問題解決策と検討のポイント -税額の軽減対策 8.自社株評価と株価引き下げ対策-

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取引相場のない株式の評価

 業績の良い会社は、自社株の評価が高くなるため、相続税の納税や遺産分割の問題などが生じます。 

 株価を適宜引き下げながら、株式を後継者に移すためには、相続財産として課税される自社株が、どのように評価されるのかを押さえておくことが必要です。

同族以外の株主 同族株主
配当還元方式 類似業種比準方式 純資産価額方式 併用方式

 株式取得者が、同族株主の場合は原則的評価方式、同族株主以外は特例的評価方式で株価を算定します。

 同族株主とは、株主の一人とその同族関係者の議決権割合が30%以上の場合の、その株主と同族関係者のことです。

 ただし、議決権割合の50%超の同族関係者グループが存在すると、それが同族株主となり、30%以上の他のグループが存在していても同族株主にはなりません。

 特例的評価方式とは、事業承継の際に同族株主でない人物が株式を引き継ぐ場合の株価算定方法で、事業承継を行う企業の規模に関係なく、一律に配当還元方式によって株価を算定します。

 原則的評価方式は、会社の規模によって分類され、規模に応じた評価方式を使います。

 会社の規模は業種別に、総資産価額と従業員数、取引金額によって「大会社」「中会社」「小会社」に区分されます。 

 ただし、従業員数が70名以上の場合は、すべて「大会社」に区分されます。

 会社規模が大会社の場合、原則的評価方式による株価は、類似業種比準方式により算定します。

 類似業種比準方式では、「配当」「利益」「純資産」の3要素で計算します。

 つまり、この3要素を下げることができれば、類似業種比準価額による株価は引き下げられるということです。

役員退職金の支給による株価引き下げ

 役員退職金の支給で下げることができる要素は、「利益」と「純資産」です。

 役員退職金を損金算入することで、1株あたりの年利益金額が減少するとともに、1株あたりの簿価純資産価額も減少するので、類似業種比準価額を引き下げることができます。

役員退職金の支給による株価引き下げに関するツッコミ質問

 役員退職金に関するツッコミ質問として、適正な役員退職金額と退職所得控除、死亡退職金に関する質問が考えられます。

適正な退職金額

 役員退職金は原則として、会社の費用として損金算入できます。

 しかし、不相当に高額な部分については、過大な役員退職金として、損金算入することができません。

 適正な退職金額を算定する方法として、一般的には功績倍率方式を採用しています。

 功績倍率方式の計算式は、「最終月額報酬×役員在籍年数×功績倍率」です。

 功績倍率方式を使う場合には、最終月額報酬と役員在籍年数を、会社で正確に把握しておく必要があります。

退職所得の課税関係

 退職金を受領した場合は、「(退職金額ー退職所得控除額)×2分の1」が退職所得となります。

 退職所得控除額は、勤続年数により異なり、20年以下の場合は「40万円×勤続年数(最低80万円)」20年超の場合は、「800万円+70万円×(勤続年数ー20年)」で計算します。

 退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、ほぼ正確に源泉徴収され、通常、確定申告は不要となります。

死亡退職金

 被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。

 ただし、死亡保険金とは別枠で「500万円×法定相続人の数」までは非課税となります。

 また、弔慰金等についても被相続人の死亡が業務上の場合は、普通給与の3年分、業務外の場合は6ヶ月分が非課税とされています。

簿価純資産の引き下げによる株価引き下げ 

 類似業種比準方式では帳簿上の金額を参照します。

 したがって、会社が所有する不動産等のうち、簿価より時価が値下りして、含み損が生じている場合でも、何もしなければ会社の資産は簿価で計算することになります。

 会社の資産を売却した場合、現金は入ってくるものの、含み損がある資産の場合は売却損がでるので、売却損の分だけ類似業種比準方式での純資産を減らすことができます。

 また、売却損を出したことで利益も圧縮できるようになります。

 売却損は純資産に限らず利益まで減らせるので、類似業種比準方式での株価対策には有効です。

純資産価額方式での不動産取得による株価引き下げ

 株式の評価方法が純資産価額方式を用いるときや併用方式の場合は、不動産の取得によって、株式の評価額を下げることができます。

 純資産価額方式とは会社の資産や負債を相続税評価で算出し、株価を算定する方法です。

 現金から不動産に会社の資産を変えることで、株価の評価額を下げることができます。

 土地の評価額は国税庁が発表している路線価、建物は固定資産税評価額を基準とすることが一般的です。

 路線価は、売買取引をした時の金額の70%~80%くらい、建物については、実際の価格の50~60%ほどになります。

 自社ビルを建てた場合には、建物は建築費用の約70%での算定となり、法人税では減価償却費の計上も行えます。

 また、賃貸マンションなどの収益不動産を建てることで、土地は貸家建付地としての評価となり、自社ビルを建てるよりも、土地は15%程度の評価減を受けられ、建物も固定資産税評価額からの30%の評価減になります。

 したがって、不動産を購入することで現金をそのまま保有しているよりも評価額が減少し、結果として純資産価額が低くなります。

 ただし、不動産を用いた事業承継での株価対策をする場合、不動産を購入して3年以内については株価を時価で計算するように定められています。

 不動産取得は株価引下げに効果がありますが、その効果は3年経過しないと適用されない点に注意が必要です。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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