2025年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年2月8日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のテキストと過去問解説集を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2025年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年2月8日)

●設 例●
 Aさん(60歳)は、妻Bさん(58歳)とともに、都内にあるS区内の自宅で暮らしている。昨年1月、Aさんの母親が亡くなり、定期預金1億5,000万円(相続税支払後)とN区内にあるワンルームマンション1戸を相続した。実家は母親が施設に入居した後に売却されており、相続人はAさんのみである。Aさん夫妻には1人息子の長男Cさん(30歳)がおり、昨年結婚した妻と隣接県のT市の賃貸マンションで暮らしている。

 

 Aさんは、経済的に不安がある状況にはなく、相続財産を使って土地勘のある都内K区にある甲マンションへの投資を検討している。甲マンションはいわゆるタワーマンションで、売出価格は8,000万円である。不動産業者によれば、近年都内のマンション価格は高騰しており、現在の価格は5年前の約1.6倍とのことである。不動産投資は相続対策になると聞いたこともあるため、Aさんは購入を検討する一方、今の価格で購入してよいのか迷いもある。また、N区内のワンルームマンションについては、現在の市場価格は3,500万円程度(5年前の約1.2倍の金額)とのことであり、築年が経過しているため売却してはどうかとの話があった。

 一方で先日、長男Cさんからいずれ住宅を取得したいと考えているとの話があった。長男Cさんは、購入するのであれば中古の戸建て住宅がよいと思っているが、希望するエリアの住宅価格は規模が小さいものでも7,000万円前後と高額であり、現段階で多額の住宅ローンを組むことには不安がある。今後給料が増えてから、戸建て住宅の市場動向も見つつ時間をかけて検討していきたいとのことであった。

 Aさんは、長男Cさんの話を聞き、甲マンションを取得するのであれば、当面はそこに長男Cさんを住まわせるか、住宅購入資金として必要な現金を長男Cさんに贈与してはどうかと考えた。長男Cさんに話したところ、「甲マンションであれば職場にも近く、家賃負担も抑えられるため、住ませてもらえるのであればありがたい。ある程度経済的に余裕ができてから自身で戸建て住宅を購入したい」とのことであった。Aさんは、長男Cさんが希望すれば、いっそのこと甲マンションを贈与してもよいと考えているが、どのように援助をすれば長男Cさんの意向も踏まえたうえで税金面でも有利となるのか、知りたいと思っている。

 また、Aさんは、相続財産の残金があれば金融資産への投資に活用することも考えており、知人に相談したところ、J-REITも投資対象として検討してみてはどうかとアドバイスを受けた。Aさんは今まで、J-REITに投資をした経験がなく、その内容について知りたいと思っている。このような状況のもと、FPであるあなたに相談があった。

 

【母親から相続したN区内のワンルームマンションの概要】

  • 父親(7年前に死亡)が20年前に取得
  • 鉄筋コンクリート造8階建て、総戸数40戸、築30年、最寄駅から徒歩7分
  • 物件は5階に所在、賃貸面積は25㎡、賃貸中
  • 賃料月額は8万円(共益費込)、マンション管理組合へ支払う管理費は月額6,000円/戸、修繕積立金は月額5,000円/戸
  • 固定資産税、都市計画税は年間約15万円
  • 10年前に外壁の改修工事を行っている。

【K区の甲マンションの概要】

  • 鉄筋コンクリート造40階建て、総戸数200戸、築10年、最寄駅から徒歩10分
  • 物件は2階に所在、専有面積は60㎡、2LDK、現在売主が居住中
  • 想定賃料月額は20万円(共益費込)、マンション管理組合へ支払う管理費は月額15,000円/戸、修繕積立金は月額18,000円/戸
  • 諸経費(固定資産税・都市計画税、損害保険料、上記管理費・修繕積立金)控除後の年間の収入は約170万円
  • 現在までに大規模修繕は行われていない。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報
  2. Aさんに甲マンションを取得することを勧めますか。その理由とともに教えてください。また、ワンルームマンションを売却する場合、課税関係はどうなりますか。
  3. Aさんが考えている長男Cさんへの援助方法について、どのようなアドバイスをしますか。
  4. J-REITで投資先を選ぶ際には、どのような点を確認しますか。また、J-REITへの投資が実物不動産投資よりも優れている点と、リスクについて教えてください。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2026年2月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

