公開日 2021年3月31日 最終更新日 2023年1月3日
FP1級試験の勉強を始めても、出題範囲が広すぎて何から手をつけていいのかわからなかったり、せっかく覚えても忘れてしまい心が折れることってありませんか?
このサイトでは、私が実践し得点が倍増した勉強方法についてご紹介します。
今回はD.分野 タックスプランニングから略式別表四の問題です。
略式別表四の計算問題は、FP1級試験の応用編で過去7回のうち4回出題されています。
応用編のタックスプランニングの問題は事業所得の計算から課税総所得金額を求める白色・青色申告と、略式別表四から法人税額を求める問題のどちらかが出題されるので、白色・青色申告と略式別表四の計算式は完璧に覚えておく必要があります。
略式別表四のポイントは設例をしっかり読むことです。
設例をしっかり読むと計算しなくても解答できる問題もあるので、落ち着いて設例を読み込みましょう。
略式別表四の問題を間違えると、次の法人税額の問題も間違えることになるので注意しましょう。
応用編は、模範解答だけでなく総合的な観点を考慮して採点されます。配点は公表されていませんので独自の配点方法で計算します。
【例】[第1問]《問51》穴埋め問題8問(8点) 《問52》穴埋め問題6問(6点) 《問53》計算問題2問(20点−8点−6点=6点)
《問57》 | 《問58》 | 《問59》 | ||||
2021年9月 |
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7点 |
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5点 |
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8点 |
2021年5月 |
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8点 |
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6点 |
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6点 |
2021年1月 |
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8点 |
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6点 |
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6点 |
2020年9月 |
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7点 |
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7点 |
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6点 |
2020年1月 |
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6点 |
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8点 |
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6点 |
2019年9月 |
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7点 |
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7点 |
間違っている選択肢を選び適切な内容に訂正する
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6点 |
2019年5月 |
間違っている選択肢を選び適切な内容に訂正する
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8点 |
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6点 |
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6点 |
■略式別表 ■白色申告 ■青色申告
FP1級学科試験 応用編《A分野の計算問題》 (2021年9月開催〜2019年5月まで 7回分を集計)
それでは、過去問を解きながら解説していきます。
《設例》のX社の当期の〈資料〉と下記の〈条件〉に基づき、同社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑦に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。
〈条件〉
・《設例》に示されている数値等以外の事項は、いっさい考慮しないこととする。
・所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、X社にとって有利となる方法を選択すること。
《設例》
製造業を営むX株式会社(資本金10,000千円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社で株主はすべて個人、租税特別措置法上の中小企業者等に該当する。以下、「X社」という)の2021年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日。以下、「当期」という)における法人税の確定申告に係る資料は、以下のとおりである。
〈資料〉
1.減価償却費に関する事項
当期における減価償却費は、その全額について損金経理を行っている。このうち、機械装置の減価償却費は9,400千円であるが、その償却限度額は8,000千円であった。一方、器具備品の減価償却費は2,500千円であるが、その償却限度額は3,300千円であった。なお、前期からの繰越償却超過額が当該機械装置について800千円あり、当該器具備品について500千円ある。2.交際費等に関する事項
当期における交際費等の金額は18,600千円で、全額を損金経理により支出している。このうち、参加者1人当たり5千円以下の飲食費が1,000千円含まれており、その飲食費を除いた接待飲食費に該当するものが17,000千円含れている(いずれも得意先との会食によるもので、専ら社内の者同士で行うものは含まれておらず、所定の事項を記載した書類も保存されている)。その他のものは、すべて税法上の交際費等に該当する。3.受取配当金に関する事項
当期において、上場会社であるY社から、X社が前々期から保有しているY社株式に係る配当金2,600千円(源泉所得税控除前)を受け取った。なお、Y社株式は非支配目的株式等に該当する。4.税額控除に関する事項
当期における「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除」に係る税額控除額が750千円ある。5.「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項
(1) 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額30千円・復興特別所得税額630円、受取配当金について源泉徴収された所得税額390千円・復興特別所得税額8,190円および当期確定申告分の見積納税額8,800千円の合計額9,228,820円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は8,800千円である。
(2) 当期中に「未払法人税等」を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(地方法人特別税を含む)は920千円である。
(3) 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。
