建設協力金方式とは、入居予定のテナントから建設資金を借り入れて、テナントに合った建物を建設し、テナントからの賃料を返済にあてます。
金融機関との融資交渉が不要で事業収支計画が立てやすいことが特徴です。
建設協力金は、返済期間中に返済ができるように入居後の返済計画を立て契約します。
事前にテナントが確保されており、テナントが事業を進めるので、土地の所有者は手間がかかりません。
しかし、テナント側が倒産や中途解約した場合は、収入の消滅や転用しづらい建物が残ってしまいます。
万一、経営不振などの理由により、テナントが撤退すると、店舗と債務が残ってしまうので、返済期間中に撤退したときは、建設協力金を放棄するという内容での契約になります。
ただ、実際にテナント側が撤退して、土地の所有者が建設協力金返済の免除を受けると、将来にわたる債務が免除されたことに伴う利益とみなされ、債務免除益として課税されてしまいます。
しかも、債務免除益は、テナント側が撤退した時点で発生するので、建設協力金の金額や返済期間によっては税負担が大きくなります。
建設協力金方式の契約内容について、中途解約の場合に、テナント側は建設協力金の返済の権利を放棄し、土地の所有者側は解約後の建設協力金返還が不要になる条項を入れてあるか確認が必要です。
土地は自用地から貸家建付地の評価になり、建物に関しては貸家評価となるため評価額が下がり節税が可能になります。
しかし、建設した建物も土地の所有者名義であることから、土地と建物両方の固定資産税が発生します。
特徴 | メリット | デメリット | |
建設協力金方式 | 土地所有者が建設する建物のテナントから建設資金を借り入れて建物を建設し賃貸する | テナントの確保が容易。入居者のノウハウで事業の立案が可能。借入が金融機関よりも有利。貸家、貸家建付地として評価 | 期間中にテナント側が倒産や中途解約した場合、予定していた賃貸収入の消滅や転用しづらい仕様の建物が残り、残された建物と補償金の処理が複雑になる |
等価交換 方式 | 土地所有者の土地にデベロッパーが建物を建設し、完成後、土地と建物それぞれの一部を交換し土地と建物を所有する | 資金はデベロッパーが調達するので、自ら資金を調達しなくても建物を所有できる。リスクが少ない。採算性も良い | 土地は実質共有となる |
定期借地権方式 | 土地を一定期間のみ貸し付け、収益を上げる。登記することで第三者に対抗できる | 土地の所有権を移転せず、期間の更新もなく更地返還される。ノウハウも不要で、安定して収益を上げることができる | 用途が事業用に限られるため汎用性がない。地代収入は他の方式と比べ収益が低い。貸宅地として評価 |
土地信託 方式 | 信託銀行に土地を信託し、信託銀行が資金を調達し、建物の建設や運用を行い、運用益の一部を信託配当として受け取る。名義は信託銀行となるが期間終了後は返還される | 資金は信託銀行が用意するので、自己資金が不要。ノウハウがなくても大丈夫。相続対策にもなる | 開発リスクは土地所有者が負う。元本保証ではない。赤字の場合、損失は土地所有者が負う |
事業受託 方式 | 一切の業務をデベロッパーが請け負う | デベロッパーが土地建物を一括で借り上げ、テナントへ転貸することで、安定的な収益の確保ができる | 建物の建設資金は、土地所有者自らが調達するなど借入金の返済が必要 |
自己建設 方式 | 事業の全てを土地所有者自らが行う。小規模事業向き | 収益の全てを享受できる。不動産事業のノウハウが蓄積できる | 建物の建設資金も、土地所有者自らが調達するなど、借入金の返済が必要 |
解答例
「前払地代方式による事業用定期借地権を設定します」
解答例
「建設協力金方式とは、入居予定のテナントから建設資金を借り入れて、テナントに合った建物を建設し、テナントからの賃料を返済にあてます。建設協力金は、返済期間中に返済ができるように入居後の返済計画を立て契約します」
「メリットは、テナントの確保が容易なこと。入居者のノウハウで事業ができることです」
