2026年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年6月6日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のテキストと過去問解説集を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2026年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年6月6日)

●設 例●
 Aさん(75歳)は、妻Bさん(72歳)と首都圏近郊のM市内の戸建て住宅で2人で暮らしている。Aさんは10年前に父親の相続で取得したM市内の甲土地上にある店舗を、父親の代から30年にわたり地元のスーパーに賃貸しているが、近隣に大型商業施設が進出したため、賃貸中のスーパーは閉店を余儀なくされ、賃貸借の解約の申出を受けた。

 Aさん夫妻には長男Cさん(45歳。妻、15歳の子1人)、長女Dさん(43歳。夫、12歳の子1人)の2人の子がいる。長男Cさん家族と長女Dさん家族は、いずれも隣県の賃貸住宅に住んでおり、マイホームの取得を検討しているが、住宅価格が高騰し容易には購入の決断ができないでいる。Aさんは、建築費を負担することなく、甲土地を安定的に活用し、子どもたちに相続したいと思っていたところ、地元スーパー閉店の情報を得たデベロッパーのX社から、甲土地での一般定期借地権によるマンション開発の提案があった。

 

【X社の提案内容】

  • X社が甲土地を一般定期借地契約により賃借し、店舗建物を取り壊したうえ、8階建て、延べ面積2,100㎡、専有面積1,800㎡、25戸(一戸平均専有面積72㎡)のマンションを建築し、分譲する。
  • 権利金1,200万円、借地期間70年、毎月地代100万円、そのうち50%の70年分(4億2,000万円)を前払地代とする(甲土地の固定資産税・都市計画税は年額約150万円と推定)。
  • 平均分譲単価104万円(専有面積1㎡当たり)、一戸平均7,500万円(前払地代を含む)

    ※購入者の平均負担額は毎月5万5,000円(地代2万円、解体準備金5,000円、管理費・修繕積立金3万円)。
    毎月の地代とは別に、地代の70年分(1,680万円)を前払地代としてマンション購入時の価格に含めて支払う。

 

 AさんはX社の提案を前向きに検討しており、長男Cさんと長女Dさんも乗り気で、完成したマンションに住みたいとも言っている。Aさんは、相続対策と子どもたちへの援助も兼ねて、前払地代を使ってX社のマンションを2戸購入し、形式上、固定資産税・都市計画税程度の家賃で長男Cさん家族と長女Dさん家族を住まわせれば、相続時に有利かもしれないと考えている。また、前払地代の残りは、老後の生活費と子どもたちへの援助に使いたいと考えている。特に孫たちが今後高校・大学進学を控えていることもあり、教育費の援助をしたいと思っているが、最近ニュースで教育資金贈与の特例が廃止となったと聞き、どのように援助すれば税制上有利となるのか知りたいと思っている。このような状況のもと、Aさんは自身の計画について、FPであるあなたに相談することとした。

 

(注1)甲土地は、最寄駅から徒歩5分の位置にあり、都心へのアクセスも良好なことから、マンション用地の需要が根強い地域にある。

(注2)地元の不動産業者によれば、甲土地の時価は7億円と評価されている。また、近隣の土地所有権付き分譲マンションは専有面積1㎡当たり140万円~150万円で販売され、専有面積70㎡~75㎡の賃貸マンションの月額賃料は20万円とのことである。

 

【甲土地の現在の賃貸状況】

  • 土地上に存する店舗(鉄骨造平屋)をスーパーに賃貸中
  • 賃料収入は月額100万円(甲土地の固定資産税・都市計画税は年額約525万円)

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. 権利金と前払地代の違いについて教えてください。また、前払地代として受け取った金銭は、所得税および相続税について、どのように扱われますか。

  3. AさんがX社のマンションを2戸購入し、長男Cさんと長女Dさんに固定資産税・都市計画税程度の家賃で居住させ、Aさんの相続が開始した場合、当該住戸の家屋部分はどのように評価されますか。

  4. ①子どもたちにX社のマンションを取得させる方法として、どのような方法が考えられますか。②教育資金の援助について、Aさんにどのようなアドバイスをしますか。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2026年6月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

Aさんから直接聞いて確認する情報は、主に4点あります。

1つ目は、Aさん夫妻の資産・負債の全体像と相続税の現状です。
甲土地以外の財産(自宅不動産、現預金、有価証券など)の有無、および具体的な金額や、 現在までに相続税の具体的な試算を行ったことがあるか、また他の相続税対策(生前贈与など)を行っているかを確認します。

