公開日 2021年4月12日 最終更新日 2022年4月27日
FP1級試験の勉強を始めても、出題範囲が広すぎて何から手をつけていいのかわからなかったり、せっかく覚えても忘れてしまい心が折れることってありませんか?
このサイトでは、私が実践し得点が倍増した勉強方法についてご紹介します。
今回はF.分野 相続・事業承継から相続税の課税価格の合計と小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の問題です。
相続税の課税価格の合計に関する計算問題は、FP1級試験の応用編で過去8回のうち3回出題されています。応用編の相続・事業承継の問題は、相続税の課税価格の合計を求める問題か、取引相場のない株式評価(類似業種比準価額等)の問題のどちらかが出題されるので相続税の課税価格の計算式は完璧に覚えておく必要があります。
相続税の課税価格の合計を求める計算のポイントは、法定相続人の人数と法定相続分の確認、非課税特例の要件をおぼえましょう。
《問63》 | 《問64》 | 《問65》 | ||||
2022年1月 |
類似業種比準価額の計算 |
7点 |
純資産価額の計算 類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式による価額の計算 |
6点 |
株式の種類(説明) |
7点 |
2021年9月 |
類似業種比準価額の計算 |
6点 |
純資産価額の計算 類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式による価額の計算 |
6点 |
配当還元方式の計算 発行法人に株式を譲渡した場合の説明 非上場株式等についての相続税の納税猶予・免除の特例の説明 |
8点 |
2021年5月 |
小規模宅地の特例適用後の土地の価額の計算 |
6点 |
相続税の総額の計算 孫が納付すべき相続税額の計算 |
6点 |
配偶者居住権、配偶者短期居住権の説明 自筆証書遺言保管制度の説明 |
8点 |
2021年1月 |
類似業種比準価額の計算 |
7点 |
純資産価額の計算 類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式による価額の計算 |
7点 |
間違っている選択肢を選び適切な内容に訂正する 直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の説明 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の説明 |
6点 |
2020年9月 |
類似業種比準価額の計算 |
6点 |
純資産価額の計算 類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式による価額の計算 |
6点 |
非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除の特例の説明 遺留分に関する民法の特例の説明 |
8点 |
2020年1月 |
類似業種比準価額の計算 |
7点 |
純資産価額の計算 類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式による価額の計算 |
7点 |
間違っている選択肢を選び適切な内容に訂正する 非上場株式の評価を引き下げる方策の説明 事業用建物の敷地の評価の説明 |
6点 |
2019年9月 |
相続に関する土地の評価の説明 |
7点 |
相続税の総額の計算 長男が納付すべき相続税額の計算 |
5点 |
遺留分の説明 遺言書の説明 |
8点 |
2019年5月 |
類似業種比準価額の計算 |
6点 |
小規模宅地の特例適用後の相続税の総額の計算 |
6点 |
非上場株式についての相続税の納税猶予・免除の特例の説明 |
8点 |
それでは、過去問を解きながら解説していきます。
今回の過去問は2018年9月試験の問題で少し古い問題ですが、相続税の課税価格の合計を計算する問題に小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例も含まれる、とてもよくできた問題だと思うので相続が苦手な方は繰り返し解いてみてください。
問題を見る必要がない方は問題を飛ばしてポイントからお読みください。
目次
《問63》 仮に、Aさんが現時点(平成30年9月9日)において死亡し、《設例》の〈Aさんが保有する財産の分割内容〉に基づき、相続人等が相続または遺贈により財産を取得する場合、各相続人等に係る相続税の課税価格および相続税の課税価格の合計額を求めた下記の表の空欄①~⑧に入る適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。
