由として、どのようなことが考えられますか。

  3. Ⅱ案で、丙土地単体ではY社が計画している店舗を建設できない理由として、どのようなことが考えられますか。

  4. あなたはAさんにⅠ案とⅡ案のどちらを勧めますか,また、有利な地代配分を得るために、隣地所有者に対してどのような交渉が考えられますか。その理由とともに教えてください。

     

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

    (注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?
 

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。トラブルの理由、関係者の意向として
 Dさんや、Eさんとの関係は良好か
 甲土地の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるか
 希望する収益や、契約期間満了まで土地を活用する予定はないか

 
  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?
 

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 甲土地周辺の取引事例を地元の不動産業者等で確認すること。
 X社、Y社の提案内容等は妥当かを確認します。


 
  1. Ⅰ案で、乙土地単体ではX社が計画している店舗を建設できない理由として、どのようなことが考えられますか

乙土地は、近隣商業地域と第一種住居地域にまたがっており、敷地が異なる複数の用途地域にまたがっている場合は、敷地面積の大きい方の用途地域が、敷地全体に適用されます。

乙土地の場合、近隣商業地域が1,000㎡、第一種住居地域が1,200㎡なので、敷地全体が第一種住居地域の制限を受けます。

X社が計画している、鉄骨造3階建てのホームセンターは、延べ面積が4,800㎡です。
第一種住居地域では延べ面積3,000㎡を超える建物の建設はできないので、乙土地単体ではX社が計画している店舗の建設はできません。

甲土地と乙土地を一体とした場合には、X社が計画している店舗を建設することができるのはどうしてですか。

甲土地と乙土地を一体とすることにより、敷地全体に占める近隣商業地域の割合が大きくなるので、近隣商業地域が敷地全体に適用されます。
近隣商業地域では、500㎡超の店舗は建設可能なので、X社が計画している、延べ面積が4,800㎡のホームセンターを建設できるようになります。


 
  1. Ⅱ案で、丙土地単体ではY社が計画している店舗を建設できない理由として、どのようなことが考えられますか。

丙土地も、近隣商業地域と第一種住居地域にまたがっており、敷地が異なる複数の用途地域にまたがっている場合の建蔽率は、用途地域ごとの敷地面積の加重平均で計算します。

丙土地の建築面積は、近隣商業地域部分が360㎡、第一種住居地域部分が840㎡で丙土地全体では、1,200㎡です。

Y社が計画しているドラッグストアは、建築面積が1,300㎡なので、丙土地にはY社が計画している店舗を建設することはできません。

甲土地と丙土地を一体とした場合には、Y社が計画している店舗を建設することができるのはどうしてですか。

甲土地と丙土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定した角地の適用を受けることができます。

甲土地と丙土地を一体とすることにより、建築面積は、近隣商業地域部分が1,000㎡、第一種住居地域部分が960㎡で丙土地全体では、1960㎡になるので、Y社が計画している、建築面積が1,300㎡のドラッグストアを建設できるようになります。


 
  1. あなたはAさんにⅠ案とⅡ案のどちらを勧めますか,また、有利な地代配分を得るために、隣地所有者に対してどのような交渉が考えられますか。その理由とともに教えてください。

Ⅱ案を勧めます。

Aさんに有利な地代配分を得るために、地積の比率による地代配分ではなく、各土地の相続税路線価による評価額での、地代配分を交渉するように提案します。

どうしてですか?

地積の比率による地代配分の場合だと、Ⅰ案、Ⅱ案共に平均1,200円/㎡の地代とあるので、甲土地600㎡で計算すると、Aさんが受け取る地代は72万円です。

一方、各土地の相続税路線価による評価額で地代配分を計算すると、
Ⅰ案の場合、Aさんが受け取る地代は84万円、Ⅱ案の場合は、約111万円になります。

Aさんが受け取る地代を最も有利にするためには、Ⅱ案のEさん、Y社と、各土地の相続税路線価による評価額での、地代配分を交渉するように提案します。


 
  1. FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
    今回のケースで関与する専門職業家はどのような方々がいますか。
 

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談は税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については司法書士に、
地積の更正や変更の登記は土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


設例には、「詳細な計算を行う必要はない」と、記載されていますが、計算しないとわからない設例もあるので、設例を読む際は電卓が必要です。

今回の設例のように、建築基準法の観点から計画している建物を建築できない場合や、増改築部分が建築基準法や条例に違反して建てられた建築物という設例があります。

数字を答える必要はないのかもしれませんが、数字がわからないと答えられません。

学科試験では解ける計算問題も、実技試験では設例を読む時間に計算し、質問されたら待ったなしで答えなければならないので、解けるはずの計算問題も答えられない場合があります。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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