2022年1月実施のFP1級学科試験の合格を目指すNさんに、絶対合格ミッションを課せられた、先輩FP1級技能士のMさんが、試験対策・勉強方法、傾向と対策などをアドバイスします。
今回は、FP試験サポート中のNさんから質問があった、「退職金と確定拠出年金の課税関係」を紹介します。
ファイナンシャル・プランナー Mさん
FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
AさんやX社からの相談が多く、後輩のNさんにFP1級試験のアドバイスをしています。
教わる人 Nさん
FP2級技能士。AFP。
50歳。FP1級試験を受験するも、72点で惨敗。次の試験で合格するため勉強中!
試験勉強を始める前に、出題傾向をみてみましょう。
FP1級学科試験で退職金と確定拠出年金の問題は、2020年1月の基礎編で出題されています。
2022年5月からiDeCoのルールが一部変更になり、出題される可能性も高く「絶対に落とせない問題」ですね。
iDeCoに関する法改正の内容は、
国民年金の方は積み立て可能期間が5年延長され、65歳まで期間が伸びる点、
受け取り開始可能時期が「60歳から74歳11ヶ月までの間」に拡大される点などですよね。
FP1級試験では、基礎編、応用編共に計算問題が出題されます。
計算問題は計算式さえ間違わなければ、ほとんど過去問のリライトなので、知識レベルを問う問題や旬な時事問題、専門家でないとわからない問題よりも点数が稼ぎやすいので、計算問題は、応用編も基礎編も分野別に目指す得点を把握して「絶対に落とせない問題」を確実に正答することが重要です。
「絶対に落とせない問題」って、どの問題も絶対に落とせない問題じゃないんですか?
どの問題も落とせない問題として勉強する心構えは、FP1級技能士として重要な資質だけど、試験に合格するためには全ての問題を正答する必要はありません。
FP1級技能士は試験合格後も能力の啓発が求められるので、わからない問題は合格後に取り組んでも遅くありません。
「絶対に落とせない問題」とは、FP1級技能士として最低限理解しておくべき内容だと思うので、学習のスタートにはピッタリです。
応用編の出題傾向は、こちらの記事も参考にしてください。
iDeCoを一時金で受け取った場合も退職所得控除が適用され、積立年数により計算方法が変わります。
積立年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×積立年数(80万円に満たない場合は、80万円) |
20年超 | 70万円×(積立年数−20年)+800万円 |
会社の退職金を受け取った時と、同じ計算式ですね。
退職所得控除は基本的には同じ計算式ですが、会社の退職金とiDeCoを受け取るタイミングによって計算方法が変わるので注意しましょう。
退職金とiDeCoを同じ年に受け取った場合は、勤続年数とiDeCoの積立期間が重複している期間は、退職所得控除の計算式に重複してカウントできません。
60歳で定年退職を迎え、同時にiDeCoも一時金で受け取った場合などですね。
例えば勤続年数が30歳から60歳までの30年間で、iDeCoの積み立て期間が50歳から60歳までの10年間だった場合、次のような計算式になります。
勤続年数30年間+iDeCoの積立期間10年間-重複期間10年間=30年
70万円×(30年−20年)+800万円=1,500万円
退職金を先に受取り、その後14年以内にiDeCoの一時金を受け取る場合は、退職金を受取った時に退職所得控除を使い切ったかどうかで計算方法が異なります。
退職金を受取った後にiDeCoの一時金を受取る場合
勤続期間とiDeCoの積み立て期間が重複している期間を退職所得控除の計算式から差し引く
〈例〉勤続年数30年、iDeCoの積立期間15年間、重複期間10年間
控除額=(iDeCoの積立期間15年間-重複期間10年間)×40万円=200万円
「みなし勤続年数」を計算する
退職金額 | みなし勤続年数(1年未満切り捨て) |
800万円以下 | 退職金額÷40万円 |
800万円超 | (退職金額−800万円)÷70万円+20年 |
〈例〉退職金額1,000万円、勤続年数30年、iDeCoの積立期間15年間、重複期間10年間
みなし勤続年数=(1,000万円-800万円)÷70万円+20年=22年
みなし勤続年数適用後の重複期間=重複期間10年間-(勤続年数30年-みなし勤続年数22年)=2年間
控除額=(iDeCoの積立期間15年間-重複期間2年間)×40万円=520万円
逆に、iDeCoの一時金を先に受取り、その後退職金を受け取る場合は、iDeCoの一時金を受け取った時から5年以上経過していれば、退職所得控除はそれぞれ全期間で控除額の計算ができます。
例えば、勤続年数が30年間、iDeCoの積立期間が20年間の場合で、iDeCoの一時金を60歳で受取り、退職金を5年経過後の65歳で受け取った場合は、iDeCoを受け取る際の退職所得控除は加入年数20年間で計算し、65歳の退職金受け取り時はiDeCoの積立期間20年間を控除することなく、勤続年数の30年間を退職所得控除の計算で使うことができます。
いろんなケースがあって、難しいですね。
それでは、2020年1月実施の過去問を解いてみましょう。
2020年1月《問26》
Aさんは、2019年中に、勤務先から退職金を受け取り、確定拠出年金から老齢給付金を一時金で受け取った。下記の〈条件〉に基づき、2019年分の退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとし、記載のない事項については考慮しないものとする。〈条件〉
- 退職金に関する事項
退職手当等の収入金額 : 1,800万円
勤続期間 : 1990年8月1日~2019年3月31日(28年8カ月)- 確定拠出年金の老齢給付金に関する事項
老齢給付金の金額 : 300万円
個人型年金加入者期間 : 2005年4月~2019年10月(14年7カ月)
1) 35万円
2) 185万円
3) 300万円
4) 335万円
〈答〉 3) 300万円
出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
2020年1月《問26》 解答・解説
①勤続期間 : 28年8ヶ月(1990年8月1日〜2019年3月31日)
個人型年金加入者期間 : 14年7カ月(2005年4月~2019年10月)
勤続期間の29年+個人型年金加入者期間のうち重複していない期間の1年=30年
70万円×(30年−20年)+800万円=1,500万円
{(退職金1,800万円+確定拠出年金の老齢給付300万円)-1,500万円}÷2=300万円
2021年1月試験に向けて、「絶対に落とせない問題」の中から、退職金とiDeCoを受け取った場合の問題でした。
年金関係は、改正を控えているので色々な角度から出題される可能性があります。
iDeCoの受け取り方に関しては、実際にお客様から相談を受けるケースも多くなります。お客様の条件によって、どのような受け取り方が有利かは変わってきます。
自分の場合はどうなんだろうと興味を持って、色々なパターンをシミュレーションしてみるのも良いかもしれませんね。
自分のためにもなると考えれば、FP1級の試験勉強も手応えを感じ楽しくなるはずです。
計算問題の種類も多くて、覚えたと思ってもしばらくすると忘れてしまう、なんてことも何度もあります。
私の場合、毎日1問でも継続して問題を解き、視覚と電卓の順番で覚えることができました。
Nさんの合格ミッション達成に向けて全力でサポートします!
最後まで諦めずに頑張りましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。