「デメリットは、テナント側が倒産や中途解約した場合、収入の消滅や、転用しづらい建物が残ることです」
「事業用定期借地権方式とは、契約期間を10年以上50年未満で定め、契約期間満了時には建物が取り壊されるので、土地が確実に返還されます」
「メリットは、土地の所有権を移転せず、期間の更新もなく、土地が更地返還されること。建物投資が不要で、借入金の返済リスクがなく、安定した収益をあげることができることです」
「デメリットは、用途が事業用に限られるため、汎用性がなく、地代収入は家賃収入よりも低くなることや、事業者が倒産した場合は、倒産した会社の建物が残り、手続きが煩雑になることです」
「建設協力金方式の契約内容について確認する点は、中途解約の場合に、テナント側は、建設協力金の返済の権利を放棄し、オーナー側は、解約後の建設協力金返還が不要になる条項を入れてあるはずですが、今回の契約でも、同様の条項が盛り込まれているか確認が必要です」
「事業用定期借地権の契約内容について確認する点は、借地権の存続期間を10年以上30年未満、もしくは30年以上50年未満にすること。借地上の建物を事業用に限定すること。契約の際は、契約書を必ず公正証書で締結することです」
「公正証書でない書面で契約した場合は、事業用定期借地権としては無効となり、普通借地権として取り扱われる場合があります。この場合、期間が満了しても、返還を受けられないこともあるため注意が必要です」
「また、普通借家契約の条項に、契約期間中、賃料の増減はしない。という特約がある場合、増額請求はできなくなりますが、減額請求はできることになります。X社側には定期借家契約とし、契約期間中の家賃を減額しない旨の特約を入れることを交渉すべきです」
解答例
「事業用定期借地権方式の②を勧めます」
「Aさんの意向は、長男Cさんに承継する予定で、甲土地を手放すことは考えておらず、現在の地代収入相当額の確保と、老人ホームへの入居等のために、預貯金を増やしたいとあります」
「相続税の軽減対策がおこなわれているか確認する必要がありますが、借入金をしてまで、土地活用する必要はないと思います」
「前払地代方式の定期借地権では、賃料を一括で授受しても、期間に応じた収益計上ができ、契約期間満了時には、確実に土地が更地返還されるため、今回のケースでは、事業用定期借地権方式を勧めます」
解答例
「建設協力金方式の特徴は、入居予定のテナントから建設資金を借り入れて、テナントに合った建物を建設し、テナントからの賃料を返済にあてます。建設協力金は、返済期間中に返済ができるように、入居後の返済計画を立て契約します」
「メリットはテナントの確保が容易なこと。入居者のノウハウで事業ができること」
「デメリットはテナント側が、倒産や中途解約した場合、収入の消滅や転用しづらい建物が残ることです」
「契約内容について確認することは、建設協力金方式の契約では、中途解約の場合に、テナント側は建設協力金の返済の権利を放棄し、オーナー側は、解約後の建設協力金返還が不要になる条項を入れてあるはずですが、今回の契約でも同様の条項が盛り込まれているか確認が必要です」
解答例
「新規に事業資金を調達する必要なく、区分所有権を取得することができます」
「通常、マンションを建築する場合、事業資金を借り入れるなど、建築費を準備しなければなりません。資金を借り入れると、将来の金利上昇リスクや、家賃下落リスク、空室リスクなど様々なリスクが発生しますが、等価交換方式の場合、事業資金を調達する必要がなく、区分所有権を取得できるのでリスクが軽減できます」
「甲土地をそのまま所有していると、相続発生時に100%の相続税評価となりますが、マンションが建っている土地は貸家建付地となり、自用地価額×(1ー借地権割合×借家権割合)で算出でき、土地にかかる評価額を下げることができます」
解答例
「事業用定期借地権方式を勧めます」
「Aさんの意向は、先祖代々の土地である甲土地を手放すことは考えておらず、納税資金の確保のために、預貯金を増やしたいとあります」
