2026年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年6月14日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のテキストと過去問解説集を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

https://youtu.be/jQm-AfN0GrU

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2026年度 第1回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年6月14日)

●設 例●

 会社員のAさん(64歳)は、妻Bさん(62歳)と自宅マンションで暮らし、一人息子は結婚して他所で暮らしている。Aさんは、2年前に亡くなった父Cさんから三大都市圏のS市内にある甲土地を相続で取得した。甲土地は、15年前に父Cさんが親戚のDさん(75歳、工務店を経営)から紹介を受けた大手コンビニチェーンのX社に事業用定期借地権を設定して賃貸しており、現在、甲土地上にはX社が建設したコンビニ店舗(鉄骨造平屋、延べ面積180㎡)が建っている。Aさんは勤務している会社を来年退職予定であるが、甲土地からの地代収入と年金収入があれば退職後も安泰と思っており、リタイア後の生活を楽しみにしていた。

 

【甲土地と借地契約の概要】

  • 甲土地  :地積540㎡、私鉄S駅から徒歩10分、固定資産税等年間130万円、準幹線道路に面する
  • 借地契約:事業用定期借地契約、期間20年(2011年8月から2031年7月まで)、月額地代 65万円、敷金10カ月、期間中の中途解約は6カ月前予告で可

 

 ところが、最近AさんがX社の担当者と面談した際、「競合コンビニ店舗が近隣に増加したため、これ以上の運営は難しいと判断した。撤退はすでに内々の話が完了しており、2~3カ月後に正式に閉店と借地契約の解約をお伝えする。その折は、約定に従って6カ月以内に建物をX社で収去して更地で返還する」と説明を受けた。甲土地からの地代収入を老後の生活費として当てにしていたAさんにとって、X社の撤退は予想外のことであった。困ったAさんは、X社を紹介してくれたDさんに相談したところ、Dさんは「最近S県内で店舗を増やしている野菜専門販売業者のY社社長とは昔から懇意にしている。一度Y社に出店を勧めてみる」と言ってくれ、その後、Dさんを通じてY社から下記の提案があった。

 

【Y社からの提案内容】

 建物は現在のまま利用できるので、内部の造作を撤去(スケルトン状態にする)してくれれば建物を借りたい。長く借りるつもりであるが、契約条件は月額賃料70万円(消費税込)、敷金6カ月、契約期間3年間(期間更新あり)の普通建物賃貸借契約としたい。

 

 Aさんとしては、提案を受けた賃料については、現在とほぼ同程度の水準であり、長期間Y社が借りてくれればありがたいと思っているが、今後建物が古くなっていくことから修理・維持管理などの面倒なことは行いたくないと考えている。また、X社の担当者からは面談時に現在のコンビニ店舗は近いうちに収去すると言われていることから、X社とどのように交渉をすればよいのかわからない。

 このような状況のもと、AさんからFPであるあなたに相談があった。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. Y社に甲土地上の建物を借りてもらうことを前提とした場合、X社とどのような交渉をすればよいですか。

  3. X社に土地を賃貸する場合とY社に建物を賃貸する場合とでは、契約内容や賃料に係る税金について、どのような違いがありますか。

  4. Aさんの意向を踏まえ、Y社の提案について、どのようなアドバイスをしますか。また、Y社に建物賃貸借以外の方法で利用してもらう場合、どのような方法が考えられますか。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2026年6月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

Aさんから直接聞いて確認する情報は、主に4点あります。

1つ目は、退職後の具体的な生活設計と必要とする手取り額です。
来年退職された後の年金見込額や、リタイア後の生活を「安泰」と送るために、甲土地から最低限確保したい月々の手取り収入を確認します。

2つ目は、甲土地以外の資産背景と退職金の使い道です。
現在の現預金額、自宅マンションの保有状況、および来年支給される退職金の見込額。これにより、仮に一時的な空室期間や修繕費用の支出が発生した場合の資金的な許容量(リスク耐性)を把握します。

3つ目は、親戚のDさんおよび紹介されたY社との関係性です。
工務店を経営する親戚のDさんに対する信頼度や、Dさんを介して提案のあったY社への印象。また、将来建物が老朽化した際の修理やメンテナンスを、親戚であるDさんの工務店に実務として委託・相談できる環境にあるかを確認します。

4つ目は、将来の相続に対する意向と一人息子の考えです。
将来、甲土地を一人息子にどのような形で引き継ぎたいか。また、息子さん自身が将来この土地や賃貸事業を承継・管理していく意思や能力があるかを確認します。

FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

FPである私自身が調査・確認すべき事項については、主に4点あります。

まず、現地に赴き、土地・建物の物理的状況、および周辺環境を直接確認いたします。

次に、法務局で公図や地積測量図を請求し、敷地の正確な境界線、形状、および隣家からの越境物の有無を法的な観点から確認します。
また、現在の名義人が間違いなくAさん単独になっているか、金融機関の抵当権や第三者の権利設定が残っていないかを精査します。

自治体の都市計画課で用途制限、および景観条例などの独自の規制がないかを精査します。
また、今後の道路拡幅計画や土地区画整理事業、大型商業施設の出店予定、あるいは駅周辺の再開発計画などがないかを自治体の開発担当部署でヒアリングします。

X社との「事業用定期借地契約書」の精査として、残り約5年の期間を残して中途解約されるにあたり、契約書上に「中途解約違約金(残存期間の地代相当額など)」の定めがあるか。
敷金10ヶ月分の返還時期の確認、および建物の解体・収去費用をX社が負担する約定になっているかの再確認。
X社が建てた建物を、解体せずにAさんへ無償譲渡、あるいは有償で買い取る「建物譲渡特約」のような条項が含まれていないか、または合意書で切り替えられるかを確認します。

企業信用力と提示賃料の市場相場妥当性として、Y社の財務健全性、店舗展開の成功度を調査し、3年間の契約期間中、あるいはそれ以降も安定して経営を継続できるか。
Y社の提示する賃料が、周辺の近隣商業地域における建物賃貸借の相場と比較して適正であるかの検証を行います。

建物(現コンビニ店舗)の物理的コンディションと法的状況として、築15年の鉄骨造建物の減価償却残高、および今後の大規模修繕が必要となる時期と費用の概算予測。
建物の新耐震基準への適合性、構造上の安全性、および内部造作の撤去(スケルトン化)にかかる具体的な工事費用の見積もりを確認します。

建物賃貸借への変更にともなう税務上の取扱いの変化として、土地の賃貸(非課税)から、建物の賃貸(課税)に変更されることで、Aさんに消費税の納税義務(課税事業者化)が発生するかどうかの判定。
土地を事業用定期借地(底地)として評価していた相続税評価額が、建物をAさんが所有して貸し出すことで「貸家建付地」および建物自体の「貸家」としての評価に変わり、将来の相続税負担がどのように変化するかを税理士と連携して確認します。


Y社に甲土地上の建物を借りてもらうことを前提とした場合、X社とどのような交渉をすればよいですか。

X社は本来、建物を収去して更地で返還する義務があり、これには多額の解体費用がかかります。
一方でY社はスケルトン状態での入居を希望しています。
そこでX社に対し、「建物を無償譲渡してくれれば解体義務は免除する。その代わり、浮いた解体費用の一部を使って、内部の造作撤去(スケルトン化)まではX社の負担で行ってほしい」と交渉します。
これはX社にとってもトータルの退去コストを大幅に削減できる合理的な提案であるため、合意に至る可能性は非常に高いと考えます。


X社に土地を賃貸する場合とY社に建物を賃貸する場合とでは、契約内容や賃料に係る税金について、どのような違いがありますか。

契約内容については、X社に土地を賃貸する場合は、事業用定期借地契約なので、期間満了(2031年7月)とともに契約は確実に終了し、一切の更新が認められません。

また、期間満了時、または中途解約時は、借地人(X社)の費用と負担で建物を完全に取り壊し、土地を「更地」にして返還する義務を負っています。

Y社に建物を賃貸する場合は、普通建物賃貸借契約で、契約期間は3年間となっていますが、期間が満了してもY社が更新を希望すれば自動的に更新されます。
Aさん側から更新を拒絶したり解約を申し入れたりするには、法律上の厳しい「正当事由」が必要となります。

また、Y社が退去する際は、あくまで「建物内部の造作(内装等)」を撤去するだけであり、建物はAさんの資産として土地の上に残り続けます。

税金について、どのような違いがありますか。

土地を貸す場合と、建物を貸す場合とでは、消費税の扱いや必要経費の引き出しが異なります。


X社に土地を賃貸する場合は、土地の賃貸借は、事業用であっても原則として「非課税」です。したがって、月額65万円の地代に消費税はかかりません。

Y社に建物を賃貸する場合は、建物の賃貸借のうち、「事業用店舗(コンビニ・販売店等)」の賃貸は、原則として「課税(消費税10%)」となります。Y社の提示している「月額70万円(消費税込)」という賃料は、本体価格が約63.6万円、消費税が約6.4万円という内訳になります。

将来Aさんの相続が発生した際、X社に土地を賃貸する場合は、甲土地は「事業用定期借地権の目的となっている宅地(底地)」として評価され、残存期間に応じた一定の借地権価額が自用地評価から差し引かれます。

