FP1級実技試験 空き家・不動産の相続に関する設例のポイント

空き家・不動産の相続に関する設例のポイント

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公開日 2024年8月6日 最終更新日 2024年8月7日

2024年6月に実施されたFP1級実技試験では、空き家・不動産の相続に関する設例が多くありました。

AさんがEさんに伝えた「管理不全空き家というものに該当してしまうと税金が高くなる」という制度の概要について説明してください。(2024年6月9日Part2)

先日、国が不動産を引き取ってくれる制度が始まったとの話を耳にし、その仕組みを知りたいと思っている。(2024年6月16日Part1)

乙土地について、Aさんが老人ホームに入居後に売却する場合の課税関係はどうなりますか。また、老人ホームに入居したAさんが亡くなった後、相続人である子が売却する場合の課税関係はどうなりますか。(2024年6月16日Part2)

出題が多くなっているのは、依然として空き家が社会問題となっていることと、それに伴って空き家に関する改正が多くなっていることが考えられます。

今回は、空き家に関する法改正や特例をまとめてみました。

動画はこちら

空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律

空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(空家法)が令和5年12月13日より施行されました。

空家法が定めている内容は、空き家の定義、空き家所有者や市町村の責務、空き家の対応方法や特定空き家の指定手順などです。

今回の法改正により、特定空き家に加えて、管理不全空き家も市区町村からの指導・勧告の対象となりました。

特定空き家

特定空き家とは以下のような状態の空き家です。

  • そのまま放置すれば、倒壊など著しく保安上危険な状態にある。
  • 著しく衛生上有害となる恐れがある。
  • 適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている。
  • その他、周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切な空き家。

これまで、放置すれば倒壊などの危険性が高く、近隣に悪影響を及ぼす空き家を特定空家に認定し、指導や勧告、解体などを行うことができるように対策が取り組まれてきました。

管理不全空き家

管理不全空き家とは以下のような状態の空き家です。

  • 安全性が疑われる。
  • 環境や衛生に悪影響を及ぼしている。
  • 地域のコミュニティや不動産価格に悪影響とみなされる。
  • 犯罪数が増加する可能性がある。

管理不全空き家とは、このままの状態だと特定空き家に指定されてしまう可能性のある空き家です。

今回の改正では、特定空き家に加えて、放置すれば特定空き家になる可能性のある空き家を、管理不全空き家として認定し、指導・勧告できるようになりました。

勧告に従わない場合は、その空き家に対する固定資産税の住宅用地特例が解除されます。

固定資産の住宅用地特例

固定資産等の住宅用地特例とは、土地が住宅用地に該当していれば、固定資産税が減税となるもので、適用されると、
小規模住宅用地は(住宅やアパート等の敷地で200㎡以下の部分)評価額を6分の1に軽減でき、一般住宅用地は(住宅やアパート等の敷地で200㎡を超える部分)家屋の延床面積の10倍まで評価額を3分の1に軽減できます。

実技試験での質問に対する回答例

AさんがEさんに伝えた「管理不全空き家というものに該当してしまうと税金が高くなる」という制度の概要について説明してください。(2024年6月9日Part2)

「管理不全空き家というものに該当してしまうと税金が高くなる」というのは、これまで、空き家は「特定空き家」に指定された場合に、固定資産等の住宅用地特例の対象外となっていましたが、2023年12月13日に施行された法令によって、特定空き家だけでなく「管理不全空き家」も、固定資産等の住宅用地特例の対象外になってしまうからです。

固定資産等の住宅用地特例の対象外になると、小規模住宅用地の固定資産税は6倍、一般住宅用地の固定資産税は3倍になるので「管理不全空き家というものに該当してしまうと税金が高くなる」ということです。

相続土地国庫帰属制度

土地を相続した場合に、自分で住んだり売却するなどして、その土地を活用できれば良いのですが、住むには場所が遠方だったり、貸したり売却するのも難しいと、固定資産税などの管理費用の負担が大きくなり、相続した土地を手放したくなることが考えられます。