「相続税の軽減対策がおこなわれているか確認する必要がありますが、借入金をしてまで、土地活用する必要はないと考えます」
「前払地代方式の定期借地権では、賃料を一括で授受しても期間に応じた収益計上ができ、契約期間満了時には、確実に土地が更地返還されるため、今回のケースでは、事業用定期借地権方式を勧めます」
解答例
「等価交換方式とは、土地をデベロッパーに譲渡し、代わりに建物を建ててもらい、土地の所有者は、建物の価値に対する土地の価値の分だけ、建物や不動産を所有することができる土地活用の方法です」
「等価交換のメリットは、土地所有者は、建築費用を出さずに建物を得られることや、建物のための手続きや建設を、ディベロッパーがすべて行ってくれるため、土地の所有者は建物建築に関する費用が不要なだけでなく、手続きに時間を取られることがありません」
「地上3階以上の、中高層の耐火共同住宅など、条件が合えば、立体買い替えの特例の適用を受けることができるので、譲渡益に係る所得税の課税を繰延べることができます」
「デメリットは、等価交換ではそれまで所有していた土地も、ディベロッパーと共有することになります」
「最終的にディベロッパーとの共同所有ということになるため、土地の所有権の一部を手放すことになります」
「権利関係が複雑化し、運用方針や、メンテナンス費用などで揉めるリスクが高くなります」
解答例
「事業用定期借地権と一般定期借地権の違いは、借地上の建物用途や契約期間に違いがあります」
「事業用定期借地権の場合は、建物用途が事業用に限定されますが、一般定期借地権の場合、建物の用途制限はありません」
「事業用定期借地権の借地期間は、10年以上50年未満ですが、一般定期借地権は最低期間が50年以上となっています」
「借地契約について、事業用定期借地権の場合は、必ず公正証書で締結しなければいけないこととなっていますが、一般定期借地権は公正証書以外の契約書でも有効です」
解答例
「保証金そのものには所得税はかかりませんが、預かった保証金の運用方法によっては、課税関係が発生します」
「保証金が、不動産所得や事業所得などの、業務にかかる資金として運用されている場合や、預貯金、公社債、貸付信託等の金融資産に運用されている場合は課税はありません」
「それ以外の場合は、保証金の額に適正な利率をかけた金額を、保証金を返還するまで、各年分の不動産所得の収入金額に算入します」
「保証金は借地契約終了時には、全額返還しなければならないので、債務控除の対象にはなりますが、保証金の全部が債務控除の対象となるのではなく、一定の計算方法で割り引いた金額しか控除の対象にはなりません」
「建物や構築物を所有するための、借地権の設定の対価として受け取った権利金は、一般的には不動産所得になります」
「権利金が土地の時価の50%を超える場合には、譲渡所得として課税されます」
「ただし、受け取った権利金が、その土地の地代の年額の20倍に相当する金額以下であれば不動産所得となり、地代の年額の20倍を超える場合には、譲渡所得となります」
「権利金は、借地契約終了時の返還義務は生じないので、債務控除の対象にはならず、相続税の課税対象になります」
「前払賃料方式で処理する要件を満たした場合は、一時金として課税されず、設定した期間に応じ、不動産所得の各年分の収入金額に算入します」
「前払地代は返還義務が生じないので、債務控除の対象にはならず、相続税の課税対象になります」
解答例
「X社のメリットは、契約期間が40年なので、期間満了時には、長男Cさんのライフプランにあった活用が考えられます」
「X社の留意点は、借地期間が40年になるため、その間に相続が発生すると、保証金の返還義務が長男Cさんに課されてしまうので注意が必要です」
「Y社のメリットは、年間地代の50%の70年分(総額2億1,000万円)を前払地代として受け取ることができるため、甲土地を売却せずにまとまった金額を受領できます」
「前払地代そのものには課税されず、前払地代で建物を取得した場合は、建物部分は減価償却しながら70年間運用できるので、収益性の向上が期待できます」
