2025年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年2月7日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のテキストと過去問解説集を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、テキストも「きんざいの実技試験対策問題集」ほぼ一択です。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。


それでは、設例をお読みください。

2025年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 2 (2026年2月7日)

●設 例●
 Aさん(70歳)は、5年前に大手メーカーを退職し、三大都市圏近郊のⅩ市内にある自宅(甲土地・甲建物)で妻Bさん(67歳)と暮らしている。1人娘の長女Cさん(37歳)は会社員で、同市内の賃貸マンションで夫(40歳)と2人の子(6歳と4歳)と暮らしている。

 先日、長女Cさんから、「今の賃貸マンションが手狭になり、また、保育園などの送り迎えも大変になってきたので、二世帯住宅を建てて一緒に暮らせないか。お父さんたちが賛成なら夫もそうしたいと言っている」と相談があった。

 ちょうど、Aさんは自宅(相続で取得、築50年)の大規模修繕か建替えを考えていたこともあり、長女Cさんの提案を受け入れることにした。妻Bさんも娘家族と一緒に暮らせることをうれしく思っている。親子世帯で話し合った結果、建設資金はAさんと長女Cさん夫婦が半分ずつ拠出し、完全分離型の二世帯住宅にしたいとの結論に達したが、ハウスメーカーの説明では、甲土地の広さでは希望する間取りは難しいとのことである。

 Aさんは、自宅がある甲土地のほかに乙土地を所有している。乙土地は、父親の代から普通借地としてDさん(75歳)に賃貸しており、Dさんは、借地上に所有する乙建物(店舗兼用住宅)で喫茶店を経営しながら、妻と2人で暮らしている。Aさんは、Dさんとは家族ぐるみの付き合いで、時々喫茶店に顔を出している。先日、Aさんが喫茶店を訪れたとき、「そろそろ年だし店は閉めようと思う。Aさんの承諾が得られれば、借地を売ったお金で住み慣れたこの近辺に土地を買い、夫婦2人で住むこじんまりした家屋を建てることを考えている」とDさんから言われた。

 

【Aさんと長女Cさん夫婦の住宅計画】

  • 完全分離型の二世帯住宅(1階に親世帯の玄関と子世帯の玄関を別々に配置)
  • 1階 110㎡:親世帯2LDK ※駐車スペース普通車2台分
  • 2階 95㎡:子世帯3LDK
  • 予算6,000万円(Aさん:自己資金3,000万円、Cさん夫婦:自己資金+ローン3,000万円)

 

【Dさんから聞いた住宅計画】

  • 1階 66㎡:2LDK ※駐車スペース普通車1台分
  • 予算2,200万円(自己資金)土地購入費は、借地の売却資金を充当する予定

※現在の借地上の乙建物は、1階100㎡(店舗50㎡、住居50㎡)2階50㎡(住居)、築60年

※借地の開始時に権利金が支払われているかは不明。これまでに2回更新されているが、更新料の支払は行われていない。当該地は借地権の取引慣行のある地域である。なお、第三者に建替え前提で借地権を売却する場合、地主に借地権の譲渡承諾料および建替え承諾料等を支払う必要があり、これらを合計すると更地価格の10%程度となる。

 

 Aさんは、Dさんから借地権を買い取れば乙土地に二世帯住宅を建てられるのではないかと思い付いた。しかし、買取資金は手元になく、甲土地を売って費用を捻出しなければならないのか、頭を悩ませている。このような状況で、FPであるあなたに相談があった。

 

(FPへの質問事項)

  1. Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の①および②に整理して説明してください。
     ①Aさんから直接聞いて確認する情報
     ②FPであるあなた自身が調べて確認する情報

  2. Dさんが乙建物と借地権を売却する場合、譲渡所得の課税関係はどうなりますか。

  3. 本件の解決方法として、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか。

  4. Aさんと長女Cさん夫婦が計画どおり完全分離型の二世帯住宅を建てた場合、その登記をするにあたって、将来の相続税の課税上、どのような点に注意すべきですか。

  5. 本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2026年2月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか?
 ①Aさんから直接聞いて確認する情報は、どのようなことですか?

Aさんから直接聞いて確認する情報は、は主に6点あります。

第1に、甲土地の正確な「取得費」や「取得時期」を確認します。

第2に、二世帯住宅への居住意向です。
同居の期間、完全分離型へのこだわり、将来単独居住へ戻る可能性などを確認します。

第3に、甲土地に対する考え方です。
売却意思の有無や将来の利用方針を確認します。

第4に、乙土地の借地関係です。
借地契約内容、地代、契約書の有無、Dさんとの関係性などを確認します。

第5に、家族関係および相続意向です。
長女夫婦への資産承継の考えや妻Bさんの意向を確認します。

第6に、資金計画です。
金融資産、年金収入、老後資金の余裕、3,000万円拠出後の生活資金への影響を確認します。

②FPであるあなた自身が調べて確認する情報は、どのようなことですか?

FP自身が調べて確認する情報は、客観的情報として次の事項を調査します。

まず、現地確認です。
甲土地、乙土地について、境界は明らかか、土壌汚染されていないか、勾配、工作物、車両、樹木などの物理的状況を、実際に現地で確認確認します。

次に、権利関係として、法務局で登記事項証明書や公図を請求し、土地の権利状況等を確認します。

さらに、法令上の制限として、自治体の都市計画課等で、用途地域・都市計画等を確認し、今後の開発予定や周辺環境の変化、建ぺい率・容積率、接道条件、建築可能面積を確認します。

また、市場調査として、周辺の取引事例を、地元の不動産業者等で確認し、甲土地・乙土地の時価、更地価格、借地権割合などを調査します。
さらに、借地権関係として、借地契約の法的性質、譲渡承諾料や建替承諾料の慣行を確認します。

最後に、融資条件や住宅ローン利用可能性も確認します。


Dさんが乙建物と借地権を売却する場合、譲渡所得の課税関係はどうなりますか?

