公開日 2024年12月13日 最終更新日 2024年12月18日
【第4問】 次の設例に基づいて、下記の各問( 《問60》~《問62》 )に答えなさい。
《設 例》
社員のAさん(50歳)は、K市内にある自宅で妻と2人で暮らしている。自宅はAさんが5年前に父親の相続により取得したものであり、建築から40年が経過した建物は、所々に傷みが目立つようになってきた。自宅の建替えも検討したが、現在住んでいる場所よりも交通の便のよい地域に引っ越したいと考え、自宅を売却するつもりでいる。
Aさんは、引っ越し先を探すなかで、売りに出されていた甲土地に興味を持ち、甲土地を購入して、その上に自宅として戸建て住宅を建築することを検討している。
甲土地の概要は、以下のとおりである。
![](https://i0.wp.com/siken.kusumoto-fp.com/wp-content/uploads/2024/12/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88-2024-12-12-10.48.09.png?resize=600%2C370&ssl=1)
(注)
- 甲土地は320㎡の長方形の土地であり、近隣商業地域に属する部分は160㎡、第一種低層住居専用地域に属する部分は160㎡である。
- 甲土地は建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地ではない。
- 幅員3mの公道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路である。3m公道の中心線は、当該道路の中心部にある。また、3m公道の甲土地の反対側は宅地であり、がけ地や川等ではない。
- 指定建蔽率および指定容積率は、それぞれ都市計画において定められた数値である。
- 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
|
技能検定試験問題の使用について 出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級学科試験 2024年9月
《問61》
Aさんが、下記の〈譲渡資産および買換資産に関する資料〉に基づき、自宅を買い換えた場合、次の①および②に答えなさい。 〔計算過程〕を示し、 〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、本問の譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。
① 「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額はいくらか。
② 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」および「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」 の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額はいくらか。
〈譲渡資産および買換資産に関する資料〉
・譲渡資産の譲渡価額 |
: 8,000万円 |
・譲渡資産の取得費 |
: 不明 |
・譲渡費用 |
: 480万円 |
・買換資産の取得価額 |
: 7,600万円 |
技能検定試験問題の使用について 出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級学科試験 2024年9月
解答解説 問61
〈答〉 ① 723,200(円) ② 5,854,500(円)
①マイホームの買換えの特例の適用を受ける場合、売った金額より買い換えた金額が多いときは、所得税の課税が将来に繰り延べられ、売った年については譲渡所得がなかったものとされます。
売った金額より買い換えた金額が少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。
- 譲渡資産の譲渡価額 : 8,000万円
- 買換資産の取得価額 : 7,600万円
収入金額 = 80,000,000円 – 76,000,000円 = 4,000,000円
譲渡所得の金額は、収入金額から必要経費(取得費と譲渡費用)を差し引いて計算します。
- 収入金額 : 400万円
- 譲渡資産の取得費 : 不明
- 譲渡費用 : 480万円
取得費が不明の場合、概算取得費として譲渡価額の5%を用います。
必要経費は、収入金額が、譲渡価額そのものではなく、その譲渡価額と買換資産との差額なので、収入金額と同じ割合(譲渡価額に対する収入金額の割合)で計算します。
- ( 譲渡資産の取得費 + 譲渡費用 ) × 収入金額 / 譲渡資産の譲渡価格
4,000,000円 – ( 80,000,000円 × 5% + 4,800,000円 ) × 4,000,000円 / 80,000,000円 = 3,560,000円
所得税の計算
土地・建物を譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるものの税額は、譲渡所得金額 × 20%(所得税15%、住民税5%)となります。
- 所得税:3,560,000円 × 15%=534,000円
- 復興特別所得税:534,000円 × 2.1% = 11,214円
534,000円 + 11,214円 = 545,200円(100円未満切捨て)
- 住民税:3,560,000円 × 5% = 178,000円
- 合計:545,200円 + 178,000円 = 723,200円
〈答〉 ① 723,200(円)
② ⑴ 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
- 居住用財産である土地建物等を譲渡した場合、譲渡益から3,000万円が控除される特例です。
80,000,000円 – ( 80,000,000円 ×5 % + 4,800,000円 ) – 30,000,000円 = 41,200,000円
⑵ 居住用財産(所有期間10年超)の譲渡の低率課税
- 譲渡した年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産である土地建物等を譲渡した場合に、3,000万円控除後の譲渡益に対する税率が低くなる特例です。
- この特例が適用になった場合、課税譲渡所得の6,000万円以下の部分の税率は、譲渡所得金額 × 14%(所得税10%、住民税4%)になり、6,000万円超の部分については、譲渡所得金額 × 20%(所得税15%、住民税5%)となります。(長期譲渡所得と同じ税率)
- 所得税:41,200,000円 × 10% = 4,120,000円
- 復興特別所得税:4,120,000円 × 2.1% = 86,520円
4,120,000円 + 86,520円 = 4,206,500円(100円未満切捨て)
- 住民税:41,200,000円 × 4% = 1,648,000円
- 合計:4,206,500円 + 1,648,000円 =5,854,500円
〈答〉 ② 5,854,500(円)
関連