2020年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年2月14日)過去問解説

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合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2020年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年2月14日)

●設 例●
 Aさん(50歳)は、大都市圏N市にある甲土地上の自宅で妻(45歳)、長女(14歳)および叔母Bさん(75歳、父親の妹)と4人で暮らしている。Aさん家族と同居していた父親は、 昨年12月に急逝した。独身である叔母Bさんとは、Aさんが生まれたときから、この自宅で暮らしているが、妻と叔母Bさんとの関係は良好とはいえず、Aさんの悩みの種である。

【甲土地および自宅の建物の概要】
 甲土地(地積:1,000m²)は、N駅から徒歩5分程度に位置し、周辺は店舗・商業施設・マンション等が建ち並ぶ地域である。自宅(延床面積:250m²)は、築50年の木造の大きな古家であり、周辺の建物と比べると、場違いな存在となっている。また、N市には歴史的建造物が多く、休日は観光客が自宅周辺まで押し寄せてくる状況にある。
 甲土地および自宅の建物は、父親と叔母Bさんが25年前に祖父の相続により共有(50:50) で取得したものである。昨年12月に急逝した父親の持分は、一人息子であるAさんが相続により取得する予定である。なお、父親の相続に係る法定相続人は、Aさん1人である。

【各人の意向等】
 妻は老朽化した大きな家での生活に不便さを感じており、マンションに移り住みたいと言っている。Aさんは、先祖代々の土地に住み続けたいが、妻の希望を叶えてあげたいとも思っている。叔母Bさんは、マンションでの1人暮らしを望んでおり、自宅を売却して早期に現金化したい意向を持っている。
 Aさんは、近所の友人が数年前に自宅(乙土地、地積:1,000m²)を売却してN駅前のタワーマンションを購入した話を思い出し、早速、不動産開発業者に価格を打診してみた。乙土地は4億円で売却したと聞いていたが、今回不動産開発業者が提示してきた金額は、現況のままの明渡し条件で2億5,000万円であった。Aさんは、地積が同じなのに乙土地の売却価格と大きな差が生じることに納得できずにいる。叔母Bさんは、提示された価格でもよいと考えており、「あなた(Aさん)が売却しないのであれば、私の持分だけでも別の業者に買い取ってもらおうかしら」と言っている。Aさんは、叔母Bさんの奔放な性格からすれば、 勝手に持分を売却しかねないと危惧している。
 なお、不動産開発業者は、来期の売上計画の都合上、引渡し希望を7月末としている。Aさんは、話の展開が性急すぎることに戸惑っている。

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. 甲土地は、地積が等しい乙土地と比べて、なぜ低い価格が提示されたと思いますか。
  3. 叔母Bさんが持分を第三者に売却した場合、どのような問題が生じますか。
  4. Aさんに甲土地の売却を勧めますか。7月末までに売却した場合、不利益が生じることはありませんか。
  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

  1. Aさんに対して最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかにどのような情報が必要ですか。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報。
     ②FP自身が調べて確認する情報と整理して説明してください。
 

①Aさんから直接聞いて確認する確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。トラブルの理由、関係者の意向として
 取得費や取得日、契約書等が確認できる資料があるか。
 希望するマンションの条件は。場所は甲土地周辺で考えているのか。
 いくらぐらいの現金が必要か。
 
⑵お客様に寄り添うこと、本当のニーズを引き出すこととして
 甲土地は全部売却可能か、一部は残しておきたいのか。
 老後の生活資金としていくらぐらいを見込んでいるのか。
 家賃や地代収入が必要か

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・建物の物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し今後の開発予定や周辺環境の変化を把握すること。

⑷市場調査として
 他の不動産業者などから取引事例等を確認し、不動産業者の提案が適正か、市場価格の確認、近隣の地価公示価格、基準地価格、路線価その他を確認すること。
 甲土地周辺での賃貸マンションやテナントのニーズがあるか、競合他社は存在するかを把握しておきます。


 
  1. 甲土地は、地積が等しい乙土地と比べて、なぜ低い価格が提示されたと思いますか?
 
 

甲土地は商業地域と第一種住居地域にまたがっており、建蔽率、容積率が加重平均により求められます。すべて商業地域の乙土地に比べ、建築可能な建物の面積が制限されてしまうため、低い価格が提示されたと考えます。
・甲土地…建築面積:   720㎡ (600㎡×80%+400㎡×60%)
     延べ面積:3,200㎡ (600㎡×400%+400㎡×200%)
・乙土地…建築面積:  800㎡ (1,000㎡×80%)
     延べ面積:4,000㎡ (1,000㎡×400%)

 

 
  1. それでは、叔母Bさんが持分を第三者に売却した場合、どのような問題が生じますか?
 

