2022年2月6日 2021年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 過去問解説

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公開日 2022年4月17日 最終更新日 2022年4月29日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

動画はこちら

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2021年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2022年2月6日)

●設 例●
 大都市圏近郊のK市に住むAさん(54歳)は、K市役所に勤務する公務員である。5年前にAさん家族と同居していた父親が亡くなった。母親は8年前に他界しており、相続人となったAさんと弟Bさん(48歳)は、K駅から徒歩10分にある自宅の敷地(甲土地、地積360 m²、地目:宅地)および家屋(木造2階建て)と、甲土地に隣接している月極駐車場の敷地(乙土地、地積360m²、地目:雑種地)を相続により取得し、それぞれ各2分の1の共有持分で相続登記した。
 相続した家屋は10年前に父親が建築したもので、まだ新しく、Aさんは今後も家族とともに住み続けるつもりでいる。ただ、これまで弟Bさんと地代や家賃のやりとりはしておらず、 このまま共有状態を続けていてよいのかどうか弟Bさんに相談しようと思っていた矢先、弟Bさんから土地を売却したいとの相談を受けた。

 

【弟Bさんからの相談内容】
 弟Bさんは、東京都内の持家で家族と暮らし、会社を経営している。弟Bさんは、「会社関連で資金需要が生じたため、甲土地と乙土地の持分を処分して換金させてほしい。甲土地と乙土地の合計720m²を右図の[Ⅰ案]または[Ⅱ案]のように等分し、兄さんと自分がそれぞれ360m²ずつ所有したうえで、自分が所有する部分を売却することを認めてもらえないか」とのことで、知り合いの不動産鑑定士におおよその時価を算定してもらったとのことである。

 

 乙土地が接する幅員12mの県道は、バス通りであり、沿道には中層の共同住宅や店舗が建ち並んでいる。空地の引き合いは多く、買手はすぐに見つかりそうである。
 Aさんは、できる限り弟Bさんの力になってあげたいと考えているため、土地を売却することに異論はなく、[Ⅰ案]、[Ⅱ案]のどちらでもかまわないと思っている。ただ、共有している土地をAさんと弟Bさんの単独所有地にする方法や、[Ⅰ案]と[Ⅱ案]で課税関係に違いがあるのかなど、わからないことも多く、FPであるあなたに相談することにした。

 

 

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。

     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. I案のメリット・デメリットや、課税関係について教えてください。

  3. Ⅱ案のメリット・デメリットや、課税関係について教えてください。

  4. あなたはAさんにI案とⅡ案のどちらを勧めますか。その理由とともに教えてください。また、自宅建物の共有状態の解消について、どのようなアドバイスをしますか。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

    (注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
    ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?
 

①Aさんから直接聞いて確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。トラブルの理由、関係者の意向として
 不動産の取得費や取得日がわかる契約書等の資料があるか
 弟Bさんの資金需要の理由や、いくらぐらい必要か
 自宅を売却することに抵抗はあるか、今後のライフプランなどを確認します。

 
  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?
 

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・道路や交通量などの物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化などを把握すること。

⑷市場調査として
 周辺の取引事例を地元の不動産業者等で確認すること。
 土地の評価額は妥当かを確認します。


 
  1. Ⅰ案のメリット・デメリットや、課税関係について教えてください。

Ⅰ案のメリットは、正方形に近い形で、県道沿いの土地になるので、土地活用の際、有利になる点です。

デメリットは、分筆費用がかかること。
北側の土地になること。
土地の形状が変わるので、外構などの工事費用がかかることです。

課税関係については、分筆後の土地と、もともとの持分割合に差がある場合、差額分が贈与とみなされる恐れがあります。


 
  1. Ⅱ案のメリット・デメリットや、課税関係について教えてください。

Ⅱ案のメリットは、現状の土地の形状のまま利用することができること。
南側に建物が建つ心配はなく、日当たりが確保できることです。

デメリットは、課税関係のことになりますが、Aさんと弟Bさんの持分を交換したことになり、原則として譲渡所得税の課税対象になります。
取得する土地が高い、弟Bさんには贈与税の対象になります。

共有名義の持分交換の場合、固定資産の交換特例がありますが、今回のケースでは適用できますか?

今回のケースでは、適用できません。

どうしてですか?


固定資産の交換特例の要件は、
交換するものが、互いに、1年以上所有していた固定資産を交換したこと。
交換譲渡資産と交換取得資産は、同一区分の資産であること。
交換取得資産は、交換譲渡資産の譲渡直前の用途と、同一の用途に供すること。
交換時における時価の差額が、いずれか高い方の20%以内であることです。

今回のケースでは、弟Bさんは、交換後売却予定であることや、
交換する土地の差額が、20%を超えるので、固定資産の交換特例は適用できません。


 
  1. あなたはAさんにI案とⅡ案のどちらを勧めますか。その理由とともに教えてください。また、自宅建物の共有状態の解消について、どのようなアドバイスをしますか。

Ⅰ案を勧めます。

Ⅱ案だと、固定資産の交換特例が適用できなかったり、弟Bさんに贈与税がかかるなど税務面で不利になります。
Ⅰ案も、南側に建物が建つ可能性があり不安もありますが、正方形に近い土地が残ります。

今回のケースでは、2つの案だけでなく、Aさんの将来的なライフプランにもよりますが、バス通りであり、沿道には中層の共同住宅や店舗が建ち並んでいる土地なので、一体として土地の有効活用も検討しアドバイスします。


 
  1. FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
    今回のケースで関与する専門職業家はどのような方々がいますか。
 

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談は税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士に、
土地の持分移転登記については司法書士に、
地積の更正や変更、土地の分筆登記は土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


用紙いっぱいに設例が書いてあり、メモをとるのも大変な設例でした。

図が用紙半分に書かれているので、実際の試験でこの接例を見ると、過去の設例との違いに、戸惑われるかもしれません。

情報量も多いので、FPへの質問事項をよく読み、何を聞かれるのか質問を予想し、理解しないと見当違いの答えをしてしまいそうです。

質問者の誘導も難しかったんじゃないでしょうか(笑)

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。