公開日 2024年12月13日 最終更新日 2024年12月18日
【第3問】 次の設例に基づいて、下記の各問( 《問57》~《問59》 )に答えなさい。
《設 例》
Aさんは、2024年2月末に、31年11カ月勤務した会社を早期退職し、2024年3月1日から個人事業主として妻Bさんと小売業を営んでいる。 Aさんは、2024年中に地震により自宅の一部に損害を受け、地震保険から受け取った保険金と預貯金を修理費用に充てており、雑損控除の適用を受けたいと考えている。 Aさんの家族および2024年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
- Aさん (54歳): 青色申告者
- 妻Bさん(50歳): 2024年中に青色事業専従者として給与収入120万円を得ている。
〈Aさんの2024年分の収入等に関する資料〉
- 事業所得に関する事項
① 売上高、仕入高等
項 目 |
金 額 |
売上高 |
9,200万円 |
仕入高 |
7,275万円 |
年末の商品棚卸高※1 |
□□□万円 |
必要経費※2 |
1,194万円 |
※1 商品棚卸高は、先入先出法による評価額は660万円、移動平均法による評価 額は650万円、最終仕入原価法による評価額は670万円である。なお、Aさんは、 棚卸資産の評価方法について、税務上の届出はしていない。 ※2 上記の必要経費は適正に計上されている。なお、当該必要経費には、青色事 業専従者給与は含まれているが、売上原価および下記②は含まれていない。
② 取得した減価償却資産(上記①の必要経費には含まれていない)
パソコン 1台 |
3月1日に事業用として8万円で取得し、取得後直ちに事業の用に供している。 (耐用年数4年、償却率(定率法 0.5 / 定額法 0.25) ) |
機械設備 1台 |
3月10日に事業用として240万円で取得し、取得後直ちに事業の用に供している。なお、Aさんは、減価償却資産の減価償却方法について、税務上の届出はしていない。 (耐用年数8年、償却率(定率法 0.25 / 定額法 0.125) ) |
- 退職所得に関する事項
会社から支給を受けた退職金に係る収入金額 : 3,000万円 ※退職金の受給時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。
- 給与所得に関する事項
会社から支給を受けた給与に係る収入金額 : 160万円
- 地震による損害額と保険金等に関する事項
損害金額 : 450万円(下記の災害関連支出は含まれていない) 災害関連支出の金額 : 140万円 地震保険からの保険金 : 200万円
※妻Bさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 ※Aさんと妻Bさんは、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 ※Aさんと妻Bさんの年齢は、いずれも2024年12月31日現在のものである。 ※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
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技能検定試験問題の使用について 出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級学科試験 2024年9月
《問58》
《設例》の〈Aさんの2024年分の収入等に関する資料〉に基づいて、Aさんの2024年分の①および②の金額をそれぞれ求めなさい。いずれも〔計算過程〕を示し、 〈答〉は円単位とすること。
なお、Aさんは、正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記帳し、それに基づき作成した貸借対照表および損益計算書等を確定申告書に添付して、確定申告期限内に提出し、かつ、e-Tax による申告(電子申告)を行うものとし、事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除額を控除すること。また、特に記載のない限り、2024 年分の所得税が最も少なくなる課税方法を選択するものとする。
① 退職所得の金額
② 事業所得の金額〈雑損控除〉
技能検定試験問題の使用について 出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級学科試験 2024年9月
解答解説 問58
〈答〉 ① 6,800,000(円)② 13,030,000(円)
- 退職所得の計算式
退職所得 = ( 退職収入 − 退職所得控除 ) × 1/2
- 退職所得控除
⒈ 勤続年数が20年以下の期間は1年あたり40万円(最低80万円)
⒉ 20年を超える期間は1年あたり70万円
勤続年数の期間に1年に満たない端数があるときは、基本的には1年に切り上げます。
- 30,000,000円 – {8,000,000円 + 700,000円 × (32年 – 20 年)} = 13,600,000円
13,600,000円 × 1/2 = 6,800,000円
〈答〉 ① 6,800,000(円)
- 事業所得の計算式
事業所得 = 売上高 – 売上原価 – 必要経費
- 売上高
92,000,000円(売上値引および返品があった場合は売上から差し引きます)
- 売上原価
年初の商品棚卸高 + 仕入高 – 期末の商品棚卸高
(棚卸資産の評価方法について届出をしていない場合は、最終仕入れ原価法を適用します)
0 + 72,750,000円 – 6,700,000円 = 66,050,000円
- 必要経費
11,940,000円
- 必要経費に減価償却費を加える
建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアは定額法で計算します。
また、法人はそれ以外の資産については定率法、個人事業主はすべての減価償却費を定額法で計算するのが原則です。
・機械設備(年度の途中で取得した資産の減価償却費は、1年分ではなく月割りで計算します)
2,400,000円 × 0.125 × 10月/12月 = 250,000円
・パソコン
使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を取得した事業年度に一括して費用計上が可能です。
= 80,000円
- 青色申告特別控除
e-Tax による申告(電子申告)又は優良な電子帳簿の保存の要件を満たしている方は、最高 65万円を差し引くことができます。
- 事業所得
92,000,000円 – ( 66,050,000円 + 11,940,000円 + 250,000円 + 80,000円 ) – 650,000円 = 13,030,000円
〈答〉 ② 13,030,000(円)
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