なお、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」を妻Bさんが取得する自宅の敷地と長女Dさんが取得する賃貸アパートの敷地に適用し、自宅の敷地を優先して適用することとする。また、表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。
《問64》 仮に、Aさんが現時点(平成30年9月9日)において死亡し、前問《問63》の計算結果にかかわらず、弟Jさんに係る相続税の課税価格が1,800万円、相続税の課税価格の合計額が3億円である場合、1相続税の総額および2弟Jさんの納付すべき相続税額をそれぞれ求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。
なお、弟Jさんの納付すべき相続税額の計算にあたって、相続財産の取得者間における按分割合の調整は行わないものとする。
《設例》
Aさん(70歳)は、一昨年ごろから自身の健康面に不安を感じることが多くなり、自身の相続が発生したときのことを考えるようになった。そこで、Aさんは、いくつかの相続セミナーに参加してみたところ、これまで、子どもたちの仲は良好であるため遺産分割でもめることはないと漠然と思っていたが、多くのトラブル事例を聞くことで不安を感じ、保有する財産の分割内容について遺言しておくことにした。また、Aさんは、結婚する子どもや大学に進学する孫のために、贈与税の非課税措置を利用して資金援助を行った。
Aさんの親族関係図や保有する財産の分割内容等に関する資料は、以下のとおりである。なお、長男Cさんは、5年前に病気により他界している。また、長女Dさんは身体に障害があり、Aさんは、孫Hさんおよび孫Iさんとそれぞれ普通養子縁組(特別養子縁組以外の縁組)をしている。
〈Aさんが保有する財産の分割内容〉
(1)妻Bさん
現預金 : 5,000万円(相続税評価額)
自宅
建物 : 固定資産税評価額800万円
敷地 : 宅地面積264m²、自用地価額6,200万円(2)長女Dさん
現預金 : 1,000万円(相続税評価額)
有価証券 : 500万円(相続税評価額)
賃貸アパート
建物 : 固定資産税評価額2,000万円、借家権割合30%、賃貸割合100%
敷地 : 宅地面積400m²、自用地価額8,000万円 借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%(3)二女Eさん
現預金 : 2,500万円(相続税評価額)
有価証券 : 700万円(相続税評価額)(4)孫Fさん
現預金 : 300万円(相続税評価額)(5)弟Jさん
現預金 : 1,000万円(相続税評価額)
有価証券 : 800万円(相続税評価額)〈Aさんが加入している生命保険の契約内容〉
(1)終身保険
契約者(=保険料負担者)・被保険者 : Aさん
死亡保険金受取人 : 妻Bさん
死亡保険金額 : 6,000万円(2) 終身保険
契約者(=保険料負担者)・被保険者 : Aさん
死亡保険金受取人 : 長女Dさん
死亡保険金額 : 4,000万円〈Aさんが行った贈与の内容〉
(1) 長女Dさんは、平成28年4月にAさんから有価証券の贈与を受け、初めて相続時精算課税の適用を受けた。贈与を受けた有価証券の贈与時の価額(相続税評価額)は500万円、現時点(平成30年9月9日)の価額(相続税評価額)は600万円 である。(2) 孫Fさんは、平成28年6月にAさんから現金800万円の贈与を受け、「直系尊属 から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」の適用を受けた。現時点(平成30年9月9日)において、教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額が600万円ある。
(3) 二女Eさんは、平成28年10月にAさんから現金600万円の贈与を受け、「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」の適用を受けた。現時点(平成30年9月9日)において、結婚・子育て資金管理契約に係る非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額が400万円ある。
※Aさんとその親族の年齢は、いずれも現時点(平成30年9月9日)のものである。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
貸家の評価=自用地価額×(1−借家権割合×賃貸割合)
=2,000万円×(1−30%×100%)
=1,400万円
〈答え〉 ①1,400(万円)
特定居住用面積 6,200万円×80%=4960万円
6,200万円−4,960万円=1,240万円
〈答え〉 ②1,240(万円)