「Y社の留意点は、契約期間が70年と長期間になるので、Aさん家族やY社の状況が変化すること、自然災害等の発生などが考えられます」
解答例
「建設協力金方式とは、入居予定のテナントから建設資金を借り入れて、テナントに合った建物を建設し、テナントからの賃料を返済にあてます」
「建設協力金は、返済期間中に返済ができるように、入居後の返済計画を立て契約します」
「メリットは、テナントの確保が容易なこと。入居者のノウハウで事業ができることです」
「土地は自用地から貸家建付地の評価になり、建物に関しては貸家評価となるため、評価額が下がり節税が可能になります」
「甲土地の更地返還を要求することはできません。建物の所有者はAさんなので、建物を解体する場合の解体費用は、Aさんが負担することになります」
※店舗建設後の固定資産税・都市計画税について、甲土地全体では年額270万円、月極駐車場部分のみでは年額200万円と見込まれ、店舗(建物)は年額100万円と見込まれる。
解答例
「所得税については、前払地代方式で処理する要件を満たした場合、一時金として課税されず、設定した期間に応じ、不動産所得の各年分の収入金額に算入します」
「相続税については、前払地代は返還義務が生じないので、債務控除の対象にはならず相続税の課税対象になります」
解答例
「Ⅰ案を勧めます」
「将来の相続税についてですが、Ⅰ案とⅡ案の事業用借地権の場合、土地は貸宅地として評価されますが、定期借地権等の目的となっている宅地の価額は、その宅地の自用地評価額から定期借地権等の価額を控除した金額か、定期借地権等の残存期間に応じた割合で計算した金額を控除した価額のいずれか小さい方の金額となり、借地期間の残存年数が短くなるにつれて減額割合が小さくなっていきます」
「Ⅲ案の建設協力金方式の場合、相続税の評価額は、土地は貸家建付地として、建物は貸家として控除を受けられます。また、借り入れた建設協力金は負債としてみなされ課税の対象からは外れるので、その金額分の節税が可能になります」
「Ⅰ案の地代は780万円、固定資産税・都市計画税については月極駐車場部分のみなので年額200万円となり、580万円の収益になります」
「Ⅱ案の場合、地代1,000万円のうち、30%は前払地代として一括で受け取るので年額の地代は700万円になります。固定資産税・都市計画税については甲土地全体となるので年額270万円となり、年間の収益は430万円になります」
「Ⅲ案の地代は900万円で、固定資産税・都市計画税については月極駐車場部分の200万円と店舗の100万円を足した300万円になるので、年間の収益は600万円になります」
「したがって、Ⅲ案が収益は高くなりますが、建物がAさん名義となるため、建物の修繕やメンテナンスにかかる費用の負担も考慮する必要があります」
「事業用定期借地権の場合、契約期間満了後の土地は更地にして返還されるので、Ⅰ案の場合は月極駐車場部分のみが残り、Ⅱ案では甲土地全体が残ることになります」
「建設協力金方式では、建物の名義も土地所有者となるため、Ⅲ案の場合は契約満了後に資産が増え、新たにテナントを募集して貸し出したり、売却したりすることもできます」
「相続税や、将来の資産価値を考えるとⅢ案が条件面では有利ですが、建設協力金方式では、万が一借主側の倒産・撤退による中途解約などが起こった場合、借主希望の仕様に仕上げた建物や内装を新たなテナントに転用することや、業種の制限を受けて後継テナントの誘致が困難になってしまう可能性が考えられます」
「また、テナントが退去してしまった場合、建物の所有者はAさんなので、入居テナントが決まらない場合でも固定資産税などの税金を納めていく必要があり、契約満了時に建物を取得できる点はメリットですが、活用する予定がないと解体が必要となり、解体費を負担しなければならない可能性もあります」
「Aさんにどの程度、相続対策が必要なのか、希望する収益はいくらぐらいなのか、建物が必要なのかなど、長男Cさんと一緒に15~20年先の土地の活用法も見据えて、どの案を選択すべきか考える必要があります」