2026年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2026年6月14日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のテキストと過去問解説集を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、大きめの書店でもテキストを見かけることは滅多にありません。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。

それでは、設例をお読みください。

2026年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2026年6月14日)

●設 例●

 Aさん(71歳)は、昨年70歳になったことを機に、長年代表取締役社長として経営してきたX株式会社(製造業・非上場会社)の経営を、後継者である長男Cさん(45歳)に承継させ、経営から身を引いた。X社株式については、相続時精算課税制度を利用して長男Cさんにすべて贈与(贈与時の時価は1億円)している。Aさんは、経営者としての慌ただしい日々から解放され、妻Bさん(70歳)と穏やかな日々を過ごしている。

 先日、社長時代に付き合いのあった不動産会社の社長に会った際、賃貸不動産の取得が相続対策として有効との説明を受けたが、その仕組みがよくわからなかった。また、NISA制度が来年から拡充されるとの雑誌記事を目にし、その内容を理解したうえ、相続対策や資産運用に活用したいと考えている。

 

【Aさんの家族構成(推定相続人)】

 妻Bさん (70歳):専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
 長男Cさん(45歳):X社の代表取締役社長。妻と子2人(16歳・13歳)の4人で持家に居住している。
 長女Dさん(43歳):公務員。離婚後、子2人(17歳・15歳)とともにAさんと同居している。

 

【二世帯住宅の検討】

 Aさんは、自宅で妻Bさん、長女Dさん家族と同居している。Aさんが父親の相続により取得した自宅は、築60年を超えて老朽化が目立ち、また長女Dさんの子も大きくなってきたことから、二世帯住宅に建て替えようと考えており、長女Dさんも賛同している。Aさんは、二世帯住宅の建築費用を全額負担するつもりでいるが、長年連れ添った妻Bさんのことを考え、建物名義の一部を妻Bさん名義にしたいと思っている。

 Aさんは妻Bさん名義で長年積立預金を行っており、その資金を二世帯住宅の建替え費用の一部に充てようと考えている。現在の残高は約2,000万円で、資金や通帳等の管理はAさんが行っており、妻Bさんに贈与を受けた認識はない。Aさんは二世帯住宅の名義や、積立預金を活用するうえでのアドバイスを求めている。

 

 Aさんは、父母からの相続やX社の役員退職金等により多額の現預金を保有していることから、相続税負担が大きくなるのではないかと懸念している。Aさんには4人の孫がおり、相続対策も兼ねて教育資金の援助をしたいと考えているが、先日ニュースで、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が廃止されたことを知り、援助にあたって他に何か手立てはないか相談したいと思っている。なお、長男Cさんと長女Dさんの関係は良好であるが、長男Cさんには先に自社株を贈与していることもあり、何らかの配慮が必要ではないかと感じている。

 

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

現預金 3億2,000万円  (妻Bさん名義の積立預金を含む)
上場株式 8,000万円  
自宅      
  ①土地(200㎡) 6,000万円  
  ②建物 500万円  
  合計 4億6,500万円  

 

※Aさんの相続に係る相続税額(所有財産に相続時精算課税適用財産の価額を加算した金額に基づいて計算)は、約1億5,800万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減・贈与税額控除適用前)と見積もられている。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2026年6月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

Aさんの相談内容は、
賃貸不動産の取得が相続対策に有効と勧められたものの、その具体的な仕組みやメリット・デメリットがよく分かっていないこと。
NISA制度の拡充について内容を理解し、自身の相続対策や今後の資産運用にどのように活用できるかを知りたいこと。
老朽化した自宅を長女Dさん家族との二世帯住宅へ建て替えるにあたり、妻Bさんのために建物名義の一部を妻Bさん名義にしたいこと。
また、建築費を全額負担するつもりですが、妻Bさん名義にするための原資として、Aさんが妻Bさん名義で長年積み立ててきた預金を充てたいこと。
4人の孫への教育資金援助を相続対策も兼ねて行いたいことです。

問題点は、妻Bさん名義の積立預金は、Aさんが資金・通帳を管理しており、妻Bさんに贈与の認識がないため、名義預金とみなされる可能性があること。
また、これをそのまま妻Bさんの名義で二世帯住宅の建築資金に充ててしまうと、Aさんから妻Bさんへの実質的な贈与とみなされ、妻Bさんに高額な贈与税が課される危険性があること。

