2021年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2021年10月2日)過去問解説

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公開日 2021年11月14日 最終更新日 2021年11月14日

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2021年度 第2回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2021年10月2日)

●設 例●
 Aさん(64歳)は、個人で不動産賃貸業を営んでいる。Aさんは、以前、国道沿いで雑貨店(有限会社X社、Aさんが全額出資)も営んでいたが、赤字経営が続いたため、3年前に店を閉じた。しかし、X社についてまだ解散手続はしていない。X社の現在の資産は預金が多少あるだけで、負債はない(税法上の繰越欠損金がある)。Aさんは、現在、家賃収入として年間約2,200万円を得ており、休眠しているX社を所得税や住民税の軽減や将来の相続 税の軽減のために利用できないかと考えている。なお、賃貸アパートの取得に要した借入金は数年前に完済している。

 また、先日、東京都内の料理屋で10年間腕を磨いてきた長男Dさん(32歳)から、現在使用していない雑貨店の建物を改装して飲食店を開業したいとの相談があった。話合いを重ねた結果、Aさんは賛同し、改装資金や当面の事業資金を支援してあげたいと思っている。Aさんは、長男Dさんの飲食店の経営にX社を利用することはできないかとも考えている。


【Aさんの推定相続人】
妻Bさん (64歳):専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長女Cさん(38歳):パート従業員。会社員の夫と子の3人で夫所有の持家に住んでいる。
長男Dさん(32歳):独身。Aさん所有の甲アパートの一室に住んでいる。家賃は支払っていない。


【Aさん自身の資産承継】
長女Cさん(38歳)は、隣県で会社員の夫と子の3人で夫所有の持家で暮らしているが、私立中学に進学した子(13歳)の教育費と住宅ローンの負担が大きく、Aさんに支援を求めている。また、Aさんは、2人の子が遺産分割でもめることはないと思っているが、自筆証書遺言の保管制度があると聞き、念のために遺言書の作成を検討している。

 

 

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

1. 現預金 8,500万円  
2. 自宅      
  ①土地(400㎡) 8,000万円  
  ②建物(築25年) 400万円  
3. 甲アパート      
  ①土地(500㎡) 6,000万円  
  ②建物(16室) 1,400万円 (年間収入約1,200万円)
4. 乙アパート      
  ①土地(400㎡) 4,000万円  
  ②建物(12室) 1,500万円 (年間収入約1,000万円)
5. 旧雑貨店      
  ①土地(100㎡) 5,000万円  
  ②建物 200万円 (現在は使用していない)
  合計 3億5,000万円  

Aさんの相続に係る相続税額は、約7,500万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

 

相談内容として

  • 休眠しているX社を所得税や住民税の軽減や将来の相続税の軽減のために利用できないか
  • 長男Dさんの飲食店の経営に休眠しているX社を利用できないか
  • 自筆証書遺言の作成

問題点は、Aさんの相続発生時に、

  • 納税資金不足が予想されるので、納税資金の準備
  • 相続税が高額になるので相続税の軽減
  • 円滑な遺産分割を行うための対策が必要です。
 

それでは、今あげた相談内容および問題点を解決するためには、どのような提案・方策が考えられますか?

休眠しているX社を、所得税や住民税の軽減や将来の相続税の軽減のために利用できないかということですが、X社を不動産管理会社として再開させることを提案します。

X社を不動産管理会社として再開させると、所得税や住民税の軽減が図れるのはどうしてですか?

個人と法人の税率の違いから、所得が多いと不動産管理会社を活用した方が税率は低くなります。
個人の所得税は、所得が高いほど税率が高くなる超過累進税率で課税されます。不動産を個人で所有する場合は、所得が多く最高税率が課せられると、住民税等を含めて50%を超える税率になります。
不動産管理会社では、法人税と住民税等を含めた実効税率は高い場合でも33%前後にとどまります。

では、X社を不動産管理会社として再開するメリット・デメリットを教えてください。

 

メリットは、
⑴相続税の財産評価で有利になる。
⑵所得分散ができる。
⑶広い範囲で経費が認められる。
⑷相続財産をスムーズに承継できるという点です。

⑴オーナーが死亡した際は不動産ではなく資産管理会社の株式を相続することになるので相続税の計算上不動産の評価よりも資産管理会社の株式はさらに低い価格で評価することができます。
そして、オーナーが得るはずだった所得を管理会社が得ることで税金を低く抑えることができます。
⑵さらに、家族を管理会社の役員にすることで会社の所得を役員報酬という形で家族に分散させることができます。
⑶個人で不動産を保有する場合は、不動産管理に直接関係のあるものだけが所得計算上の必要経費として認められますが、資産管理会社では間接経費も経費として計上することができます。
⑷個人で保有していた不動産を相続する場合は登記が必要で登記費用がかかります。生前に贈与する場合は登記費用のほか不動産取得税も必要になります。不動産管理会社の場合は不動産ではなく株式を相続・贈与すればよく登記の手間と費用はかかりません。

デメリットとしては、X社を不動産管理会社として再開すると会社を経営するために事務作業が煩雑になり、税理士や社労士などの専門家に依頼する場合はコストもかかります。法人化後すぐに相続が発生するとキャッシュの増加により税負担が増える可能性もあるので注意が必要です。

 

相続対策としてX社を活用する場合、不動産の所有や管理の方法はどのような形態がありますか?

