公開日 2021年12月17日 最終更新日 2024年1月19日
2022年1月実施のFP1級学科試験の合格を目指すNさんに、絶対合格ミッションを課せられた、先輩FP1級技能士のMさんが、試験対策・勉強方法、傾向と対策などをアドバイスします。
今回は、FP試験サポート中のNさんから質問があった、数ある計算問題の中でもテキストではややこしく解説してある「小規模宅地の特例」を紹介します。
ファイナンシャル・プランナー Mさん
FP1級技能士、AFP、証券外務員、日商簿記2級。
AさんやX社からの相談が多く、後輩のNさんにFP1級試験のアドバイスをしています。
教わる人 Nさん
FP2級技能士。AFP。
50歳。FP1級試験を受験するも、72点で惨敗。次の試験で合格するため勉強中!
試験勉強を始める前に、出題傾向をみてみましょう。
FP1級学科試験で小規模宅の特例の問題は、2021年5月の応用編で出題されています。
応用編だけでなく基礎編でも出題されますが、出題パターンは同じなので「絶対に落とせない問題」ですね。
計算問題は覚える式が多いので、覚えてたつもりの計算式がうろ覚えで試験本番では迷ってしまい、結果、間違えてしまいました(泣)
FP1級試験では、基礎編、応用編共に計算問題が出題されます。
計算問題は計算式さえ間違わなければ、ほとんど過去問のリライトなので、知識レベルを問う問題や旬な時事問題、専門家でないとわからない問題よりも点数が稼ぎやすいので、計算問題は、応用編も基礎編も分野別に目指す得点を把握して「絶対に落とせない問題」を確実に正答することが重要です。
「絶対に落とせない問題」って、どの問題も絶対に落とせない問題じゃないんですか?
どの問題も落とせない問題として勉強する心構えは、FP1級技能士として重要な資質だけど、試験に合格するためには全ての問題を正答する必要はありません。
FP1級技能士は試験合格後も能力の啓発が求められるので、わからない問題は合格後に取り組んでも遅くありません。
「絶対に落とせない問題」とは、FP1級技能士として最低限理解しておくべき内容だと思うので、学習のスタートにはピッタリです。
応用編の出題傾向は、こちらの記事も参考にしてください。
自分の家を建設し住んでいる場合や、借地している場合、賃貸マンションを建設し賃貸している場合など、土地の利用状況によって相続税評価額は変わります。
土地の相続税評価額の計算方法
地主Aが自ら建物を建て第三者Bに貸付けた土地の状態。(自分の土地の、自分の建物を貸す)
貸家建付地の評価=自用地価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
地主Aから土地を借りたCが建物を建てた状態。(自分の土地に、土地を借りた人の建物が立っている)
貸宅地の評価=自用地価額×(1−借地権割合)
地主Aから土地を借りたCが建物を建て第三者のBに貸付けた場合のCが保有する借地権
貸宅地の評価=土地の評価額-土地の評価額×借地権割合
地主Aが自分で使用する土地。自宅が立っている。
自用地の評価(路線価方式)=路線価×土地の面積(㎡)
コインパーキングなど駐車場として土地を貸している場合は、貸家建付地になるんですか?
コインパーキングなどは、一時使用のため借家権が発生しないので自用地となります。
賃貸マンションの駐車場など、駐車場がマンションの敷地内にあり、利用者がすべてマンションの住人の場合は、地主の利用が制限されるため貸家建付地になります。
賃貸マンションの一部を自宅として使用している場合は、自用地ですか、貸家建付地ですか?
自用地でもあり、貸家建付地でもあります。
例えば、5階建マンションの1階〜4階を賃貸用、5階を自宅として使用している場合は、5分の4は貸家建付地としての評価で、5分の1は自用地評価が適用されます。
特例対象として選択する宅地等の全てが特定事業用と特定居住用宅地の場合は400㎡+330㎡=730㎡まで完全併用できます。
しかし、貸付事業用が含まれている場合、限度面積や減額割合が異なるので按分計算で限度面積を出す必要があります。
この式ですよね。
特定事業用面積× 200 400 +特定居住用面積× 200 330 +貸付事業用面積≦200㎡
限度面積を求める場合は、上の式で計算しますが、有利判定を行う場合は、次の係数を使います。
特定居住用 | 330×80%=264 |
特定事業用 | 400×80%=320 |
貸付事業用 | 200×50%=100 |
係数を使って、貸付事業用が含まれる場合の有利判定をやってみます。
小規模宅地の有利判定
特定居住用の係数は、貸付事業用の2.64倍なので、特定居住用の1㎡単価を2.64倍した数値と、貸付事業用の1㎡単価を比較します
特定居住用×2.64>貸付事業用の場合、特定居住用が有利
特定居住用×2.64<貸付事業用の場合、貸付事業用が有利
特定事業用の係数は、貸付事業用の3.2倍なので、特定事業用の1㎡単価を3.2倍した数値と、貸付事業用の1㎡単価を比較します
特定事業用×3.2>貸付事業用の場合、特定居住用が有利
特定事業用×3.2<貸付事業用の場合、貸付事業用が有利
それでは、2021年5月実施の過去問を解いてみましょう。
2021年5月【第5問】
《設例》
Aさんは、甲土地と乙土地を所有している。甲土地はAさんが所有する3階建ての賃貸アパートの敷地であり、Aさんはその賃貸アパートの3階部分を自宅として居住の用に供し、1階および2階部分は賃貸の用に供している。乙土地はAさんが所有する事業用建物の敷地であり、長女Cさんがその事業用建物をAさんから使用貸借により借り受けて雑貨店を営んでいる。