Aさんは、他の共有者の承諾なしに、その土地を利用も処分もすることができなくなります。
叔母Bさんの共有持分は市場価格より低い価格でしか売約することができず、共有部分を割安で買った業者は、Aさんからも割安で買って第三者に転売するか、Aさんに割高で売却するかのいずれかの方法をとります。叔母Bさんが持分を第三者に売却した場合、BさんもAさんも機会利益を逸する可能性が高くなります。

 
  1. Aさんに甲土地の売却を勧めますか。7月末までに売却した場合、不利益が生じることはありませんか?
 

甲土地は4億円の取引事例(乙土地)の80%(3,200㎡÷4,000㎡)の延べ面積の建物の建設が可能です。にもかかわらず、62.5%(2億5,000万円÷4億円)の価格提示は低すぎます。

売却をするのではなく、事業用定期借地権で土地を貸す方法や、等価交換方式でマンションを得る方法も検討すべきです。

「Aさんは先祖代々の土地に住み続けたいが、妻はマンションに移り住みたい、叔母Bさんは早期に現金化しマンションでの一人暮らしを望んでいる。」との意向があります。
甲土地の周辺は店舗・商業施設・マンション等が立ち並ぶ地域で、休日は観光客が自宅周辺まで押し寄せてくる状況にあることから、事業用定期借地権方式により甲土地を貸し、保証金や安定的な地代収入が入ることを説明すれば、Bさんも納得するのではないでしょうか。
または、等価交換方式であれば、等価交換時に現金を取得することもでき、建設費を負担することなくマンションを得ることも可能です。

相続税の申告期限前に甲土地を譲渡してしまうと、小規模宅地等の評価減の適用を受けることができません。
Aさんは、同居親族であり、相続で取得する共有持分のうち、居住部分について特定居住用宅地として330㎡まで80%評価減が受けられる可能性があります。
しかし、甲土地を申告期限前に譲渡してしまうと、要件を満たさず、小規模宅地の評価減は適用はできません。


 
  1. FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
    今回のケースで関与する専門職業家はどのような方々がいますか。
 

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談は税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士に、
地積の更正や変更の登記は土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携して業務にあたりたいと思います。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の2021年2月14日のPart2の設例は、2018年6月10日のPart2と2018年2月18日のPart2の設例で、ほぼ同じ内容が出題されていました。

  • 2018年6月10日Part2
    Aさん(70歳)は、6年前、夫の相続時に自宅の土地および建物を遠方に暮らす長男Bさん(47歳)とともに、2分の1の共有持分割合で取得した。
    先日、Aさんは、長男Bさんから、借入金の返済や生活資金の捻出のために、大変心苦しいが自分の持ち分を買ってもらえないかとお願いをされた。仮に、Aさんに買ってもらえないのであれば、第三者に売却したいとの意向も聞かされた。

    《質問事項》
    長男Bさんが持分を第三者に売却した場合、どのような問題が考えられますか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

  • 2018年2月18日Part2
    Aさん(45歳)は、F市内の自宅(甲土地)で妻(40歳)および叔母Bさん(73歳・Aさんの父親の妹)と3人で暮らしている。昨年10月に死亡した父親の持分はAさんが相続により取得することが決まっている。Aさんとしては、このまま住み続けたい気持ちもあるが、叔母Bさんは自宅を売却して早期に現金化したい意向である。叔母Bさんは、マンションでの1人暮らしを望んでいる。
    知人の不動産に相談したところ、6億円の取引事例(乙土地)があったが甲土地は4億円の提示を受けた。Aさんと叔母Bさんは価格が安いことが腑に落ちていない。
    マンション業者は売上計上時期の都合上、引き渡しの希望を今年の6月末としている。

    《質問事項》
    乙土地とほぼ同じ条件であるのに、なぜ低い価格が提示されたと思いますか。
    相続税の申告期限前である6月末までに甲土地を譲渡した場合のデメリットについて教えてください。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

FP1級実技試験は、過去問を繰り返し解いてみると設例が同じような問題がありますね。


振り返ってみると、本番の面接ではかなり緊張してしまい、分かっていても言葉が出てこないことがありました。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。

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