現在、長男Cさんと長女Dさんの関係は良好ですが、Aさんは長男CさんにX社株式を相続時精算課税制度で贈与済みなので、実質的な遺産分割において長女Dさんとの間に大きな不公平が生じ、遺留分や分割をめぐる問題に発展するリスクがあります。

納税資金の不足はありませんが、現預金のまま保有し続けると1円も評価が下がらないため、二世帯住宅の建替えによる小規模宅地等の特例の最大活用や、賃貸不動産の購入、生前贈与などを組み合わせた有効な評価減対策を行わなければ、多額のキャッシュが税金として失われてしまう点が問題です。


それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

知人の不動産会社社長から「賃貸不動産の取得が相続対策に有効」と勧められたものの、その具体的な仕組みやメリット・デメリットがよく分かっておられません。仕組みやメリットデメリットを教えてください。

賃貸不動産による相続対策の仕組みは、現預金の場合、相続時に「1億円の現金=1億円の評価」として時価の100%に対して1円も下がらずに課税されます。
これに対し、現預金を「賃貸不動産」に組み替えることで、建物の相続税評価額は「固定資産税評価額」、土地は、時価(公示価格等)の約80%の水準である「路線価」で評価されます。さらに、賃貸住宅の敷地(貸家建付地)となることで、評価額を引き下げるのが基本的な仕組みです。

メリットを教えてください。

メリットは、相続税負担の軽減として、Aさんの3億2,000万円の現預金の一部を不動産に変えるだけで、資産全体の相続税評価額が大きく減少し、1億5,800万円と見積もられている高額な相続税を直接的に引き下げることができます。
さらに、毎月、安定した家賃収入が入るため、Aさんご夫妻の今後の老後資金としてだけでなく、将来の納税原資、あるいは長女Dさん家族の生活費や教育費のサポート資金として、新しいキャッシュフローを生み出すことができます。

デメリットを教えてください。

デメリットは、不動産は購入して終わりではなく、空室リスク、家賃滞納リスク、経年劣化にともなう将来の大規模修繕費の負担といった「経営者としてのリスク」を負うことになります。

また、令和8年(2026年)税制改正において、行き過ぎた不動産節税を是正するため、令和9年(2027年)1月1日以降に発生する相続において、「相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産」の相続税評価は、従来の路線価や固定資産税評価額ではなく、「実際の取得価格か、取得価格を基にした価格の8割」で評価する新ルールが創設されました。
アパート等を購入しても、購入から5年以内に万が一相続が発生した場合、相続税評価額の引き下げ効果は一切得られず、「買った金額の80%」という高い評価のまま相続税を課されるため、節税対策としては効果がなくなってしまうリスクがあります。


NISA制度の拡充内容を説明してください。

これまでのNISA制度がさらに拡充され、18歳未満の未成年者を対象とした新しい非課税投資枠(通称「こどもNISA」)が新設されることになりました。

かつてのジュニアNISA(18歳まで原則引き出し不可)とは異なり、お孫様本人が同意し、使い道が「お孫様(子供)のため」であれば、12歳以降はいつでも非課税で途中で払い出すことができます。
また、お孫様が18歳に達すると、こどもNISAの資産は自動的に通常のNISA口座における、つみたて投資枠に移行され、生涯にわたる資産形成へバトンタッチできます。

Aさんは、相続対策や資産運用に活用したいと考えていますが、どのようなアドバイスをしますか?

Aさんは、教育資金の一括贈与が廃止されたことを知り、相続対策も兼ねた援助の出立てが他にないかと考えています。
Aさん自身の資産運用に活用することはできませんが、4人のお孫様の「こどもNISA」口座に対して、毎年、投資上限額(※大綱等に基づき年間60万円等)を上限に、生前贈与を行うことをアドバイスします。

相続対策としては、毎年4人分(計240万円等)の現預金が確実にAさんの手元から次世代へ移転するため、1億5,800万円と見積もられている高額な相続税の節税効果があります。

さらに、お孫様への生前贈与は、Aさんが亡くなった際の「相続前持ち戻し(加算計算)」の対象外(法定相続人ではないため)となるため、贈与した分は確実にAさんの財産から切り離され、高い節税効果を発揮します。

ただし、Aさん自身の資産運用に活用することはできません。
今回の「妻Bさん名義の積立預金」のように、Aさんが通帳、印鑑、暗証番号、スマホアプリのパスワードなどをすべて自分で管理してしまうと、税務署から「実質的にはAさんの名義預金であり、贈与は成立していない」とみなされるリスクがあります。
口座の管理・運用手続きは必ず親権者であるCさんやDさんが行い、毎期「贈与契約書」を適切に作成・保管する実務を徹底するよう、税理士とともにアドバイスします。


老朽化した自宅を長女Dさん家族との二世帯住宅へ建て替えるにあたり、建物名義の一部を妻Bさん名義にするための原資として、Aさんが妻Bさん名義で長年積み立ててきた預金を充てることについて問題はありませんか?