Aさんから直接聞いて確認する情報は、は主に4点あります。

まず、ワンルームマンションの正確な「取得費」や「取得時期」を確認します。

次に、Aさんのライフプランに関する意向として、今後の居住予定、老後生活資金の考え方、資産運用に対するリスク許容度を確認します。

3点目に資産・負債の詳細として、金融資産の内訳、借入金や保証債務の有無、将来の大きな支出予定を確認します。

さらに、家族関係および資産承継の意向として、誰にどの財産を承継させたいか、生前贈与の実施状況、長男Cさん夫妻には、将来取得したい一戸建ての具体的な希望時期やエリアを直接確認します。

FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

FP自身が調べて確認する情報は、客観的情報として次の事項を調査します。

まず、現地確認です。ワンルームマンションや甲マンションについて、人通りや交通量はどのくらいあるのか、商業施設、公共交通機関などの利便性、騒音、周辺住人などの物理的状況を、実際に現地で確認します。

次に、権利関係として、法務局で登記事項証明書や公図を請求し、不動産の権利状況等を確認します。

さらに、法令上の制限として、自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化を確認します。

また、市場調査として、周辺の取引事例を、地元の不動産業者等で確認し、路線価や実勢価格などの評価額を確認します。

最後に、契約関係として賃貸借契約や担保設定の有無を確認し、金融機関の融資条件や市場動向についても調査します。


Aさんに甲マンションを取得することを勧めますか。その理由とともに教えてください。

はい、取得をお勧めします。 理由は3点あります。

1点目は、Aさんは1億5,000万円という多額の現預金を相続しており、そのまま保有していると相続税評価額は額面通りとなります。
これを不動産に組み替えることで、建物は固定資産税評価額、土地は路線価による評価となり、さらに「マンション建物の相続税評価額の補正(いわゆるタワーマンション増税)」を考慮しても、現金保有より評価額を大きく圧縮できます。

2点目は、1億5,000万円の現預金があるため、8,000万円の購入資金を全額自己資金で賄っても、手元に7,000万円の現金を残すことができ、Aさん夫妻の老後資金や不測の事態への備えとしても十分な余裕があります。

3点目は、長男Cさんを住ませることで、彼の住居費負担を減らし、将来の住宅取得資金の蓄えをサポートできることです。

ただし、注意点として、現在の価格が5年前の1.6倍と高騰している点があげられます。
投資用として見た場合のネット利回りは約2.1%(170万円÷8,000万円)と決して高くはなく、将来的な価格下落リスクや修繕積立金の増額リスクについても十分に考慮する必要があります。

ワンルームマンションを売却する場合、課税関係はどうなりますか?

お父様から所有期間を引き継ぐため、「長期譲渡所得」となります。
税率は所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて20.315%です。
譲渡価額3,500万円から、減価償却後の取得費と譲渡費用を差し引いた利益に課税されます。

相続税申告期限から3年以内の売却であれば、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」を受けられる可能性があるため、その期間も確認します。


Aさんが考えている長男Cさんへの援助方法について、どのようなアドバイスをしますか?

長男Cさんの「将来的に戸建てを取得したいが、現在は高額なローンに不安がある」という意向と、Aさんの「税金面でも有利に援助したい」というご希望を踏まえ、まず、Aさんが甲マンションを取得し、長男Cさん夫婦を無償で住ませる(使用貸借)ことを提案します。

どうしてですか?