相続時に土地を手放したいときは、相続放棄や売却の他に、その土地を国に引き渡すことができる、相続土地国庫帰属制度を活用するという方法があります。

相続土地国庫帰属制度とは、相続又は遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡すことができる、2023年(令和5年)4月27日に開始された制度です。

相続土地国庫帰属制度は、買い手がつかない土地や農地、山林も申請の対象ですが、全ての土地を国に引き渡すことができるわけではなく、次のような土地は引き取りの対象外です。

  • 建物がある土地。
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地。
  • 他人の利用が予定されている土地。
  • 特定の有害物質によって土壌汚染されている土地。
  • 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地は引き取りの対象外です。

手数料や負担金などの費用がかかる

通常、土地を売却すると売却代金を得られますが、相続土地国庫帰属制度の場合は、申請する際に、1筆の土地当たり1万4000円の審査手数料を納付する必要があります。

審査手数料の他にも、法務局による審査を経て承認されると、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を納付することになります。
負担金は、1筆ごとに20万円が基本ですが、一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などについては、面積に応じて負担金を算定します。

相続時に土地を手放す方法として考えられる各種手続との比較

  ①相続土地国庫帰属制度 ②相続放棄 ③国や地方公共団体等への寄附 ④民間売買
メリット
  • 1筆の土地単位で申請(処分)することができる
  • 国が引き取るための基準が明確である
  • 家庭裁判所の手続費用が安い
  • 相続人1人で手続が可能
  • 負担金のような金銭を支払う必要がない
  • 身近な自治体等に土地を任せることができる
  • 売買代金を得ることができる
  • 共有者がいる場合でも、自分の持分のみ売却可能
デメリット
  • 相当額の負担金を支払うことが必要
  • 共有者がいる場合は全員が共同して申請する必要がある
  • 全ての相続財産を放棄することになる
  • 相続放棄できる申述期間に制限がある
  • 寄附を受けてもらえる相手(国や地方公共団体等)を探すのが困難なことがある
  • 寄附を受ける基準が国や地方公共団体等によ って異なる
  • 購入してもらえる相手を探すのが困難なことがある
  • 売買のための条件等を交渉する必要がある

引用:法務省(相続土地国庫帰属制度について)

実技試験での質問に対する回答例

先日、国が不動産を引き取ってくれる制度が始まったとの話を耳にし、その仕組みを知りたいと思っている。(2024年6月16日Part1)

相続時に土地を手放したいときは、相続放棄や売却の他に、その土地を国に引き渡すことができる相続土地国庫帰属制度があります。

相続土地国庫帰属制度とは、相続又は遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡すことができる制度です。

相続土地国庫帰属制度は、買い手がつかない土地や農地や山林も申請の対象ですが、全ての土地を国に引き渡すことができるわけではありません。
また、審査手数料や10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。

相続土地国庫帰属制度と相続の放棄との違いは何ですか。

相続の放棄の場合、被相続人の財産に属した権利義務は一切承継されません。財産がどのようなものかについての制限はなく、相続の放棄にあたって経済的負担は求められません。

相続土地国庫帰属制度では、特定の土地のみを国庫に帰属させることができる反面、土地についての要件を満たすことが必要です。また、負担金納付等の金銭的負担が求められます。

相続登記の義務化

2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

相続登記とは、被相続人が所有していた不動産の名義を相続人の名義へ変更することです。

不動産の所有者が誰なのかは法務局で管理されている登記簿に記録されており、不動産を相続した人は相続登記を申請する必要があります。

相続登記の申請期限は、相続財産に不動産があることを知ったときから3年以内です。

正当な理由なく、この期限内に登記をしなかった場合、10万円以下の過料が科せられることになります。

相続登記ですが、2024年4月1日以前に発生していた相続にも適用されるので、過去に相続した相続登記未了の不動産も登記義務化の対象となり、正当な理由なく期限内に申請しなければ10万円以下の過料の対象となります。