貸家建付地の評価=自用地価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
=8,000万円×(1−60%×30%×100%)
=6,560万円
小規模宅地の減額割合特定居住用面積× 200 300 +貸付事業用面積≦200
264× 200 300 +𝑥≦200
160+𝑥=200
𝑥=40
貸付事業用面積 6,560万円× 40 400 ×50%=328万円
6,560万円−328万円=6,232万円〈答え〉 ③6,232(万円)
法定相続人の数
⒈妻Bさん ⒉長女Dさん ⒊二女Eさん ⒋ ⒌孫Fさん、Gさん(長男Cさんの代襲相続人) ⒍養子Hさん、Iさん(養子は実子がいる場合1人)
合計6人
死亡保険金の非課税枠=500万円×6人
=3,000万円
受け取った死亡保険金の割合に応じた非課税額
妻Bさんの非課税枠=3,000万円× 6,000万円 1億円 ×50%=1,800万円
長女Dさんの非課税枠=3,000万円× 4,000万円 1億円 ×50%=1,200万円
妻Bさんの生命保険金=6,000万円−1,800万円=4,200万円
長女Dさんの生命保険金=4,000万円−1,200万円=2,800万円
〈答え〉 ④4,200(万円)
・長女Dさんへの生前贈与財産
相続時精算課税制度の場合、贈与された財産は贈与時の価額で相続税の課税価格に加算する
有価証券の贈与時評価額 500万円
〈答え〉 ⑤500(万円)
・孫Fさんへの教育資金贈与財産
受贈者が23歳未満、学生、教育訓練受講中の場合は贈与者死亡時に贈与財産が残っていても課税価格に加算されない
・二女Eさんへの結婚・子育て資金贈与財産
結婚・子育て資金の非課税特例では、贈与者が死亡した場合はその時点の残額が相続税の課税価格に加算される
結婚・子育て資金一括贈与の残高 400万円
種 類 | 妻Bさん | 長女Dさん | 二女Eさん | 孫Fさん | 弟Jさん |
現 預 金 | 5,000 | 1,000 | 2,500 | 300 | 1,000 |
有 価 証 券 | – | 500 | 700 | – | 800 |
不動産(家屋) | 800 | (①1,400) | – | – | – |
不動産(宅地) | (②1,240) | (③6,232) | – | – | – |
生 命 保 険 | (④4,200) | (2,800) | – | – | – |
生前贈与財産 | – | (⑤500) | (400) | (0) | – |
合 計 | (11,240) | (12,432) | (⑥3600) | (⑦300) | 1,800 |
相続税の課税価格の合計額=(⑧29,372) |
〈答え〉 ①1,400(万円) ②1,240(万円) ③6,232(万円) ④4,200(万円) ⑤500(万円) ⑥3,600(万円) ⑦300(万円) ⑧29,372(万円)
・相続税の基礎控除額
3,000万円+(600万円×6人)=6,600万円
3億円−6,600万円=2億3,400万円
・それぞれの法定相続分の相続税
妻Bさん234,000,000× 1 2 ×40%−17,000,000円=29,800,000円
長女Dさん234,000,000× 1 8 ×15%−500,000円=3,887,500円
二女Eさん234,000,000× 1 8 ×15%−500,000円=3,887,500円
養子Hさん、Iさん234,000,000× 1 8 ×15%−500,000円=3,887,500円
長男Cさんの代襲相続人Fさん234,000,000× 1 16 ×15%−500,000円=1,693,750円
長男Cさんの代襲相続人Gさん234,000,000× 1 16 ×15%−500,000円=1,693,750円
29,800,000円+3,887,500円+3,887,500円+3,887,500円+1,693,750円+1,693,750円=44,850,000円
〈答え〉 ①44,850,000(円)
・相続税額の2割加算
弟Jさんの納付すべき相続税額44,850,000× 18,000,000円 300,000,000円 ×1.2=3,229,200円
〈答え〉 ②3,229,200(円)
相続税の課税価格の合計と小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例は、法定相続人と法定相続分のカウント(代襲相続人と養子、孫養子)を間違えないこと。生前贈与財産の加算するものとしないものの違い、小規模宅地の範囲と対象面積・減額割合、土地の評価に関する問題もチェックしましょう。
①代襲相続人が被保険者の養子である場合(二重身分)
〈例〉長男の子が被相続人の孫養子となり、かつ長男がすでに他界している場合、孫は被相続人の養子+代襲相続人という二重の立場になる。この場合の相続人は配偶者と孫養子、次男の3名になる。
