2022年2月5日 2021年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 過去問解説

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公開日 2022年3月1日 最終更新日 2022年5月4日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2021年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2022年2月5日)

●設 例●
 X株式会社(非上場会社・製造業)は、Aさん(80歳)が40年前に設立した会社である。長年にわたって複数の大手メーカーから受注し、余剰資金は7億円以上あって財務内容に問題はないが、直近では2期連続して売上高が減少し、先行きは不透明な情勢である。

 Aさんは、2017年に社長職を長男Cさん(50歳)に譲り、現在は相談役としてX社に在籍している。Aさんが100%所有していたX社株式のうち、8万株は2018年に事業承継税制(特例措置・相続時精算課税制度を利用)を活用して長男Cさんに贈与(贈与時の価額は8億円)し、残りの4万株は現在もAさんが所有している。

 先日、長男CさんのもとにM&A仲介業者が訪れ、「X社株式を譲渡する気はないか。買手企業の詳細はまだ明らかにできないが、全国展開している上場会社で、X社の事業に非常に魅力を感じている。よければ今度相手方と面談する場を設けたい」との提案を受けた。

 

事業承継について

 Aさんは、以前から、長男Cさんの息子である孫Eさん(28歳)がゆくゆくは長男Cさんの後継者となるのだろうと漠然と思い描いていた。そこで、大学卒業後、大手メーカーに勤務している孫Eさんを時期を見てX社に入社させては どうかと長男Cさんに聞いてみた。

 しかし、長男Cさんは、「まずは子の意向を最大限尊重すべきであり、子が後継者となることを前提に将来のX社について考えたくはない。事業承継については、あらゆる可能性を検討し、X社株式の売却についても話を聞いてみたい」とのことである。

 Aさんは、現状で自身の相続が発生した場合のX社株式の取扱いは理解しているつもりであるが、仮にX社株式を他社に譲渡した後に相続が発生した場合にはどのようになるのか知っておきたいと思っている。

 

【資産承継について

 Aさんは、長男Cさんと長女Dさん(45歳)はとても仲が良く、相続財産をめぐる争いが起きるはずはないと安心している。また、2018年にX社株式を長男Cさんに贈与した際には、念のために遺留分に関する民法特例による除外合意の対象としており、現状の所有財産で遺産分割をすることに問題はないと考えている。

 

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

  1 現預金 1億5,000万円  
 

2 X社株式(4万株)

3億6,000万円  
  3 自宅      
   ①土地(450㎡) 9,000万円  
   ②建物(二世帯住宅、築20年) 3,000万円  
  4 X社本社土地(500㎡) 1億円 (注)
  5 賃貸アパート      
   ①土地(200㎡) 4,000万円  
   ②建物(築20年 8室) 1,000万円 (年間収入約800万円)
  合計 7億8,000万円  

※Aさんの相続に係る相続税額(7億8,000万円に基づいて計算)は、約2億5,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

(注)X社は土地の無償変換に関する届出書をAさんと連名で税務署に提出し、Aさんに通常の地代を支払っている。

【X社の概要】
資本金:6,000万円  会社規模:大会社  従業員数:100人
売上高:30億円  経常利益:1億2,000万円  純資産:14億円
株主構成(発行済株式総数12万株):Aさん4万株、長男Cさん8万株
株式の相続税評価額:類似業種比準価額9,000円/株、純資産価額12,000円/株
※X社株式は譲渡制限株式である。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

 

相談内容として

  • Aさんの相続発生時にX社株式の取り扱いがどうなるのか
  • X社株式を譲渡した後に相続が発生した場合どうなるのかを知りたい

問題点は、Aさんの相続発生時に、

  • 納税資金不足が予想されるので、納税資金の準備
  • 相続税が高額になるので相続税の軽減
  • 円滑な遺産分割を行うための対策が必要です。
 

それでは、今あげた相談内容および問題点を解決するためには、どのような提案・方策が考えられますか?

X社株式を他社に譲渡した後に相続が発生した場合には、
一般的には、M&Aの評価額が相続税評価額を上回ると考えられていますので、Aさんの所有財産がX社株式を所有していたときと比べ、譲渡後は所有財産が増え、Aさんの相続に係る相続税額も増加します。

X社株式のうち、8万株は2018年に事業承継税制(特例措置・相続時精算課税制度を利用)を活用して長男Cさんに贈与(贈与時の価額は8億円)していますが、M&AでX社株式を売却した場合どのような影響がありますか?