2つ目は、Aさん夫妻の老後生活と資金に関する意向です。
将来必要となる老後生活費や医療・介護費の具体的なイメージがあるか、前払地代(4億2,000万円)からマンション2戸の購入費用や所得税等の納税額を差し引いた残額について、どのように管理・運用したいかを確認します。

3つ目は、子どもたち(長男Cさん・長女Dさん)の真の意向と資金状況です。
完成後のマンションに「住みたい」という希望が、一時的なものか、あるいは将来にわたり永住する前提なのか。 
また、子どもたち自身の現在の収入、資産状況、および将来的にマイホームとしてこのマンション(借地権付建物)を買い取る、あるいは相続する意思があるかを確認します。 

4つ目は、親族関係の状況です。
長男Cさん、長女Dさんそれぞれの家族(配偶者やその親族)との関係に、将来の遺産分割協議で火種となるような問題はないかを確認します。

FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

まず、現地に赴き、土地・建物の物理的状況、および周辺環境を直接確認いたします。

次に、法務局で公図や地積測量図を請求し、敷地の正確な境界線、形状、および隣家からの越境物の有無を法的な観点から確認します。
また、現在の名義人が間違いなくAさん単独になっているか、金融機関の抵当権や第三者の権利設定が残っていないかを精査します。

自治体の都市計画課で用途制限、および景観条例などの独自の規制がないかを精査します。
また、今後の道路拡幅計画や土地区画整理事業、大型商業施設の出店予定、あるいは駅周辺の再開発計画などがないかを自治体の開発担当部署でヒアリングします。

周辺の不動産市場の動向として、M市および最寄駅周辺における分譲・賃貸マンションの需給バランス、および将来的な人口動態。 
X社の提示している条件が、周辺の定期借地権付マンションの相場と比較して妥当であるかを確認します。

デベロッパーX社の信用力について、X社の財務健全性、経営状態、および過去の定期借地権付マンションの開発・管理実績、70年という超長期契約に耐えうる企業かを確認します。

税務・法務上の取扱いについて、前払地代を一括受領した場合の、Aさんの所得税(不動産所得)の一時的な税負担。 
親族へ固定資産税・都市計画税程度で賃貸した場合の、贈与税(みなし贈与)や所得税、将来の相続税評価に関する税務署の判断傾向などを専門家と連携して確認します。


権利金と前払地代の違いについて教えてください。

権利金とは、土地を借りて建物を建てるという「借地権の設定」そのものの対価として支払われる、原則として返還不要の一時金です。
地代とは別に、契約時に一括して授受されます。

前払地代とは、将来にわたる借地期間全体の地代の全部または一部を、契約時に一括して前払いする一時金です。

前払地代として受け取った金銭は、所得税および相続税について、どのように扱われますか?

前払地代として受け取った金銭は、いったん貸借対照表上の「前受収益(負債)」として計上します。
その上で、借地期間に応じて、各年の不動産所得の総収入金額に算入していきます。

一括受領した年に全額が課税されるわけではないため、所得税の超累進税率による爆発的な増税を回避でき、毎年の税負担を平準化しながら老後の安定したキャッシュフローとして受け取ることができます。

相続税については、どのように扱われますか?

前払地代を受け取った後に亡くなった場合、未経過分の地代(前受収益)はそのまま地主の相続財産として扱われます。
相続発生時点で、まだ経過していない前払地代の残額について、相続税の計算上、遺産総額から差し引く「債務控除」にすることは認められません。


AさんがX社のマンションを2戸購入し、長男Cさんと長女Dさんに固定資産税・都市計画税程度の家賃で居住させ、Aさんの相続が開始した場合、当該住戸の家屋部分はどのように評価されますか。

Aさんが購入したマンション2戸を、長男Cさんと長女Dさんに「固定資産税・都市計画税程度」の家賃で居住させた場合、Aさんの相続開始時における当該住戸の家屋部分は、残念ながらAさんが相続時に有利かもしれないと期待されているような「貸家」としての評価減は認められず、「自用家屋(通常の固定資産税評価額の100%)」として評価されます。

通常、他人に賃貸している「貸家」であれば、借家権割合(30%)の控除が受けられるため、自用家屋評価額の70%に減額されます。
しかし、今回のケースでは近隣の類似マンションの家賃相場が「月額20万円」であるのに対し、「固定資産税・都市計画税程度」という極めて低額な家賃設定は、税務上、対価性のある経済的な「賃貸借契約」とは認められず、実質的に無償で貸している「使用貸借」と同等に扱われます。
そのため、Aさんがいつでも自由に処分できるものとみなされ、借家権割合(30%)の控除は一切適用できず、自用家屋(100%)として高く評価されてしまいます。


子どもたちにX社のマンションを取得させる方法として、どのような方法が考えられますか?