親子間での無償の居住提供は、通常「扶養義務の範囲内」とみなされ、贈与税の対象とはなりません。
当面は『使用貸借』として無償で住ませることにより、Cさんは本来支払うべき想定賃料(月額20万円)相当を、将来の戸建て購入に向けた自己資金として着実に貯蓄することができます。

Aさんは、いっそのこと甲マンションを贈与してもよいと考えています。どのような提案をしますか?

「いっそのこと甲マンションを贈与する」という案もございますが、不動産取得税や登録免許税などの移転コストが高くなることや、住宅取得等資金の非課税特例が使えないことを考えると、「当面は無償で住ませ、将来の戸建て購入時に現金を贈与する」方法が、Cさんの意向にも沿い、かつ税務面でも最も有利であると提案します。

将来、Cさんが本当に戸建てを買う際に『住宅取得等資金の贈与税の非課税特例』を使い、現金を贈与するのが税務上も最も効率的です。
この特例は「住宅を取得するための金銭」の贈与が対象です。
Aさんが甲マンション自体を贈与すると、この非課税特例が使えないだけでなく、不動産取得税などのコストも発生してしまいます。


J-REITで投資先を選ぶ際には、どのような点を確認しますか?

J-REITは実物不動産と違い、少額で分散投資ができ、流動性が高いのが魅力です。
投資対象の用途と地域、稼働率を確認し、判断指標としては、純資産に対する割安度を示す「NAV倍率」や金利上昇リスクに備えた「LTV(有利子負債比率)」「分配金利回り」を確認します。

NAV倍率(Net Asset Value)とは、J-REITの時価総額が保有不動産の純資産価値に対して何倍かを示す指標で、1倍を割っていれば割安と判断される目安になります。


J-REITへの投資が実物不動産投資よりも優れている点と、リスクについて教えてください。

今回検討されている甲マンションのような実物不動産投資と比較し、高い換金性や少額からの分散投資ができる点、管理の手間が不要な点が挙げられます。

リスクについて教えてください。

一方で、証券投資としての特性上、価格変動リスクや分配金変動リスク、金利上昇局面では利払い負担増により価格が下落するリスクがあることや、元本保証がない点は十分に説明する必要があります。

また、運用会社やJ-REIT自体の経営悪化により、倒産や上場廃止となる可能性もゼロではありません。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

税理士。
N区のマンション売却に伴う「譲渡所得税」の計算や申告、長男Cさんへの住宅取得資金贈与における「非課税特例」の適用判定、および甲マンション取得による将来の「相続税圧縮効果」の具体的な試算を依頼します。

司法書士。
甲マンション(タワーマンション)購入時の「所有権保存登記・移転登記」、およびN区のマンション売却時の「所有権移転登記」の手続きを依頼します。また、将来的にCさんへ物件を贈与する場合はその登記手続きも担当します。

宅地建物取引業者。
N区のマンションの売却仲介、および甲マンションの購入手続きの媒介を依頼します。市場価格の査定や、重要事項説明書の作成・説明、売買契約の締結をサポートしてもらいます。

不動産鑑定士。
業者の提示する「5年前の1.6倍」という甲マンションの価格や、N区のマンションの価格が妥当であるか、公的な評価が必要な場合に調査報告書や鑑定評価書の作成を依頼することが考えられます。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、タワーマンションの相続税評価見直し、親族間での不動産の使用貸借、J-REITによる分散投資に関する設例でした。

マンションの相続税評価額の「新ルール」は、従来の「時価と評価額の大きな乖離」を利用した過度な節税を防ぐための仕組みを理解しているかが問われます。

築年数、階数、敷地持分狭小度などから算出される「評価乖離率」に基づき、評価額が時価の6割に補正される仕組みを説明すること。

「節税効果がゼロになったわけではなく、以前よりも圧縮幅が適正化された」というニュアンスで回答するのがポイントです。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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