妻Bさん名義の積立預金は、Aさんが資金や通帳等を管理しており、Bさんに贈与の認識がないことから、税務上は名義預金(実質的なAさんの財産)とみなされます。
この預金をそのまま妻Bさんの出資として二世帯住宅の建築資金に充て、建物の名義をBさんに設定してしまうと、Aさんから妻Bさんへの実質的な贈与があったとみなされ、贈与税が課される可能性があります。
したがって、この積立預金は、いったんAさん自身の財産として戻し、建替えの建築費用はすべてAさん名義の現預金から直接支払うようアドバイスします。

Aさんが建築費を全額負担した上で、贈与税を課されずに建物名義の一部を妻Bさんに移すため、「贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)」の活用を提案します。

贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)とは、婚姻期間が20年以上の配偶者から、居住用不動産(またはその取得資金)の贈与を受けた場合、基礎控除110万円とは別に、最大2,000万円まで贈与税が非課税となる制度です。
AさんとBさんは長年連れ添われており、要件を満たしている可能性が高いと考えます。

ただし、不動産取得税や登録免許税などの流通税は別途発生する点、および将来の相続発生時に配偶者の税額軽減を考慮すると、生前に移転させるメリットが本当にあるかは、税理士と事前に詳細な試算を行うようにアドバイスします。


長男Cさんと長女Dさんの関係は良好であるが、長男Cさんには先に自社株を贈与していることもあり、何らかの配慮が必要ではないかと感じています。
どのような対策が有効ですか?

公正証書遺言の作成を最優先とします。
長女Dさんへの配慮として、Aさんを被保険者、長女Dさんを死亡保険金受取人とする終身保険への加入、長女Dさんに対しても相続時精算課税制度を活用した生前贈与などが有効です。

長男Cさんに対してはどのような対策が有効ですか?

長男Cさんに対しては、遺留分に関する民法特例の活用などが有効です。

長男Cさんと、他の推定相続人全員との間で合意を形成し、経済産業大臣の認定と家庭裁判所の許可を受けることで、除外合意を適用します。
これにより、将来Aさんの相続がいつ発生したとしても、この1億円の自社株について長女Dさん側から遺留分を主張されるリスクが法的にゼロになります。
長男Cさんは、後継者として将来の紛争を恐れることなく、100%の経営権を維持してX社の事業経営に専念することができるようになります


最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

顧客利益の優先、守秘義務の遵守、顧客に対する説明義務、インフォームドコンセント、コンプライアンスの徹底、FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

本設例には、名義預金の取扱い 、二世帯住宅の登記方法による小規模宅地等特例の適否、新設されるこどもNISAの仕組み、さらには民法特例など、一般の方には判断が極めて難しい高度な専門論点が多数含まれています。
各対策のメリットだけでなく、名義預金のまま処理することの危険性や、登記の仕方といったデメリット・留意点を正しく認識されないまま手続きを進めることは非常に危険です。
専門的な仕組みやリスクを分かりやすく視覚化して説明し、Aさんご自身が完全に納得・同意した上で、主体的に家族の未来を選択できるように導くことが不可欠だからです。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、名義預金、賃貸不動産の取得、NISA制度、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)に関する設例でした。

きんざいの1級実技面接は、単なる「知識の暗記テスト」ではありません。

目の前で悩んでいるAさんという顧客を、「知識という武器を使ってどうやって守り抜くか」という実務家としての覚悟と応用力を見ています。

最新の税制改正(こどもNISAや不動産の5年ルール等)のトレンドも意識しながら、専門家(税理士・弁護士)との連携という「職業倫理」の壁を守りつつ、自信を持って本番の面接に挑んでください。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Xにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  
   

楠本 学

   

FP1級技能士、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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