FP1級実技試験の過去問を何年分も解いていると、何度も出題されている問題があります。
旬な話題や制度改正の問題など一期一会の問題もありますが、学科試験と同じように何度も繰り返し出題される、定番の問題があります。
過去問題を繰り返し解く勉強方法は、学科試験に限らず、実技試験対策にも有効な勉強方法の一つです。
設例を読んでみて、ドキッとするような設例も多いFP1級実技試験でも定番問題があり、定番問題を確実に正解することがポイントです。
そこで、2021年6月から2023年9月までに実施された、FP1級実技試験の設例をもとに出題数を集計してみました。
実技試験は口頭試問形式で行われるため模範解答は公表されていません。そのため、審査員の質問や受験者の回答はあくまで個人の見解です。試験問題から予想して出題数を集計していますが、このような質問がない場合や集計している数値が正しいとは限りません。
実技試験の出題ランキング Part1
(2021年6月試験〜2023年9月試験までの34日分の設例を独自に集計)
Part1の実技試験出題ランキング1位は、事業承継税制特例です。
学科試験での事業承継税制の出題は、特に出題回数が多いわけではなく、2022年度以降の学科試験の基礎編では、2022年5月と、2023年5月に、特例措置の内容や、特例措置と一般措置の違いが出題されていました。
応用編での出題は、2022年9月に特例承継計画、2024年1月に特例措置の特徴に関する穴埋め問題が出題されていました。
事業承継に関して学科試験対策では、類似業種比準価額などの計算問題を中心に勉強していたので、学科試験合格後に、改めて勉強し直しているという人も多いのではないでしょうか。
事業承継税制特例が、どのような内容で設例に記載されているかというと、Part1でのAさんは、非上場会社の社長という設定が多く、株式移転をどのように進めたらいいのか悩んでいたり、事業承継に関するセミナーに参加したり、金融機関の担当者や、経営者仲間などから、事業承継税制の話を聞いてきます。
そこで、Aさんの悩み事や、問題点を解決するために、事業承継税制特例についてアドバイスをします。
FP1級実技試験で、事業承継税制特例について回答するポイントは、次の3つです。
事業承継税制特例とはどういった制度なのか、メリット、デメリット、一般措置と特例措置の違いなどを整理して覚えましょう。
事業承継税制特例ですが、先代経営者から事業の承継を受けた後継者が、次の後継者に事業承継できた場合には、相続税や贈与税が免除になる制度です。
デメリットは、届出書の提出など、事務手続きが煩雑になること。
事業継続が困難な場合は、利子税と猶予された税金の支払いが必要になることです。
事業承継税制は、恒久的な措置である一般措置と、時限的な措置である特例措置があります。
特例措置 | 一般措置 | |
---|---|---|
事前の計画策定 | 6年以内の特例承継計画の提出 2018年4月1日から 2026年3月31日 ※1まで | 不要 |
適用期限 | 10年以内の贈与・相続等 2018年1月1日から 2027年12月31日まで | なし |
対象株数 | 全株式 | 総株式数の最大3分の2まで |
納税猶予割合 | 100% | 贈与:100% 相続:80% |
承継パターン | 複数株主から最大3人の後継者 | 複数の株主から1人の後継者 |
雇用確保要件 | 弾力化 | 承継後5年間 平均8割の雇用維持が必要 |
経営環境変化に対応した免除 | あり | なし |
相続時精算課税の適用 | 60歳以上の者から18歳 ※2 以上の者への贈与 | 60歳以上の者から18歳以上の推定相続人・孫への贈与 |
※1:令和6年度税制改正大綱により、特例承継計画の提出期限は2年延長され2024年3月31日→2026年3月31日までに変更されました(出典:令和6年度税制改正の大綱 P.26)
※2:成人年齢引下げに伴い、受贈者年齢要件は「18歳以上」に(改正前は20歳以上)
出典:中小企業庁『経営承継円滑化法 申請マニュアル【相続税、贈与税の納税猶予制度の特例】令和4年12月改定版』
特例承継計画とは、事業承継税制の特例措置を受けるために策定する計画のことです。後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営上の課題と、課題への対応策、承継後5年間の事業計画などを記入し、認定支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)による、指導と助言を受けた上で、定められた期日までに都道府県庁へ提出します。
後継者が複数人いる場合には、一般措置では後継者のうち、1人しか事業承継税制の対象となりませんが、特例措置では3人まで、事業承継税制の対象となります。
たとえば、先代経営者と、その妻が会社の株式を所有しており、これらの株式を2人の子どもたちに、それぞれ半分ずつ贈与した場合、一般措置であれば、2人の子の、いずれか1名のみが事業承継税制の適用を受けることができますが、特例措置であれば、2名とも事業承継税制の適用を受けることができます。
また、事業承継後、5年間平均で雇用の8割を維持できなかった場合も、一般措置と特例措置とでは異なります。
一般措置では経営承継円滑化法の認定が取り消されて、猶予されていた贈与税・相続税の納付が必要となります。
特例措置の場合は、雇用確保要件は緩和され、特例承継計画に関する報告書を作成し、認定支援機関に所見を記入してもらった上で、都道府県庁へ提出する必要があるものの、引き続き贈与税・相続税の納付は猶予されます。
FP1級実技試験の設例では、後継者候補である長男Cさんは、1年前にX社の取締役に就任したとか、生産本部長であるとか、3年以上にわたってX社の役員ではない場合があります。
事業承継税制特例を提案する際は、後継者候補である、長男Cさんなどの役職にも注意して設例を読みましょう。
事業承継税制の特例措置
2024年3月31日までの期限が2026年3月31日まで、2年延長
2027年12月31日までの贈与または相続
先代経営者の要件、後継者の要件、対象会社の要件など、複数の要件を満たす必要がある
申告期限から5年間の要件維持と、毎年、都道府県と税務署に届出が必要
一定の要件維持と、3年ごとに、税務署に届出が必要
納税猶予を受けるためには、2024年3月31日までに、特例承継計画を作成し、都道府県庁へ提出します。
特例措置の場合は、2027年12月31日までに贈与を行い、贈与年の10月15日から翌年1月15日までに申請し、認定書の写しとともに税務署への申告手続きが必要となります。
2023年12月22日に閣議決定された、令和6年度税制改正の大綱によると、特例承継計画の提出期限が、2026年3月31日まで、2年間延長される見込みです。
申告期限後5年間は、都道府県庁へ年次報告書を、税務署へ継続届出書を、年1回提出しなければなりません。
5年経過後も、3年に1回は税務署へ継続届出書を提出する必要があります。
承継後の5年間は事業継続期間となり、事業継続期間内は後継者が引き継いだ会社の代表でなければなりません。
株式の譲渡などにより、後継者が代表でなくなった場合は事業承継税制の適用が取消となります。
また、後継者の長男Cさんが、承継後にM&Aを検討するといった設例もあります。
事業継続期間内に納税猶予中の株式の一部を譲渡した場合は、事業承継税制の適用が取消になり、猶予を受けていた納税額の全額と、利子の支払いが生じるのでAさんにアドバイスしましょう。
学科試験もですが、FP試験では改正ものが多く出題されます。
改正により特例承継計画の提出期限が2年延長されることで、事業承継税制(特例)の出題は今後も多くなりそうですね。
ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。
// ▼円グラフの中身
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label: "説明問題"
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// ▼開催回別棒グラフの中身
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// ▼分野別棒グラフの中身
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// ▼上記のグラフを描画するための記述
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