2021年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年6月6日)過去問解説

Part2

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本をKindleで出版しました。

開催年度別に3回分を一冊にまとめたPDF版はこちら

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2021年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年6月6日)

●設 例●
 Aさん(75歳)は、大都市圏S市の南S駅から徒歩10分の閑静な住宅街にある自宅(甲土地および甲建物)で妻Bさん(74歳)と2人で暮らしている。Aさんは、大手化粧品会社の役員を退任後、子会社や関連会社の役員や社長などを歴任していたこともあり、金銭的に余裕があり、生活は安定している。

 

【Aさん家族の現況】
 Aさん夫妻には、3人の子がいたが、長女Cさんは3年前に病気で他界した。会社員の長男Dさん(46歳)と二男Eさん(44歳)は、いずれも都内に自宅を所有し、それぞれの家族と暮らしている。現在、Aさんの自宅の敷地内の乙部分に長女Cさんの夫Fさん(52歳)名義の住宅(乙建物・築5年・時価2,000万円・借入金なし)が建っており、Fさんと大学生の孫娘Gさん(21歳)・Hさん(18歳)の3人が住んでいる。Aさん夫妻の面倒を見るという長女Cさんの意向で建てたもので、息子2人の反対を押し切り、了解した経緯がある。土地の使用にあたり、契約書はなく、権利金等の支払もないが、乙部分の土地に応ずる固定資産税・都市計画税相当額を地代としてFさんが継続してAさんに支払っている。

 先日、神妙な面持ちで来訪したFさんから、以下のような申出があった。

 

【Fさんの申出】
 「妻が亡くなってからの3年間、お二人には大変お世話になりました。おかげさまで娘たちも大きくなり、下の娘がこの春に大学に進学しました。実は、私事ですが、上司の薦めで再婚を考えています。娘たちも同意してくれています。そこで、これを機会に転居したいと考えています。転居先は都内のタワーマンションを予定していますが、購入資金が4,000万円程度不足するので、ここの自宅を処分して資金を工面したいと思っています。市内の不動産業者に相談したところ、乙部分の土地と乙建物で総額5,200万円ならば買手がいるとのことなので、話を進めたいと思っています。そこで、私が所有している乙部分の借地権に対応する底地部分を1,000万円(路線価×底地割合)で譲っていただけませんでしょうか」

 

【Aさん側の対応】
 妻BさんはFさんの申出に応じてあげたらという意見だったが、2人の息子は乙部分の土地を第三者に売却することは認められないと断固反対している。Aさんは家族と相談のうえ、以下の2案のどちらかをFさんに提示したいと思っている。乙部分の土地を第三者に譲渡することには応じられないが、金銭面でFさん一家を支援するという提案である。取得する乙建物は、仮に孫娘たちが再婚相手との同居を望まない場合には、孫娘たちに引き続き住んでもらってかまわないと思っている。

  • 1案:Aさんが乙建物を総額4,000万円で買い取る。
  • 2案:Aさんが乙建物を総額2,000万円で買い取り、G・Hに1,000万円ずつを贈与する。

 

 

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。

     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  1. Fさんの申出(乙部分の土地を私の所有する借地権の価格を控除した底地価格で譲ってほしい)について、どのように思いますか。
  2. 2つの案の留意点(メリット・デメリット)を整理したうえで、Aさんは、Fさんに対して、どのように提案するのがよいか教えてください。
  3. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。
    ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことがありますか?
 

①Aさんから直接聞いて確認する確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。関係者の意向として
 乙建物の取得費や取得日がわかる書類はあるか
 乙建物を第三者へ貸家として貸し出す気はあるか
 G・Hさんへ贈与をしているか
 Aさんの資産状況や、Aさんの相続に係る相続税対策が必要か

 

 ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

 

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し今後の開発予定や周辺環境の変化を把握すること。

⑷市場調査として
 甲土地周辺の貸家の家賃相場や、需要はあるか地元の不動産等で確認すること。


 
  1. Fさんの申出(乙部分の土地を私の所有する借地権の価格を控除した底地価格で譲ってほしい)について、どのように思いますか?
 
 

乙部分の土地にはFさん名義の住宅が建っていますが、土地の使用にあたり、契約書や権利金の支払いはなく、固定資産税・都市計画税相当額をFさんは継続してAさんに支払っていますが、固定資産税や都市計画税は通常の必要費にあたり、Fさんは乙部分の土地を無料で借りているので賃貸借ではなく使用貸借となります。

使用貸借契約では借地借家法が適用されず、借地権は発生しないので底地としての評価で譲渡する必要はありません。


 
  1. 2つの案の留意点(メリット・デメリット)を整理したうえで、Aさんは、Fさんに対して、どのように提案するのがよいか教えてください。
 

1案のAさんが乙建物を総額4,000万円で買い取る場合の留意点ですが、Fさんは希望している4,000万円の資金が工面できるが、所得税や贈与税が課税されます。
Aさんには課税されませんが、Aさんの乙建物の取得費は2,000万円となります。

乙建物の時価は2,000万円なので、Fさんは、時価2,000万円で譲渡したものとして、譲渡価額と取得費との差で譲渡益を計算し、譲渡益に対して所得税が課税されます。

譲渡価額4,000万円と時価2,000万円との差額は、AさんからFさんへの贈与として、Fさん側に贈与税が課税されます。

2案のAさんが乙建物を総額2,000万円で買い取り、G・Hに1,000万円ずつを贈与する場合の留意点ですが、Fさんに対し所得税が課税され、G・Hさんに贈与税が課税されます。

Fさんに対しては、譲渡価額の2,000万円と取得費の差で譲渡益を計算し、譲渡益に対して所得税が課税されます。

G・Hさんに1,000万円ずつを贈与すると、歴年課税を選択した場合では基礎控除額の110万円を超える部分に贈与税が課税され、相続時精算課税を選択した場合では、受け取った財産価額の累計が2,500万円以下の場合は、贈与税の課税対象にはなりませんが、Hさんは18歳なので相続時精算課税を選択することができません。

Aさんには、乙建物を総額2,000万円で買い取り、G・Hさんに教育資金の一括贈与の非課税措置を活用して1,000万円ずつ贈与することを提案します。

乙建物を買い取ることは、G・Hさんがタワーマンションでの同居を希望した場合や、将来、独立した場合にも貸家として活用でき、相続税対策にもなります。

教育資金の一括贈与は、30歳未満の子や孫の教育資金として1,500万円まで非課税で贈与できる制度です。
Fさんが希望する4,000万円には不足しますが、G・Hさんは大学生なので教育資金を援助することにより、Fさんの経済的負担も軽くなるものと考えます。

ただし、乙建物が貸家としての需要を満たす物件かどうか検討すること、Aさんが死亡した場合、教育資金として使いきれなかった部分について、G・Hさんが23歳未満である場合や、在学中などの一定の場合を除き、相続税の課税対象になるので注意が必要です。


 
  1. FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
    本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
 

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談は税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については司法書士に、
地積の更正や変更の登記は土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


実技試験で質問される内容は、過去問でよく出る定番問題もありますが、制度改正直後の旬な話題も質問されます。

使用貸借については、改正民法が2020年4月に施行され、要物契約から諾成契約へ改められ契約終了時に返還することが借主の義務であることが明確になったこと。
教育資金一括贈与は、2021年4月1日以後の預入分に関して改正があったので、そこを聞きたいのかなと思いました。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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