2020年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年2月7日)過去問解説

Part2

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のKindle版セット版を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2020年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2021年2月7日)

●設 例●
 Aさん(65歳)は、首都圏M市内(既成市街地等の地域内)の自宅で妻Bさん(63歳)と2人暮らしである。2人の子(長男・二男)は、各々結婚して東京都区内にマンションを所有し、実家に戻る予定はない。

 

【甲土地の概要】
 Aさんは、自宅のほかに、M市駅前商店街に所在する飲食店の建物(現況:空き店舗)およびその敷地である甲土地(地積300m²)を所有している。
・Aさんが先代の父親から2005年2月に相続により取得し、飲食店を経営してきが、父親の創業から50年目の節目にあたる2020年9月に閉店した。
・築51年の建物は老朽化が著しく、創業当初の給排水設備であった井戸と浄化槽(地中に埋設されている)は、現在は使用していないが、撤去もしていない。

 

【Aさん夫妻の資産承継と老後の生活設計】
 Aさん夫妻は、甲土地の価値を活用した不動産賃貸業により老後の生計を立てたいと考えている。将来、2人の子に賃貸物件を遺してあげることができればと思っている。
 Aさんは、先日、不動産業者のX社とY社から提案を受けた。借入金による事業リスクや2人の子に承継する際のことを考えると、両社の提案に問題はないか、慎重に判断したいと思い、FPに相談することにした。

 

【X社の提案内容】
・Aさんの自宅を売却のうえ、甲土地に店舗併用マンションを建築し、その一部をAさん夫妻の自宅とする。
・RC造5階建て、延床面積900m²、有効面積800m²(自宅部分80m²・賃貸部分720m²)
・建設費3億円(自宅の売却代金4,000万円、自己資金6,000万円、借入金2億円)
・年間の純収益1,390万円/返済額1,272万円(借入期間20年・金利2.5%、元利均等返済)

 

【Y社の提案内容】
・甲土地を売却し、M市内と東京都Z区内の賃貸マンション2棟に買い換える。
・M市内のマンション(RC造3階建て、築2年、満室稼働中)
  i) 購入価額2億円(甲土地の売却代金1億円、借入金1億円)
  ii) 土地300m²、建物450m²
 iii) 年間の純収益780万円/返済額636万円(借入期間20年・金利2.5%、元利均等返済)

・東京都Z区内のマンション(RC造5階建て、築1年、満室稼働中)
  i) 購入価額2億円(甲土地の売却代金1億円、借入金1億円)
  ii) 土地150m²、建物540m²
 iii) 年間の純収益980万円/返済額636万円(借入期間20年・金利2.5%、元利均等返済)

 

(FPへの質問事項)
 1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報
 ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

 2. Aさんが店舗付で甲土地を売却する際、特に買主に告知する事項とその理由を教えてください。

 3. Aさんの意向を踏まえ、X社とY社の提案内容をどのように評価しますか。

 4. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について


○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
⒈ Aさんに対して最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかにどのような情報が必要ですか。
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報。
 ②FP自身が調べて確認する情報と整理して説明してください。

①Aさんから直接聞いて確認する確認する情報は、
⑴本人しか知らないこと。トラブルの理由、関係者の意向として
 取得費や取得日、契約書等が確認できる資料があるか。
 浄化槽や井戸の消毒や最終処理状況、使用廃止届出書の提出の有無。

⑵お客様に寄り添うこと、本当のニーズを引き出すこととして
 二人の子供の意向、実家に戻る予定はないということですが不動産賃貸業に意欲的かどうか。
 妻Bさんの意向、不動産賃貸業に賛成か、Aさん死亡後のライフプラン。
 現在の生活費や、不動産賃貸業でどれぐらいの収益を見込んでいるか。
 自宅に住み続けたいのか、転居してもかまわないのか。

②FP自身が調べて確認する情報は、
⑴現地確認として(外観、近隣状況、住人)
 土地・建物の物理的状況を実際に現地で確認すること。

⑵権利関係として
 法務局で登記事項証明書や公図を請求し物件の権利状況等を確認すること。

⑶法令上の制限として
 自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し今後の開発予定や周辺環境の変化を把握すること。

⑷市場調査として
 他の不動産業者などから取引事例等を確認し、不動産業者の提案が適正かどうか、周辺賃貸マンションの入居率や家賃相場等を把握しておきます。


⒉ それでは、Aさんが店舗付で甲土地を売却する際、特に買主に告知する事項とその理由を教えてください。

浄化槽と井戸の存在を告知する必要があります。

浄化槽の存在を告知する理由は、2020年9月から現在まで使用しておらず、建物の築年数から浄化槽の交換が必要になる可能性があるので、交換費用や撤去費用を売主、買主どちらが負担するのか事前に話し合う必要があります。

井戸の存在はを告知する理由は、井戸を残すのか埋め戻すのか、埋め戻す場合は費用を売主、買主どちらが負担するのか話し合う必要があります。
井戸は、神様が宿っている神聖な場所として、お祓いが必要だと言われることもあるので関係者が納得する方法で対処するためにも話し合いが必要です。


⒊ それでは、Aさんの意向を踏まえ、X社とY社の提案内容をどのように評価しますか。

Aさんの意向は、甲土地の価値を活用した不動産賃貸業により老後の生計を立てたいこと。
将来、2人の子に賃貸物件を遺してあげること。
とあり、2つの点からX社、Y社の提案内容を評価すると。

X社の提案は、新築マンションに住むことができるが、自宅を売却すること、自己資金が必要なことは老後の生計に影響が出る。
甲土地のテナントやマンション入居ニーズが不明な点や、
相続発生時に子供二人で分割することになることなど、将来的に不安な点が多いと思います。

Y社の提案は、自己資金が不要で、自宅に住み続けることができるので生活環境が変わらないこと。
M市内のマンション、東京都Z区内のマンションとも、築年数も浅く現在満室で稼働していること。
2棟所有することでのリスク分散ができる。
相続発生時には、子供二人がそれぞれの物件を所有することができる点で評価できます。


⒋ FP業務では色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する専門職業家はどのような方々がいますか。

不動産の取引に関する課税上の具体的な税務相談は税理士に、
売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務については宅地建物取引士に、
井戸や浄化槽に関する具体的な法律相談は弁護士
土地の正確な測量と境界の明示は土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士に、
土地の所有権移転登記については司法書士と連携して業務にあたりたいと思います。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読んだり、二人で読み合わせをするなど、お客様に説明するように話してみるのも効果的です。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
詳しくはこちらをご覧ください

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