乙建物および借地権はいずれも資産の譲渡に該当し、譲渡所得として課税されます。
譲渡所得は、譲渡価額から取得費および譲渡費用を控除して計算します。

借地権については、権利金や更新料が取得費となり、地主へ支払う譲渡承諾料や建替承諾料は譲渡費用となります。

建物が店舗兼住宅ですので、居住用部分と事業用部分に按分して計算します。
居住用部分については「居住用財産の3,000万円特別控除」や「10年超所有の軽減税率」が適用でき、税負担を大幅に抑えられる可能性があります。


Aさんは乙土地の借地権を買い取って二世帯住宅を建てたいと考えていますが、手元に買取資金がないと悩んでいます。
この状況を打開する具体的な解決策として、あなたはどのような提案をしますか?

Aさんがご自宅として所有している『甲土地の所有権』と、Dさんが持っている『乙土地の借地権』を交換する方法をご提案します。

『甲土地の所有権』と、『乙土地の借地権』の交換ですね。
その提案は、AさんとDさんの双方にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?

まずAさんの最大のメリットは、多額の現金(買取資金)を用意することなく、乙土地の借地権を取得できる点です。
乙土地は270㎡で、指定建蔽率は50%のため、1階の建築可能面積は135㎡となります。希望の1階面積(110㎡)は十分に収まります。
また、指定容積率は100%(270㎡まで)であり、希望の延床面積(205㎡)も法的にクリア可能です。
さらに、乙土地は南側・東側の2面で6mの公道に接しており、普通車3台分の駐車スペースも確保しやすい形状です。

Dさんにとってはいかがですか?

借地権を地主に売却する場合、通常、第三者への譲渡で必要となる借地権価格の10%程度の譲渡承諾料は不要です。
地主が直接買い取るため、手続きが簡略化され、借地権名義書換料として地主から承諾を得る必要がなく、借地権をAさんに売れば譲渡承諾料の支払いが不要になります。

また、Dさんは現在『借地を売ったお金で近辺に土地を買い、こじんまりした家屋を建てたい』と希望されています。
135㎡ある甲土地の所有権を取得できれば、わざわざ新しい土地を探して購入する手間が省けます。
また、Dさんが想定している『1階66㎡の家屋』を建てるのにも、甲土地は十分な広さと立地条件を備えているため、まさに両者のニーズが合致するWin-Winの解決策となります。

不動産を交換した場合、税務上は譲渡があったとみなされ、譲渡所得税がかかるのではありませんか?

原則としては譲渡所得として課税されます。しかし本件の場合、『固定資産の交換の特例』を適用できる可能性が高いと考えます。

『固定資産の交換の特例』ですね。
適用するための主な要件と、その効果を説明してください。

まず効果ですが、要件を満たせば『譲渡がなかったもの』とみなされ、譲渡所得税を100%繰り延べることができます。

適用要件としては主に4つあります。
1つ目は、交換する資産が同種の固定資産であること。土地の所有権と借地権は『同種の資産』として扱われます。
2つ目は、双方がその資産を1年以上所有しており、かつ交換のために取得したものではないこと。
3つ目は、交換後も同じ用途、つまり今回は『居住用』として使用することです。
4つ目は、交換する資産の時価の差額(交換差金)が、いずれか高い方の価額の『20%以内』であることです。


Aさんと長女Cさん夫婦が計画どおり完全分離型の二世帯住宅を建てた場合、その登記をするにあたって、将来の相続税の課税上、どのような点に注意すべきですか?

「区分所有登記」を避けることを強くアドバイスします。 1階と2階を別々に登記してしまうと、将来Aさんの相続時に、長女Cさんが住む部分の敷地に対して「小規模宅地等の特例」が適用できなくなるリスクがあるからです。
建物全体を「共有登記」または「Aさんの単独所有」とすることで、敷地全体について80%の評価減(特定居住用宅地等)を適用できるようにします。
また、拠出額と持分割合を一致させ、贈与税の問題が生じないよう注意します。

小規模宅地等の特例を適用しやすくするには、どの登記方法が望ましいですか?

同居親族として評価される状態を維持することが重要です。
そのため、区分所有建物とするよりも、一棟の共有建物として登記し、同一建物に居住している形を維持する方法が望ましいと考えます。
また土地についてはAさん所有を基本とし、同居関係を明確にしておくことで、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用しやすくなります。


FP業務では、色々な専門職業家と連携することもあると思いますが、
今回のケースで関与する、専門職業家には、どのような方々がいますか?

不動産の取引に関する、課税上の具体的な税務相談は、税理士に、
売買契約等における、宅地建物取引業法に規定する業務については、宅地建物取引士に、
土地の所有権移転登記については、司法書士に、
正確な測量と境界の明示、登記については土地家屋調査士に、
測量に基づく適正な不動産価格の算定は不動産鑑定士と連携します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回の設例は、不動産の譲渡、借地関係の解消、二世帯住宅の建築に関する設例でした。

設例の最大の鍵は、Aさんが底地(所有権)を持ち、Dさんが借地権を持つ「乙土地」をどう整理するかです。

法令や税金の話だけで終わらせず、「長年の信頼関係を損なわないよう、円満な合意解約を目指す」という配慮を忘れないでください。FPには、数字だけでなく家族の幸せを調整する役割が求められています。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Twitterにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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