2025年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2026年2月14日)過去問解説

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きんざいが制作していたFP受検対策に関する書籍は、今後制作・販売されません。

そこで、僕が実技試験対策本のテキストと過去問解説集を制作しました。

合格率1割の難関試験、FP1級学科試験。しかし、学科試験を合格しただけではFP1級技能士の称号は与えられません。
FP1級技能士としての資質が審査される。FP1級実技試験が待っています。

実技試験は学科試験と違い合格率8割以上です。だからといって油断していると足をすくわれます。
合格率1割の難関試験突破者が2割も落ちているんですよ。

1級学科の勉強を始める時に、2級や3級の問題集やテキストは本屋さんにたくさん置いてあるのに1級の本はほとんど置いてなく注文して購入した方も多いのではないでしょうか。
FP1級実技試験は学科試験以上に情報量が少なく、大きめの書店でもテキストを見かけることは滅多にありません。

そんな、謎多きFP1級実技試験の過去問を解説します。

試験当日の標準的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 控室で待機(待機中は紙媒体の参考書等は見ることができます。電子機器は使えません)
  2. 設例を読む机に移動(約15分間設例を読みます。設例にメモやマーカで印をつけます)
  3. 面接試験室へ移動(心の準備ができたらノックして入室。約12分の口頭試問試験が始まります)
  4. 面接終了後、控室へ移動(次の試験まで待機)

設例を読むところから試験は始まっています。設例を読み理解することもトレーニングだと思って、タイマーを15分間セットしてメモをとりながら読んでみてください。

それでは、設例をお読みください。

2025年度 第3回 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級実技試験 Part 1 (2026年2月14日)

●設 例●
 Aさん(60歳)は、大都市圏の郊外にあるX市で、妻子とともに、母Bさん(85歳)が所有する8階建てマンションの7階で暮らしている。マンションの1階から6階までは住居として賃貸しており、立地がよいことから全室満室の状態である。当該マンションの延べ面積は1,000㎡(各階の床面積は125㎡で同一)であり、区分所有登記はされていない。

 

 5年前にAさんの父親が死亡してから、母Bさんはマンションの8階に1人で住んでいたが、急に体調を崩し、2025年12月に死亡した。母Bさんの法定相続人は、Aさんのほか、他県で家族と暮らしている妹Cさん(57歳)および弟Dさん(55歳)である。Aさんは四十九日法要を終え、そろそろ相続手続に着手しようと遺品を整理していたところ、母Bさんが作成した自筆証書遺言を発見したため、すぐに妹Cさんと弟Dさんにそのことを伝え、家庭裁判所に検認の申立てを行った。後日、Aさんたちは、通知された検認期日に家庭裁判所に集まり、遺言書の開封に立ち会ったところ、遺言書には「自分の所有するマンションの土地と建物はすべてAさんに相続させる」ということだけが書いてあった。

 自筆証書遺言の検認後、Aさんたちは話合いを重ね、その結果、不動産については遺言書どおりにすべてAさんが相続することになり、現預金と上場株式については妹Cさんと弟Dさんが2分の1ずつ相続し、不足分はAさんが代償財産を交付することになった。

 Aさんは、母Bさんが加入していた生命保険に係る死亡保険金(1,500万円)と、自身が所有する上場株式(相続税評価額2,000万円)を、代償財産としてそれぞれ妹Cさんと弟Dさんに2分の1ずつ渡そうと考えているが、上場株式を代償財産とする場合、何か注意すべき点はないか知りたいと思っている。

 

 また、Aさんは、相続手続等をできるだけ自分でやろうと思っているが、手続にどのような書類が必要となるのか、財産の名義変更やその他の手続等はいつまでに行えばよいのかなど、わからないことが多く、何から手を付けるべきかを教えてほしいと思っている。

 なお、母Bさんが住んでいたマンションの8階部分については、相続手続が落ち着いてから、当面は人に貸し出そうかと考えている。

 

【母Bさんの相続財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)

現預金 7,000万円  
上場株式 3,000万円  
自宅兼賃貸マンション(1棟、築15年、8階建て)
  ①土地(600㎡) 1億2,000万円  
  ②建物 5,000万円  
  合計 2億7,000万円  

 

※賃貸マンションの年間家賃収入は約1,200万円である。

※母Bさんは、契約者(=保険料負担者)・被保険者を母Bさん、死亡保険金受取人をAさんとする生命保険(死亡保険金1,500万円)に加入していた。

※母Bさんの相続に係る相続税額は、約4,600万円(小規模宅地等の評価減適用前)と試算されている。

(注)設例に関し、詳細な計算を行う必要はない。

 

 

検討のポイント
●設例の顧客の相談内容および問題点として、どのようなことが考えられるか。
●それらの相談内容および問題点を解決するために、どのような提案・方策が考えられるか。
●それらの方策(解決策)のなかで、何を顧客に提案するか。その理由・留意点は何か。
●FPと職業倫理について、どのようなことが考えられるか。

出典:一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1 級実技試験(資産相談業務)2026年2月 参考:技能検定試験問題の使用について

○○と申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
設例をじっくり読んだと思いますが、Aさんの相談内容と問題点について項目だけで構いませんので全てあげてください。

Aさんの相談内容と問題点は大きく分けて5つあると認識しています。

1つ目は、相続手続の全体像と期限について。
2つ目は、遺言と異なる分割を行うための遺産分割協議書の作成。
3つ目は、Aさんの所有株式を代償財産とする際の税務上の注意点。
4つ目は、小規模宅地等の特例を適用した相続税の軽減。
5つ目は、母B様が住んでいた8階部分の有効活用についてです。


それでは、今あげた問題点を解決するためにどのような提案・方策が考えられますか?

