公開日 2022年1月25日 最終更新日 2022年3月20日
FP1級学科試験対策として、「応用編で得点を稼ごう!」 「基礎編で50点、応用編で70点、合計120点での合格を目指しましょう!」などと、応用編を中心に勉強した方が合格しやすいということをFP1級試験ではよく言われます。
私も、テキストを読んだだけでは理解できなかった問題も、応用編の計算問題を勉強することで、解けなかった問題を正解することが多くり、何を書いてあるか理解不能だったテキストも少しずつ理解できるようになり、段々と「合格できるんじゃないか」と自信もつきました。
応用編の勉強といえば計算問題が中心で、老齢基礎年金やインタレストカバレッジレシオ、建蔽率や容積率などの計算式を何度も紙に書き、計算式を覚えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、計算問題が解けるだけで、本試験に望んでも応用編の得点は思ったより取れない場合があります。
応用編の配点割合は、計算問題と穴埋め問題が同じぐらいの配点割合だからです。
特に2022年1月の試験では、出題傾向が変わり、戸惑われた方も多いのではないでしょうか。
計算問題の出題傾向を、過去の試験問題で検証してみました。
応用編は、模範解答だけでなく総合的な観点を考慮して採点されます。配点は公表されていませんので独自の配点方法で計算します。
【例】[第1問]《問51》穴埋め問題8問(8点) 《問52》穴埋め問題6問(6点) 《問53》計算問題2問(20点−8点−6点=6点)
■計算問題の配点割合 ■穴埋め問題の配点割合 マウスオーバーで数値が表示されます(単位:%)
(2022年1月開催〜2019年9月まで 7回分を集計)
2022年1月から2019年9月まで過去7回分、応用編の全問題を合計した配点割合では、計算問題は53%、穴埋め問題は47%で、わずかに計算問題の方が配点割合が高いものの、ほとんど配点割合の差はありませんでした。
2021年9月までの配点割合では、計算問題は50.29%、穴埋め問題は49.71%だったので2022年1月試験では計算問題の割合が増えて穴埋め問題の割合が減っています。
2021年9月試験から、出題傾向が変わってきました。
今まで出題されていた「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」が出題されていません。
その代わり、不動産分野では、応用問題なのに四択問題が出題されています。
計算問題の出題の仕方も、2021年9月の応用編の問題では説明文中に計算させるような形での出題が多くなり、今までとは問題文の記載方法が変わってきています。
2021年5月の合格率が20%を超えたので、出題者側も傾向を変えてきたのかもしれません。
過去問で出題された計算式を丸暗記しただけでは、通用しない問題も出題されてきているので、「過去問や精選問題集を◯周しましょう!」という学習方法だけでは通用しないかもしれません。
応用問題=計算問題ではなく、穴埋め問題の対策や、計算式を丸暗記ではなく理解することが必要ですね。
次に、試験実施日別の計算問題と穴埋め問題の、配点数の違いを比較してみました。
■計算問題の配点 ■穴埋め問題の配点 マウスオーバーで数値が表示されます(単位:点)
この比較では、試験実施日の内容によって計算問題と穴埋め問題が50:50に近い割合で出題される試験日もあれば、40:60や60:40の割合で出題される試験日があると言うことです。
試験によっては、計算問題を完璧に解答することができても、穴埋め問題の正答率が低ければ思ったように応用編の得点が取れないということです。
応用編の試験対策で、計算問題ばかりを練習していても、本試験で想定していた70点以上の得点が取れない可能性があります。
2021年5月の応用編の出題割合は、計算問題41点、穴埋め問題59点の割合で出題されています。もしかしたら合格率が20%を超えた要因の一つが、ここにあるのかもしれません。
2022年1月の試験も応用編は、出題傾向が変わっています。
合格率を調整するためなのかは、わかりませんが、基礎編の難易度をこれ以上難しくするのは限界かもしれないので、応用編の出題傾向を変更してきたのかもしれません。
最後に、分野別の計算問題と、穴埋め問題の配点割合です。
A分野では穴埋め問題の配点が高く、E分野(不動産)、F分野(相続・事業承継)では計算問題の配点が高いことがわかります。
■計算問題の配点割合 ■穴埋め問題の配点割合 マウスオーバーで数値が表示されます(単位:%)
(2022年1月開催〜2019年9月まで 7回分を集計)
A分野の計算問題の多くは、老齢年金や遺族年金、在職老齢年金など年金額を計算する問題が2問程度出題されます。