(4) 中間申告および中間納税については、考慮しないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
5. 「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項をチェック
“損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額390千円・復興特別所得税額8,190円および当期確定申告分の見積納税額8,800千円の合計額9,228,820円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は8,800千円である。”
《解説》
納税充当金額は当期に確定した法人税を翌期の支払いに充てるために計上
確定申告の見積納税額、未払法人税の期末残高=①8,800,000(円)
損金経理をした納税充当金=「未払い法人税等」の金額
“当期における減価償却費は、その全額について損金経理を行っている。このうち、機械装置の減価償却費は9,400千円であるが、その償却限度額は8,000千円であった。一方、器具備品の減価償却費は2,500千円であるが、その償却限度額は3,300千円であった。なお、前期からの繰越償却超過額が当該機械装置について800千円あり、当該器具備品について500千円ある。”
《解説》
償却限度額を超過した減価償却費は損金不算入
減価償却費の償却超過額=減価償却費−償却限度額
9,400,000円−8,000,000円=②1,400,000(円)
2. 交際費等に関する事項の交際費等の金額、5千円以下の飲食費、接待飲食費をチェック
“当期における交際費等の金額は18,600千円で、全額を損金経理により支出している。このうち、参加者1人当たり5千円以下の飲食費が1,000千円含まれており、その飲食費を除いた接待飲食費に該当するものが17,000千円含まれている(いずれも得意先との会食によるもので、専ら社内の者同士で行うものは含まれておらず、所定の事項を記載した書類も保存されている)。その他のものは、すべて税法上の交際費等に該当する。”
《解説》
交際費の問題は3ステップで計算します
⒈ 交際費等の金額から参加者1人当たり5千円以下の飲食費を引きます。
18,600,000円−1,000,000円=17,600,000円
⒉ 接待飲食費の50%と800万円のいずれか多い金額を交際費の損金算入限度額とします。
17,000,000円×50%=8,500,000円
8,500,000円>8,000,000円 交際費の損金算入限度額=8,500,000円
⒊ 交際費から損金算入限度額を差し引く
17,600,000円−8,500,000円=③9,100,000円
“当期における減価償却費は、その全額について損金経理を行っている。このうち、機械装置の減価償却費は9,400千円であるが、その償却限度額は8,000千円であった。一方、器具備品の減価償却費は2,500千円であるが、その償却限度額は3,300千円であった。なお、前期からの繰越償却超過額が当該機械装置について800千円あり、当該器具備品について500千円ある。”
《解説》
当期の減価償却費が償却限度額に達していない場合、同一科目の繰越償却超過額は当期に損金算入できる
償却限度額−減価償却費=当期認容可能額
3,300,000円−2,500,000円=800,000円
800,000円>500,000円 減価償却超過額の当期認容額=④500,000円
3. 受取配当金に関する事項をチェック
“当期において、上場会社であるY社から、X社が前々期から保有しているY社株式に係る配当金2,600千円(源泉所得税控除前)を受け取った。なお、Y社株式は非支配目的株式等に該当する。”
《解説》
受取配当金に関する計算は4パターンあります。
よく出るのは非支配目的株式等に該当する場合ですが、他のケースも難しくないので確実に覚えましょう
2,600,000円×20%=⑤520,000(円)
5. 「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項の⑴、⑶をチェック
“⑴ 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額30千円・復興特別所得税額630円、受取配当金について源泉徴収された所得税額390千円・復興特別所得税額8,190円および当期確定申告分の見積納税額8,800千円の合計額9,228,820円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は8,800千円である。
⑶ 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。”
《解説》
設例の5.⑶で「所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除する」と書かれている。
30,000円+630円+390,000円+8,190円=⑥428,820(円)
《解説》
加算、減算は文字通り足して引くことですが法人税額から控除される所得税額は控除なのに足すので気をつけましょう。
当期利益の額+加算項目の小計−減算項目の小計+法人税額から控除される所得税額
11,211,180円+19,300,000円−1,940,000円+428,820円=⑦29,000,000(円)
略式別表四の問題はパターンが決まっている問題が多く、慣れてしまうと得点源になる問題なので繰り返し学習しましょう。2020年9月に出題された問題以外にも退職金に関する問題が⑧退職給付費用の損金算入額と⑨退職金支払いの当期認容額の2パターン出題されることがあるので退職金に関する問題もチェックしましょう。
“当期において役員退職金を70,000千円支給し、損金経理を行なっている。役員退職金の税法上の適正額は、最終報酬月額1,000千円、役員在任期間10年、功績倍率3.0倍として功績倍率方式により算出した金額が妥当であると判断されたため支給額のうち適正額を上回る部分については別表四において自己否認を行うことにした。”
《解説》
退職給付費用の損金算入額は2ステップで計算します
⒈役員退職慰労金を求めます
役員退職慰労金は役員最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率です。
1,000,000×10年×3.0=30,000,000円
⒉役員退職金の損金不算入額を求めます。
支給した退職金−妥当な退職金
70,000,000円−30,000,000円=⑧40,000,000(円)
退職給付費用の損金不算入額は40,000,000円
“当期において、決算時に退職給付費用40,000千円を損金経理するとともに、同額を退職給付引当金として負債計上している。また、従業員の退職金支払いの際に退職給付引当金を6,700千円取崩し同額を現金で支払っている。”
《解説》
⒈退職給付引当金は税務上損金不算入となるので 退職給付費用の損金不参入額は40,000,000円
⒉支給のために取り崩した退職給与引当金(退職金を支給した年度に支出した額)は損金算入可能なので退職金支払いの当期認容額は⑨6,700,000円
応用編の問題を解く場合は計算過程の記載が不要な問題でも必ずノートに体裁を揃えて書くようにしています。
何回も同じような問題を同じような体裁に揃えて記載することで視覚や体で覚えることもでき、計算ミスを防ぐこともできます。それに丁寧に計算過程を書くことで少しでも部分点のアピールになればとも思います。
私が実際に使っていた用紙です。
画像をクリックすると拡大します。 注)間違っている箇所もあります(赤字)
略式別表四の計算問題は計算式自体は難しくありませんが、問題文が長く読んでいる途中で見落としてしまい計算ミスする場合や、千円単位で記載されている箇所と円単位で記載されている箇所があるのでうっかり桁数を間違えて計算してしまうことがあります。落ち着いて問題文を読むことと計算単位を円単位にするなど統一しましょう。
FP1級試験では「どっちだったかなぁ」と迷う場面が多々あります。何度も繰り返し問題を解き色々なパターンに対応できるようにしましょう。
最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。