相続人申告登記

これまで、相続登記せず放置してきた人が多い理由の一つに手続きが煩雑なことがあげられます。

そこで、より簡単に相続登記義務を履行することができるように、相続人申告登記制度が2024年4月から始まりました。

この制度を利用すると、相続が開始したことと、自分が相続人であることを法務局に申し出れば、それで相続登記義務を行なったことになります。

ただし、申出をしたとしても不動産の所有権を取得したことにはなりません。

不動産を売却や担保にするためには、正式な相続登記を申請する必要があります。

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除とは、相続によって取得した空き家を一人暮らしだった被相続人が死亡した日以後3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡したときは、その空き家を譲渡して得た利益から3,000万円を控除できる特例です。

2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡から家屋や土地を取得した相続人が3人以上の場合の特別控除は2,000万円です。

控除が受けられる対象の不動産
  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物でないこと
  • 被相続人の居住用家屋の敷地として使われていたこと
  • 相続開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた者がいないこと
  • 被相続人が老人ホーム等に入居する直前において、被相続人以外に居住をしていた者がいないこと
適用するための要件
  • 譲渡人が、相続または遺贈により空き家を取得したこと
  • 相続のときから譲渡のときまで事業、貸付け、居住などに使用しておらず、譲渡時に空き家が一定の耐震基準を満たすこと
  • 相続のときから譲渡のときまで事業、貸付け、居住などに使用しておらず、取り壊し後にほかの建物や構築物などを建築していないこと
  • 相続開始から3年を経過した年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること(相続人が複数の場合は1人につき1億円ではなく、合算した売却代金が1億円以下であること)
  • 売った空き家等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、ほかの特例の適用を受けていないこと
  • 同一の亡くなった人からの相続または遺贈により取得した空き家等について、空き家特例の適用を受けていないこと
  • 空き家等の売却先が親子や夫婦など特別の関係がある人でないこと

実技試験での質問に対する回答例

乙土地について、老人ホームに入居したAさんが亡くなった後、相続人である子が売却する場合の課税関係はどうなりますか。(2024年6月16日Part2)

相続空き家を譲渡した場合の3,000万円の特別控除が適用できます。

平成31年度税制改正により、被相続人が亡くなる直前に老人ホームなどに入所している場合でも、要介護認定を受けていることや、自宅を貸し付けたりほかの者の居住用などに使用したりしていないといった要件を満たすことで特例の適用を受けられるようになりました。

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除はこちらの記事もご覧ください

空き家等活用促進区域

相続した空き家を活用する場合、築年数が長く老朽化が進んでいると建物を建て替える必要があります。

しかし、古い空家を建て替えようと思っても、接道義務や用途制限などの建築基準法の規制がネックになり、要件を満たせない場合は空き家の活用を断念せざるを得ません。

そこで、市町村が重点的に空家等の活用を図るエリアを空き家等活用促進区域として定め、市町村が都道府県と連携し、必要に応じて用途規制や前面道路の幅員規制の合理化ができるようになりました。

接道規制の合理化

建築基準法では、建築物の敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していないと、原則として建替えや改築はできません。

改正後は、安全性や必要性を考慮した敷地特例適用要件に適合する空家は、前面道路が幅員4m未満でも、建替えや改築等が可能になります。

用途規制の合理化

都市計画で定められる用途地域の種類に応じて、建築できる建物の種類に制限があり、用途変更を行う場合には個別に特定行政庁の特例許可を受けることが必要です。

改正後は、市区町村が空き家等活用促進指針に定めた、用途特例適用要件に適合する空き家等についても、特例許可をうけることが可能となり、例えば、空家だった住宅を古民家カフェとして活用することもできます。

学科試験もですが、FP試験では改正ものが多く出題されます。

期限のある制度は、知識をアップデートしておきましょう。

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、お問い合わせページやXにてお知らせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんのFP1級技能士試験合格を願っています。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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