相続対策として不動産管理会社を活用する場合、一般的な形態として、不動産所有方式、管理会社方式、サブリース方式があります。

不動産所有方式とは、Aさんが所有する不動産をX社に売却し、X社が不動産を所有する形態です。
X社が土地と建物を所有とする場合と、建物だけをX社所有とする方法が考えられます。

土地建物ともにX社所有とするには、土地に含み益があると譲渡所得税がかかるので予想相続税額と比較検討する必要があります。

建物のみをX社所有とする場合には、一般的には建物に含み益は発生しても少額なので譲渡所得税の負担はそれほど大きくありません。
建物だけをX社所有とする場合は、借地権の認定課税が行われないように、土地の無償返還に関する届出書を提出します。

建物を法人所有とすれば、賃貸収入は法人に帰属するので、妻Bさんや長女Cさん長男Dさんが役員報酬を得ることで不動産収入の分散ができ、納税資金を確保することもできます。

管理会社方式とは、Aさん個人が不動産を所有し、設備の管理などをX社に委託する方式です。不動産の売却手続きが必要なく、手続きが容易な点がメリットです。
収益はAさんに入りますが、Aさんはその中からX社に管理費を支払うことになるので所得の分散効果が期待できます。
しかし、不動産はAさん所有のままなので、相続税の節税メリットはあまり期待できません。

サブリース方式とは、Aさんが所有する不動産をX社に一括で貸し付ける方式です。
収益はX社のもとに入り、X社はそのうちからAさんに賃料を支払います。X社が空室リスクを負うので、空室の有無に関わらずAさんの収入は安定ています。
サブリース方式も不動産はAさん所有のままなので、節税効果は小さいですが、X社に一括で貸し付けるため実際に空室があっても賃貸割合が常に100%の貸家貸付地として評価額を計算できるので、相続税評価額を小さくすることができます。


長男Dさんの飲食店の経営に休眠しているX社を利用することはできますか?

X社は、3年前に店を閉じ、解散手続きをしていないということなので、事業を再開させることは可能です。
ただし、登記内容に変更が生じた場合は法務局で登記変更を行う必要があります。
法務局での登記変更手続きは、変更が生じたときから2週間以内に行う必要があり、手続きの際には登録免許税が必要になります。

X社の欠損金を繰り越して控除を受けることは可能ですか?

X社が休眠前に青色申告の承認を得て確定申告をしていた場合、事業再開後の確定申告において休眠前の欠損金を繰り越して控除を受けることができます。
ただし、2期連続して期限内に確定申告を行わない場合は、2期目からの青色申告の承認は取り消されるので、X社が休眠中も確定申告を期限内におこなっていたか確認が必要です。

欠損金として繰り越せる期間は何年ですか?

青色欠損金として繰り越せる期間は、平成30年4月1日以降に開始する事業年度の場合10年です。
X社は3年前に店を閉じているので、欠損金を繰り越して控除を受けることは可能です。


自筆証書遺言保管制度ついて教えてください。

自筆証書遺言を法務局に保管できる制度で、保管されている遺言書は家庭裁判所の検認が不要になり相続人等の中で誰か一人でも遺言書情報証明書の交付を受けたり、遺言書の閲覧をした場合には、その他の全ての相続人等に対して遺言書が保管されている旨の通知が届きます。
しかし、証人がいないので自筆証書遺言の内容の有効性が争われたり、代理人では保管の申請はできず必ず本人が法務局に出向く必要があるので注意が必要です。

円滑な遺産分割を行うためにはどのような提案・方策が考えられますか?

遺言書を作成する場合、相続人が争うことのないように遺留分に考慮して作成することが望ましいです。遺言の種類には普通方式として「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、一般的には公正証書遺言、自筆証書遺言で作成されます。
代償分割は、所有財産に占める不動産の比率が高い場合などは不動産を相続した人の取得割合が多くなることが考えられます。
今回のケースでは、長男DさんがX社を承継し相続財産の多くをDさんが相続すると、長女Cさんの不満が出る可能性があるので、生命保険の活用や生前贈与により代償分割の準備をすることが必要です。

長女Cさんへの贈与は、どのように提案しますか?

孫への教育資金の一括贈与を提案します

教育資金の一括贈与について説明してください。

両親や祖父母から、子や孫に対して教育資金に限定して1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。
2023年3月31日まで適用期間が延長になりましたが、贈与者が亡くなった時点での使い残した残高が相続税の対象となる点、孫が受贈者の場合の2割加算の対象となる点などが改正されました。


⒋ 最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

⑴顧客利益の優先、⑵守秘義務の遵守、⑶顧客に対する説明義務、⑷インフォームドコンセント、⑸コンプライアンスの徹底、⑹FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、インフォームドコンセントを重視します。

Aさんの悩みは、所得税や住民税の軽減、相続対策としてのX社の活用や、長男Dさんの経営です。
X社の再開や飲食店の経営は、長男Dさんの意向も確認しながら進める必要があり、また、遺産分割でもめることはないと思っているが、長女Cさんも含め、ご家族と一緒に理解状況を確認しながら、寄り添ったわかりやすく丁寧な説明を行い、必ず同意を得て提案することを重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例と同じような設例が2018年2月18日の設例にありました。

実技試験は開催日によっては、過去問と同じような説例の場合があります。実技対策問題集で確認してみてください。

FP1級実技試験の難しさは「自分の言葉で相手に伝える」ことだと思います。何度も声に出して読み、お客様に説明するように話してみるといいと思います。

最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

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    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
高校卒業後セガに就職し上京。地元に戻りDTPオペレーターとして印刷会社に就職。
金融機関へ転職しお客様相談やセミナー講師、社員研修を担当。