M&AでX社株式を売却するなど、後継者である長男Cさんが途中で事業をやめてしまった場合は、事業承継税制の納税猶予を受けられなくなり、贈与税と利子税を収める必要があります。
贈与税は暦年贈与を選択していた場合は、株価の55%ですが、相続時精算課税制度を選択していたので株価の20%で計算します。

特例措置においては、一定の事由に該当している場合は、売却時の株価を元に納税額を再計算し、当初猶予税額との差額については免除を受けることができます。

要件は、
納税猶予の適用を受けてから5年を経過していること、
直前の3事業年度のうち、2年以上が赤字であること、
直前の3事業年度のうち、2年以上がその前年売上高から減少していること、
直前期末の有利子負債が、当該直前期の売上高の6ヶ月分以上あること、
その会社の業種に係る上場会社の株価がその前年1年間の平均より下落していること、
後継者に特段の理由があること、
納税猶予の対象となった株式について、譲渡等の対価の額により再計算した税額が、当初猶予税額を下回ることです。


M&Aについて教えてください。

M&Aとは企業の合併買収のことです。
M&Aには、合併、株式交換、移転、会社分割、株式譲渡、事業譲渡などの種類があり、中小企業では比較的簡単な株式譲渡によるM&Aが多く行われています。
株式譲渡が行われると、一般的には株主と社長が替わりますが、企業は存続して事業を承継し、資産・負債や許認可の移転手続きも不要です。
社名や取引先、顧客なども変わらないため、見た目でわかるような変化はありません。

 

M&Aのメリットは、

  • 従業員の雇用を継続できる
  • 経営者の資産を増やせる。経営者の連帯保証や担保提供を外せる
  • 事業のノウハウを後世に残し、事業の拡大や成長に役立つことです。

後継者が見つからず廃業になると、雇用している従業員が仕事を失います。元々の従業員を引き継ぐ形でM&Aを行えば、従業員の生活を心配する必要がなくなります。
M&Aは株式を売却することによって行われるので、経営者は売却益を得ることができ、リタイア後の生活資金等に役立ちます。親族や従業員に事業承継すると、経営者が連帯保証人になっている負債の問題が発生しますが、M&Aの場合、連帯保証や担保提供は不要になります。
これまで培ってきた技術やノウハウを活かし、承継先の企業の資本や人材も活用することで新規事業に取り組み企業の成長が期待できます。

 
 

M&Aのデメリットは、

  • 取引先や従業員から不満が出る可能性がある
  • 希望する条件で事業承継してくれる企業が見つからない可能性があることです。

M&Aを行うことで、従業員の待遇や営業方針などが変わる可能性もあり、第三者が経営陣に収まることで不満を抱える従業員や、取引を中止する企業が出てくる可能性があります。
経営状況や売却条件が合致せず、マッチングする企業が見つからない場合もあります。

 

円滑な遺産分割を行うためにはどのような提案・方策が考えられますか?

遺言書の作成を提案します。
遺言書を作成する場合、相続人が争うことのないように遺留分に考慮して作成することが望ましいです。遺言の種類には普通方式として「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、一般的には公正証書遺言、自筆証書遺言で作成されます。

自筆証書遺言保管制度ついて教えてください。

自筆証書遺言を法務局に保管できる制度で、保管されている遺言書は家庭裁判所の検認が不要になり相続人等の中で誰か一人でも遺言書情報証明書の交付を受けたり、遺言書の閲覧をした場合には、その他の全ての相続人等に対して遺言書が保管されている旨の通知が届きます。
しかし、証人がいないので自筆証書遺言の内容の有効性が争われたり、代理人では保管の申請はできず必ず本人が法務局に出向く必要があるので注意が必要です。


⒋ 最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

⑴顧客利益の優先、⑵守秘義務の遵守、⑶顧客に対する説明義務、⑷インフォームドコンセント、⑸コンプライアンスの徹底、⑹FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

Aさんは、長男Cさんの息子である孫Eさんが、長男Cさんの後継者となるのだろうと漠然と思い描いていました。
しかし、長男Cさんは、事業承継についてあらゆる可能性を検討し、X社株式の売却についても考えています。
さらに、長男Cさんと長女Dさんはとても仲が良く、相続財産をめぐる争いが起きるはずはないと、Aさんは安心しているが実際はわかりません。
家族内での意見もまとまっていない様子なので、家族間でもよく話し合い、必ず当事者同士の同意を得ることを重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例では、事業承継税制を活用した後の設例でした。

今までは、「事業承継税制を活用したいけどよくわからない」といった相談がよくありましたが、今後は、活用したけどうまく事業が続かないなどの問題点が設例として考えられます。

制度を覚えておくだけじゃなく、活用方法も重要ですね。

他にも、二世帯住宅や本社の土地、賃貸アパートを所有しているので、小規模宅地の特例に関しても質問がありそうです。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。