長男Cさんと長女DさんにX社のマンションを取得させる方法としては、Aさんが購入した上で、生前贈与または将来の相続で子どもに引き継ぐ方法が考えられます。

Aさんは、相続対策と子どもたちへの援助も兼ねて、マンション購入を検討しています。
不動産は、現金や預貯金などと比べて相続税評価額を圧縮しやすいという性質があります。
さらに、子どもたちから適正な家賃を徴収して賃貸借契約を成立させておけば、貸家建付地、および貸家として扱われ、評価をさらに引き下げることができます。

ただし、令和8年度の税制改正大綱では、課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得・新築した一定の貸付用不動産は、原則として「課税時期における通常の取引価額に相当する金額」もしくは、「取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%」に相当する金額によって評価することができるとされているので注意が必要です。


教育資金の援助について、Aさんにどのようなアドバイスをしますか。

都度贈与を活用するようにアドバイスします。

一括贈与の特例が終了しても、「扶養義務者相互間における生活費や教育費の贈与で、通常必要と認められるもの」は、時期を問わずいつでも非課税です。
入学金、授業料、教材費、留学費用などが必要になった「その都度」、Aさんが直接、学校の指定口座へ振り込みを行う、あるいは領収書と引き換えに実額を親(Cさん・Dさん)に交付します。

ただし、数年分の学費を「まとめて一括で」孫や親の口座に振り込んでしまうと、その時点で贈与税の課税対象となってしまいます。
必ず「必要な都度、直接支払う」という実務を徹底し、振込明細や領収書を保管しておくようアドバイスします。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

税理士。
前払地代(4億2,000万円)を一括受領した際の、不動産所得(期間按分)の具体的な所得税・住民税の確定申告書の作成および納税予測。
マンション2戸を購入・賃貸した場合の、将来の相続税評価額の試算(自用家屋評価か貸家評価か)。
自宅土地と甲土地(底地)における「小規模宅地等の特例」の具体的な調整計算と有利選択のシミュレーション。
孫への教育資金としての都度贈与・暦年贈与の適切な運用の指導を依頼します。

司法書士。
デベロッパーX社との間で締結する「一般定期借地権設定登記」の手続き。
既存の店舗建物を取り壊した際の「建物滅失登記」の申請代行(土地家屋調査士と連携)。
Aさんが購入するマンション2戸の「所有権保存登記」、および将来子どもたちへ引き継ぐ際(生前贈与や相続)の「所有権移転登記」の申請代行を依頼します。

弁護士。
X社という企業を相手に70年間という超長期の契約を結ぶにあたり、Aさん側に圧倒的に不利な特約がないかなど、一般定期借地契約書のリーガルチェックを依頼します。

土地家屋調査士。
甲土地にマンションを建築するにあたり、隣地や市道(前面道路8m)との「境界確定測量」の実施。
既存の店舗建物(300㎡)の取り壊しにともなう「建物滅失登記」における床面積や構造の現地調査・表題部変更手続きを依頼します。

5. 不動産鑑定士
X社から提示されている「地代月額100万円」や「前払地代4億2,000万円」という条件が、市場相場に照らして本当に適正かどうかを客観的に判定するための賃料鑑定。
子どもたちにマンションを貸し出す際、税務署から「低額賃貸(使用貸借)」と難癖をつけられないための、適正な「周辺世間相場家賃(月額20万円など)」の根拠となる鑑定評価レポートの作成を依頼します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、前払地代方式の税務、親族間の低額賃貸、令和8年度(2026年度)の税制改正に関する設例でした。

Aさんはニュースで教育資金贈与の特例が廃止されたことを聞いて悩んでいます。

都度贈与や直近の改正内容(令和8年3月31日終了)を正確に覚えることだけではなく、さらに、2026年度税制改正で新設された『こどもNISA(未成年向け非課税投資枠)』」にも言及できれば完璧です。

今回の孫は「15歳と12歳」です。新制度では12歳以上であれば教育費目的でいつでも非課税で途中払い戻しができるため、まさにこのお孫様たちの年齢に奇跡的にジャストフィットしています。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  
   

楠本 学

   

FP1級技能士、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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