穴埋め問題は、制度を説明する問題が、多い試験だと16問出題される時があり、A分野に関しては、計算よりも制度の理解力を重視していることが考えられます。
穴埋め問題の傾向としては、制度の文言を答えさせるより年数や月数、金額といった数値を回答する問題が多いので、各種制度の年数や月数、金額といった要件の違いを整理して覚えましょう。
2022年1月の試験も、今までと大きな違いはなく、計算問題も定番の老齢基礎年金と老齢厚生年金が出題されています。
C分野(金融資産運用)の配点割合は、計算問題と穴埋め問題の割合の差はほとんどありません。ただ、配点の都合上、穴埋め問題として出題されていますが、実際はほとんどが計算問題です。
例えば、X社とY社の財務データを比較して説明する問題などは、財務レバレッジや配当性向など「文言」を回答する問題もありますが、ほとんどは財務レバレッジや配当性向を「計算」し数字を回答する問題です。
計算をせず回答する穴埋め問題で出題されるのは、上場株式の取引や課税上の取り扱い、NISA制度を説明する問題が出題されています。
シャープレシオや標準偏差など計算式の種類も多い分野ですが、インタレストカバレッジレシオなど定番問題も多いので、まずは計算式を完璧にマスターした方が良さそうですね。
2022年1月の試験は、固定長期適合率というあまり出題されていない計算問題の出題もありましたが、定番のインタレストカバレッジレシオも計算過程を示す問題で出題されています。
D分野(タックスプランニング)の配点割合は42.86:57.14で、穴埋め問題の配点割合の方が高いのですが、C分野と同様に穴埋め問題として配点計算している問題でも、計算して回答する問題があります。略式別表四の問題などがそれに該当します。
計算問題はパターンが決まっていて、事業所得や退職所得の金額を白色申告や青色申告の場合で計算する問題、略式別表四から法人税額を求める問題が出題されます。
できれば、D分野では満点を狙いたいところです。(特に、略式別表四が出題された場合)
2022年1月試験では、若干出題傾向が変わったものの、計算問題の出題パターンはほぼ三つに決まっていますし、穴埋め問題は、法人税額を求める問題が出題される試験では法人税に関する問題が出題され、事業所得を求める問題が出題される試験では所得控除に関する問題が出題されているので、計算問題と関連する問題が穴埋め問題でも出題される傾向にあるので、比較的対策が立てやすい分野です。
応用編の問題では、計算問題と穴埋め問題のほかに、「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」が出題されます。
その問題が出題されるのが、過去6回の試験ではF分野(相続・事業承継)とD分野(タックスプランニング)です。
訂正する内容は、採点する側の都合なのか「できる、できない」の訂正や「月数や金額、割合」など、数字の訂正が多く出題されています。
2021年9月の試験では、「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」が出題されず、穴埋め問題が出題されました。
今までは「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」が2問出題され、選択肢と訂正内容が正しいと合計で6点の配点予想でした。
この訂正する問題は、各回2問出題され配点予想としては選択肢の正答を1点、訂正した記述内容の正答を2点として計算すると、2問とも正解で6点の問題なので計算過程を記入する計算問題ぐらいに配点が高く簡単には落とせません。
2022年1月の試験でも、「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」が出題されなかったので、今後の試験でも出題されないかもしれません。
穴埋め問題の場合は、配点が1点になり2022年1月の試験では7問出題されているので、7点の配点予想となり、今までの「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」よりも配点が高く設定されているのではないかと思います。
D分野では、「できる、できない」「月数や金額、割合」以外でも「圧縮記帳の計算」をして訂正する問題が出題されています。
2021年9月の試験で変更点が多かったのが不動産分野です。
今までは、応用編で最も出題パターンが決まっている分野で、計算問題は、建蔽率と容積率、各種特例適用後の譲渡所得金額や譲渡所得税・復興特別所得税と住民税の計算が出題されていました。
