2021年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定1級実技試験 Part2 (2021年10月9日) 過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のKindle版セット版を制作しました。

公開日 2023年4月30日 最終更新日 2024年1月9日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2021年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年10月9日)

●設 例●
 Aさん(65歳)は、大都市圏M市の自宅で妻Bさん(65歳)と2人で暮らしている。1人息子の長男Cさん(40歳)は、私立大学医学部を卒業後、母校の附属病院で勤務医として働いている。


【甲土地・乙土地の概要】
Aさんは、2019年9月に父親が死亡し、大都市圏S市にある実家(甲土地・甲建物)と隣接する乙土地を相続により取得した。実家は、5年前に母親が他界した後、父親が十分な手入れができないまま1人暮らしをしていたこともあり、空き家となって以降、屋根と外壁が 破損するなど急速に建物の老朽化が進んでいる。また、庭の雑草や庭木の落ち葉について近隣から苦情を受け、いつまでも放置できない状況にあり、売却も含めて検討している。


 一方、乙土地は、旧借地法による非堅固建物の所有を目的とする借地契約によりDさん(65歳)に賃貸しているが、先日、Dさんから借地上の建物を建て替えたいとの相談を受けた。


【甲土地・甲建物の概要】

  • 甲土地:登記面積300m²、相続税評価額7,500万円
  • 甲建物:木造2階建て、延べ面積150m²、築50年、固定資産税評価額300万円
  • 甲建物には父親が1人で暮らしていた。現在は空き家の状態。
  • 甲土地について、S市内の複数の不動産業者から「購入希望者がおりますので、売却しませんか」との打診があり、その買取価格はおおむね1億円とのことである。


【乙土地の借地契約の変遷と借地人Dさんの希望の概要】

  • 借地面積200m²(登記面積と同じ)、地代は月額10万円
  • Dさんの亡父がAさんの亡父から1955年に期間30年・非堅固建物所有目的で借地したもので、2015年に同じ目的・期間で2回目の更新を行っている。
  • Dさんは、現在、乙土地上に所有する乙建物(木造2階建て、延べ面積200m²)の1階で日用雑貨店を営業し、2階を住居として使用している。
  • Dさんは、子から「乙建物を二世帯住宅に建て替えて一緒に暮らさないか。建て替える費用は、俺が全額負担するよ」と誘いを受けた。そこで、Dさんは、Aさんに対し、日用雑貨店は廃業し、乙建物を二世帯住宅(鉄筋コンクリート造3階建て、延べ面積300m²)に建て替えたいと希望を伝え、底地の譲受あるいは借地条件の変更および建替えの承諾を求めている。


 Aさんは、Dさんに協力したい気持ちはあるが、長男Cさんから数年後にS市内で医院を開業したいと思っていることを聞いており、この機に乙土地の借地関係を解消し、将来の医院の用地として表通りに面した乙土地を使用することができないかと考えている。また、同時に、老朽化した甲建物や甲土地の庭の雑草や庭木の問題も併せて解決できないかと考えており、何かいい方法がないか、FPであるあなたに相談することにした。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
    ①Aさんから直接聞いて確認する情報
    ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. Aさんの意向およびDさんの希望を踏まえ、乙土地の借地関係について、どのような提案・方策が考えられますか。
  3. 甲土地を売却した場合の課税関係を教えてください。
  4. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

 

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるかどうか。
借地人Dさんとの関係性は良好か。
相続対策はしているか。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況などを、実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 周辺の取引事例を確認します。


 借地関係を整理する方法をいくつか教えてください。

借地関係を整理する方法は、

借地権を売却する方法(借地関係を解消する)。
底地と借地権を共同で売却する方法。
底地と借地権を交換しそれぞれの価値に応じ土地の所有権とする方法。
デベロッパーとの等価交換事業により建物を建設し、底地や借地権に応じた建物の一部を取得する方法があります。

借地権を売却する方法のメリットやデメリットを教えてください。

借地権を売却する方法の、 
メリットは、借地人は売却益を得ることができます。
デメリットは、価値がない住宅の処分費用が発生することです。

底地と借地権を共同で売却する方法のメリットやデメリットを教えてください。

底地と借地権を共同で売却する方法の、
メリットは、金融資産にすることで活用の自由度が増すことです。
デメリットは、譲渡所得税の負担が発生します。

底地と借地権を交換する方法のメリットやデメリットを教えてください。

底地と借地権を交換する方法の、
メリットは、土地を自由に有効活用することが可能になります。交換特例の適用で譲渡所得税の負担を回避することが可能です。
デメリットは、価値のない住宅の処分費用が発生すること、面積が狭くなることです。

建物を建設し、底地や借地権に応じた建物の一部を取得する方法のメリットやデメリットを教えてください。

建物を建設し、底地や借地権に応じた建物の一部を取得する方法の、
メリットは、資金負担なく建物の所有権を得ることができます。
デメリットは、土地が実質共有となることです。

今回のケースでは、乙土地の借地関係について、どのような提案・方策が考えられますか。

今回のケースでは、乙土地の借地権と甲土地の一部を交換することを提案します。

どうしてですか?

Aさんは、乙土地を長男Cさんの医院の用地として利用したいという意向があり、
借地人のDさんは、二世帯住宅の建設を希望しています。
乙土地の底地と借地権の交換では、医院としては狭くなります。

乙土地の借地権と甲土地の一部を交換することで、広い道路に面した角地に医院を開設することができ、Dさんも静かな環境で二世帯住宅が建設できるので、乙土地の借地権と甲土地の一部を交換することを提案します。

交換した場合の課税関係を教えてください。

固定資産の交換特例が適用できます。

固定資産の交換の特例を受けるための要件を教えてください。

交換により譲渡・取得する資産がいずれも固定資産であること。
同じ種類の資産であること、1年以上所有していたもの、かつ交換のために取得したものではないこと。
交換直前の用途と同じ用途で使用すること。
譲渡した資産の時価と取得した資産の時価の差額が、いずれか高いほうの資産の時価の20%以内であることです。


甲土地を売却した場合の課税関係を教えてください。

どういった特例が適用できますか?

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の適用を受けることが可能です。

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除ついて教えてください。

相続によって取得した空き家を、一人暮らしだった被相続人が死亡した日以後3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡したときは、その空き家を譲渡して得た利益から3,000万円を控除できる制度です。

要件を教えてください。

被相続人が亡くなられた時点で一人暮らしであること。
昭和56年5月31日以前に建築された建物とその敷地であること。
区分所有建築物でないこと。
相続から譲渡まで引き続き空き家でなければならないことです。

今回のケースでは適用できますか?

甲建物は、築50年で5年前に母親が他界した後、父親が1人暮らしをしていたので適用できます。

ただし、不動産業者から買取価格はおおむね1億円との話があるので、1億円以下で相続開始日から3年後の12月31日までに、譲渡することが必要です。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、借地関係の解消、固定資産の交換の特例、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除に関する設例でした。

令和5年度税制改正により、空き家の譲渡特例の適用期限が4年延長され、適用要件が一部緩和される予定です。

しかし、相続人が3人以上いるケースでは、控除額が1人あたり2,000万円に引き下げられますので、この点には留意が必要です。

いずれも、令和6年1月1日以後に行う譲渡に適用することとされています。
学科試験もですが、実技試験でも改正ものは狙われやすいので要チェックですね。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
詳しくはこちらをご覧ください

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