2020年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年2月6日)過去問解説

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合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2020年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年2月6日)

●設 例●
 Aさん(77歳)は、東京都X区に所在する甲土地上の自宅において、妻Bさん(75歳)と2人で暮らしている。Aさんは、15年前に大手企業を定年退職し、現在は年金生活を送っている。2人の子は、各々結婚して隣県のY市に分譲マンションを所有し、実家である甲土地に住み替える予定はない。

 甲土地は、周辺の土地を複数所有する地主Cさん(77歳)のもので、Aさんの亡父が、地主Cさんの亡父から1950年に期間30年・非堅固建物所有目的で借地したものである。現在の自宅は、亡父が1980年に建築したもので、建替承諾料(金額不明)を支払い、当初と同様の期間・目的で更新している。Aさんは、2000年に甲土地の借地権(賃借権)および自宅建物を相続し、地主Cさんとの間で2010年に2回目の更新を同様の期間・目的で行っている。Aさんは、小中高の同級生である地主Cさんとは良好な関係を続けている。

【甲土地および自宅建物の現況】
 甲土地:地積234m²(約70坪)、土地の権利は旧借地法に基づく借地権(賃借権)である。
     権利金の支払はなく、更新料の定めもない。現在の地代は月5万円である。
 自宅建物:木造2階建て、延床面積165m²(約50坪)、築40年、建築費2,500万円

 Aさん夫妻は、老朽化した大きな家での生活に不便さを感じている。特に、運転免許証を自主返納してからは、買い物や移動に煩わしさを感じることが多くなった。Aさんは借地権と自宅建物を売却し、2人の子が住むY市内の有料老人ホームに入居することを考え、家族に相談したところ、全員から賛同を得た。そこで、Aさんが地主Cさんに「借地権と自宅を買い取ってくれないか」と申し入れたところ、地主Cさんから「資金の余裕がなく、買い取ることはできない。しかし、借地関係を次世代に承継したくないので、何らかの方策はないものかと悩んでいる」と聞かされた。
 Aさんは、自宅以外に不動産はないが、預貯金を3,000万円保有し、毎月の年金収入は夫婦2人で月額35万円あり、経常的な生活資金は確保している。他方、Aさんが希望する有料老人ホームは、終身利用権方式で夫婦2人の入居一時金3,000万円/毎月の管理費・食費等30万円の費用がかかる。Aさんは入居一時金3,000万円(2人分)を借地権と自宅建物の売却資金で賄い、預貯金をさらに増やすことができないかと考えている。Aさんが地元の信頼できる不動産業者に相談したところ、以下のような話をされた。

【地元の信頼できる不動産業者の話】
・甲土地周辺は、閑静な住宅地として人気があり、借地権付き建物の取引も散見される。
・甲土地周辺では、120m²程度の区画が最適であり、甲土地は2区画に分割することができる。その場合、相続税路線価の1.25倍程度の7,300万円で売却することができる。
・甲土地周辺において借地権を第三者に売却する場合、売却価格は更地価格(7,300万円)の40%強程度(3,150万円)である。その場合、地主に譲渡承諾料(名義書換料)を借地権譲渡対価の10%程度支払う必要がある。
・売却にあたり、築40年の自宅建物は評価されない。

(FPへの質問事項)
 1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報
 ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

 2. 貸宅地(借地)を整理する方法を教えてください。どの方法がよいと思いますか。

 3. 上記2の方法により、借地権付き建物を処分した場合の課税関係を教えてください。

 4. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について


○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
⒈ Aさんに対して最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかにどのような情報が必要ですか。
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報。
 ②FP自身が調べて確認する情報と整理して説明してください。

①Aさんから直接聞いて確認する確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。トラブルの理由、関係者の意向として
 取得費や取得日、契約書等が確認できる資料があるか。

⑵お客様に寄り添うこと、本当のニーズを引き出すこととして
 借地権と自宅の売却でどれぐらい預貯金を増やしたいか。希望している有料老人ホームの条件、サ高住や子供と同居する等ほかの選択肢は考えられないか。

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・建物の物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し今後の開発予定や周辺環境の変化を把握すること。

⑷市場調査として
 他の不動産業者などから取引事例等を確認し、不動産業者の提案(路線価図では250Dと記載。譲渡承諾料(名義書換料)が借地権譲渡対価の10%程度の支払い)が適正かどうかを把握しておきます。


⒉ それでは、貸宅地(借地)を整理する方法を教えてください。
  今回のケースでは、どの方法がいいと思いますか?

貸宅地(借地)を整理する方法を4つあげさせていただきます。

一つ目は、借地権を売却する方法(借地関係を解消する)です。
 メリットは、借地人は売却益を得ることができます。
 デメリットは、価値がない住宅の処分費用が発生することです。

二つ目は、底地と借地権を共同で売却する方法です。
 メリットは、金融資産にすることで活用の自由度が増すことです。
 デメリットは、譲渡所得税の負担が発生します。

三つ目は、底地と借地権を交換しそれぞれの価値に応じ土地の所有権とする方法です。
 メリットは、土地を自由に有効活用することが可能になります。交換特例の適用で譲渡所得税の負担を回避することが可能です。
 デメリットは、価値のない住宅の処分費用が発生すること、面積が狭くなることです。

四つ目は、デベロッパーとの等価交換事業により建物を建設し、底地や借地権に応じた建物の一部を取得する方法です。
 メリットは、資金負担なく建物の所有権を得ることができます。
 デメリットは、土地は実質共有となることです。

今回のケースでは、地主Cさんは「資金の余裕がなく買い取ることはできない」と話していることから、一つ目の借地権を売却する方法は難しく、またAさんは老朽化した自宅と買い物や移動に不便さを感じていてY市内に転居を希望していること、借地権と自宅建物の売却資金で預貯金を増やしたい意向があることから、二つ目の底地と借地権を共同で売却する方法を提案します。


⒊ それでは先ほどご提案いただいた方法で、借地権付き建物を処分した場合の課税関係を教えてください。

今回のケースでは、所有期間が10年を超えていますので10年超所有の軽減税率が適用できます。
10年超所有の軽減税率と居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除とは併用できるので、

課税長期譲渡所得は、譲渡収入金額から取得費と譲渡費用、3,000万円を引いた金額となり、

課税譲渡所得税率は6,000万円以下の部分は14.21%、6,000万円を超える部分は20.315%で計算します。


⒋ FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する専門職業家はどのような方々がいますか。

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談は税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士
土地の正確な測量と境界の明示は土地家屋調査士
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士
土地の所有権移転登記については司法書士と連携して業務にあたりたいと思います。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

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FP1級実技試験は情報も少なく、受験された方はご苦労されたと思います。
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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。

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