問われている内容は、建蔽率と容積率、各種特例適用後の譲渡所得金額や譲渡所得税・復興特別所得税と住民税で、今までとほとんど同じなのですが、計算問題が説明文中で出題されていたり、適切な文章を選択肢から選ぶような問題が出題されています。
2022年1月の試験でも、同じように出題されましたので、今後の試験も「◯◯を計算しなさい」という出題よりも、説明文中の穴埋めを文章と計算で解くスタイルになるのかもしれません。
計算問題を穴埋め問題に組み込むことで、2021年9月の試験では、建蔽率と容積率の出題も3問になったり、2022年1月の試験では容積率だけの出題になり、配点割合が変わったのかもしれません。
建蔽率はいくらか、譲渡所得はいくらかと単純に計算問題として出題されるよりも、説明文を読んで計算する方が問題を解く時間はかかると思います。
不動産分野は実技試験でも出題されるので、説明文として問題を回答する方が実技試験対策としてもいいかもしれません。
穴埋め問題は、その試験の計算問題で出題されている譲渡所得の特例の要件を説明する問題や、建築基準法の規定などがよく出題されています。
E分野では、計算問題の配点が60%以上と5分野の中で一番高いので、建蔽率・容積率の計算、各種特例適用後の譲渡所得の計算は、いろんなパターンの問題を繰り返し解き、確実に点が取れるようにして、できれば満点を狙いたい分野です。
計算問題の配点が高い分野ですが、F分野の計算問題も出題される内容が決まっています。
非上場株式の相続税評価額の計算方法か小規模宅地の評価を含む相続税額の計算です。
非上場株式の相続税評価額の計算方法は、原則的評価の3つの方法、類似業種比準価額方式や純資産価額方式、併用方式の計算式は必須です。
2022年1月の試験では、類似業種比準価額を求める問題が、レベルアップした感じがありますが、この問題が出題されたらラッキーです。なぜなら、類似業種比準価額方式と、純資産価額方式、併用方式の問題は続けて出題されるケースが多いので、3つとも覚えてしまえば高得点のチャンスになります。
相続税額の計算は、貸付事業用と居住用や事業用を併用した場合の、小規模宅地の特例を適用できる上限の計算や、相続時精算課税制度や結婚子育て資金、教育資金贈与の残高が残っている場合の相続税の課税価格の合計を計算する問題が出題されています。
相続人の一人が納付すべき相続税額を計算する問題が、続けて出題される場合がありますが、前問の回答に影響を受けないよう相続税の課税価格があらかじめ指定されているので、前問を間違っていても連鎖的に間違うことはないようです。
穴埋め問題は、改正された制度が出題されることが多く、最近だと配偶者居住権や自筆証書遺言の保管制度など、旬な話題が出題されています。
2022年1月の試験では、事業承継・株式に関する問題が多く出題されています。
不動産分野もですが、相続・事業承継分野も実技試験の設例っぽい感じでの出題になってきている印象があります。
学習時間に余裕があれば、学科試験対策として、実技試験の問題に目を通してみるのも効果がありそうです。
F分野でも、「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」が出題されていましたが、2022年1月試験でも「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」は出題されませんでした。
今後の試験では、どの分野でも「間違っている選択肢を選び、間違っている箇所を訂正する問題」は出題されないのかもしれませんね。
FP1級学科試験の応用問題は、計算問題はもちろんですが、穴埋め問題をどれだけ多く正答できるかが合否を分ける鍵になりそうです。
穴埋め問題対策は、各分野のいろんな制度を正確に覚えておくことが一番ですが、範囲も広く全てを覚えることは至難の業です。
穴埋め問題で出題される内容は、基礎編ほどの難しい内容が出題されることはなくFP2級の難易度に近い問題です。
ただ、数字を記入する問題が多く、「3分の1と、3分の2のどっちだったかなぁ」と迷った挙句に間違ったという声を多く聞きます。
計算問題の出題傾向が変わってきているので、穴埋め問題を落とさないことが合格への鍵になりそうです。
各分野の基本的な制度の数字は正確に覚えると、穴埋め問題も確実に正答でき、応用編での高得点が期待できます。
ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。
// ▼円グラフの中身
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// ▼上記のグラフを描画するための記述
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