Aさんは、上場株式を代償財産として妹Cさんと弟Dさんに渡そうと考えています。注意点はありますか。

最大の注意点はAさんに「譲渡所得税」が課される可能性があることです。
自分の資産を代償財産として交付することは税務上の「譲渡」に該当します。交付時の時価がAさんの取得費を上回っていれば、その差益に課税されます。

また、受け取る兄弟との間で「いつの時点の時価」で評価するか合意し、遺産分割協議書に「誰が・何を・誰に・いくらの評価で支払うのか」を明記して贈与税のリスクを避ける必要があります。

現金による代償分割と異なり課税が発生する点が最大の注意点であり、可能であれば預貯金等での代償を検討するようアドバイスします。


Aさんは相続手続をできるだけ自分で行いたいと考えています。どのような書類が必要ですか?

まずは母Bさんの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、および相続人全員の戸籍・印鑑証明書が必要です。
本件は遺言書の内容と異なる分割を行うため、相続人全員の合意を証明する「遺産分割協議書」が不可欠です。
また、自筆証書遺言には「検認済証明書」が付いていることも確認します。
不動産の名義変更(相続登記)には固定資産評価証明書なども必要になります。

これらの手続はいつまでに行えばよいです?

特に注意すべきは2つの期限です。
まず、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に行う「準確定申告」です。
母Bさんには家賃収入があったため必須と考えられます。

次に、10か月以内に行う「相続税の申告と納付」です。
小規模宅地等の特例を適用するためにも、この期限を厳守する必要があります。

また、不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。2024年4月から義務化されており、正当な理由なく怠ると過料の対象となります。


Aさんは7階、母Bさんは8階に住んでいました。Aさんが相続した場合「特定居住用宅地等」の特例は適用できますか?

適用可能です。
このマンションは「区分所有登記がされていない」ため、税務上は別々の階に住んでいても「同一の建物に居住している同居親族」として扱われます。
したがって、Aさん居住の7階と、母Bさん居住の8階部分の床面積に対応する敷地について、特定居住用宅地等の特例を適用できます。

母Bさんが住んでいたマンションを将来賃貸に出す予定ですが問題ありませんよね?

いえ、注意が必要です。
特例の適用を受けるためには、原則として相続税の申告期限まで居住の実態を維持しなければなりません。
期限前に賃貸を開始してしまうと、居住用としての要件を外れる恐れがあるため、実際の入居は申告期限を待ってから行うようアドバイスいたします。


最後に、FPが守るべき職業倫理を6つあげてください。

顧客利益の優先、守秘義務の遵守、顧客に対する説明義務、インフォームドコンセント、コンプライアンスの徹底、FP自身の能力の啓発です。

どれもFPにとっては大事なことだと思いますが、今回のケースでは特にどれを重視しますか?

今回のケースでは、コンプライアンスの徹底を重視します。

Aさんは相続手続等をできるだけ自分でやろうと思っています。
しかし、相続税の申告(小規模宅地等の特例の適用など)や、財産の名義変更、代償分割に伴う具体的な税額の試算など、専門的な法的手続きや税務判断が多く含まれています。
FPが税理士法に抵触する具体的な税務相談や税額計算を直接行うことはできません。
また、遺言書の検認後の手続きや代償分割協議書の作成についても、司法書士や弁護士との連携が不可欠です。
FPとして専門家との境界線を守り、適切に連携を促す姿勢が強く求められるためコンプライアンスの徹底を重視します。

質問は以上です。お疲れさまでした。

ありがとうございました。失礼いたします。


今回は、代償分割の課税関係、相続手続き・必要書類、小規模宅地等の特例に関する設例でした。

この設例で最も重視するのは、小規模宅地等の特例の判定です。

7階(Aさん)と8階(母Bさん)でフロアが分かれていますが、設例の「区分所有登記はされていない」という一文を見逃してはいけません。

区分所有登記がない場合、建物全体が「一棟の建物」とみなされます。
平成26年の税制改正により、たとえフロアが別でも、同じ建物内に住んでいれば「同居」として扱われます。

これにより、Aさんは「同居親族」として、母の居住用部分(8階)だけでなく、自身の居住用部分(7階)に対応する敷地についても、特定居住用宅地等(80%減額)を適用できる可能性が高いことを論理的に説明してください。

最後まで諦めずに、FP1級学科試験合格者としての実力を発揮できるように頑張りましょう!

ご質問やご意見、間違っている箇所等ございましたら、コメント欄、お問い合わせページ、Xにてお知らせください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、FP1級技能士試験のご参考になれば幸いです。

    Profile  

manabu

   

FP1級技能士、AFP、J-FLEC認定アドバイザー。
日本FP協会 CFP30周年記念プロモーション動画コンテスト 最優秀賞受賞
DTP・Webデザイナー・コンサルタントとして開業や副業のコンサルティング、FP試験のサポートを行っています。
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