Aさんは、最近、健康に不安を感じることが多くなり、自身の相続が発生したときのことを考えるようになった。Aさんは、自身の相続が発生した後も、妻Bさんが引き続き自宅に住み続けられるように、かつ、子たちが遺産分割でもめないように遺言書を作成しておきたいと考えている。
Aさんの親族関係図およびAさんが所有している土地に関する資料は、以下のとお りである。なお、Aさんは、Dさん、孫Eさんおよび孫Fさんとそれぞれ普通養子縁 組(特別養子縁組以外の縁組)をしているが、Dさんは病気により既に他界している。 また、孫Gさんおよび孫Hさんは、AさんとDさんの普通養子縁組後に誕生している。〈Aさんが所有している甲土地および乙土地に関する資料〉
(1) 甲土地(Aさんが所有している自宅兼賃貸アパートの敷地)
宅地面積:198m²
自用地評価額:3,600万円
借地権割合:60%
借家権割合:30%
- 甲土地上にある賃貸アパートは3階建て(300m²)であり、各階の床面積は同一である(各階100m²)。
- 3階部分はAさんが妻Bさんおよび長女Cさん家族とともに自宅として使用し、1階および2階部分は第三者に賃貸している(入居率100%)。
(2) 乙土地(Aさんが所有している事業用建物の敷地)
宅地面積:188m²
自用地評価額:4,000万円
借地権割合:60%
- ※乙土地上にある事業用建物は長女Cさんが無償で貸与を受けて使用している。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。《問63》
仮に、Aさんが現時点(2021年5月23日)において死亡した場合、《設例》の〈Aさんが所有している甲土地および乙土地に関する資料〉に基づき、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の相続税の課税価格に算入すべき①甲土地の価額と②乙土地の価額を、それぞれ求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は万円単位とすること。
なお、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用にあたって、甲土地のうち自宅に対応する部分は特定居住用宅地等、賃貸アパートに対応する部分は貸付事業用宅地等、乙土地は特定事業用宅地等にそれぞれ該当するものとし、課税価格の計算上、減額される金額の合計額が最大となるように計算すること。出典:一般社団法人金融財政事情研究会 1級学科試験、1級実技試験(個人資産相談業務) なお、当サイトの管理人は一般社団法人金融財政事情研究会のファイナンシャル・プランニング技能士センター会員のため許諾申請の必要なく試験問題を利用しています。参考:技能検定試験問題の使用について
2021年5月《問63》 解答・解説
自宅の面積=198× 1 3 =66㎡
自宅の評価額=36,000,000円× 1 3 =12,000,000円
賃貸アパートの面積=198× 2 3 =132㎡
賃貸アパートの評価額=36,000,000円× 2 3 =24,000,000円
24,000,000円×(1-60%×30%×100%)=19,680,000円
自宅の1㎡単価=12,000,000円÷66㎡=181,818円
賃貸アパートの1㎡単価=19,680,000円÷132㎡=149,091円
事業用宅地の1㎡単価=40,000,000円÷188㎡=212,766円
自宅181,818円×2.64>賃貸アパート149,091円
事業用宅地212,766円×3.2>賃貸アパート149,091円
自宅、事業用宅地が有利
66㎡× 200 330 +188㎡× 200 400 +賃貸アパート適用面積≦200㎡
40㎡+94㎡+賃貸アパート適用面積≦200㎡
賃貸アパートの適用面積=66㎡
自宅=12,000,000円×(1-80%)=24,000,000円
賃貸アパート=19,680,000円-(19,680,000円× 66 132 ×50%)=14,760,000円
事業用宅地=40,000,000円-(40,000,000円×80%)=8,000,000円
甲土地の価額=自宅24,000,000円+賃貸アパート14,760,000円=17,160,000円
〈答〉 1,716(万円)
事業用宅地=40,000,000円-(40,000,000円×80%)=8,000,000円
〈答〉 800(万円)
2021年1月試験に向けて、「絶対に落とせない問題」の中から、小規模宅地の特例の問題でした。
小規模宅地の特例の問題は、穴埋め問題でも出題される場合があります。
2021年5月や2019年5月、2018年9月の試験では計算問題が出題され、2019年9月の試験では穴埋め問題が出題されていますのでチェックしてみてください。
小規模宅地の特例は、実技試験でもよく出てくるので、計算式だけでなく要件等も理解しておくことをオススメします。
小規模宅地の問題が解けるようになると、FP1級の試験勉強も手応えを感じ楽しくなるはずです。
2018年の試験は、こちらの記事も参考にしてください。
計算問題の種類も多くて、覚えたと思ってもしばらくすると忘れてしまう、なんてことも何度もあります。
私の場合、毎日1問でも継続して問題を解き、視覚と電卓の順番で覚えることができました。
Nさんの合格ミッション達成に向けて全力でサポートします!
最後まで諦めずに頑張りましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。