Y社に建物を賃貸する場合は、土地は貸家建付地として評価され、建物自体も貸家として評価されます。


Aさんの意向を踏まえ、Y社の提案について、どのようなアドバイスをしますか。

Aさんに対して「Y社が提案する『普通建物賃貸借契約』をそのまま受け入れることには強く反対します」とアドバイスします。

建物を貸す形態をとる場合、民法および借地借家法の原則として、建物の修繕義務は貸主であるAさんに発生します。
築15年の店舗であれば遠からず大規模修繕が必要となり、Aさんの退職後の手取りが修繕費で消えるリスクがあります。

また、3年更新の普通建物賃貸借契約は、Y社の権利が非常に強く、期間満了時にAさんから解約を申し入れるには「正当事由」と多額の立退料が必要になるなど、事実上、一度貸すとコントロールが利かなくなるためです。

どうしても建物を貸す形態をとる場合は、契約を「定期建物賃貸借契約」に変更し、Aさんが主導権を握れるようにします。
さらに、契約書内に「経年劣化を含め、建物の一切の維持・修繕費用はY社の負担とする修繕義務免除特約という条項を必ず盛り込むように条件交渉すべきだとアドバイスします。

Y社に建物賃貸借以外の方法で利用してもらう場合、どのような方法が考えられますか。

X社と交渉して、建物を無償でAさんに譲渡してもらいます(同時にスケルトン工事もX社負担で行わせます)。
その後、Aさんはその建物をY社に売却(または譲渡)してY社を建物オーナーとし、甲土地についてはAさんとY社の間で新たに事業用定期借地契約を公正証書で締結します。
これにより、建物の維持管理・修繕義務はすべてY社のものとなり、Aさんはノーリスクで地代だけを受け取る安泰な経営に戻ることができます。

もしくは、X社が撤退する前に、X社が持っている「借地権(残り約5年)」と「建物の所有権」をセットで直接Y社に売却・譲渡させ、地主であるAさんはそれを「承諾(借地権譲渡承諾)」するという形をとります。
X社は解体費を払わずに撤退でき、Y社は初期費用を抑えて出店でき、Aさんは現在の安全な借地契約のまま地代をもらい続けられるという「三方よし」の解決策になります。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

税理士。
X社から建物本体を無償譲渡された場合、その時価がAさんの不動産所得において「経済的利益」として課税されるリスクの検証と、必要経費との相殺・平準化スキームの構築。
Y社への店舗賃貸化にともない、月額70万円(税込)の賃料が課税売上となることへの対応、およびインボイス制度の損得シミュレーション。
甲土地(西側240D・南側180Dの角地)の「側方路線影響加算」を考慮した適正な自用地価額の算出、および「貸家建付地」や「事業用定期借地(底地)」への変更による将来の相続税額への影響の試算を依頼します。

弁護士。
現借地人であるX社との間で、中途解約違約金の清算、敷金10ヶ月分(650万円)の返還スケジュール、および建物の無償譲渡やスケルトン工事の範囲を法的に確定させる「合意解約(契約終了)合意書」の作成・リーガルチェック。
Y社との間で結ぶ定期建物賃貸借への変更、または建物を売却した上での事業用定期借地契約などにおける、「修繕義務免除特約」や「中途解約禁止条項」などのリーガルチェックを依頼します。

司法書士。
X社からAさんへ、建物の所有権を移転する「建物所有権移転登記」の申請代行。
建物をY社に売却し、土地を貸すスキームを採用した場合における、Y社への建物所有権移転登記、および甲土地への事業用定期借地権設定登記の申請代行を依頼します。

不動産鑑定士。
X社から引き継ぐ築15年の鉄骨造建物の現在の「適正な時価(残存価値)」の算定。
Y社が提示している賃料(月額70万円)が、近隣商業地域の周辺相場(不相当に高すぎないか、または低すぎないか)に照らして妥当であるかの評価レポート作成を依頼します。

土地家屋調査士。
準幹線道路に面した甲土地(540㎡)の境界が未確定の場合、隣地や市道との「境界確定測量」の実施。
X社からの建物引き継ぎにともない、建物の表題部変更登記(所有者変更等)が必要となった場合の現況調査を依頼します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、事業用定期借地契約、普通建物賃貸借契約、不動産賃貸の消費税の取扱いに関する設例でした。

設例をよく読んでみると。X社を紹介してくれたのも、今回のピンチにY社を連れてきてくれたのも、「工務店を経営する親戚のDさん」です。

Y社に建物を買い取ってもらう(または賃貸する)際の条件として、「今後の内装工事や外壁・屋根の修繕の際には、本案件の発案者であるDさんの工務店に優先的に発注(特命発注)すること」を、Aさん・Y社・Dさんの三者合意の覚書として残すことができれば、親族間の人間関係まで配慮した提案ができます。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  
   

楠本 学

   

FP1級技能士、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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