②代襲相続人と被相続人の養子がいる場合(養子・孫が複数人)
〈例〉実子である長男・二男と、三男の代襲相続人である孫C、Dがいて既に孫A、Bが普通養子になっているため、法定相続人としてカウントできるのは一人のみということになり、法定相続人は配偶者・実子二人・代襲相続人二人・養子一人分の合計6人になる。
養子は複数人いても一人分として計算。代襲相続人は亡くなった人の分を代襲相続人で分ける。(三男の分を孫二人C、Dで分ける)
①相続時精算課税制度
贈与された財産は、贈与時の価額で相続税の課税価格に加算します。
②直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合
贈与者が死亡した場合、相続開始3年以内に贈与を受けた教育資金のうち、教育資金に使われなかった残額は贈与者の相続財産に含めます。(ただし、受贈者が23歳未満、学生、教育訓練受講者は相続財産に含める必要はありません)
令和3年度の改正で、適用期限が2年延長になりました。(令和5年3月 31 日まで)。
○祖父母等が亡くなった場合、孫等が 23 歳以上であれば贈与の残額を相続財産に加算の上、 2割加算を適用する(ただし、受贈者が23歳未満、学生、教育訓練受講者は相続財産に含める必要はありません)
③直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合
贈与者が死亡した場合、その時点の残額が相続税の課税価格に加算されます。
令和3年度の改正で、適用期限が2年延長になりました。(令和5年3月 31 日まで)
○祖父母等が亡くなった場合、孫等に対してて贈与の残額を相続財産に加算の上、 2割加算を適用する
相続または遺贈により取得した建物または構築物の敷地である宅地等については、次の適用対象面積まで減額割合を常時多額が評価減できます。
特定事業用:400㎡まで80%
特定居住用:330㎡まで80%
貸付事業用:200㎡まで50%
適用面積の調整
特例対象として選択する宅地等の全てが特定事業用と特定居住用宅地の場合は400㎡+330㎡=730㎡まで完全併用できます。
貸付事業用を選択する場合は完全併用はできず、次の算式により要請を行う必要があります。
特定事業用面積× 200 400 +特定居住用面積× 200 330 +貸付事業用面積≦200㎡
〈例1〉特定居住用330㎡、貸付事業用100㎡の場合の特定居住用の面積上限(A)
(A)× 200 330 +100≦200
(A)≦100× 330 200
(A)≦165
〈例2〉特定居住用165㎡、貸付事業用400㎡の場合の特定居住用の面積上限(B)
165× 200 330 +(B)≦200
(B)≦200-165× 200 330
(B)≦100
①貸家建付地
地主Aが自ら建物を建て第三者Bに貸付けた土地の状態。(自分の土地の、自分の建物を貸す)
貸家建付地=自用地価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
②貸宅地
地主Aから土地を借りたCが建物を建てた状態。(自分の土地に、土地を借りた人の建物が立っている)
貸宅地=自用地価額×(1−借地権割合)
③貸家建付借地権
地主Aから土地を借りたCが建物を建て第三者のBに貸付けた場合のCが保有する借地権
貸家建付借地権=自用地価額×借地権割合×(1−借家権割合×賃貸割合)
④貸家
貸家=自用地価額×(1−借地権割合×賃貸割合)
応用編の問題を解く場合は計算過程の記載が不要な問題でも必ずノートに体裁を揃えて書くようにしています。
何回も同じような問題を同じような体裁に揃えて記載することで視覚や体で覚えることもでき、計算ミスを防ぐこともできます。それに丁寧に計算過程を書くことで少しでも部分点のアピールになればとも思います。
私が実際に使っていた用紙です。
画像をクリックすると拡大します。 注)間違っている箇所もあります(赤字)
相続税の課税価格の合計と小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の計算問題は法定相続人と法定相続分を間違えると相続税の課税価格を間違ってしまいます。代襲相続や孫養子などに気をつけて色々なパターンの問題を解いてみましょう。
相続に関する問題は制度改正も多く最新の情報にアップデートしておく必要があります。制度改正があった項目などは施行前でも出題されるのでチェックしておきましょう。
FP1級試験では「どっちだったかなぁ」と迷う場面が多々あります。何度も繰り返し問題を解き色々なパターンに対応できるようにしましょう。
最後まで諦めずに実力を発揮できるように頑張りましょう!
ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。